【読む将(前半)】トップ棋士・渡辺明三冠の素顔に元・乃木坂46の伊藤かりんが迫る!

ざっくり言うと
現在、将棋界で唯一の三冠(王将・棋王・棋聖)
棋士人生最大の大勝負 永世竜王をかけた死闘
2019/10/14 王手!最後のお願い

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2019/10/14

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「王手!最後のお願い(新春スペシャル)」(2020年1月1日放送)に先駆けて、「王手!最後のお願い」(2019年10月14日放送)がありました。
渡辺明三冠をゲストにお迎えして放送し、好評だった初回放送を聴き逃しで是非、お楽しみください。

(※2020年1月8日14時までお聴きいただけます。)


【出演者】
伊藤さん:伊藤かりんさん(元・乃木坂46、将棋アマチュア初段、将棋親善大使)
渡辺さん:渡辺明三冠


オープニング

伊藤さん: こんにちは。将棋大好き伊藤かりんです。今回ラジオに将棋番組が登場しました。その名も『王手!最後のお願い』です。「最後のお願い」とは、劣勢の棋士が終盤にわずかな逆転の望みをかけて放つ勝負手のことです。
この番組ではゲストにプロ棋士をお招きして、その知られざる素顔をつまびらかにしていきます。グイグイとゲストの核心に迫る質問を放っていきますのでお楽しみに。また、プロ棋士の大逆転秘話もご紹介します。
ということで、新番組が始まったんですけれども。ちょっと緊張しますけれども、将棋で、どこまでいろいろ説明できるのか、そんなところも楽しみにしていきたいなと思います。それでは早速まいりましょう。

私、将棋とどんな関わりがあるのかということですけれども、4年間ほどEテレの将棋番組『将棋フォーカス』を担当させていただきまして、そしてことしの4月ごろですかね、「将棋親善大使」というものを委嘱(いしょく)していただきまして、将棋をいろんな人に広めていけたらいいな、という活動をしております。
ということで、早速スペシャルゲストをご紹介しましょう。この方です。
渡辺さん: 棋士の渡辺明です。よろしくお願いします。
伊藤さん: よろしくお願いします。いやあ、ラジオ、始まりましたけれども。ラジオ自体は、やったことはあるんですか?
渡辺さん: 競馬で何回か…。
伊藤さん: なるほどなるほど。じゃあ、お得意ということで。
渡辺さん: どうでしょう。久しぶりですけど。
伊藤さん: いろいろお伺いしたいと思います。
改めてご紹介しましょう。渡辺明三冠は、1984年、東京生まれの現在35歳。15歳でプロデビューされ、ことしがプロ20年目。将棋界の8大タイトルのうち、ただ1人三冠を持つトップ棋士でいらっしゃいます。
最近はどんな日々過ごされてますか?
渡辺さん: 最近は、7月まで棋聖戦のタイトル戦をやってたんですけども。それが終わって、ちょっとひと段落しているところですかね。やっぱり、タイトル戦やってると、いろいろ忙しいんですけども。
伊藤さん: そうですよね。タイトル戦は、その時期はそのことだけを考えるっていう感じなんですかね?
渡辺さん: まあ、そうですね。それが中心になりますし。まあ、タイトル戦は移動日もあったりして。
伊藤さん: そうですね、移動もね。なるほど。
きょうは渡辺三冠にトップ棋士ならではの視点で将棋界のさまざまなお話をお伺いしたいと思います。そして番組の中で、なんとプレゼント企画もあるんですよね。
渡辺さん: はい。詰将棋をご用意しました。正解者の中から抽選で3名の方に私の直筆色紙をプレゼントします。
伊藤さん: いやあ、今のトップ棋士の直筆の色紙ってなかなかもらえるチャンスないので、ぜひ皆さん応募していただきたいんですけれども。
番組ホームページにある詰将棋のページに解答の応募フォームがあります。番組の中で正解を発表しますので、ホームページと合わせてぜひチェックしてみてください。
※2019年10月21日(月)12時(正午)締切

