流産を繰り返さない。着床前診断という選択 (後編)

ざっくり言うと
命の選別になるとして着床前診断を倫理的な問題だと考える人もいる
子どもを望む人にとっていかに有効な選択肢であるかを広く伝えたい
2020/01/13 ラジオ深夜便 「流産をくり返さないために」阿形路子さん(着床前診断を推進する患者の会幹事)

情報

くらし・健康

2020/01/13

記事を読む

着床前診断を経て昨年出産した阿形路子(あがた みちこ)さん。後半では、同じような思いに苦しむ人たちの力になりたいと、自身の体験をリアルタイムで記してきたブログや、「着床前診断を推進する患者の会」の幹事としての活動について伺います。


――阿形さんは、ブログを書いてらっしゃいます。着床前診断をしているクリニックに通い始めたころから出産するまで、つづっていらっしゃったわけですね。つまり同時進行というか、そのような形で書き続けていたんですね。

阿形さん: 「44歳からの着床前診断」というタイトルでブログを書いていました。おっしゃるように治療を開始して2か月ぐらいたったときから、これから妊娠できるかどうか、出産できるかどうか、これっぽっちも分からないときでしたけれども、とにかく今の状態をリアルに残そうと思いまして、書き始めました。

――不安もあるなかでブログを書こうと思われたのは、どうしてなんですか。

阿形さん: 着床前診断を知るきっかけになったのが、いろんな方が書いたブログだったんです。それを読ませていただいて、実際に通う日数はこうなんだ、薬はこうなんだ、注射はこうなんだ、時間はこのぐらいかかるんだ、というリアルな情報がブログに載ってたんですね。私にはそれがとても参考になりました。ですので私も、これから着床前診断を受けたいと感じていらっしゃる方に1つでもリアルな状況を残したいと思って、自分の体験をそのまま書きました。

――ブログを見た皆さんの反響はどのようなものでしたか。

阿形さん: 同じように着床前診断を行っている、でもどなたか存じ上げないという方がいろいろ応援してくださいまして、正常卵が見つかったときには一緒に喜んでくださったり、妊娠したと分かったら本当に自分のことのように喜んでくださったり、心強い仲間ができたなと思って、ブログをやってよかったなと思いました。

――阿形さんのブログに勇気づけられた方も多いんじゃないですか。

阿形さん: 「希望の星」という言葉で表現してくださった方もいます。移植したのが45歳、出産が46歳でしたので、「私でもできるんじゃないか」ということで例えてくださったんだと思います。

――つわりが落ち着いたころに、「着床前診断を推進する患者の会」の幹事になられるわけですが、幹事にまでなろうと思ったのはどうしてなんですか。

阿形さん: もともと着床前診断を推進したい思いがありまして、全国に着床前診断を受ける環境というのが、望む人が受けられる施設があったらいいなと思っていたんです。

――幹事というのは、どのような活動を具体的にするんですか。

阿形さん: 会の方針を決めたり、学会がありましたら先生方に、「友好的に着床前診断を患者の会として協力させてください。そういうことができます」というような声を上げるためにビラを配ったり、お茶会といいまして、おしゃべりの会ですね。着床前診断ってどんなものかとか、リアルな声を聞きたいとか相談したいという方が集まって情報交換をするような会を企画したり、いろんなことをして過ごしてきました。
今現在治療中という方も、幹事として活動しています。よく、「出産した方だけが幹事なんじゃないですか」って質問いただくんですけども、そうではなくて、治療中の方、もともと治療中から幹事をしていて、のちのち出産できた方ももちろんいらっしゃいます。本当に着床前診断を、全国で望む人が受けられるように推進したいという者が活動しています。

――自分自身が授かっていないのに、それでも活動をするというのは、なかなかできないなと思うんですが。

阿形さん: そうですね。6回ほど流産してしまってまだ子どもを持てていないという幹事もいます。それでも、自分のできることを世の中に伝えていきたいというか、着床前診断を推進できたらいいなという思いで、幹事をしていらっしゃいます。

――あの流産の苦しみをもう他の人に味わってほしくないなっていう思い、ありますか。

阿形さん: あります。もう二度と同じような思いをして苦しむ人が本当に出てほしくないなと思っています。あれは本当に精神的にも肉体的にも崩壊するという言葉が近いと思います。

――着床前診断を推進する患者の会は、「流産しない、繰り返さない権利」を掲げて発足したということですね。

阿形さん: そうですね。

――これはどのような権利と言ったらいいんでしょうか。

阿形さん: 本来は当たり前に認められる基本的人権だと思うんですね。私も実際に流産するまで、これほどつらいものだと思っていなかったのが正直なところです。ここまで母体にも精神的にも負担が積み重なっていくとは思ってもいませんでした。それに流産というのは、単に手術して終わりではなくて、うまくいかないときは母体の生命の危険をはらんでいるんです。未然に防げる着床前診断という検査があるのであれば、希望者には実施していただきたいなと思います。

――日本産科婦人科学会では、今のところ着床前診断は原則としては認めていないということで、これに対して阿形さんご自身はどのような考えを持ってらっしゃいますか。

阿形さん: 私個人としては、一刻も早く認可をしていただきたいと思っております。私たち、年齢が少しずつ上がっていくので、1周期1周期が、もう最後、最後と思って治療している方も、日本全国たくさんいらっしゃいます。もう時間がない、リミットが迫っている方、それは30代の方でもたくさんいらっしゃいます。

――日本産科婦人科学会は、命の選別になるということで、倫理的な問題だと言う人もいますよね。

阿形さん: そうですね。ブログを書いていて知り合った方にお話をうかがったときに、「ダウン症の卵でも見つかったら生まれてくる可能性があるので、破棄せずに取っておいてほしい」というふうに話されている方も実際にいらっしゃいました。生まれてくる卵をとにかく見つけたい。生まれてくる可能性がある卵をとにかく見つけたい、という思いで着床前診断をされてる方もいらっしゃることを、是非知っていただきたいなと思います。

――そういった切実な声も多いんですね。

阿形さん: とにかく我が子を抱きたいというのは、治療している皆さんの思いだと思います。自分の人生において子どもを持ちたい、その1つの選択肢として着床前診断が有効なのではないか。だからこそ受けたいと思われた方が、全国どこでもどこの病院でも受けていただけるような世界になったら、1人でも多くの方が、この少子化の中、わが子を抱くことができるのではないかなと思っています。

――そのような中、日本産科婦人科学会は、臨床研究の規模を拡大して、着床前診断の有効性を確認することにしているんですよね。

阿形さん: そうです。一刻も早く、切実に待っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいますので、そういった意味では、臨床研究そして認可のスピードをもっと上げていただきたいなというのが正直な思いです。

<流産を繰り返さない。着床前診断という選択 (前編)>

Related Articles関連

Latest新着

トップページへ戻る