実践!マインドフルネス① 「呼吸瞑想」

ざっくり言うと
2018/07/10 ラジオ深夜便 「からだの知恵袋」ぶれない心を育む① 川野泰周さん(精神科・診療内科医)
欧米でも注目「マインドフルネス」=「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」
毎日続けたい「呼吸瞑想」のコツ

くらし・健康

2018/07/10

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こころと体を整えて、新しい年をスタートしませんか? <ラジオ深夜便>「からだの知恵袋」でお送りしているシリーズから、日常のさまざまな場面で実践できる瞑想(めいそう)法をご紹介します。教えてくださるのは、ご実家のお寺で住職のお務めをされながら週2日精神科医・心療内科医として治療にあたっていらっしゃる川野泰周さんです。


注目集めるこころの整え方「マインドフルネス」

川野さん: 皆さんは今日1日何をして過ごされましたか? ご自身がしたことを、全て詳細に思い出せる方は少ないのではないでしょうか。私たち現代人が日々すべきことは、仕事、家事、育児、介護、さらには地域の活動と、数え切れないほど多種多様で、心は常にそうした様々な物事の中でさまよいながら、忙しく生活されていると思うんです。
近年では、インターネットやスマートフォンなどの急速な普及で世の中を飛び交う情報量って、実はこの10年間で何百倍から何千倍にも増えていると言われているんですね。そのせいで、人の脳や心は簡単に疲労を蓄積してしまって、うつや不安、不眠、原因不明の体調不良といった心身の問題をかかえる人も増えていく一方です。
私が勤務するクリニックの外来には、日夜大変多くの人たちが来院されています。年代で言いますと、10代前半の学童期、思春期からシニア世代、70代80代の方まで幅広く、脳や心の疲労は世代に関係なくまん延しているんだなと、そんな風に感じてるんですね。

――そうした中で「心を整える」具体的な方法として、多くの医療の現場で取り組まれている「マインドフルネス」をご紹介いただきます。アメリカの有名な実業家が実践するなどして広まったものが、日本でも取り入れられているということですね。

川野さん: はい。実はこの「マインドフルネス」という手法、源流になっているのはインド発祥の仏教や、日本の禅の精神です。
簡単に申し上げると「心を向けること」。この精神を象徴する禅の言葉に、「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」というものがあります。「毎日がいい日でありますように」という願いを込めた言葉のようにとらえられることがありますが、真の意味はそうではありません。晴れの日も雨の日も、ただただ一日一日を大切に生きることを説いた言葉です。一日一日を大切に生きることこそが丁寧な生き方であって、これがまさに禅的な生活、禅的な生き方。このように生きられれば、心も身体も健やかにいられるということが科学的に証明され、「マインドフルネス」という言葉で治療の世界に広がってきたんです。

もう少し分かりやすく説明すると、今この瞬間の感覚に気付く、ということです。息を吸うと体がふくらむとか、歩けば足の裏が地面についたり離れたりする感覚が生じるとか。梅干を食べたら、口の中がすっぱくてつばが出てくるとか。こういうありのままの感覚をしっかり注意して感じてみるということなんですね。そして、その時に感じたその感覚について、良い感覚だとか悪い感覚だとかを決めつけないで、ありのままに受け止めてみること。この、「気づいて、受け止める」という作業こそが「マインドフルネス」です。大切なのは目の前のことを考えて必死に取り組むということなんです。

■実践! マインドフルネス「呼吸瞑想」■

禅の世界では心が整っている状態のことを「正念」といいます。心配、不安、後悔といった心の苦しみから解放されて、いわば心が軽くなるということ。最も基本的で、色々な場面で活用することのできる「呼吸瞑想」をご紹介しましょう。

①椅子に浅く腰掛けるか、床にあぐらや座禅の姿勢で楽に座る。
頭のてっぺんから天井に一本の糸が伸びていて、これで吊られているようなイメージで、背筋を軽く伸ばす。
リラックスが大切ですから、決してグーッと伸び上がって力まない程度に。

②手は、手のひらを上にして太ももかひざの上に置くのが海外では一般的だが、手のひらを伏せて置いても、両手を座禅みたいに組んでもよい。楽に軽く背筋を伸ばして座れれば、どんな体勢でもよい。

③呼吸は鼻から吸って鼻から吐くことが基本だが、鼻の通りが悪い方、口の方が自然にできる方は口でもよい。大切なのはあくまで自然に呼吸できる方法を選択すること。
目は軽く閉じるか、坐禅のように数メートル先の床をぼんやりと見る「半眼」に。そのままゆっくりと2~3回、深呼吸する。深呼吸に集中することで、心がいったんリセットされる。

④そのあとは呼吸をコントロールすることをやめ、ただありのままの自然な呼吸を「観察」する。鼻の穴を出入りする空気の流れを感じる。空気が入っていったときには「鼻から空気が入っていった」、空気が出ていった時には「鼻から出ていった」。鼻やその周りの感覚を観察する。
難しい場合はお腹や胸、身体全体がふくらんだりしぼんだりするのを感じる方法で。無理に腹式呼吸をしようと意識するのではなく、あくまで自然な呼吸によって胸やお腹が空気で満たされたり、空になったりするのを感じるように。


川野さん: 時間は全くの自由です。数十秒でも数十分でも、時間がないときにはたとえひと呼吸でも構いません。
大切なのは、雑念が浮かんだ自分を決して責めないことです。雑念がわくというのは人間の脳の機能なので、雑念がわかないのは脳の機能が落ちている状態かもしれません。ですからこの「雑念」に気付いたこと自体が、とても重要なことだと知っておいてもらいたいんです。そして、優しくおおらかな気持ちで「よく雑念に気づいたね。よし、もう一度呼吸に戻ろう」と心の中で呼びかけて、再び呼吸の観察に戻ればよいのです。
始めはたった2~3分の間に、何回、何十回も雑念に気付いては呼吸に戻すことの繰り返しになる方が多いですが、それでも全くかまいません。

最も大切なことは、習慣として続けること、これに尽きます。
1人で静かに過ごすことのできる、朝起きた時・夜寝る前どちらか1回でもベッドサイドで数分間ずつ、毎日呼吸瞑想をおこなうよう習慣づけることをお勧めします。
または、お風呂に入る時はどうでしょうか。湯船に浸かっている時間というのは、絶好の呼吸瞑想タイムといえるでしょう。シャワーだけですましてしまう人も、身体を大切に洗って、最後シャワー・水・お湯で体を洗い流すときの、そのお湯が体に当たる感覚の中で呼吸瞑想することもできると思うんですね。
こうして日々の練習を続けることで、だんだんと、普段の心のありようから落ち着いていって、整ったものとなっていくんです。やがて、いつもは緊張していたような場面でも、穏やかな心で過ごすことができるようになると思います。

「実践!マインドフルネス②」につづく

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