まだ何者にもなれていない不安 くるり「グッドモーニング」

ざっくり言うと
居場所がなくて「自分自身は誰なのか?」と手探りで進む不安感
「これからどうする?」という正念場のときに、又吉さんの背中を押した
2019/07/21 うたことば くるり①「マタヨシズム!」

音楽

2019/07/21

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2019年7月21日(日)放送より

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2019年7月21日(日)放送より

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「うたことば」では2週にわたってくるりを特集。1週目にはくるりを愛してやまないゲストのピース・又吉直樹さんが、特別コーナー「マタヨシズム!」で「グッドモーニング」の歌詞を解説してくださいました。“くるり愛”が高じて感情が思わずはみ出してしまう瞬間も!

【出演者】
向井さん:向井慧さん(お笑いトリオ「パンサー」)
高橋さん:高橋久美子さん(作家・作詞家)
又吉さん:又吉直樹さん(お笑いコンビ「ピース」)


向井さん: 本日1発目のコーナー。いつも、向井なりのイズム・主観でお話しする「ムカイズム!」というコーナーをやっておりますが、きょうは又吉さんにやっていただきたいと思います。
高橋さん: いえーい。
向井さん: 題して…。
又吉さん: 「マタヨシズム!」
向井さん: (笑)。だいぶ無理が…。
高橋さん: これは、語呂はどうなの?
向井さん: 「イズム」がもう残ってない。「ムカイ」だから「イズム」が残ってたのに、「シズム」になっちゃってる。
又吉さん: マタヨシズム…。
向井さん: 「やらない」という方向でもいいですか?(笑)
又吉さん: いやいや、やらしてくださいよ(笑)。
高橋さん: やりましょうよ。
向井さん: やりますか(笑)。
又吉さんが又吉さんの主観で1曲について語っていただくんですけど、選曲がなかなか…。
又吉さん: むちゃくちゃ悩みました。

向井さん: ですよね。1曲っていわれてもね。
又吉さん: どうしようかと思って、ザッと出したら49曲ぐらいありました。
向井さん: (笑)。すごい選択肢の中から絞りに絞って…。
又吉さん: 絞りました。
向井さん: 曲は何でしょうか。
又吉さん: 私が選んだのはこの曲です。「グッドモーニング」という曲なんですね。
高橋さん: いいねえ。
向井さん: 2004年のアルバム『アンテナ』のオープニング・ナンバー。
又吉さん: この曲「グッドモーニング」は、夜行バスで新宿へ向かっていく男女の歌詞なんですよ。早めに新宿に着いて、まだ何も始まっていない街の中でさまよう。そこの空気感がむちゃくちゃリアルに伝わってくるような歌詞。僕自身も大阪出身で、岸田(繁)さんは京都ご出身っていうことがあって。
僕が最初に好きになったくるりの曲が「東京」っていう曲。くるりの「東京」の歌いだしを聴いたときに、びびったんですよ。
東京の街に出て来ました
 あい変わらずわけの解らない事言ってます

