『詐欺の子』制作者が語る 「特殊詐欺」の実態

ざっくり言うと
愛知県では捕まる「受け子」の4割が未成年 罪の意識の薄い子どもたち
被害者本人だけでなく、周囲も苦しむ犯罪
2019/04/10 「三宅民夫のマイあさ!」 三宅民夫の真剣勝負! ゲスト:川上剛ディレクター(名古屋放送局)

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2019/04/10

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2019年4月10日(水)放送より

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2019年4月10日(水)放送より

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【出演者】
三宅キャスター:三宅民夫キャスター
川上ディレクター:川上剛(かわかみ たけし)ディレクター(名古屋放送局)


三宅キャスター: 先月下旬、「NHKスペシャル」で『詐欺の子』というドキュメンタリードラマが放送されました。「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の被害者と加害者を丁寧に取材。それに基づいてドラマを制作。実際に詐欺が起こった現場も撮影の場所になりました。
取材制作した名古屋放送局の川上剛ディレクターです。どうしてこのドラマを作ろうと思ったんですか。
川上ディレクター: 自分は2年前の夏に転勤で東京から名古屋に異動したんですけれども、東海地方でも夕方のニュースで毎日「ストップ詐欺」というニュースコーナーがあって、毎日新しい詐欺の手口が紹介されているんです。
まず、東海地方でもこんなに詐欺が多いっていうことに驚きました。それから、職業柄取材の電話をかけるんですけども、最近全然高齢者の方が電話に出てくれないということに。
三宅キャスター: それは警戒している?
川上ディレクター: そうなんでしょうね。ディレクター始めて10何年なんですけども、10年前はもっと皆さん電話に出てくださっていたような思いがありまして、これはひょっとするとニュースでやってるように皆さん詐欺を警戒されているのかなと、ちょっと疑心暗鬼になりました。
それで愛知県警にも取材に行き、そこで分かったのが衝撃の事実だったんです。「この詐欺が始まってもう10年以上経っているのに、なぜ無くならないんですか」と聞きましたところ、「残念ながら今、未成年の若者たちがこの犯罪を支えてしまっている」と。愛知県でも捕まる「受け子」の4割が未成年。これは全く知らなかった事実。
もう「オレオレ詐欺」始まって長いんですが、こんなに知らないことがたくさんあったんだと取材を繰り返し気づくことも多く、それからというもの、個人的な話ですけれども、引っ越して新居に移りますよね。そうすると電力会社やガス会社から請求書のはがきが届くじゃないですか。もう全部詐欺に見えてしまって、「あれ、待てよ、これも詐欺なんじゃないか、取材してこういうケースあったよな」という日々を送るようになってしまって。
こんな世の中おかしい。どうして当たり前に生活できないんだろう。何で人を疑ってしまうようになってしまったんだろうな、この世の中。これは何とかしなきゃならない、何とかしたいな、と。
「当たり前に人を信じられる世の中を少しでも取り戻したい」と思って企画したのが始まりでした。
三宅キャスター: そして、実際に詐欺の被害者それから加害者に取材をした。
川上ディレクター: 主に全国の少年院10か所以上回って、20人近くの少年少女に詐欺に関わってしまった話だったり、もっと組織の上にいる電話をかけてる子だったり、かつてトップに君臨していたリーダーの人間にも会って話を聞いたり。被害者ももちろんですけど、弁護士の先生、愛知県警。いろんな話を聞いてドラマを作りました。
三宅キャスター: そこから何が見えてきたか、生々しい話を聞いていこうと思うんですが、一言で言うと何が見えましたか。
川上ディレクター: やっぱり「産業」なんですよね。巨大な産業になっていると。
