震災当時に作った演劇を上映し続ける相馬高校の卒業生たち

ざっくり言うと
被災した自分たちの思いをなかなか話せなかったからこその演劇だった
上映を続けるのは自分自身が忘れないため。そして震災を伝えるため
2020/03/10 三宅民夫のマイあさ! 三宅民夫のおすすめ! 震災特集「あのときのことを忘れないために 相馬クロニクル」

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2020/03/10

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2020年3月10日(火)放送より

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【出演者】
三宅キャスター:三宅民夫キャスター
富岡ディレクター:富岡亮ディレクター
大久保キャスター:大久保彰絵キャスター


三宅キャスター: あすは東日本大震災から9年です。当時福島県の高校生が被災をテーマに作った演劇、それからドキュメンタリー番組、こういう活動をしていたのはみなさん思い出されると思うんですが、その高校生たち、つまり卒業生が、そういった演劇のビデオやドキュメンタリー番組の上映会を、今も各地で頻繁に続けているというんです。どういう上映会で何を伝えようとしているのか。取材に当たったラジオセンターの富岡亮ディレクターに聞いていきます。
富岡さん、よろしくお願いします。社会人の方もいるわけですよね。
富岡ディレクター: そうですね。社会人とか大学生の方が中心になってされています。
三宅キャスター: 具体的にはどんな活動をされてるんですか。
富岡ディレクター: 福島県立相馬高校の部活の放送局の卒業生の人たちが運営する「相馬クロニクル」による上映会なんです。
当時の相馬高校放送局に所属する高校生だった皆さんが、高校生の視点で感じたこと、体験したことを、演劇として上演したり、ドキュメンタリーとして記録したりしてきたんです。そうした映像を全国各地で上映する活動を続けていて、今は20代になった卒業生6人が交代で参加して、この1年間で20回以上の上映会を開きました。
三宅キャスター: すごいねぇ。
富岡ディレクター: 私はおととい(3月8日)、東京都練馬区で開催された上映会のもようを取材しました。上映会は新型コロナウイルスの影響で規模を縮小、現役の高校生から高齢の方までおよそ25人が集まりました。上映作品の一部をお聴きください。

「誰かお願いです。私の話を聞いてください」
「誰かお願いです。私たちの話を聞いてください」
「子どもの訴えを無視しないでください」
入学式。あの日は雨だった。
体育館の壁が壊れていて、そこから雨がふきつけていた。みんな制服の準備が間に合わなくて、ばらばらのかっこうをしていた。なんとなく不安だった。


大久保キャスター: まさにあの時の空気を思い出すような、そんな声でしたね。
富岡ディレクター: そうですね。この日は原発の風評被害に苦しむ高校生の気持ちをそのまま表現した演劇の記録や、2011年の入学式からの活動を記録したドキュメンタリーなど4つの作品が上映されました。
三宅キャスター: 今の作品を聴いてると、学校のあった相馬市の被害、結構あったわけですね。
富岡ディレクター: そうですね。相馬市では津波などで500人近くが亡くなりました。また原発の放射能への不安から、避難した人も多くいました。相馬高校そのものは津波の被害はありませんでしたが、生徒たちの間では当時被災についての気持ちを語ることは難しかったと言います。
今回の上映会に参加した卒業生の1人、小泉結佳(こいずみ ゆいか)さんは、被災当時は中学1年生。2年後に相馬高校に入学しました。当時の高校の中の雰囲気をこう語ります。

小泉さん: 被災体験のことを話すような機会もないですし、友人の中には家族だったり親しい友人を亡くされた方々もきっとたくさんいたので、うかつに被災体験について、軽々しく聞けるような雰囲気ではなかったかと思います。

三宅キャスター: そういうこと、話せなかったんだね……。
富岡ディレクター: そんな中で、あえて被災をテーマにした作品を作りました。当時なぜ作品を作って、なかなか打ち明けられない気持ちを表現しようとしたのか。被災当時中3で、直後の4月に相馬高校に入学した蓑野由季(みのの ゆき)さんはこう話します。