ここに自分を重ねてしまったんですよ。
向井さん: ほう。
又吉さん: この感覚が好きで。
自分の知らない土地に行って、そこで自分が何者でもないときに、それでも…この『わけの解らない事』とかが何を指してるかわからないですけど、僕は「自分なりの表現」みたいなこととして捉えて、「簡単に受け入れられたりせえへんこともあるけど、それでもわけの解からんことを言うんや」っていう感覚がすごく好きで。
1回くるりから話はそれるんですけど、山崎方代(やまざき ほうだい)という歌人がいるんですよ。
向井さん: はい。
又吉さん: 一時期はまってその人の歌集をずっと読んでたら、最初の歌集に「東洋の暗い夜明けの市(いち)に来て阿呆陀羅経(あほだらきょう)をとなえて歩く」っていうのがあったんですよ。「阿呆陀羅経」っていうのは、江戸時代とかにおった芸人っぽいのがおもしろおかしいことを言ってる、みたいな。
高橋さん: へえ。阿呆陀羅経っていうんや。
又吉さん: 「なんでこの1首に惹かれたんかな?」と思ったら、くるりの「東京」。「東洋の暗い夜明けの市に来て阿呆駝羅経をとなえて歩く」と、『東京の街に出て来ました あい変わらずわけの解らない事言ってます』。
向井さん: すごく似てるというか…。
高橋さん: リンクするよね。
又吉さん: とにかく、そういう感覚が僕はすごく好きで。
くるりの「東京」が入ってたんが『さよならストレンジャー』っていうアルバム。僕、死ぬほど聴いたアルバムなんです。「ストレンジャー」っていうのは、不慣れな人とか他人…要は、「自分自身は誰なんやろう?」みたいな感覚。そこから好きになって。
そのあと、いろいろ音楽的に変化していって…「グッドモーニング」っていう曲が入ってる『アンテナ』っていうアルバムは2004年。くるりもバンド自体が、メンバーも変わったりして大きく変化して、くるりのファンからすると、「ここからどうなっていくんやろう?」…音楽ファンの間で「とんでもないバンドだ」って言われて、ファンもどんどん拡大していって…。
「ここからどうなんねやろう?」ってなったときに、『アンテナ』の頭で「もっかい“上京”すんねや」って。ほんでしかも(曲名が)「グッドモーニング」。朝で、「ここから夜が明けるんや」っていう。
そこで、“上京”してきた若い繊細な男女が、ここからどうなっていくかわからへんくて、居場所がなくてさまよう。
たとえば、歌詞の中の『早朝 喫茶は夜の香り 男女は音楽の話 女の方が趣味がいいね』。隣から聞こえてくる会話を関係ないけど聞いて、「女の子の方がすごく音楽的な趣味がいい」みたいに思ってる。こんなことってあるやんか。
高橋さん: ある。
又吉さん: そういうリアルな実感を入れ込んでいて。
だんだん街が動き始めるんですよ。行き場がなくて、たぶんファストフードとか喫茶店にいるしかなかったけど、だんだん街が動き始めていって、『行き交う電車の渋滞』とか、その前の『街を見下ろすコートの群れは色とりどり』とか。
最後の方に『夢は歩むここから始まる』っていう。不安でどうなっていくかわからんけど、手探りでここから始まっていく。
「グッドモーニング」の曲の最後が『歩いてゆく 歩いてゆく』。「くるりっていうバンドはどうなるんやろう?」っていう時期の中で、もっかい“上京”してもっかいその不安をちゃんと認識して、なおかつリアリティーも入れて「歩いていくんや」っていう覚悟を冒頭で示す。「グッドモーニング」って付いてるのがたまらんなと思って。
高橋さん: 確かに。
又吉さん: 僕は2003年に前のコンビ「線香花火」を解散したんですよ。同じ年に「ピース」を結成して、むちゃくちゃ不安やった時期。「こっからどうなんねやろう?」と思ったときに、この『アンテナ』というアルバムの中の「HOW TO GO」っていう曲が発表された。
「HOW TO GO」は、「ピースになって、大丈夫か?」みたいな、「ここからどうすんねん?」っていうときの…くるりファンもそうやってくるりを見てたときに、『昨日の今日からは一味二味違うんだぜ』っていう歌詞は、そう言ってくれることの頼もしさみたいな。
向井さん: うーん。
又吉さん: でもどっかに、そこはかとなく不安も…決意もあって「行けるぞ」っていうのも感じるけど、同時に不安も…こっちの思いすごしかもしれへんけど、感じさせるようなものもある。
でも、最後の方に『いつかは想像を超える日が待っているのだろう』って歌ってくれる。
向井さん: 又吉さんの心情にぴったりだったんですね。
高橋さん: 寄り添ってくれてたんですね。
又吉さん: いつかは想像を超える日が待っているのだろう
 毎日は過ぎてく でも僕は君の味方だよ
 今でも小さな言葉や吐息が聴こえるよ

っていうので、どんだけ勇気をもらえたか。
向井さん: 不安感と前向き感がちょうどいいあんばいなんですね。
又吉さん: 「全然大丈夫完璧です」って言ってくれる人もカッコいいし、でも同じように不安も認めたうえで光を示してくれる、っていうのは僕の好きな表現やなと思う。もちろん音楽的にすばらしいから好きになったんですけど、やっぱり言葉もすごい。
向井さん: 不安なんて、上京することの1発だけじゃないですよね。どんなタイミングでも、何かしら大きな不安は出てくる。
高橋さん: ずっと付きまとうもんな。上京せんかったとしてもそうやと思うしな。
又吉さん: 上京してなくても、きっと同じような感覚ってあるんやろうし。
高橋さん: みんなにあるんじゃないかな。生きているかぎり、不安と希望と両方あるよね。
向井さん: …3曲かけます? 「3曲かけたい!」ぐらいの感じですけど(笑)。
高橋さん: 3曲かけようか。全部かけたい。
向井さん: でもまあ、ここはとりあえず1曲。又吉さん、曲紹介をお願いしてもよろしいですか。
又吉さん: 曲紹介を向井くんが僕に今頼んでる…?
向井さん: 台本を見失うの、やめてもらっていいですか?(笑)
又吉さん: そういう状況ですね。わかりました。では、くるりで「グッドモーニング」。

「うたことば くるり②」につづく

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