宮本浩次② 新曲は「みんなの宝物になるといいな」

ざっくり言うと
驚がくのレコーディング! 高橋一生の「歌心のある声」
ニューシングルで追体験したロックバンドの初期衝動
2019/10/28 ミュージックライン 【ゲスト】宮本浩次

音楽

2019/10/28

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【出演者】
南波:南波志帆さん(MC)
宮本:宮本浩次さん


「宮本浩次の声」で、いろんな歌を歌いたい

南波: テレビCMへのご出演も印象に残っております。クールな野武士姿や「逃げるスマホ」を追いかける宮本さんを拝見することができました。
このCMで流れていた「解き放て、我らが新時代」がヒップホップ。「ラップで」という明確なイメージを初めから持って曲を作られたんですか?
宮本: 宮本浩次という歌声は、40年近くかけて、それなりにスタイルみたいなものがあるのかなって思ってて。「宮本浩次の声が、どうやったら一番届きやすいのか」っていう客観的な部分。あと、自分のやりたいこと。「解き放て、我らが新時代」もそうだし、カバーの曲もそうなんだけれども、その両面を自分で…コントロールしていくのが得意か不得意かっていうのは別として。
ただ、ラップにはすごく憧れていてね。ラップの人たちの自由…たぶん決まりごとがあるうえでの自由だと思う。私のは独自の、得手勝手なものなんだけれども。言葉を、メロディーじゃなくて乗せて、自由に叫んでる姿には憧れがあって。「自分でもやってみたい」って。そういう意味では、感覚的なものになってると思うんだけど。
「自分の歌声って何だろう?」って思ったときに、いろんな届き方…「どこでかするか」「どこかでかすればいいだろう」みたいな魂胆があるわけですよ。メロディーのきれいな歌でもいいし。宮本浩次の歌声というものが市民権を得たいといったときに、欲張りにいろんなことができて、「どこかでかすれば、誰かがレコードを買ってくれるんじゃないか」みたいな。
南波: 無限に可能性がありますもんね。
宮本: 誰もがそうだと思うんです。私なんか歌手ですから。そういう意味じゃ、いろんな歌を歌いたい。
CMソングという中で、明快なテーマがあった。携帯電話のときも、クリエイターの方からお題をもらってたんで。そういう制限があると、自由みたいなものがむしろ目覚めますよね。
徹底的にほったらかしにされてても、ゼロから組み上げる。音楽って、縛りがあったりするほうが、逆に縛られないっていうか。
南波: 逆に燃えたりもしますしね。
宮本: そう。むしろ、サウンドに関しては自由度が高かったから、いろんな挑戦ができました。

高橋一生プロデュースは驚きの連続

南波: 今年は高橋一生さんのアーティスト・デビュー作品に楽曲提供・プロデュースで参加されました。この番組にも高橋一生さんにお越しいただきまして、宮本さんへの恋にも似た愛とリスペクトを語ってくださったんです。