例えば1人の「受け子」が逮捕されました、とニュースでは流れるんですけども、その「受け子」、お金の受け取り役の背景には、電話をかける人間、そのお金を運ぶ人間。時には見張りや送迎役、「名簿」という高齢者の個人情報を載せた名簿を手配する者や、「箱」といってアジトを提供する者。何百人、下手したらもっと。
一大産業になっていてですね。いくら下っ端の人間を捕まえても、トカゲのしっぽ切りで終わってしまうことにまず非常に驚きました。
三宅キャスター: ラジオを聴いてる方がツイッターで<生活不必要なことを、産業と言っちゃダメだよ。せめて組織化ってぐらいにとどめないと、やってる方が産業だと肯定されたと喜んでいるよ、きっと>とありますが、多分意図としては、そのような大きなものになってるってことを認識したほうが良いという、そういう思いですよね。
川上ディレクター: そうです、巨大な組織になっていますね。
三宅キャスター: 実際に子どもたちはどのように犯罪に引き込まれてるんですか。どういう子たちなんですか。
川上ディレクター: 少年院の子たちに話を聞いてきたんですけれども、すごく驚いたのが、最初に声かけられたのいつ?と聞いたら、中2、中3とかその辺りの年齢で、当たり前のように数万円もらえるよっていう話をされます。
驚きなのが、非行が進んでない子も多い。いわゆる不良っていうか、グレてない子たちだったりが、「先輩の先輩の紹介」といったような、間に何人も挟んで、詐欺とも言われず「グレーな仕事だよ」とか「荷物を運ぶだけだよ」という口車に乗せられてしまう。そういうような事態がありました。
中には塾に通っている、進学校に通っているような、それで、お小遣いをもらってるような子もいました。
三宅キャスター: 普通の子たちが日頃の人間関係の中から吸い込まれていく。どのような家庭の子どもたちですか。
川上ディレクター: 両親は共にいらっしゃる子もいましたし、片親の子もいましたけれども、共通していたのは「居場所がない」という声ですね。家庭などにいる場所がなくて、どうしても夜な夜な外に出てしまう。そうすると不良交友も始まってしまうし、そういった先輩たちの中で過ごすうちに感化されるといいますか、誘われてしまって、何気なく、半ばスリルを味わうような、と証言をしていた子もいましたね。やってしまうと。
三宅キャスター: そういう子たちをひきつけていく詐欺グループの上層部の仕組み、あるいは戦略といいますか。どうなっているんですか。
川上ディレクター: これがまさに巧妙で。いわゆる「受け子」の上にはそのお金を運ぶ「運び屋」、その上には実際電話をかけている「かけ子」がいて、更にそのかけ子を束ねる「箱長(はこちょう)」というような役職もあって。更にその上に「リーダー」という資金を提供してハードの面を整備するような役割もいて、ピラミッドになっています。
だから、ここが問題なんですけれども、あまりにも組織が強大なために、お金をもらう少年も自分も本当に小っちゃな歯車にすぎないと思い込んでしまうんですよね。だから捕まった時にみんな思うんです、「えっ、何で荷物運んでいるだけで僕捕まるの?」と。
三宅キャスター: それにしても悪いことをやっているって感覚は少しはあるんじゃないかと思いますが。
川上ディレクター: 中には実際にお金をもらう瞬間に罪悪感が芽生えて逃げ出しちゃったって子もいましたね。
三宅キャスター: 上層部はどういうふうに。
川上ディレクター: そうすると、もう詰めるといいますか、責められて。
僕が聞いたのは、ある子が「もう詐欺やめたいです」と言って断りに行ったら、「来週300万もらえる案件があるんだぞ、お前じゃあ300万払え」と請求されたとか。そして、暴力や脅しなんかで支配されて。ドラマでもあったんですけれども、わざと捕まる子もいますね、やっぱり。逃げ出したい一心で。
三宅キャスター: ドラマを見ていて思ったんですが、上層部も、子どもたちに「これは意味がある活動だ」っていうような洗脳って言うんですか、やっているんですね。
川上ディレクター: 組織のトップの人間が言っていた話なんですけども、「俺たちが高齢者の皆さんのタンスから貯金を引きずり出して、例えばキャバクラなんかで豪遊して飲みまくると。そうするとキャバクラの女の子たちの給料が上がって銀座で買い物しまくると。そうやって俺たちが社会に金を回してるんだ。1000万お金持ってる人から800万奪っても大丈夫だろ」、そういう論理なんですよね。
