先輩たちの仕事

ありのままに伝えるだけではなく
「視点をもって」切り取る

映像取材とは
映像取材 報道局 映像取材部 小出 悠希乃 (2009年入局)

ママは時短勤務の報道カメラマン

昨年11月に育児休職から復職し、時短勤務をとりながら映像取材の仕事をしています。保育園のお迎えに間に合うように午前中は取材に行き、午後は局内でインタビューや接写映像を撮影するなどデスクが配慮して、仕事を割り振ってくれています。
NHKでは最近全国の女性カメラマンに小型の4Kカメラが配備されました。軽量で体に負担もかかりにくいので、妊娠中はこのカメラを活用してニュース映像を撮影していました。また、デジタル一眼レフで撮影したショート動画をNHKのFacebookやTwitterにアップしたり、ネットのサイト「NHK NEWS WEB」の記事を書いたりしました。最近はテレビだけでなく、ネット展開も当たり前になり、それぞれの働き方に合わせて、取材方法も配慮してもらっています。

ロシア語漬けの学生時代から転身

大学時代はロシア語を専攻して、留学、休学を含め9年間の学生生活を送りました。26歳になり、新卒で受けられる会社も限られているなか様々な就職説明会へ行きました。そんな時にNHKの説明会で出会ったのが報道カメラマンでした。
私が勝手にイメージしていた「人の涙を撮りにいく」カメラマン像とは真逆の優しい感じの人でした。新潟県中越地震で撮影した映像を見せてもらうと、倒壊した家の前で一人泣いているおばあさんを遠くから撮った映像でした。
「おばあさんと家との間に自分が割って入って、泣き顔を撮らなくても、震えるおばあさんの背中を見れば、思い出のつまった家に別れを告げる悲しみが伝わると思った」と、話してくれました。映像でそんな表現ができるのかと興味を持ちました。カメラの知識は必要なく、仕事をしながらおぼえられること。そして、映像取材の職員でも番組提案すればなんでもできるということも魅力に感じました。

伝えることで誰かの力になれる

初任地は神戸放送局です。一年目の夏、水害の現場へ一人で取材に行きました。インタビューを撮ることができず、カメラを置いてお話を聞くのが精一杯。帰ったら上司から「カメラを持って現場に行ったら、伝えるための仕事を全うしてこい」と叱られました。
犯罪や災害被害に遭われた方に寄り添った取材がしたいと思っていたのに、いざ現場に出たらインタビューもうまくいかず、最初は落ち込んでばかり。そんな時、ある事件で取材をしたご遺族に「今まで暗いトンネルの中を歩いてきたが取材を受けたことで光が見えてきた気がした」と言っていただきました。つらい記憶を話してもらって、取材後もこれで良かったのかなと悩んでいたので、伝えることで誰かの力になれることもあるのだと励まされました。

ロシア語×潜水撮影=NHKスペシャル

NHKの良いところは、やりたいことがあればチャンスを与えてくれるところです。私は入局2年目から潜水取材班に所属しました。ダイビングの訓練を受け、取材のフィールドを水中にも広げることができました。ロシア語と潜水撮影とを活かせないかなとずっと考えていて、ソチオリンピックの取材でロシアへ行ったときに、現地の人から幻の水中洞窟の話を聞き、自分でも調べました。翌年、“世界一美しい”と称される水中洞窟を世界で初めてテレビ撮影するという提案票を書きました。面白そうだねとなったものの、マイナス40度になる極寒の地で危険な洞窟を潜るという企画を実現させるためには安全面などいくつもハードルがありました。
電話やメールのやりとりだけで得られる情報は限られていたため現地に下見に行き、機材の選別、洞窟潜水のライセンス取得など具体的な計画を立てて1年かけてやっと提案が通りました。
NHKスペシャルの事務局も「誰も見たことがない幻の水中洞窟なんて見てみたいね、4Kで撮ったら良いな」とのってくれました。リスクをあげればキリがないのに、それでもチャンスをくれるNHKは懐が深いなと思いました。

NHKスペシャル「巨大水中洞窟を潜る~絶景オルダ“水の宇宙”」(2017年5月放送)

  • まるで宇宙遊泳をしているような水中洞窟の内部。

  • 水中ではカメラ機材とタンク2つ、約50キロを背負って撮影に挑んだ。

私のリアルとは

誰もがカメラを持っていて、現場にいさえすれば誰でもカメラマンになれる時代。だからこそ、そこには現場で感じた違和感やニュースの核心を切り取る「視点」が必要です。ありのままに伝えるだけでなく、視点を持って切り取るのが私のリアル。