【介護心理 Vol.03】仕事を辞めるべきか悩んだら

ざっくり言うと
2018/10/17 NHKマイあさラジオ 健康ライフ「介護する人の心が少しでも軽くなるために③」
介護者メンタルケア協会代表 理学療法士 橋中今日子さん
具体的に自分のケースを説明し、援助を得る

くらし・健康

2018/10/17

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2018年10月17日(水)放送より

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仕事と介護のバランスが取れずに悩む人は多いでしょう。

橋中さん: 朝夕に利用できるサービスがない。いつも朝夕に問題が起きる。家族でしか対応できない時間帯に問題が起きやすいため、出勤を遅らせたり、帰宅を早める必要に迫られます。その結果、仕事を諦めるケースが少なくありません。
しかし、話を聞くと、会社に相談せずに辞める人もいます。「これは自分の家の問題だから」「プライベートのことだから」と言うんです。「有給休暇がないし、結局はみんなに迷惑かけてしまう」と一人で決めて辞めるケースが、男性に多いです。

そういった場合、どのようにアドバイスしていますか。

橋中さん: 「介護の問題は個人の問題ではありません」と伝えています。
介護離職は年間10万人以上となり、経済損失がとても大きいとされています。「介護離職ゼロ」を政府が方針の1つに定めたほどです。ですから、「あなたが会社を辞めると、社会にとっても不利益だ」と伝えています。

会社も、「あなたがどういう状況にあるのか」を知りたいのでしょうか。

橋中さん: そうです。企業からの相談には、「独自に仕事と介護を両立させる制度を作ったのに、離職者が相談してくれない」という内容が多いんです。「相談することで、立場が悪くなるんじゃないか」「出世に響くんじゃないか」と心配されていることも、企業は気づいています。
企業側でも、被雇用者の仕事と介護を両立させたいというケースが増えています。誰を介護しているのか、どんなことに困っているのか、どんな助けが欲しいのか。具体的に説明するほうが、企業にも利益になることがあります。

会社に相談をしても、対応してもらえないケースはありませんか。

橋中さん: それも多いです。
40代の女性から、「会社が助けてくれない」と相談されました。介護休業の取得を相談したか尋ねると、「していません」と言うんです。理由を聞いたら、有給休暇申請時に「家族の入院の付き添いのため」とか「介護のため」と書いているから、「会社はわかっているはずだ」と言うんです。それだけでは、長期間の介護休暇が必要な状況が伝わらないですよね。
その方には、「家族の介護に有給休暇を使い切りました。父の退院に伴い介護休業を利用したいのだけど、詳しく説明してください」と、かなり具体的に会社に言ってもらいました。すると、会社側も、初めてのケースなので慌てたそうです。
制度のある企業でも、経験が浅く慣れてないことがよくあります。介護する人は、具体的に自分の状況を伝えてください。

十分に説明をしても対応がない場合は、どうすればいいでしょうか。

橋中さん: 人手不足の職場では、「休まれたら困る」と直接的に言われるケースもあると聞いています。そういった場合は、「期間を決める」ことをおすすめしています。
具体例を挙げます。「父が退院した直後は大変なので1か月は休ませてほしい。容体が変化して休暇を延長することになれば、再度お伝えします」というように、こまやかに期間を伝える。
もしくは、「リハビリの病院への転院が決まりましたが、時期はまだ決まっていません」というように、「わかっていること」と「わかっていないこと」両方をこまめに伝える。これで、企業も安心できます。
休む期間や欠員補充の必要性といったことが把握できないと、企業の不安材料になるからです。現状でわかっていることを、少しずつでも説明してください。

そもそも制度が十分ではない場合もあると思います。

橋中さん: 確かに、現状の制度には限界があると思います。
たんの吸引や、24時間酸素を送るといった医療行為は、看護師や資格・研修のあるヘルパーだけが可能です。ですので、家族以外が処置をすることが難しく、結局は家族がずっと付き添って世話をするというケースも多いです。
そういった負担があるために仕事を辞めなければならない、という相談もあります。しかし、そういうときこそ、「わたしは困っています」という声を上げてほしいですね。
すぐに制度は変わりませんし、満足のいくサービスは受けられないことがほとんどです。そうした場合、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談してください。

声を発することで、周囲が変わることはあるのでしょうか。

橋中さん: 医療・介護の専門家でさえ、実際に介護している家族の困難について情報が足りないんです。だから、介護している人だからこそわかる問題や悩みを発信することで、サポート側の人が動きやすくなります。支援策の充実化や制度改革にもつながるので、ぜひ声を上げましょう。

2018/10/18 NHKマイあさラジオ 健康ライフ「介護する人の心が少しでも軽くなるために④」につづく

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2018年10月17日(水)放送より

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