蓑野さん: 特に震災直後1年目って、大人側がインタビューされたり。実際子どもがインタビューされたり、子どもはこういうふうに意見を言ってますみたいな放送を見たことがなかったんです。だから正直その当時は、「なんだよ、大人のことばっかり取り上げて」って(笑)、思ってるところはあったんですね。だからこそ、今の私たちの現状を伝えたいっていうのは、当時実際に思いとしてはあったかなと思います。

大久保キャスター: 子どもの声を聞いてほしい、向き合ってほしい、そういう思いがあったわけですね。上映会はどのように進められたんですか。
富岡ディレクター: まず被災した福島をテーマにした演劇の記録やドキュメンタリー、ドラマを上映しました。その後、制作に携わった卒業生の人たちが今の思いを会場で話しました。

卒業生Aさん: ひとりひとり、震災テーマは違っていて、震災は福島だけじゃなくて東京でもみなさん経験していると思いますし、お互いに共有し合うというのがすごく大事かなと思っています。
卒業生Bさん: ドキュメンタリー作品の最後のナレーションですね。震災のことを何の遠慮もなしに語り合うことは難しい。でも伝え合うことの意味と大切さをみんなで分かち合える日が来てほしい。どれほど長い時間がかかるか分からないけれど、いつか、と。
卒業生Cさん: このたびはありがとうございました。
富岡ディレクター: きょう、ご覧なってどんなふうに感じられました?
観客Aさん: 私は東京のものなので、福島の特に高校生がどんなことを当時考えていたのかっていうのを感じさせられて、まだまだ終わらない問題なのでどう関わっていけたらいいかを改めて考えさせられているところです。
観客Bさん: 高校生が育っていって震災の体験が成長するごとに変わっていく。でもその震災っていうのに戻っていくっていう、その同じことに戻っていくんだけどそのつど違う言葉が出てくるっていうのを、きょうもまた作品を感じさせて頂いて、その時間の流れっていうのはちょっと深く観させていただいた感じがします。

大久保キャスター: 時間とともに、考えですとか思いも少しずつ変化していくんでしょうね。長く上映活動を続けられていますが、OBの方々は9年たった今、なぜ、どういう思いでこの上映会に臨んだんでしょうか。
富岡ディレクター: さきほどお話を伺った小泉さん、蓑野さんに上映会後に伺いました。

小泉さん: 本当にタイムカプセルを開けるような気持ちで、「あっ、そういう思いだった。そうだ、そういう景色だった」っていうものを思い返すいい機会になったかなと思います。
蓑野さん: 私自身も、このイベントとか上映会に参加することによって自分自身忘れないようにするっていう意識があって、そういったきっかけになっているかなっていうのはあります。今後こういった活動を続けていくことによって、多分いろんな方に、震災について振り返ってかつどうしていけばいいのかを考えていただける機会になるかなと思っているので、今後とも上映会は続けていきたいと思っています。

大久保キャスター: 自分自身が自分の気持ちを忘れないようにするというのは印象的ですよね。
三宅キャスター: 自分たちが忘れないようにして、そして震災のことを伝えていくっていう2つの意味があるんですね。富岡さん、取材をしてどういうふうに感じましたか。
富岡ディレクター: 子どもたちがどんな思いだったかっていう記憶というのは、成長するにつれて本人でさえどんどん薄れていくと言うんですね。ですので、当時の子どもの声をどう伝えていくのか、そしてそれをどう未来に生かしていくのか、私たちもしっかりと受けとめて考えなければならないというふうに考えました。
三宅キャスター: NHKの世論調査で「東日本大震災発生から9年で、震災について風化が進んでいると思うか」とたずねたところ、「そう思う」という人が26%、「ややそう思う」が46%という状況があることが分かっています。そういう中でのこういう活動、とても貴重だと思います。

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2020年3月10日(火)放送より

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