この“辺境メシ”がヤバい! 『辺境メシ』作家・高野秀行②

ざっくり言うと
2019/02/15 すっぴん! 「すっぴん!インタビュー」ノンフィクション作家 高野秀行さん
タイ東北部で本を参考にしてつくられたワインと、「卵」の缶詰
イメージはロマンティックな美少女、現実はフードバトルのおばさま? 南米ペルーの幻の酒

文学

2019/02/15

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【出演者】
源一郎さん:高橋源一郎さん(金曜パーソナリティ)
藤井アナ:藤井彩子アナウンサー(アンカー)
高野さん:高野秀行さん(ノンフィクション作家)


2月15日の「すっぴんインタビュー」のゲスト・高野秀行さんの最新作『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』から、世界の「辺境メシ」を一部ご紹介。実際に現地で口にした高野さんだからこそなしえる、臨場感たっぷりの表現をどうぞ。


タイのワインにぴったり! とろける「卵」のおつまみ

藤井アナ: いろんな所へ行っていろんなご経験をされている高野さんなんですが、それを食に特化してまとめられたのが、『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』、これが最新の著作です。
「ヤバそうだから食べてみた」っていう日本語がおかしいのではないか。「ヤバそうだと思ったらやめましょう」が通常だと思うんですが。
源一郎さん: これはどういう経緯で? 連載ですよね?
高野さん: そうです。『週刊文春』の連載です。
源一郎さん: 実際にあちこち自分で行かれたのもあるし、日本でもある。
藤井アナ: 「はじめに」のところに書かれてるんですが、もともとあまり胃腸が強くなくて、おなかもこわしやすい。でも1回リミットが外れたことで、どんどん新しい世界にチャレンジしていくようになった。
これは食に限らないですね。高野さんの生き方そのものなのかな、と思いました。
高野さん: 言われてみると、そうかもしれないですね。
藤井アナ: 今回、スタッフと高野さんと相談して、番組向けにご紹介するためのメニューを作ってもらいました。ご紹介します。お品書きです。

<高野さんが食べた辺境メシ>
・タイ東北の「田んぼフーズ」
・ネパールの超絶居酒屋で出会った「ソブ・ミツァ」
・トルコの美形民族・チェルケス人に伝わる「カイセリマントゥ」
・お酒がお好きなお2人に「タイ産ワインのおつまみはあの卵」
・これぞ究極? ペルー・アマゾンの先住民がつくる「マサト」

藤井アナ: どれから行きましょう?
源一郎さん: 酒系ですかね。おつまみにしましょうか。
藤井アナ: 「タイ産ワインのおつまみはあの卵」。
源一郎さん: ていうか、タイにワインがあるのがそもそも驚きですね。
藤井アナ: あるよ。飲む飲む。
高野さん: 昔はなかったんですよね。僕が行ったのはもう20年以上前なんですけども。
日本でも「一村一品運動」が昔ありましたよね。それに触発されて始めたっていうんです。ワインをつくるためのブドウはないわけですけれども、タイの東北部の果実を使ってワインをつくる。それもすごいんですよ。食品研究所みたいな所がつくってるんですけども、ヨーロッパで出されている「ワインのつくり方」みたいな本を見ながらつくったという。
源一郎さん: すごいよね。技術指導とかしたわけじゃなく、本を見ながら。
高野さん: それに合うおつまみもつくろうっていうんで、さまざまな虫を…あそこ、虫をよく食べるんです。いろんな虫を集めて、しかも缶詰にしてる。
藤井アナ: 昆虫食がもともと盛んな土地なんですけど、これはワインのために新しくつくったおつまみなんですね。
高野さん: いや、食べる中身はもともとあったものですよ。
藤井アナ: 缶詰を新しくつくった?
高野さん: そうですね。
源一郎さん: しかも、これが意外と合ってた?
高野さん: 意外と合ってますね。これはアリの卵なんですけど、結構大きなアリの白い卵でフカフカしています。
藤井アナ: サイズはどれぐらいですか?
高野さん: 長さは1センチ近くあったんじゃないですかね。
藤井アナ: お味は?
高野さん: お味は、うっすらと塩とナンプラーで味付けされて、上品なお味。
藤井アナ: 例えるとしたらどんな感じですか? 卵ですから、虫だから、蜂の子と似ています?
高野さん: そういうんじゃなくて、口の中でとろけるような、お菓子のような。
藤井アナ: プリンとか? 生クリーム?
高野さん: うーん…。
藤井アナ: 白子?
高野さん: あ、そうそう。そんな感じ。
源一郎さん: ちょっと甘い白子。ワインの味はどうだったんですか?
高野さん: ワインは単独で飲むと、ちょっと酸っぱいんですよ。もうちょっと熟成すれば、コクが出るんじゃないかと思うんですけど。
源一郎さん: それって20年前?
高野さん: そうですね。
源一郎さん: 今は、もしかしておいしくなっているかも。
藤井アナ: 今のワイン、結構おいしいと思います。そうか。「白子っぽい」ってことは白ワインですね。