<高橋一生の「止まらない」音楽の話>はこちら

宮本: うれしいな…あの方は竹を割ったようなお話をされるから、わかると思うんですけど、男気のあふれる…年は若いんだけど、しっかりした、一本気で、男らしい方で。
一番びっくりしたのが、レコーディングのとき。彼は舞台もやるからかもしれないんだけど、マイクが割れてたもんね。みんな驚いちゃって。普通の歌手だって、私だって、声は大きいんだけど。
レコーディング・スタジオに高橋一生さんが来て、最初にリハーサルで「きみに会いたい-Dance with you-」を歌ったときに、声が通るんですよね。歌声もさることながら、迫力のある地声のすごみ。「歌心のある声」プラス「パワフル」。
南波: 確かに魅力的な声ですもんね。
宮本: 彼を想定して作った歌で、彼が歌うことによってかっこいい曲になった。(自分も)いっぱいコーラスで歌って。
南波: それがまた素敵です。
宮本: そうなんですよね。一緒に歌うといいかなと思って…一緒に歌いました。
南波: 「ボーカル・ディレクションも丁寧にしてくださった」と高橋さんがおっしゃっていました。
宮本: そうですか? いやあ…恥ずかしい…。
南波: 終わるたびに宮本さんが全力でボーカルブースまで駆けてきてくださって「いいですよ」って。「なんて紳士な方なんだ」って。
宮本: 本当にうれしかったです。一生さんのほうから「宮本さんのプロデュースで」っていうのが衝撃を受けたんですよね。すごくいい歌ができたと思う。彼が喜んでくれたのが何よりです。
南波: 高橋さんもめちゃくちゃ魅力的な方ですけど、宮本さんは、人のどんな部分に魅力を感じることが多いですか?
宮本: 相性の問題っていうのは、どうしようもないとこがあって。ニュアンスじゃない?
最初「いいな」と思ってても、時間がたつと「俺の時間、何だったんだ」みたいに思うこともあるしね。だから、ニュアンスだと思いますよね。
バンドだって、30年、40年…努力だけじゃなくて、感覚的に…中1時代とか高校時代に仲よくなってそのままいるっていうのは、単純なことじゃない。感覚的なものとか、ニュアンスだと思うんですよね。
南波: どういう人を好きになるとか、あります?
宮本: 大体どの人もいい人じゃん、基本的には。そういう意味じゃ、ニュアンス、自分と相性が合う・合わない、というのがあると思います。
「どういう人が好きか」? 「好きか」? うーん…一途な感じの思いを持ってる…でも、持ってない人もいないわけだし。まあ、ニュアンスじゃない? 相性の問題は理屈じゃないところもあると思います。
南波: 確かにそうですね。
宮本: 歌声もそうじゃない。ラジオからパッと流れてきて…シガー・ロスっていう北欧のバンドがいて。
南波: かっこいいですよね。
宮本: そう。ラジオで流れてた。知らなかったんだけど、本当にいい歌で。アイスランドのバンドだから、冬の歌なんだろうね。真冬の寒いときにそれが流れて、声で一発で好きになっちゃう。そういうのって、理屈じゃないものだよね。
ローリング・ストーンズなんかは、中学校に入って初めて聴いた。それでもかっこいいと思った。「ホンキー・トンク・ウィメン」とか。
勉強して好きになったものもあるよ。「聴かなきゃ」と思って。でもやっぱり、感覚的なものだと思う。
南波: ちなみに、高橋一生さんとはお互いお名前で呼び合っていて、「浩次さん」「一生さん」の仲だ、というのをお聞きしました。
宮本: 私は「一生さん」ってなんとなく言っていたんだけど、そしたら彼も「浩次さん」って言ってくれて。そういう意味じゃ、親しみを持ってくれてると思った。私も「一生さん」って言うんだよね。
南波: 「新婚さん感」があっていいですよね。
宮本: そうですか? まあでも、話しやすいというか、彼は優しいんだよね。温かいというか、いろんな思いを持ってる方なんだろうって思いました。

