【介護心理 Vol.01】気持ちを切り替える大切さ

ざっくり言うと
2018/10/15 NHKマイあさラジオ 健康ライフ「介護する人の心が少しでも軽くなるために①」
介護者メンタルケア協会代表 理学療法士 橋中今日子さん
介護するうえでの困難を率直に伝える

くらし・健康

2018/10/15

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2018年10月15日(月)放送より

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橋中さんは、長年ご家族を介護なさってきたのですね。

橋中さん: 祖母と、いろいろな病気で寝たきりになった母、知的障害の弟。1人で家族3人を21年間介護してきました。
朝起きたら、すぐに寝たきりの母の部屋に行って世話し、祖母や弟の世話をしながら朝食を作り、みんなを送り出す。自分は簡単に食べて、仕事に行く。帰ったらまた家族を世話するので、寝るまでずっと立ったまま。何かを考える余裕はまったくありませんでした。
気がつくと、深夜に頭を壁にぶつける自傷行為のようなことをしていました。そこで初めて、「あれ? わたし、かなり大変なことになっているのかも?」と思いました。
最終的には、何も悪くない母をののしったり、祖母をささいなことでどなり散らしたりして、「あっ、これではわたしは本当にダメになる」と気づきました。

橋中さんは理学療法士として病院にお勤めでしたが、職場にはこの状況をどのように伝えていらっしゃったのですか。

橋中さん: 職場では上司に、「母が入院しました」、「退院しました」、「祖母が認知症の診断を受けました」など、状況説明はしていました。しかし、母がくも膜下出血になったため介護休業を取り、職場に復帰したら、上司に、「あなたが休むと、みんなに迷惑がかかる」と言われました。「これ以上迷惑をかけるのなら、仕事を辞めてください」とまで宣言されました。

そのときは、どう思いましたか。

橋中さん: 勤め先は、病気をされたり、けがをされたりした方の帰宅をサポートしている病院でした。だから、「どうして同じ状況下のわたしを助けてくれないんだ」、「どうしてわかってくれないんだ」という、言葉にできない悲しさと怒りを感じました。一瞬、「こんなことを言われるのなら、仕事を辞めてしまおう」と思ったほどです。
しかし、わたしは仕事が大好きだし、家族の中で働いているのはわたしだけです。わたしが辞めると、お金に困り、生活ができなくなる。本来、介護は家族を守るために行うのに、仕事を辞めてしまったら、介護の目的が果たせないと思ったんです。
そのように冷静に考えられたのは、当時、心理学を学んでいたからです。「さっさとやめればいい」、「こんな場所にいても意味がない」と怒っている自分もいる。一方で、「家族を守りたいし、大好きな仕事を辞めて本当にいいの?」と言ってくれる、もう一人の自分の声も聞けました。
自分を客観視できたからこそ、「今、何ができるの?」と思える心の余裕ができました。だからこそ、「まだ上司に伝えてないことがある」と気づいたんですね。それは、「家族で働いているのはわたしだけなので、仕事を辞めてしまっては、お金に困るんです」ということでした。
「お金に困るんです」とは言いづらかったんですが、「ここで言わないと、本当に仕事を辞めることになる」と思ったので、率直に伝えました。
そのとき上司の表情が変わりました。「そう言ってくれないと、どう助けていいのか、わからないんだよ」と言ったんです。

上司以外の周囲の皆さんの反応はどうでしたか。

橋中さん: 徐々に理解を得られたので、仕事がしやすくなりました。しかし、同僚は、わたしが休むとフォローしなければいけないので、冷淡でした。「迷惑です」とも言われました。

その後、状況は変わったのですか。

橋中さん: たまたま祖母が骨折をして、リハビリのためにわたしの勤め先に入院しました。それから毎日、わたしが仕事をしている部屋に、祖母が叫びながらやって来るんです。祖母は他のスタッフが止めようもない勢いで騒いで、わたしを探すんですね。
その様子を見て、同僚たちは初めて気づいたんです。今まで認知症の患者さんを、医療者として対応することはあった。しかし、家族がどのように困るのか、そこまではわからなかった。祖母の入院をきっかけに、家族がどう困るのか疑似体験したんです。以来、明らかに職場の雰囲気が優しくなりました。

医療関係者であっても、実感できないケースもある。少し説明したぐらいでは、なかなか伝わらないのでしょうか。

橋中さん: 介護する家族は、どう対応すべきなのか、何に困るのか。医療者でも、わかっている人は少ないです。一般の企業にお勤めの方だと、さらに少ないでしょう。
悩んでいるときに、わかってもらえないことは本当に苦しい。心が折れてしまう。だから、「無駄だから相談しない」と思いがちです。
わたしは、ご相談される方には、「<わかってもらえない>からスタートだよ」とお伝えしています。情報もないし、そういった経験もほとんどないから、わからない。だからこそ、経験者たちに、何を知りたいのか、どう助けてほしいのか、積極的に伝える必要があります。

具体的には、どのようなアドバイスがありますか。

橋中さん: 写真を撮ることをおすすめしています。
たとえば、夜中に救急車を呼んで病院行ったとき、文書に書くよりも、その状況を写真に撮って上司などに送るほうが伝わりやすいです。トイレでの失敗や、大騒ぎしてしまうときの状況は、ケアマネジャーにも伝わりにくいので、動画を見てもらうと理解が深まります。ですので、そういった様子を撮影し、相談時に利用することをおすすめしています。

2018/10/16 NHKマイあさラジオ 健康ライフ「介護する人の心が少しでも軽くなるために②」につづく

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2018年10月15日(月)放送より

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