君の名は、「マサト」。 ~アマゾンの口噛み酒~

藤井アナ: もう1つの「お酒好きなお2人に」と書かれたところに書いてある「これぞ究極? ペルー・アマゾンの先住民がつくるマサト」。
高野さん: これは口噛み酒ですね。
源一郎さん: 『君の名は。』以来、日本でもポピュラーになりましたよね。口噛み酒っていうと、ああいうかわいい女の子が噛んで吐き出すっていうイメージですけど。
高野さん: そういうロマンティックなイメージだったんですけど…。
源一郎さん: ちょっと違う?
高野さん: ええ。昔、世界中に口噛み酒があったらしいんですけれど、今となっては確認できるのは、僕の知る限り、アマゾンでしかないみたいなんですね。
ペルーのアマゾンに行って、つくれる人を探して、つくってもらったんです。昔は本当に処女しかつくれなかったらしいんですが、今はそんなことはない。年配の女性につくっていただいたんですけれども、それがすごくてですね。
ここは主食が「キャッサバ」という芋なんです。芋をまずふかしてマッシュポテトにするんですね。そこから始まるんですけども。大鍋いっぱいのマッシュポテトをその女性が口に入れて、片っ端から噛んでは出し、噛んでは出し。何かに似てると思ったら、大食い競争に似てるんですね。
藤井アナ: とにかく口に持っていっては出し、持っていっては出し。
高野さん: 食べてるように見えるんですよ。でも出してるんですよね。
藤井アナ: 片手ですか? 両手?
高野さん: 両手でガーッと食べて、出して。
源一郎さん: 見た感じは美しくはないですね。
高野さん: 美しくないんですけれども、あまりにも肉食系なんで、ちょっとドキドキしますよね。それはそれで、官能的な感じもなくはなかった。
源一郎さん: すごい量のだ液が必要なんじゃないですか?
高野さん: だ液がすごい必要なんですよ。ちょっと噛んだぐらいでは、とても発酵にまでは至らない。
藤井アナ: だ液の中の酵素で発酵するわけですよね?
高野さん: 酵素で糖に変えるんですよね。デンプンは発酵しないので糖に変えて、それを酵母が発酵させる。だから糖に変えるためには、ものすごくだ液が必要。
藤井アナ: 口の中がパサパサになりそうですね。
源一郎さん: ていうか、そのおばさまの大量のだ液ですよね。
高野さん: 3割ぐらいはそうです。

田んぼから好きなだけ取れる謎の生きもの

藤井アナ: タイ東北の「田んぼフーズ」は何ですか?
高野さん: 「オタマジャクシを食べられる」って聞いたんで、珍しいと思って行ったんです。カエルはよく食べますけど、オタマジャクシは聞いたことがなかったんで。
村に行ってみたら、村のおばさんがザブザブと田んぼの中に入って、いきなりザルで適当にすくい出したんです。その中にオタマジャクシもあれば、エビやカニみたいなものもいるし、得体の知れない、見たこともないような虫も入っていて。
なぜかタニシとかエビ・カニの類は全部捨てちゃって、それ以外のもの、得体の知れないものを中心に水煮にして食べた。
藤井アナ: エビとカニは食べない?
高野さん: 飽きてるみたい。
藤井アナ: オタマジャクシは珍味なんですか?
高野さん: オタマジャクシは珍味といえば珍味なんですけど、他のものも珍味といえば珍味でしたね。イモムシとムカデの中間みたいな、なかなかグロい見かけのものを…。
源一郎さん: おいしかったですか?
高野さん: 見かけどおりの味でしたね。
藤井アナ: オタマジャクシは?
高野さん: オタマジャクシはチュルチュルとしておいしかったです。のどごしがいい。
藤井アナ: 噛まないんですか?
高野さん: 噛まないですね。噛んでもチュルンと逃げちゃう感じですね。
藤井アナ: じゃあ、のどごしを楽しむ。
高野さん: そうですね。
源一郎さん: 盛り上がってますね…。

