90歳・現役映画監督 羽仁進④ 人生は100年では終わらず

ざっくり言うと
2019/02/21 ラジオ深夜便 わたし終(じま)いの極意 「死してなお生きる」映画監督・羽仁進さん④
歴史上の人物も自分の心の中で「よみがえらせる」
自分以外のもの、未知のものへまなざしを

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2019/02/21

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羽仁進さんがアフリカで目撃した、数々の動物の死の瞬間。肉食獣が草食動物を食べれば、「死」は血となり肉となり、新しくさまざまな生きものの「生」となり、その循環が続いていく。その考え方を人生に応用した、羽仁さんの「終い方」とは。


他者と「死」を共有し、新たな「生」を呼びだす

――死を大事にしていることでいうと、羽仁さんがお書きになった本の中に、「アフリカの人たちは自分たちが取ってきて食べた動物を、その他の動物に与えるために外に置いておく」というシーンがあります。

羽仁さん: 人間でも実はそういうことを考えた人たちがいた。それは非常に古い時代。今でもほんの一部の人たちがイランの端っこにいるんですね。僕も訪問したこともあるんです。
そこは人間が、肉なんかを食べた場合でも、残りをみんなほかの動物たちにあげるわけです。もっと小さくなっていくと鳥にあげる。鳥用の台を作って、小さなものをあげてるんです。そんなことを人間も考えた時代はあるわけです。
なかなか実現できないでしょうけど、我々も自分の生だけを考えないで、他者の生も考えてみたらどうか。そうすれば、生と死は永遠に循環して、死はまた新たな生を呼びだす。また死んでいくけど、またそれが新しい生を呼びだす。理想論みたいになっちゃうけど。

――生きものの世界ではうまく回っています。人の場合でも、誰かが亡くなってもその人が作ったものは形として残る。その人が考えていた思いが、いろんな形で伝わる。そういう意味での循環もある気がします。

歴史に流れる「生」の流れ

羽仁さん: 僕は歴史家じゃないんですけど、昔、『羽仁進の世界歴史物語』と『羽仁進の日本歴史物語』をある雑誌に連載したんです。それを読んでくださった歴史の先生方から、その雑誌に手紙が来た。「これは本当に生きてる歴史だ。過去が古びたものじゃなくて、生がいつまでもつながっていく歴史だ」って、お手紙をいただいたんですけどね。
それぞれの特色を発揮した昔の人は、今でも生きてるような感動を与えます。そこから我々の学ぶものがある。
よく言うんですけど、アレクサンダー大王は非常に優れた方で、「人間にはそれぞれの文化がある」ということを、あれほど理解できた人はほとんどいないと思うんです。
アレクサンダー大王は当時のペルシャ軍を打ち破って、ペルシャの支配してた国々を自分の指揮下にしていくんですけど、「支配した人間は、自分より下の人間だ」という感覚じゃないんです。
エジプトまで支配してた時代があるんです。エジプトに行くときアレクサンダーは、エジプトの服装やなんか全部研究して全部エジプト風の服装をして行った。そしてエジプトの神殿に参って。どういうものなのか全部聞いて。エジプトの人たちの心を大事にした。それは支配したということじゃないんです。
そういうことを考えると、歴史は古いことだから興味があるんじゃなくて、そういう生きた流れがあるからおもしろい。

人生は寿命で終わらず、循環して次の「生」へ

――先ほどの動物の生の循環と同じで、脈々と「死してなお生きている」っていう時間の重ねだと思います。
今、「人生100年時代」ってよくいわれます。羽仁さんはどんなふうに捉えてらっしゃるんでしょうか。

羽仁さん: 僕は、人生は100年で終わるわけじゃないと思うんです。アレクサンダー大王は大変古い人ですけど、その人の心を僕たちはよみがえらすことができる。これは人間のいい面を持ってて、その人のアイデアをよみがえらせることができる。動物の場合にも、いろんな形でそういうやり方をしてる動物はいるわけです。
100年時代なんて小さいことは言わない。人間の歴史なんてまだ短いものです。ゴキブリは知ってます?

――はい。あまり得意ではありませんが。

羽仁さん: あれは3億年以上生きてるんです。その間に生活全部を変えてるんですよ。新しいものを発見してるわけです。そういうものが、本当に生きるってことじゃないか。
生きることは、ほかの生きてるものに興味を持って、尊敬を持って見ること。だから、自分が100年とかはあまり…。

他者を自分の「生」の中によみがえらせる

――羽仁さんのキーワードはおもしろいですね。

羽仁さん: 昔からの人間を見てても、おもしろい人は何人もいるわけです。そういう人たちを自分で見つけることは、さらにそれを生の中によみがえらすことでもある。そうやって人間の喜びを感じていただければいいのかな、と思います。

――羽仁さんが映画でこれまで何度も残されてきましたけれど、過去の人たちの思いや情熱や志を今の私たちに伝えてくれる、大きな手がかりになりますね。

羽仁さん: 今生きてる小さい子どもたち、いろんな不思議なことを考えてるんです。ある意味では昔の人とつながってるところもあるんですよね。
年齢が若いから子ども・生徒じゃない。輝くものを持っていれば、15歳でも立派に人を教えていいんです。僕は人に教える技術を持ってないし、教えるなんてことはできないんだけど。

――羽仁進さんの「わたし終いの極意」とは何でしょうか。

羽仁さん: ちょっとわかんないね。特にありません(笑)。

――楽しく今を生きるためのコツはあるのでしょうか。

羽仁さん: 自分以外のものをいつも見てることだと思うんです。自分だけ見たって大したことはないです。
自分以外のもの。それは動物じゃなくてもいいんです。岩でもいいんです。水でもいいし、川でもいいし、海中火山でも何でも。
自分以外のものに興味を持って見ることはいいと思います。僕は、人間の今やってる生き方が、この地球に対してかなり邪魔になってきてると思うんですよ。そのことをもっと考え直す。自分が生きてるということは、この地球の上で生きてる。自分のことだけを考えるんじゃなくて、自分の知らないものに目を向けてほしいと思います。

――そのために、羽仁さんも本を書かれたり発信していったりするのでしょうか。

羽仁さん: とてもそんな知識力はありません。多分、一生の最後になるだろうと思う本を書こうとしてるんで、それが完成するまでは生きてると思います。僕自身はそういう本を書くことで、いろんなことを発見していくことがおもしろいわけです。

――その本の完成を楽しみに待ちたいと思います。

<~映画監督・羽仁進さん~>おわり

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