動物保護は「1人で多く」から「1匹を多くの人で」へ

ざっくり言うと
コロナ禍で明るみに出た、飼育放棄、保護活動家の経費増や資金難、譲渡会中止
個人保護活動家が多い京都では、活動家の連携をさぐる試みも
2020/07/07 NHKジャーナル 地域発「コロナ禍の動物保護・京都」

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2020/07/07

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2020年7月7日(火)放送より

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コロナ禍の動物保護

緊急事態宣言が出ていた5月、大阪の駐車場で1匹の猫が保護されました。体重は子猫並みしかなく、下半身の毛は抜けきって地肌が露出していました。保護した動物保護団体によると、この猫を飼っていた女性は、長引く休業要請で勤めていた飲食店からの収入が途絶え、猫を飼う余裕がなくなったため、飼育放棄したとみられています。

飼育放棄された猫

こうした猫の保護要請は、全国的にも増えています。東京で犬や猫などの動物保護に取り組んでいるNPOによると、ことし5月の1か月間に寄せられた保護要請の件数は、500件。月平均の1.6倍に上っています。
さらに深刻な事態が発生しています。動物を保護する立場の人たちが、保護活動を続けることが困難になる事態が起きているのです。

保護活動家 谷口智香さん

京都市で20年以上、個人で保護活動に取り組む谷口智香さん(40歳)は、ことし5月には保護要請が寄せられた集合住宅のベランダや近くの空き地にいた30匹近くの猫を、1度に保護したこともあります。保護する猫の数が増え、費用は去年の同じ月の3倍になりました。避妊手術などの医療費は全部で35万円かかりました。
自宅で保護している50匹の猫に感染症が広がる恐れもあるため、ケージや床、食器など、常に消毒が欠かせません。コロナの影響で消毒液などの値段も上がっています。谷口さんはボランティアで活動しているため、費用のほとんどは自己負担です。

谷口さん: 自分のものを削って猫に充てています。厳しいですけど自分で決めたことなので、貯金をくずす、個人年金をくずす、貯蓄しているものをくずして充てるしかないかなと思っています。

負担に耐え切れず、活動を断念しようとしている保護団体も出ています。京都市で30年近く動物保護に取り組んでいる団体は、所有する6軒の町家を外国人観光客向けの民泊に活用して保護活動費をまかなっていましたが、休業要請で収入が途絶え、緊急事態宣言が解除された後も民泊の利用が進まず、活動費が捻出できなくなっています。

民泊運営の保護団体代表 スーザン・ロバーツさん

団体の代表、スーザン・ロバーツさんは「収入がありません。貯金を切りくずしてつないできましたが底をつきました。お金がないと保護ができません」と言います。寄付を募っても新型コロナの影響で集まりにくく、経済的な理由から活動を中止せざるをえない団体が、京都で相次いでいます。
保護した猫の引き取り手を探す譲渡会も、感染拡大への懸念から開催できず、3か月以上、軒並み中止となりました。行き場を失った猫が増え続け、引き取り先が見つからない状態がこの先も続くと、保護活動が破たんする恐れもあります。

「1人で多く」から「1匹を多くの人で」へ

保護活動家を支援している京都の動物福祉団体の代表、大西結衣(おおにし ゆい)さんは、動物の保護を個人に頼らざるを得ない状況が問題だと指摘します。

支援団体代表 大西結衣さん

大西さん: 京都の場合は特に個人で活動されてる方が多いです。1匹を例えばたくさんの方のご支援と協力で助けるのと、1人の人が多くの動物を助けるのでは差が出てくるので、連携をして1匹ずつ助けられたらと思います。

大西さんは、こうした状況を打開しようと、3か月ぶりの猫の譲渡会を企画しました。6組の保護活動家が集まり、持ち寄った猫は40匹あまり。感染防止のため、会場内の換気はもちろんのこと、消毒液は、入り口そして猫のケージの前にも設置して、猫を触る前と後で必ず消毒するように呼びかけたほか、入場制限も設けて、会場内が密にならないよう徹底しました。来場者の数は去年と比べると減りましたが、12組から譲渡の申し込みがありました。「もう欲しいなと思ったら欲しいので、早く会いたいと思って来ました。対面で見たらメロメロですよね」(参加者)。譲渡会を待ちわびていた人たちがいるのです。

譲渡希望者と猫

譲渡会で大西さんは、活動家たちと意見を交わす時間をとり、新型コロナの影響が長引く中、活動を継続するにはどうすればいいか、意見を募りました。捕獲や搬送といった直接の保護にかかわる支援だけではなく、物資や経済的な支援など、活動家同士で融通し合えないかなどの前向きな提案もありました。

大西さん: 連携が大事じゃないかなと思います。猫の搬送をする人もいれば、医療費とか経済的に支援する人もいると思いますし、それぞれができることを無理なく少しずつして、連携をして1匹ずつ助けられたらと思います。

今後大西さんは、個人活動家を集めたミーティングを定期的に開催するなど、連携を深める取り組みを行っていく予定です。

京都放送局
江原啓一郎アナウンサー

趣味・特技:高校と大学で少しかじったダンスです。

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2020年7月7日(火)放送より

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