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佐賀 高さ13メートル! 中国人画家 感謝の壁画制作中

ニュースただいま佐賀
  • 2023年08月30日

高さ13.5メートルの巨大壁画

足場を組んで描かれる水墨画風の巨大な壁画

そびえ立つ山や生い茂る木々、水しぶきを上げて流れ落ちる滝などが描かれた水墨画風の壁画。
幅は5.4メートル、高さは13.3メートルに及び、足場を組んで描かれます。

天に駆け登る龍などが描かれている

躍動感のある龍は、今にも天に駆け登りそうです。

描いているのは、佐賀市在住の中国人画家、尹雨生(イン・ウセイ)さん(60)。今年4月から描き始めました。

(尹さん)
「描くときは全身全霊で描く。暑くてもいいよ。」
(下書きとかはしないんですか?)
「下書きがある。でも私は毎日頭の中に入れてるから。」

尹さんは壁に下描きはしません。
頭の中で絵を想像しながら、アクリル絵の具で直接壁に筆を走らせます。

病院の廊下から壁画が見える

この巨大な壁画、実は病院の壁に描かれているんです。

35歳で中国から佐賀へ  ”もう一度美術の道を”

もともと、中国の大学で美術を学んでいたという尹さん。
卒業後は10年間、水産貿易会社に務めました。

大学時代の尹さん

35歳のとき、もう一度美術を学びたいと会社を辞め、佐賀大学へ留学。
その後も佐賀に残り、現在は水墨画の講師を務めています。

尹雨生さんのアトリエ

しびれる左手 脳梗塞を乗り越えて

しかし、尹さんは、去年アトリエでの作業中に脳梗塞になり、倒れてしまったのです。
最初に尹さんを発見したのは妻の周嵐(シュウラン)さんです。涙ながらに、当時の心情を打ち明けてくれました。

当時の状況を語る 尹さんの妻 周嵐さん

(妻 周嵐さん)
「この人が、って。頭とか手が動かなかったら今まで蓄積してきたものが…(なくなる)。とにかく、絵を描いてほしい」

迅速な対応によりなんとか一命を取り留めたものの、尹さんの左手と唇にはしばらくの間しびれが残りました。尹さんの絵に対する情熱を誰よりも知る周嵐さんにとっても、後遺症は辛いものでした。

リハビリ中に描いた絵を見せる尹さん

(尹さん)
「ちょっとふらふらな感じ、見えます?」

そう言って見せてくれたのは、リハビリ中に描いた掛け軸です。
一見とても繊細な絵に見えますが、尹さんによると線の太さが揃わず満足のいく出来ではないといいます。それでも、震える手で筆を握り、周囲の励ましを支えに描き続けました。

アトリエで絵を描く尹さん

(尹さん)
「私は絵が描けないと生きている意味がない。意味というか、意義がなくなる」

もう一度絵を描きたいという一心でリハビリに励んできた尹さん。
その後症状が回復する中で、支えてくれた病院や家族に感謝の気持ちを絵で表現したいと思うようになったといいます。

周囲への感謝の思いを語る尹さん

(尹さん)
「困難の時、みんな助けてくれたでしょ。みんなのおかげで私は生きている。チャレンジすると、自分がまだ生きている、まだ生きる意味があると証明する気持ちかな」

感謝の絵は”病院の壁”に

尹さんの主治医が勤める 佐賀市の病院 

尹さんの主治医である横須賀公彦さんは、絵をプレゼントしたいという申し出を二つ返事で快諾。絵を描くための足場を用意するなどサポートをしながら、尹さんの様子を見守っています。患者になる前から、佐賀で活躍する尹さんの作品を知っていたそうです。

(横須賀病院 横須賀公彦院長)
「尹さんの絵がすばらしいものだということはずっと分かっていましたので。これも何かのご縁と。たくさんの方に見ていただいて、元気をもらえればいいかなと」

制作の間には、こんなやりとりも。

尹さんの制作を見守る横須賀院長

(横須賀院長)「脱水ならんようにね」
(尹さん)「先生いるから大丈夫!命守るから。私の命は先生が守るから」

医師や患者さんたちに見守られながら絵を描く尹さん。奥行きや立体感を表現するため何度も色を重ね、納得のいくまで筆を動かします。時折、こんな言葉をつぶやいていました。

暑さの中、懸命に筆を走らせる尹さん

絵が描ける喜びをかみしめながら、感謝の絵を描き続けます。

絵を描く喜びを語る尹さん

(尹雨生さん)
「何より楽しい、うれしい。命かけて頑張ります」

取材後記

尹さん夫婦とは、この取材が4年ぶりの再会でした。佐賀局のキャスターになったばかりの頃、お寺の壁に絵を描いている様子を取材させていただいたのです。「ここはこう!この木はもっとこう!!」など常にイメージをつぶやきながら絵を描く姿が本当に楽しげだったことを覚えています。
病気で大変な思いをされた今も、その姿は変わらず。尹さんにとって、絵を描くことは何にも代えがたいものなのだと改めて感じました。
この絵は横須賀病院の中庭に描かれています。ガラス張りの廊下からは制作風景がよく見え、時折患者さんや医師たちがその様子を見守っていました。患者さんにとっては制作過程も含めて、日々の癒やしの場になっているようです。
「自分を救ってくれた病院の医師たち、家族、そして佐賀での暮らしを支えてくれたすべての人への感謝を示す。」そう語る尹さんの壁画は、ことし10月頃の完成を目指しています。
どんな絵になるのか、楽しみですね!

(時松仁美キャスター)
 

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