ファッションは力。患者らしくではなく、私らしく生きるために

ざっくり言うと
“患者らしく”みじめに生きるのではなく、“私らしく”毎日を豊かに生きたい
がん治療の経験を生かして、機能性とファッション性を兼ねたケア介護ファッションブランド設立
2019/09/02 NHKジャーナル 医療健康「患者の立場で作るケアブランド」 ゲスト:塩崎良子さん(ケア・介護用品ブランドのデザイナー、TOKIMEKU JAPAN社長)

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くらし・健康

2019/09/02

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2019年9月2日(月)放送より

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【出演者】
塩崎さん:塩崎良子さん(ケア・介護用品ブランドのデザイナー、TOKIMEKU JAPAN社長)
岩本デスク:岩本裕ニュースデスク
山田キャスター:山田康弘キャスター
菅野キャスター:菅野真美恵キャスター


塩崎さん(手前中央)を囲んで

岩本デスク: がんと闘い、その経験から生まれたケア・介護用品ブランドのデザイナーでTOKIMEKU JAPANの社長、塩崎良子さんにお越しいただきました。スタジオには塩崎さんが作った商品をお持ちいただいたのですが、カラフルでおしゃれな感じですね。
塩崎さん: 私達のケア介護ブランドは、人生のどんなときも「イロドリ豊かな毎日」をテーマに作っています。なので、ケア介護であっても、カラフルで、華やか、上品な世界観を表現しています。
菅野キャスター: こちらは、スカートですか?
塩崎さん: 車いす用スカートです。膝にかけるだけでスカートに見えるひざ掛けなんです。裏生地がすべらないようになっていたり、車輪に巻き込まれないようにすそがカーブしていたりと、工夫しています。
菅野キャスター: こちらはブラウスに見えますが。
塩崎さん: 介護用エプロンです。お食事用のエプロンですが、ぱっと見、ブラウスに見えるようなデザインにして、しっかり撥水(はっすい)加工もしてあります。
岩本デスク: どうしてケア介護のアパレルブランドを作ろうと思ったのですか?
塩崎さん: 私は数年前に若年性のがんになり、長い闘病生活を送っていたのですが、そのとき手にしたケア用品が、とてもかっこ悪いものだったんですね。おしゃれかどうかという以前に、身に着けるといかにも病人らしい姿になってしまうものばかりでした。しかもどれも同じようなデザインばかりで、「囚人のようだなぁ」なんて感じていました。その姿を家族に見せるのも、とても心苦しかったですね。

そのときに、あったらいいなと思ったのがこのパジャマです。こちらは胸下に切り替えをしたりギャザーをよせていたりと、スタイルが良くみえるようなデザインにしました。入院のときにも着ていただけるように、注射などの処置がしやすかったり胸元が透けないようになど工夫しています。生地も速乾性があり、長時間着ていても楽で肌なじみが良い生地で作っています。

これまでのケア介護用品は機能性ばかりが訴求されていて、ファッション性は置き去りにされていました。私は病気になる前はアパレル会社を経営していたので、私の闘病の経験とアパレルでの経験をかけ合わせれば、機能性とファッション性を兼ね備えた、患者さん達が買うのが楽しくなるような素敵な製品を作れるかもしれないと思ったのがきっかけです。
山田キャスター: 塩崎さんのがんが発覚したのはいつごろですか?
塩崎さん: 2013年の冬、出張中に、胸にゴルフボールのようなしこりがあることに気づいたんです。帰国してすぐに診断を受けたら悪い予感があたってしまって、若年性の乳がんを告知されました。すでに脇に転移もあり、抗がん剤治療をすることになりました。治療を始めるとすぐに髪が抜け始めてしまって……。そのときにあったらいいなと思ったのが帽子です。私が初めて作った商品で、おしゃれなスカーフに見えるようにデザインしました。脱毛していても頭がふんわりと見えるように縫製したり、柔らかで通気性のいい生地で作っています。
菅野キャスター: お仕事をやめて治療に専念されたそうですね。
塩崎さん: そうですね。抗がん剤の治療はつらかったんですが、それでも治療中はがんという倒す相手がいるためにモチベーションを保つことができました。体が楽なときは、海外旅行などで気晴らししました。でも治療を終えたとき、次のモチベーションをどこに持っていけばいいのか、分からなくなってしまって。気づいたときには、仕事もない、健康もない。未来には不安しか感じられず、「自分に残ったのは、“がん患者”としてのアイデンティティだけになってしまった」と感じちゃいました。

でも、“患者らしく”みじめに生きるのではなく、“私らしく”毎日を豊かに生きたいと、強く思うようになりました。患者になると、衣食住を楽しむことが制限されてしまいます。でも私らしさって、好きな服を着たり好きなものを食べたりという、ささいなことでできていると思うのです。だから自分の得意な「装う」という分野で、患者さんが、自分らしく生きられるお手伝いができるのかなと思うようになっていきました。
山田キャスター: 今後の目標は?
塩崎さん: まずは、このケア介護のアパレルブランド「KISS MY LIFE」を多くの方に知っていただきたいです。ケア介護にまつわる製品は、「これも変えたら素敵になるかも」という製品がたくさんあるんですね。在宅での療養時の防臭シーツやカーテンとか、機能性とファッション性を兼ね備えた製品を開発していきたいです。生産するのは非常に根気がいる作業ですが、幅広く、いろいろな製品をライフスタイルブランドとして生産していきたいです。
現在はネット販売や病院での自社店舗、自社カタログでの販売が主ですが、日本中、どこへいっても、気軽に買えるようなブランドにしたいと思っています。2人に1人ががんになり、多くの人が、介護が必要になるこの時代です。決して特別なことではありません。患者になっても身体が不自由になっても、毎日をイロドリ豊かに、誰もが私らしく生きられる社会を、この事業を通して作っていきたいと思っています。
岩本デスク: みなさんが、楽しい気分になれるような素敵な製品を作っていただきたいですよね。ファッションって、そういうものですものね。力になりますからね。
菅野キャスター: ありがとうございました。

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2019年9月2日(月)放送より

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