ソロ歌手冥利に尽きる、30年前の追体験

南波: ニューシングルの「Do you remember?」、ふつふつと情熱が湧き上がってくるような曲で、とても心が熱くなりました。
宮本: 一緒にやってる横山健さんのギター、すばらしいですね。何度も楽しめる曲だと思います。ずっと愛聴してほしいな。
すばらしいと思います。…自分の歌で「すばらしい」もないですね。まあでも、これは結構いいと思うよ。みんなの大事な宝物になるといいな。
南波: この曲は映画の主題歌です。テレビドラマ版では、主題歌にエレファントカシマシの「Easy Go」を提供されておりましたが、今回も監督からオファーがあって書き下ろされたんですよね。
宮本: 映画(の原作)が、30年ぐらい前からの人気漫画で、熱い漫画なんです。で、主人公の名字が私と同じ。それは何かいきさつがあるみたいなんだけど。
新井英樹さんという方が原作の方で、30年前の原作の漫画なんだけど、それを実写映画で撮られて。真利子(哲也)さんっていう気鋭の監督が、その作品を愛していて、その思いは強いわけよ。新井英樹さんっていう漫画家の方に対しての思いもあるし、作品に対する思いもある。
主人公の名字が私と一緒っていうのもあって…宮本浩次もデビューして30年以上になる。エレファントカシマシもそうだしね。映画の作品自体が、旧知の友に会ったような作品なんですよ。古くからの仲間に再会したような思いもあったし、映画自体も熱い映画だっていう。
監督の作品に対するピュアな感じっていうのかな。純粋に「その作品をすばらしいものにしたい」っていう熱い思い。あんまりしゃべらないんだけど、ものすごい情熱、一本気。真利子さんって人はピュアな人だね。それがギンギンに伝わってくるわけ。
池松壮亮(そうすけ)さんと蒼井優さんが主人公なんですけど、そのイメージも、統一感のある世界観を真利子さんが目指している。
30年前の名作漫画であり、気鋭の監督が超一流の俳優陣を誘って、非常にイメージしやすかった。精いっぱい、「映画が盛り上がるように」と思って作りました。彼らは本当にすばらしかった。
南波: 熱い魂を持った人たちが集まっている現場なんですね。
宮本: そう。熱い魂とともに、漫画自体が歴史も持ってるから。私も30年前にその作品を知っていたから。そういう意味では、いろんなマジックがそこに生じたと思うね。世代も含めてね。20代、30代、40代、50代、いろんな世代の人がそこに関わっていて。曲を作る環境としては、自然に作れる環境があったんだよね。
南波: 今回の作品では、横山健さんを迎えて制作されています。
宮本: 改めて聴くと、本当にすばらしいですね。印象深い時間でした。すばらしいミュージシャンだと思います。
この「Do you remember?」という曲は4人でやってるんだけど、メンバーみんな50(歳)以上。横山健さんもこの間の10月1日で晴れて50になったんです。
50歳以上の4人のメンバー。初めて顔を合わせた男たちもいて…私は全員初めてだったんだけれども。練習をスタートしたときに、みんな、音楽が大好き。ギターが好きで、ベースが好きで、ドラムが好きで、歌が好きで。そういう4人が集まるでしょ。映画とも相まって、「青春の熱さ」がスタジオにあったのは事実なんだけど。
宮本浩次もそうだし、横山健さんも、Jun Gray(ジュングレイ)も、Jah-Rah(ジャーラー)、みんなそれぞれの道で筋を通してきたというか、誇りを持って仕事をしてきた人たちなんじゃないかな。自分の誇りと情熱的なものと、両方がこの曲の中には入っている。みんなに長く愛される歌になったんじゃないかな。
南波: お聞きしたところによると、2番以降の歌詞はリハで書かれたそうですが、本当なんですか?
宮本: …すごく大事なところで、ひと言で言うのがなかなか難しいんだけれども。
「Do you remember?」をやろうって、4人で2日間にわたって、1日5~6時間ずつリハーサルしたのね。デモテープである程度作ってたんだけど、もちろんサウンドはこの4人で築き上げていくわけなんです。
制作の現場として最高の場所だったと思う。横山健というプロデューサーがいて、で、その「Do you remember?」の原型の曲があって、手だれのスーパー・ミュージシャン、ロッカー、Jun GrayやJah-Rahがいて、宮本。その4人が集まることによってしか起こりえない何かがそこに流れたんだよね。そういうもので形にしていくわけなんだけど。
それは、もちろん1人で生まれるものでもない。ほかの誰かとやって生まれるもんでもない。あのタイミングで、この映画の主題歌で、横山健を始め、初顔合わせのこの4人が会ったことによって生まれた、図ってもできない制作現場がそこにはあったね。
ベテランであることや、名字が宮本で同じ映画のこともそうだし、いろんなものがそこにはあったの。初めてやるわくわくする気持ちだけじゃない、確かな技術であるとか、音楽に対する愛情であるとかが、スタジオの中で盛り上がってたのね。そういうところは、私も「ソロ歌手冥利に尽きる」というか。どの現場にも生まれる場所なんだけど。
ロックバンドの初期衝動っていうか…私だって、メンバーと、赤羽のスタジオで5時から取って、全部私が電話して、みんなで集まって、(エレファントカシマシの)「おはよう こんにちは」を作ったりしてたんだよね。それに近い、追体験。
この年になって、30年前の追体験をしてる感じ。すばらしい時間だった。ギターの音もすばらしいし、ドラムの音もすばらしいし、ベースの音ももちろんすばらしい。だから、歌を自由に歌えた。
南波: カップリングにはビートルズの「If I Fell」のカバーが収録されています。どうしてこの曲をカバーしようと思われたんですか?
宮本: いろんな曲、いい歌、いっぱいあるじゃない。日本にもいい歌いっぱいあるし、「いろんなジャンルの音楽があるんだな」って、最近になって。ボサノバとかシャンソンとか、クラシックとか。ロックだけじゃなくてね。
いろんな人がいるように、歴史も、いろんな国があるじゃん。日本もあればヨーロッパも、アメリカもある。いろんな国があるように、いろんな音楽がある。
大学時代に、私はビートルズが大好きになって。そのときはCDが出た時代だったんで、プレーヤーを買って、たくさんCDでビートルズを聴いて。その中でも、たまたま聴いた歌が…ビートルズはどの曲も大好きなんだけど、この「If I Fell」を聴いたら「かっこいい。いつか歌いたい」と思ってた。最高のチャンスが訪れた。「健さんと一緒に歌えたら」と思って…。
南波: 時が来たんですね。
宮本: そう。英語が心配なんですけどね。
南波: お2人の声の混ざり合いが絶妙でとても心地よくて、すてきなカバーでうっとりしちゃいました。
宮本: ありがとうございます。
南波: それでは最後になりますが、お聴きの方にメッセージをいただけますでしょうか。
宮本: 歌を一生懸命…一生懸命というか、まあ、歌ってまいりますんで、ぜひ機会があったら聴いてください。大事に…大事っていうか…ぜひ機会があったら聴いてください。

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