社会に還元する、社会に回すと。中にはそういった格差を日々、感じている若者たちも大勢いるじゃないですか。その子たちの心に巧みに忍び寄って洗脳していくといったケースがあります。
三宅キャスター: あと、被害者となる人たちのことを、犯罪グループは「被害者」というふうには言わない。
川上ディレクター: 言わないですね。これもいろんな言い方があるんですけれども、ドラマの中では「対象」という言葉を使いましたけど、ほかにも「お客さん」だったり「ターゲット」だったり。また、お金のことは「伝票」と呼んだり、「封筒」とか呼んだり。要はごまかすんですよね。
三宅キャスター: 悪いことだっていうイメージを消していく。
川上ディレクター: 消していきます。で、お金を受け取ってきた子を、「お前上手くやったな」と褒めてあげて、「お小遣いだよ」と言って、変な言い方ですがかわいがってやったりして組織から抜け出さないようにしたりとか。
三宅キャスター: 実際そういう犯罪に走ってしまった子どもたちにインタビューをしたそうですけれど、どういう言葉が一番印象に残ってますか。
川上ディレクター: 「友人を助けたかったんです」という子もいました。お金で困っている友人がいたので受け子の仕事を紹介した。「その子のためにやったのに何で俺が捕まらなきゃいけないんだ」と、逮捕された瞬間に思ったと。
あとは、今も覚えているのが、「17歳から18歳まで1年間、ずっと1人でラブホテルを転々としながら詐欺の電話をかけていた」という証言をしてくれた男の子がいて、17歳と18歳ですよ。いわゆる青春時代じゃないですか。人生の一番楽しいはずの時期にそんな青春を送らせてしまう、そんな犯罪に走らせてしまう社会って何なのだろうなっていう思い、取材の当初からがく然と打ちのめされた思い出がありましたね。
三宅キャスター: 実態がいろいろ見えてきました。被害にあわれた方々はどういう気持ちでいらっしゃるのか。そこも取材をしたんですね。何が見えてきましたか。
川上ディレクター: お金を取られて終わりじゃないんです、この犯罪の被害者の方がたどる道といいますのは。
取られたあとにまず家族から責められます。近所から馬鹿にされたり、あるいは妬まれたり。あんなにお金もらってて良いわね、とか陰口を叩かれてしまったり、認知症になったんじゃないのかと言われてしまったり。
人間不信になりますよね。孤立して、孤独になって家から出なくなったりして、最悪の場合、自殺をしてしまうというケースも多くあります。
三宅キャスター: そこら辺のところはあまり私たち今まで考えてこなかったし、報道もさほどされていませんけど皆さん苦しい思いをしてらっしゃると。
川上ディレクター: 本当に苦しい思いをしてますね。「どうして分かってもらえないのだろう」と。「自分は息子を助けたかっただけ、孫を助けたかっただけなのに」という思い、「これだけは分かってほしいと」いう思いを誰にも打ち明けられず苦しむ方がたくさんいまして。
でも、まだそれで終わりじゃないんです。自殺をしてしまった場合、自殺に追い込んでしまう原因を作った遺族もまた、自らを責めてあとを追いたいというような、そういったケースもあります。
この「負の連鎖」が続いてしまうのがこの犯罪のひどいところです。
三宅キャスター: 先ほど、川上ディレクターは詐欺というものが、個々の犯罪というより大きな組織化された産業みたいな感じになっているんだっていうふうに話しましたね。そういう中で、私たちはどうしていったら良いんですか。
川上ディレクター: 高齢者の皆さんに注意を呼びかけても限界があると思うんですよね。「そもそもだまされる方が悪いんじゃないのか」っていう意識がやっぱり、誰かしらの心にも少しあるのかなと思います。
だます方が圧倒的に悪い犯罪なのに、「あれだけ注意喚起しているのに何でだまされるんだろう、だまされる方が悪いじゃん、自己責任じゃん」という今の現代日本の空気と言いますか。そういったものから変えていかなきゃいけないなと。
まずは加害者側に、この犯罪はどういうことになるのか、ということを世に訴えていきたいと思っています。

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2019年4月10日(水)放送より

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