伊藤さん: 『王手!最後のお願い』。渡辺三冠と伊藤かりんで50分間お届けしてまいります。どうぞ最後までお聴きください。

渡辺明三冠のタイトル戦

伊藤さん: まずはですね、渡辺三冠に最近の将棋界についてお聞きしていきます。渡辺三冠は将棋界のいわゆる8大タイトルのうち、今期、王将・棋王・棋聖を獲得されました。現在将棋界ではただ1人の三冠でいらっしゃいます。
ご自身のタイトル戦、今期、振り返っていかがでしたか?
渡辺さん: いやあ…「よく勝てたな」という感じはします。本当に。
伊藤さん: そんな感じなんですか?
渡辺さん: 三冠というのは、自分では2回目なんですけども…二冠ぐらいまでは割と時期としては長かったんですが、2つが3つになることはなかなかなかったんで。そうすると、「勝ったな」みたいな感じはしますね。
伊藤さん: やっぱりタイトル戦というのは1つ取るのだけでもめちゃめちゃ大変っていうことですよね。
渡辺さん: 複数冠持つようになると、またすぐ防衛戦が来ちゃうんでなかなかキープできないっていうか、その辺がありますよね。
伊藤さん: ことしはどなたから奪取したりとか防衛したりとかを教えていただけますか。
渡辺さん: 1月にまず王将戦に。これは挑戦者として出まして、久保(利明)王将と対戦して、これは王将位を奪取したんですね。
2月から3月にかけて棋王戦。これは防衛戦なんですけれども、挑戦者は広瀬章人竜王ですね。これは3対1で防衛ですね。
年度が変わって、6月から棋聖戦で豊島将之棋聖に挑戦して、これは棋聖位を奪取。で、三冠ということになりました。
伊藤さん: すごい。1月から3月が忙しかったんですかね?
渡辺さん: ああ、そうですね。2つやってましたので。ここは結構日程的にもタイトになるんで、大変だったですね。
伊藤さん: そうですよね。複数タイトルを持つこと、今ただ1人の三冠ということにプレッシャーとかはあるんですか?
渡辺さん: 三冠を持つことのプレッシャーはないんですけど、ずっとタイトル持ってきたので、1が0になることのプレッシャーはありましたね。

将棋界について

伊藤さん: なるほど。
さあ、そして、渡辺三冠はプロ棋士ということなんですけれど、プロ棋士についていろいろお伺いしていきたいんですけれども。そもそも、将棋界のこのプロ棋士、プロというのは何人ぐらいいらっしゃるんですか?
渡辺さん: 現役の棋士でいいますと、男性の棋士がおよそ160人。で、女流棋士がおよそ65人ぐらいですかね。
伊藤さん: 人数としてはすごい少ない感じがするんですけれども、どうやったらプロのその人数に入れるんですかね?
渡辺さん: プロ棋士の養成機関である奨励会に入って、そこを勝ち抜かないといけないんですけれども、今は年に4人プロになれるっていう仕組みですね。
伊藤さん: 年に4人って少ないですよね。その中でプロになっても、またそこから大変というのがありますけど。
ちょっと気になるのは、プロ棋士の皆さんってどこから収入を得られるんですかね?
渡辺さん: 収入は…将棋連盟からもらってるんですけど。元手はスポンサー収入ですよね。
伊藤さん: そういうのは対局とかで勝つともらえるんですかね?
渡辺さん: 基本的にはそうですよね。スポンサーが棋戦を主催して、そのお金をいただいているという。
伊藤さん: じゃあ、勝てば勝つほど夢があるお仕事ですね。
渡辺さん: まあ、そういうことです。

藤井聡太七段と羽生善治九段

伊藤さん: さあ、そして、将棋界といえば話題のお2人いらっしゃいますけれども。14歳2か月でデビューした藤井聡太さん。あれから3年だそうですよ。
渡辺さん: 早いですね。
伊藤さん: 早いですね。
渡辺さん: 今17歳で高校2年生ですけども。
伊藤さん: 渡辺三冠から見たら、藤井先生はどう見えますか?
渡辺さん: ことし初めて1回対戦したんですよ。負けましたけどね。
伊藤さん: 負けたんですね。それはやっぱり悔しいものですか?
渡辺さん: そうですね。決勝戦で、公開対局だったんで、ここで勝って「いやいや、君はまだ早いよ」という顔をしようかと思ってたんです。そういうイメージトレーニングできたんですけどね。負けて、むしろ「失礼しました」みたいな感じで退散するという…。