ネパールの水牛専門店の濃厚な逸品

藤井アナ: (笑)。じゃあ、次いきましょう。ネパールの超絶居酒屋で出会った「ソブ・ミツァ」。
高野さん: これは水牛専門店の居酒屋で、しかも水牛の変な部位ばかり集めている所なんですけども。この「ソブ・ミツァ」というのは、すごくてですね…。
髄(ずい)を集めて、それを水牛の胃袋につつんで小さめのおいなりさんみたいな感じにして、熱した油にザッと数秒つけて揚げる。外側がカリカリでアツアツになって、中がドロドロになるんです。
藤井アナ: 髄液だから、コラーゲンっぽい感じに溶けるわけですね。
高野さん: それをそのままパクッと一口で食べるんです。
藤井アナ: 大きさは、小さめのおいなりさんぐらい?
高野さん: そうですね。ナツメの大きい感じ。
源一郎さん: また聞くんですけど、おいしいですか?
高野さん: おいしいのはおいしいんですけども、ものすごく濃い。「こんな濃いもの食べて大丈夫なのか?」っていう。エネルギーの塊を食べてるみたい。体が熱くなってくる。
藤井アナ: 腹持ちもいいんですか?
高野さん: 腹持ちがいいかどうかはわからないですけど、カーッと熱くなってきて、大変なことになりそうな気がするんですね。
藤井アナ: きっと栄養あるんでしょうね。
源一郎さん: 髄だからね。

変な方向性に突っ走る! トルコのギョーザ

藤井アナ: 最後、トルコの美形民族チェルケス人に伝わる「カイセリマントゥ」。
源一郎さん: 「美形民族」?
高野さん: ロシア系の民族で、モデルなんかがすごく多いっていうので知られる人たちです。その人たちが特につくってるものらしいんですけど、トルコでは一般的によく食べてるものなんですよ。ギョーザみたいなものですね。それがとにかくちっちゃいんですよ。
源一郎さん: これは読んでて、「本当かいな?」って思いましたね。極端に言うと、ピンセット級ですよね?
高野さん: スプーンに何個乗るか、たくさん乗れば乗るほどいい、みたいな。
源一郎さん: 何でわざわざ小さくしてるんですか?
高野さん: 変な食べ物を追ってると、そういう疑問に時々出会うんです。
何でこんなもの食べてるのか? 「文化だから」って理由がつくものと、「なんかバカなんじゃないか?」っていう理由がつくものがある。これは、「この人たちがバカだ」っていう意味じゃなくて、やり始めると人間はどんどん追求したくなるじゃないですか。辛ければ辛いほどいい、多ければ多いほどいい、とか。
藤井アナ: 「リミッターが外れる」感じが、うれしいんですよね。
高野さん: 「そこになぜか価値観を求めてしまう」という。
藤井アナ: 本にもお書きですけど、手間暇かけてるっていう1つ文化としてあると思うんですけど、「度が過ぎている」という感じなんですよね。
高野さん: そうそう。止まらなくなってると思うんですね。
源一郎さん: 文化って、行き過ぎてるから文化かもしれないね。
高野さん: そういう考え方もありますよね。
藤井アナ: お味はいかがですか?
高野さん: おいしいです。これは日本人が食べてもおいしいです。ギョーザだし、中の具の汁とだしがスープに溶け込んでて、スープもおいしいですし。病人にもいいですし、お年寄りとか子どもにも食べやすい。ぜひ日本でも普及してほしいですね。
藤井アナ: 食べてみたいですね。

「すっぴんインタビュー」ノンフィクション作家 高野秀行さん③につづく

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