改正児童虐待防止法施行 「体罰はいけないこと」

ざっくり言うと
子どもの権利を守るために、体罰を加えることの禁止を明文化
体罰をなくせば虐待は減る。今回の改正をそうした社会へのスタートに
2020/04/06 NHKジャーナル 特集 「虐待は防げるか 改正児童虐待防止法」ゲスト:高祖常子さん

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2020/04/06

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2020年4月6日(月)放送より

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【出演者】
武田キャスター:武田涼介キャスター
菅野キャスター:菅野真美恵キャスター
岩本デスク:岩本裕ニュースデスク
高祖さん:高祖常子さん(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事)


武田キャスター: 今月から児童虐待防止策を強化する関連法が施行されました。
菅野キャスター: 今回の法改正で果たして虐待は減るのか。認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、高祖常子(こうそ ときこ)さんにお話を伺います。
高祖さん: よろしくお願いします。
菅野キャスター: 高祖さんは長年、児童虐待防止の活動に取り組み、体罰禁止を法制化するよう訴えてきました。去年、千葉県野田市で10歳の女の子が虐待された事件が起きた後は、ネットで児童虐待防止に向けての署名活動を行い、2万人の署名を集めるなどして、法改正に向けて活動を行いました。
岩本デスク: 今回の法改正では、「子どもの権利を守る。児童相談所の体制強化。関係機関の連携強化」の3つがポイントです。それぞれについて、どう評価されているのか伺います。
まず「子どもの権利を守る」についてですが、「体罰を加えることの禁止を明文化」しました。この点についてはいかがですか?
高祖さん: しつけのつもりの体罰が、エスカレートして子どもの命を奪ってしまう事件が実際に起こっており、法律に体罰禁止が盛り込まれたことは大きく評価すべき点です。
岩本デスク: 次の「児童相談所の体制強化」については、児童福祉司の増員に加え、虐待を受けている子どもを保護する「介入チーム」と、家族関係の再構築を「支援するチーム」とを分ける体制をとることなどが求められています。体制強化についてはどのようにご覧になりましたか?
高祖さん: 「介入」と「支援」を分けるのは、児童相談所側がその後の保護者との関係を気にして一時保護をためらうケースが目立つという課題があったため、示されました。ただし、介入から保護者支援へとつなげていく場合もあり、明確に分けるのは難しいという現場の意見もあります。また、これまで設置されていない中核市に児童相談所を設置し、地域に根ざした対応をしていこうというものがあります。
岩本デスク: 「関係機関の連携強化」については、いかがでしょうか?
高祖さん: 児童相談所、市町村、警察などが緊密に連携をはかり、虐待されている児童を保護したり、その後見守る体制をとります。それぞれの機関での役割分担を明確にし、連係ミスを防ぐためにも、具体的にどうしたらいいのかなど、現場レベルでの落とし込みが必要だと思います。
武田キャスター: これら3つの改正ポイントの中で、高祖さんたちが長年、重点的に取り組んでこられたのが、「体罰の明文化」ですが、これにより虐待は減少するとお考えですか?
高祖さん: 1979年に初めて体罰を禁止したスウェーデンでは、法制化前の60年代、体罰をする人は9割いましたが、法制化以降、2000年代には1割に激減したといいます。
日本はまだスタートしたばかりで、課題はいろいろあります。明文化されましたが、体罰についての罰則は設けられていません。これは、罰則を設けると周囲の目が厳しくなったり、親を追い詰めることにもつながり、逆に子育てしにくくなるためです。罰則がなければ、法改正しても子どもへの虐待に歯止めがかからないのではないかという声もありますが、まず、「子育てに体罰を使わないことが虐待を減らすことにつながる」という共通認識を、社会全体で持つことが重要です。

もうひとつは、民法の「懲戒権」です。懲戒権では、親が子どもを戒めることを認めています。虐待を行う保護者にとっては、「しつけと称して自らの行為を正当化する口実にもなる」ため、2年後に民法の規定を見直すことになっています。体罰禁止が明文化されたので、懲戒権は削除する方向に行ってほしいと思います。
菅野キャスター: 体罰による子どもへの影響も言われ始めていますね。
高祖さん: 子どもの成長・発達に悪影響がでています。
身体面では、厳しい体罰を受けた子どもの脳を調べたところ、社会生活に重要な脳の部分である「前頭前野」の容積量が、およそ2割ほど減少したという、福井大学の友田明美先生の研究成果が発表されています。
精神面では、暴力を受けて大人になった人の中には、思い通りにならないと暴力で支配しようとする人もおり、暴力の連鎖が心配されます。社会から暴力を減らすためにも、まず体罰を止めることが必要です。
岩本デスク: 改正児童虐待防止法をきっかけに、どういうふうに変わっていってほしいと思われますか?
高祖さん: 厚生労働省のデータでは、子どもが虐待を受けた事件のうち、加害者の8割が実の母親・父親です。今回の法改正で、子どもに手を上げていた親が「体罰はいけないことだ」と踏みとどまり、子どもとの向き合い方をかえること、それが大事です。
子どもが言うことを聞かないからと怒って手をあげてコントロールするのではなく、子どもの気持ちを尊重して折りあいをつける。そうした親子関係を皆が作りながら、体罰によらない子育てが当たり前になったときに、児童への虐待がなくなっている。今回の法改正によって、そのような社会へのスタートをきったということです。
岩本デスク: 新型コロナウイルスの感染拡大で家に家族が集まっていることが多くなると、イライラがつのることもあるかもしれません。体罰をしないことの重要性を、家族、社会の皆が理解することが大切です。今回の法改正により、この考えが広まってほしいですね。
菅野キャスター: 高祖さん、ありがとうございました。

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2020年4月6日(月)放送より

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