伊藤さん: いやあ…でも、世の中的に「藤井先生、すごい、強い」みたいなイメージありますけど、本当にやっぱり強い?
渡辺さん: 強いですよね。あとはもうタイトル…いつ出てくるかっていうところですよね。ただ、当初思ってたよりは苦戦してるかな、っていう印象ありますよね。
デビューして3年ぐらいたつと、プロ棋士にもまれて、トップ棋士と対戦の機会も多いじゃないですか。そこでもう1段階強くなる時期でもあるんですよね。かみ合えばタイトル挑戦してすぐ…というね。僕は自分の持ってる棋戦には出てほしくないけど。誰かほかの人に挑戦してください、という。
伊藤さん: 渡辺先生から見たら、もうすぐじゃないか?
渡辺さん: いざタイトル戦での対戦が決まったら、それはこっちも燃えますよね。だって、報道陣をいっぱい連れてくるわけでしょう。
伊藤さん: そうですね。ぜひそれを見たいですけど、じゃあ、ここぞという対局で勝つことができるようになれば。
渡辺さん: 勝ってタイトル戦に出れば本物。惜しいとこまでは来てますからね。
ファン目線で僕もしゃべっちゃってますけど、存在としてはもちろん脅威ですよね。
伊藤さん: そうですね。私はファンなので、ぜひ渡辺先生との対局を楽しみにしたいなと思います。
さあそして、もう1人有名な羽生先生ですね。羽生善治九段についてはどう思われますか?
渡辺さん: 羽生さんはタイトル99期獲得されてますからね。僕が子どものころ、アマチュアだったころに、プロの将棋を普通に見るじゃないですか。そのころ羽生さんが七冠とか取ってて、「すごいな」って感じで見てましたけど。
伊藤さん: その時代から活躍されてるんですよね。
渡辺さん: タイトル戦出てから、羽生さんはもう30年ぐらい一線でやってるんですかね。
伊藤さん: タイトル100期っていうのはえげつない数字、99ですけど、渡辺先生は、今タイトルは通算…?
渡辺さん: 23だと思います。
伊藤さん: その数字も将棋界全体として見たらすごい数字ですけど、やっぱり羽生先生の数字がおかしい。
渡辺さん: ねえ。99ですからね。羽生さんがタイトル戦出るようになって30年だから、(年に)3つ平均じゃいかないですよね。平均値が3と4の間ぐらいってことですね。
伊藤さん: 常に持ってる。
渡辺さん: そりゃ30年ですからね。三冠を1年ぐらい持つだけだったら僕でもできるんですけど。
伊藤さん: いやいや、すごいことですけどね。
渡辺さん: 30年はちょっと…ねえ。
伊藤さん: 継続して強くいられる秘けつとかって何だと思いますか?
渡辺さん: 何でしょうね。それ、教えてもらいたいですね。
伊藤さん: わかったら…。
渡辺さん: わかったらやってるよ、っていうね。
伊藤さん: まあ、そうですよね。
でも今、羽生先生は40(代)後半ぐらいの年齢…。
渡辺さん: もうまもなく…もう49(歳)になったんですね。
伊藤さん: 49歳。そのぐらいのとき、渡辺先生、どうなってると思います?
渡辺さん: いやあ…僕、今35なんで。僕は羽生さんとは14違いなんですよ。なかなかちょっと…「40代にもうすぐ入るな」ということは思いますけど、45ってなったら10年先なんで、なかなか想像できないですね。
伊藤さん: そうですよね。
渡辺さん: 勝負って、1年1年が濃いじゃないですか。1年前の勝負って「だいぶ前の将棋だよね」っていう感覚になるので。それを「あと10年やれ」って言われたら、結構…あんまり考えたくないですよね。
伊藤さん: ずっと勝負が続くことって大変ですかね?
渡辺さん: やっぱり勝ち負けのことだから当然プレッシャーはあるし。「あと10年続けなさい」って言われたら結構きついですよ。だから、あんまり先のことは考えたくはないかな、っていうのはありますよね。
伊藤さん: それだけすごい最前線で羽生先生は勝ち続けてるっていうのはすごいですね。
ということで、続いてのコーナーはこちらです。

