先輩たちの仕事

政治家は何を考え、本音はどこにあるか
直接話を聞くことでリアルを引き出す

記者とは
記者 報道局 政治部 根本 幸太郎 (2008年入局)

今、世界で何が起きているか伝えたい

高校生ぐらいから、いろいろなものを自分の目で見たいという漠然とした好奇心がありました。大学時代にスコットランドへ留学し、ヨーロッパを中心に10か国以上、1人旅をしました。当時、移民の流入により、揺れるヨーロッパの現状を目の当たりにして強い衝撃を受けました。路地裏で暮らす職のない移民の姿や、敵意をむき出しに迫ってきた移民排斥を訴える人たちの表情は、今も忘れられません。
世界で今何が起きているのか、もっと知りたい。そして、少しでも、世の中をよくするために多くの人に現状を伝えたい。漠然と持っていた記者になることへの思いが固まりました。
新聞かテレビかはあまりこだわりがありませんでした。でも、以前から「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」をよく見ていたので、これだけ知的欲求を満たしてくれるテレビ局はないなと思っていました。テレビ局はNHK以外は考えていませんでした。

夜討ち朝駆けで警察署に通い詰める

初任地は水戸放送局でした。駆け出しの頃は警察担当をします。とにかく通い詰め、何かありませんかと警察官に声をかける毎日でした。ある日の夕刊に載った容疑者逮捕の記事。まさに寝耳に水でした。いわゆる「抜かれネタ」の確認を取るために記事の切り抜きを手に、警察署長をトイレまで追いかけて詰め寄り、「いいかげんにしろ、出ていけ!」と怒鳴られて3日間口もきいてもらえませんでした。そんな失敗の連続でした。
毎晩声をかけても何もないよと、全然話してくれない捜査関係者がいました。ところがある晩、「ちょっと散歩に行くか」とポツリ。時効が迫る事件の容疑者が判明したという特ダネの端緒をくれました。寒空のもと、「俺は、どうしてもこの事件を解決したい」と、事件への思いを熱く語る横顔は今も忘れられません。「おまえはどう思う? 許せないと思わないか?」と。お互いに響きあった瞬間でした。あの時、この事件を人々に伝えてほしいと、僕に託してくれたのだと思います。あぁ、こういう風に取材先と信頼関係を結ぶのかと感じた2年目でした。

あきらめずに質問をぶつけろ!

どうしたら取材先に話してもらえるのかは、記者として、常に悩みます。取材先への質問のぶつけ方、付き合い方は、自分のスタイルを見つけなければなりません。取材先からなかなか情報が引き出せず、くじけそうな時に、当時の上司から、「おまえは、何百万人もの視聴者の代表として取材しているという覚悟を持て。おまえが聞かなくて、誰が聞くんだ。あきらめずに質問をぶつけろ。聞け! 聞かんか!」と発破をかけられたことを今も覚えています。これが、今も、取材者として、自分を支える言葉の1つとなっています。
記者と取材先が信頼関係を築くこと、そして、真実にたどりつくためにあきらめずに粘り続けること、記者の基本動作を叩きこまれた初任地時代でした。

ダイナミックな政治を最前列で目撃

現在、自民党担当、通称「平河クラブ」に所属し、自民党の派閥の竹下派と、抜群の発信力で注目される小泉進次郎氏など、およそ60人の政治家を担当しています。いわゆる、番記者です。この国の政策決定に大きな影響を与える政治家たちが何を考え、どのようにこの国の舵取りを行おうとしているのか、日々、取材しています。
ただ、多くの人間と付き合う政治家に、顔を覚えてもらい、話を聞き出すことができるようになるには努力が必要です。信頼関係を築くには、時間もかかります。朝から晩まで、時間が許す限り、担当する政治家に張り付く時もあります。政治部が扱うテーマは、外交、安全保障、経済政策、社会保障、税など、森羅万象、かつ、国民生活に密接に関わる分野も多く、いかに正確な情報を、速く、わかりやすく視聴者に届けられるか、考えています。
記者の仕事は本当に面白いです。NHKの名刺1枚で誰とでも会えて、話が聞ける。まだ誰も知らない話を一番に聞ける驚きと、それを多くの人に伝えて知ってもらえる喜び。ダイナミックな政治の流れを最前列で目撃できて、歴史が動く瞬間を中から見ている感覚があります。

私のリアルとは

「人から話を聞くこと」は取材の基本です。特に、政治取材は、政治家や官僚に、直接、話を聞かないと原稿が書けません。インターネットで検索すれば、簡単に情報が手に入る時代ですが、根拠なき観測記事やフェイクニュースがあふれています。担当している政治家は何を考え、本音はどこにあるのか。取材先と信頼関係を築き、直接話を聞く先に“リアル”があると考え、日々、取材にあたっています。