【介護心理 Vol.05】憎しみを抱えながらの介護

ざっくり言うと
2018/10/19 NHKマイあさラジオ 健康ライフ「介護する人の心が少しでも軽くなるために⑤」
介護者メンタルケア協会代表 理学療法士 橋中今日子さん
親との同居は唯一の解決法ではない

くらし・健康

2018/10/19

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2018年10月19日(金)放送より

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親との関係が良好ではなくても、介護しなければいけないケースもあるそうですね。

橋中さん: こんなケースがあります。
50代の女性。親に大事にされていなかった自分が、なぜか今、母を介護している。それが苦しい、という相談でした。

そういった方たちに、どう声をかけていますか。

橋中さん: 自分が大切にされた経験がなく、傷ついたこともあるはずなのに、その相手を介護することは非常に大変です。よく頑張っている、と認めることが大切ですね。
気持ちは揺れているはずです。介護したくないと思っただろうし、一方で、優しくしたいと思ったでしょう。しかし、現実はうまくいかない。感情が不安定な毎日、自分が頑張っていることをねぎらってほしいと思います。

自分は親のようになりたくない、という気持ちもあるのでしょうか。

橋中さん: 親として認めたくないと言いながらも、頑張って親を介護する方もいます。過去のことだからこそ、許せないという方は多い。しかし、否定すればするほど、脳は疲れます。力を消耗してしまいます。そして、余計にイライラしてしまいます。
親に対してイライラしたこと、悲しかった思い出や親に対する怒りが自分にはあるということを、認めてください。

どこかで気持ちを吐き出すことも大切ですか。

橋中さん: そのために、誰かに話せればいいのですが、「自分の親を憎んでいる」とはなかなか言いづらいですよね。
そういう場合は、ノートに書き出してください。腹が立つ、悔しい、悲しい、といった自分の気持ちを書き出すことをおすすめしています。
そのノートを持って、ケアマネジャーとか地域包括支援センターのスタッフに、過去の出来事のために苦しみ悩んでいること、今ご自身が感じている気持ちを、正直に伝えてほしいですね。

1人暮らしの親に介護が必要になった場合、同居しなければいけないのでしょうか。

橋中さん: そういったご相談が、今とても増えています。2人暮らしの両親のどちらかがお亡くなりになったケースでは、「自分が帰らないと」と思われてしまう方が多いですね。
しかし、「すぐに同居を決めてはいけない」とアドバイスしています。
同居するのではなく、親のところへ行く回数を増やす。もしくは、親の近くでも別に住まいを構える。そういったことから始め、環境を突然大きく変えないようにすすめています。

それはなぜですか。

橋中さん: 理由は4つあります。
1つは、今まで1人で暮らしてきた人は、家族とはいえ同居人が増えるだけで、混乱する可能性があるためです。いきなり大きく変えるのではなく、小さく関わることをおすすめしています。

環境の変化で混乱してしまい、認知機能などに変化が出てくる可能性があるということですね。

橋中さん: どういうことが起こるか、実際に住んでみないとわからないこともあります。
いきなり同居を決めるのではなく、1週間のうち間隔をあけて一緒に過ごすなど、いろんな対策が取れると思います。介護を始める前に、当事者同士で話し合う。そして、過ごす時間を増やしていくところから始めましょう。

すぐに同居しなくてもよい理由、他に何がありますか。

橋中さん: 2つめは、介護する側の問題です。24時間ずっと顔を突き合わせていると、状況や気持ちが大きく変わります。イライラして、けんかも増えます。介護する側にも、少しずつ慣れる訓練が必要です。
3つめは、介護保険のサービス。家族が同居していると、受けられなくなるサービスがあります。例えば、家事支援、買い物支援など。同居していないほうが、受けられるサービスの選択肢が広がることもあります。
4つめは、経済的な問題です。同居すると、負担が大きくなる可能性があります。サービス費などは、世帯の収入ごとに決められます。別居していて、世帯が完全に分かれているほうが、介護保険サービスの負担額が抑えられることもあります。
別居にもメリットもあることを覚えていてください。

制度や状況を冷静に分析して要求していくことと介護する人への愛情は、決して反比例しないということですね。

橋中さん: 親から同居を頼まれたときに迷ってしまったり、同居しないことを選んだのは、自分が冷たいから、未熟だから、と自己否定する方もいますが、それはまったく別問題です。
1人で頑張りすぎたために結局介護できなくなり、衰弱死や心中事件になってしまったケースが増えています。1人で抱え込んだためにネグレクトや介護放棄につながる事態が、現実として起きています。
ちょうどいい距離を取るからこそ、家族として付き合えると思います。誰かが入ってくれたからこそ、穏やかでいい関係が作れたケースもたくさん見てきました。1人で抱え込むのではなく、専門家に相談し援助を受けることをおすすめします。

■「介護する人の心が少しでも軽くなるために」シリーズ おわり

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2018年10月19日(金)放送より

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