渡辺三冠 棋士人生最大の勝負

伊藤さん: このコーナーでは、ことしで棋士人生20年目の渡辺三冠に、これまで経験した最大の勝負をお聞きします。
渡辺三冠、教えていただきたいんですけれども、最大の勝負は何でしょう?
渡辺さん: 2008年の竜王戦になりますかね。
伊藤さん: どんな戦いだったんですか?
渡辺さん: 永世竜王をかけた竜王戦だったんですけども…「永世竜王って何?」っていう。
伊藤さん: そもそもそこですね。「竜王」はタイトルの1つということですけど、「永世」というのは?
渡辺さん: 「永世竜王」「永世名人」とか、それぞれのタイトルに永世称号があります。規定はそれぞれあるんですけれども、竜王戦の場合は「連続5期または通算7期で永世竜王になれる」ということだったんですね。
伊藤さん: 「殿堂入り」みたいなことですね。
渡辺さん: まあ、そうです。
伊藤さん: この対局は永世竜王がかかっていた?
渡辺さん: この2008年の竜王戦は僕と羽生さんの戦いだったんですけれども、互いに永世竜王にリーチがかかっていて、勝ったほうが初代の永世竜王になる。
そういう永世称号をかけた七番勝負ってなかなかないんですよ。片方にかかることはあるんですけど、両者にかかることはない。そういう意味でも、すごい注目が集まった番勝負だったんですよね。
伊藤さん: そんな大一番の第1局がフランス・パリで開催されたんですね。どうでしたか? フランス・パリで対局する経験なんて、なかなか…。
渡辺さん: 自分自身でいえば、最初で最後でしょうね。行くのが大変なんです。
伊藤さん: 遠いですからね。
渡辺さん: 時差とかもあって大変ではあるんですけど、楽しかった思い出がありますね。観光もしたり。
伊藤さん: 観光もできるんですか?
渡辺さん: します。
伊藤さん: 何しました?
渡辺さん: きちんとした観光は、ヴェルサイユ宮殿へ行ったりとか、ルーヴル美術館へ行ったりして。それは取材も兼ねてるんですよ。「『こういうところに行きました』っていう写真を対局者の2人で撮ってください」みたいな。それとは別に、個人的な観光は競馬に行きましたね。
伊藤さん: フランスでも?
渡辺さん: たまたまその日以降、競馬の開催日だったんで、サンクルー競馬場というところに行ってフランスの競馬をやりました。
伊藤さん: そういうのを調べて行ったんですか?
渡辺さん: もちろんです。日付が決まっているので調べて、「もしかして、パリで競馬やってるかな」と思ったら、サンクルー競馬場が開催している。「サンクルー競馬場ってここだよな」って、地図で目印つけた。バスで行くんですけど、本体の観光がヴェルサイユ宮殿とか行ったあとにホテルに帰るわけですね。その帰る途中にサンクルー競馬場があるんで、「そこに僕は降りますんで」と言って降りる。
伊藤さん: 「対局の間は張り詰めてるのかな」って思ってたんですけど…。
渡辺さん: 人の性格もありますし。僕、海外にあんまり行ったことないんですよ。この竜王戦ぐらい。ヨーロッパ、このとき初めてだったんですよね。対局は対局で大事なんですけど、楽しんじゃった。競馬に行ったのは対局の前日なんですよ。
伊藤さん: 前日できることって、将棋の対局に向けて…。
渡辺さん: パリまで行っちゃったら、あんまりないですよね。詰将棋とか解いたって、あんまり変わらないじゃないですか。対局前に1~2時間詰将棋を解いたってね。
伊藤さん: そのタイミングだとね。
渡辺さん: そう。競馬はその日しかできないし。
「バス降ります」って言ったら、佐藤康光九段が立ち合い人で来てたんですよ。びっくりして、
「え? 競馬に行くんですか?」
「はい。競馬に行ってきます」
「対局前日に競馬ですか?」。
伊藤さん: それを言われてどうしたんですか?
渡辺さん: 「いや、でもせっかくなんで、行ってきます」みたいになって。
伊藤さん: 強い…。
渡辺さん: 苦笑いしましたけど…佐藤九段みたいなまじめな先生からすると、対局前日に競馬というのは考えられなかったんでしょうね。
伊藤さん: 渡辺先生らしいなと思われたんでしょうね。
そして、この七番勝負は第3局まで負けていたんですか?

