「東京五輪・パラ経済効果の予想32兆円超」のゆくえ

ざっくり言うと
開催に直接関わる投資や支出による「直接的効果」5.2兆円、大会後の収益を見込んだ「レガシー効果」27.1兆円
開催によって生まれる「負のレガシー効果」対策も。工夫なくして30兆円規模の経済効果なし
2020/03/03 「三宅民夫のマイあさ!」マイ!Biz 崔真淑さん(エコノミスト)

情報

スポーツ

2020/03/03

放送を聴く
2020年3月3日(火)放送より

記事を読む

【出演者】
田中キャスター:田中孝宜キャスター
崔さん:崔真淑さん(エコノミスト)


田中キャスター: きょうのテーマは、「東京オリンピック・パラリンピックと日本経済」です。エコノミストの崔真淑(さい ますみ) さんにお聞きします。新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますけれども、東京オリンピック・パラリンピックへの影響は、経済的な視点でどのようにご覧になっていますか?
崔さん: 新型コロナウイルスによる経済そのものへの影響がまだ見えない状況なので、それを考えると新型コロナウイルスによる東京オリンピックへの影響、さらにはそこからの経済の影響というのもまだ算定しにくい状況です。ただ、WHOが発表した緊急事態宣言が取り下げられないかぎり、オリンピックによる経済波及効果に大きな打撃を与えることは間違いないと思います。東京オリンピックということによって知名度が上がり、たくさんの人が日本に来てくれるインバウンド需要が見込みにくくなるかもしれないということなんです。世界各国が日本への渡航に注意を呼びかけている現状では、インバウンド需要の伸びも見込めず、経済への影響も見えにくいという感じですね。
田中キャスター: いずれにしても、大会開催においては対策やリスク管理をきっちり講じていかなければいけないということですが、改めて東京五輪の経済的効果について伺っていきたいと思います。東京オリンピック・パラリンピックの経済効果として、よく、「30兆円を超える」と言われますけれども、この数字はどのようにして試算されたものなんでしょうか。
崔さん: これは東京都オリンピック・パラリンピック準備局が、招致が決まった2013年から大会から10年がたった2030年までの18年間、東京オリンピックの開催によってどう経済効果があるかを試算したもので、「32兆3000億円の経済波及効果がある」と言われています。試算の仕方としては、経済効果を大会開催に直接関わる投資や支出による「直接的効果」と、大会後の収益を見込んだ「レガシー効果」に分けて算出しています。
田中キャスター: 「直接的効果」と「レガシー効果」、どんなふうに分けて算出しているんですか?
崔さん: 直接的効果は、競技場の整備費、警備などの大会運営費、観戦者の支出、企業のマーケティング支出といった大会すべてに向けて行われた直接的な支出です。また大会期間中にどのぐらいのお金が動くのかを試算したものです。これが大体5.2兆円と試算されています。
レガシー効果というのは、交通インフラ整備、バリアフリー対策、インバウンドの増加、競技会場の活用、スポーツ人口・イベントの拡大といった、大会のあとに見込まれる経済効果。これが27.1兆円という数字になっているんですね。
田中キャスター: 5.2兆円と言われる直接的効果ですけれども、どんな分野が東京オリンピック・パラリンピックの開催によって業績が上がるのか。このあたりはいかがですか。
崔さん: 分かりやすいところでは建設業など大規模なインフラ需要があるんですけども、これはすでに終わっていると。ただ、観光業のホテルであるとか、次世代通信規格「5G」関連のビジネス、いわゆるIT・精密機械関連、または英会話教室、輸送、警備などは大会が終わるまでは好調を保つだろうとは言われています。
田中キャスター: 業績が悪化している分野もありますか?
崔さん: 例えば大会期間中は交通規制などがあり、「混雑回避休業」などといって企業活動が鈍化する可能性が考えられます。特に配送業であるとか、コンサート会場が通常通り使えないエンタメ産業には一時的に経済の下押し圧力がかかるかなと予想されます。
田中キャスター: 続いて、レガシー効果についてお伺いしたいと思うんですが、都が試算した経済波及効果の数字の32兆3000億円のうち、27.1兆円がレガシー効果だということですね。かなり多くを占めていますが、この試算をどう見ていますか?
崔さん: この試算では大会後、10年間は経済効果が続くと予測しています。ただ、過去のオリンピック開催国を見てみると、「開催の2年前には経済効果が全体的に終わっている」という学術論文も存在しているんです。大会後の27.1兆円というレガシー効果は、私としては本当に続くのかなというふうに思ってしまうんですね。
田中キャスター: そうしますと、すでにオリンピック特需は終わっているというふうにお考えのようですけれども、大会終了後も恩恵を受けるビジネスというのはないのでしょうか?
崔さん: 「終わっている」とひとことで言い表すにはなかなか難しいところがあるんですが、オリンピック特需、オリンピック経済効果が大会後も10年間すごく続くよというふうには思わないほうがいいなと思うんですね。
でも期待できる分野もあると思います。例えば、インバウンドの増加ですね。あくまで新型肺炎の影響がない形での開催ならば、オリンピックを見るために日本に来たいと考える外国人の方が増えると思いますし、そういったことが東京・日本の知名度を上げて、インバウンド需要をこれからすう勢的に上昇させる効果もあるんじゃないかと思っています。だけど期待できない分野もあるとは思うんですね。
田中キャスター: どういう分野になりますか?
崔さん: 交通インフラ整備、競技会場の活用、スポーツ人口・イベントの拡大といった分野。先ほども指摘させていただいた通り、インフラ投資は終わっているし、新しい競技場ができたとしても少子高齢化の日本の中でスポーツ人口がものすごく増えるかっていうと、なかなか難しいところもあると思うんです。
田中キャスター: 総合的に見て、東京オリンピック・パラリンピックの日本経済のインパクトは、どういうふうに考えていますか?
崔さん: 経済効果はリスク要因が含まれていないので、開催することによって生まれる“負の部分”も見ることが重要だと思うんです。例えばインパクトで考えると、これまで大会に向けて行った投資がむだにならないような対策が必要だと思います。新しく作った競技場が大会後にまったく使用されない状況が生まれれば、それは負のレガシー効果になります。日本経済にはマイナスのインパクト効果も考えられるんですね。負のレガシー効果が生まれてしまった有名な国として、ギリシャなどが挙げられます。
国際イベントは直接的投資を生むカンフル剤的な役割を果たすんですが、大会を行ったあとが何よりも大事ということを念頭に置きながら、交通インフラや競技会場をうまく活用する。それをぜひ念頭に対策を打っていただきたいなと思いますね。
田中キャスター: 負のレガシー効果としてギリシャを挙げられましたけれども、具体的にはどういうことですか?
崔さん: ギリシャという国はアテネオリンピックがあったわけなんですが、あのときに使った競技会場が今はほぼ活用されておらず、草が生えているような状況になっているんですね。財政が困窮していること、EUに加盟していることから金融政策も自由度が高く運営できないことから、経済がほぼ破たんしてしまったことが影響しているんですね。もちろんいろんな複雑な要因が絡み合ってはいるんですけれども、ああいった形になると、とても悲しいことになるので、どううまく活用するのか、次のお金にどう変えていくのか、政策として考えていただきたいなと思いますね。
田中キャスター: レガシー効果として、試算では27.1兆円と出ていますけれども、黙っていてもこれだけあるというわけじゃなくて、これからいろんな工夫が必要だということですね。
崔さん: そうですね。工夫なくして30兆円規模の経済効果はないと思います。

放送を聴く
2020年3月3日(火)放送より

Related Articles関連

Latest新着

トップページへ戻る