渡辺さん: そうですね。最初3連敗から始まりました。
伊藤さん: そのときは「正直…」みたいなことはあるんですか?
渡辺さん: 「もうダメだ」と思いました。
伊藤さん: でも、そこで諦めなかったんですね。
渡辺さん: いや、諦めてたんですけど…。
伊藤さん: 諦めてたんですか?
渡辺さん: 「0対3から勝てる」と思わないですよ。
伊藤さん: 先が長いですもんね。
渡辺さん: 七番勝負自体はほとんど諦めてたんですけど、「せめて1つだけは勝たないとな」っていう。
伊藤さん: 最後の望みをかけて戦っていったら、そこから…。
渡辺さん: 1対3になって、2対3になって。2対3になったら「もういいかな」「もう十分やったかな」という気になったんですけど、3対3になると、今度は諦めたはずの勝負に欲が出てくるんですよね。
伊藤さん: 最終的に4連勝したんですね。再起のきっかけ、「これがあったから」ということはあるんですか?
渡辺さん: 4局目がかなり劇的な勝ち方だった。打ち歩詰めになった将棋なんです。詳しい方は「あの将棋か」なんて思い返される方もいるかもしれないですが、その4局目が逆転勝ちになった。それが2勝分、3勝分の価値があったのかな。
伊藤さん: その第4局の勝ち方がいいところだったんですね。
渡辺さん: 番勝負ですから、勝負の流れがありますからね。4局目をいい勝ち方すると、5局目は押せ押せになって、6局目はまた押せ押せで…という感じがありますよね。
伊藤さん: 流れを持ってこられるのがすごさ、強さを感じます。
さあ、ということで続いてのコーナーはこちらです。

渡辺三冠のスランプ脱出法

伊藤さん: 永世竜王を獲得され順風満帆に見えた渡辺三冠ですが、近年は苦労があったとか。
渡辺さん: まあ、苦労っていうほどじゃないんですけど、2017年度に成績が悪くて、年度負け越しだとか、A級からも落ちてしまったりだとか。
伊藤さん: A級、一番強いグループですね。
渡辺さん: 自分でも、年度負け越しはちょっとびっくりしましたね。
伊藤さん: 自分でもびっくりされた?
渡辺さん: そんなことは経験したことないですからね。
伊藤さん: それは正直「初めての挫折」みたいな感じになるんですか?
渡辺さん: 将棋を始めて、基本的には勝ちでずっときてるじゃないですか。プロになるまでからなったあとも。だから、勝ちよりも負けのほうが日常的に多いことを経験したことなかった。
伊藤さん: そのセリフがかっこいいですけどね。「なんで勝てなくなったのかな」とか、ご自身で理由とか、あります?
渡辺さん: あとから考えると、明らかに損な戦法は指してましたね。
伊藤さん: それは、どのタイミングで気づくものなんですか?
渡辺さん: それだけ負けたから、見えてきたものはありますよね。やってるときはそんなことは思わないんですけど。
伊藤さん: 一生懸命、そのときはやってらっしゃいますもんね。
渡辺さん: 年度終わってちょっと考えてみたら、「もう戦法が時代遅れかな」とは考えましたね。
伊藤さん: そんなタイミングでも、一冠がなくなることはない、タイトル戦がなくなることはなかったんですもんね。
渡辺さん: でも、最後の2対2まで行きましたからね。
伊藤さん: そうですよね。フルセットで。
渡辺さん: 「これ、負けたら無冠になる」っていう将棋があったんで。
伊藤さん: 結構プレッシャーもあったと思うんですけれども、そこから巻き返しがスタートしたということで、各棋戦勝ち上がってA級に復帰されたんですね。
渡辺さん: はい。
伊藤さん: 王将・棋聖を奪取して三冠。そこの上がり方がすごくないですか。
渡辺さん: いやあ、そうですね。ちょっとびっくりしました。
伊藤さん: そこもびっくり。落ちたこともちょっとびっくりしたけど、上がっていくのもびっくり?
渡辺さん: そうですね。
伊藤さん: そのスランプを克服したのは、先ほど言っていた、内容を確認して…。
渡辺さん: そういう確認する作業を今まで1度もしてこなかったんで。自分の将棋を振り返ったこととかなかったんで。
伊藤さん: じゃあ、スタイルを変えられたんですか?
渡辺さん: いや、指している将棋自体はそんなに変わってないんですけどね。
伊藤さん: 将棋を研究したりとかは、自分で、とかなんですか? 最近AIとかも聞きますけど、そういったものも使ったんですか?
渡辺さん: もちろんAIも使うんです。明らかに向いてなかった戦法がわかって、そういうのをもうやらないようになって、(勝)率がよくなったかな、っていう感じなんですかね。
伊藤さん: なるほど。すごい。

<「王手!最後のお願い」 後半>へつづく

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