「駒ヶ岳」のためなら東へ西へ! 駒ヶ岳ファンクラブ元会長がご来店

23/09/30まで
石丸謙二郎の山カフェ
放送日:2023/09/23
#登山#ネイチャー
午前8時台を聴く
23/09/30まで
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23/09/30まで
登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回のテーマは、「好きです。駒ヶ岳」。駒ヶ岳好きが集う「駒ヶ岳ファンクラブ」は、来年で結成35年。ファンクラブの会長を25年にわたって務めた、田口計介さんがご来店。「駒ヶ岳」と名がつく山は、全国に30座あると言います。駒ヶ岳好きがひもとく、“おすすめの駒ヶ岳”とは?
【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
田口:田口計介さん(「駒ヶ岳ファンクラブ」元会長)
富士山にも「駒ヶ岳」が?
山本:
けさの「山カフェ」のテーマは“駒ヶ岳”です。お客様は「駒ヶ岳ファンクラブ」の元会長、田口計介さんです。
石丸:
25年会長を務められていたのですね。最近は「駒ヶ岳」と名のつくところに行きましたか?
田口:
ことしの3月、“新しく見つけた駒ヶ岳”として、鹿児島県の南九州市の「女駒ヶ岳(めこまがだけ)」に登ってきました。標高が150メートルぐらいの山です。
石丸:
“新しく見つけた”というのは、ものすごくうれしくないですか?
田口:
うれしいです。
石丸:
女駒ヶ岳に登るためだけに……!
山本:
関東から行かれたんですね。
石丸:
「駒ヶ岳」と名のつくものは全国に30座あるらしい。今、地図を見ながらお話ししていますが、富士山に駒ヶ岳があるんですね。
田口:
富士山の頂上には”お鉢”があるのですが、お鉢の周囲に8つの頂があるんです。富士山の「八葉(はちよう)」と言うのですが、その一つに駒ヶ岳があります。
石丸:
一番高いところに剣ヶ峰(けんがみね)があるけれども、お鉢巡りってぐるっとしますよね。この中に駒ケ岳があるんですか! それは知らなかった~!
あと、白馬岳(しろうまだけ)にも「駒ヶ岳」があるのですか?
田口:
白馬岳は、昔は「上駒ヶ岳(かみこまがたけ)」と呼ばれていたんです。
石丸:
どれぐらい昔の話ですか?
田口:
江戸時代。
石丸:
そうだったんだ! そういうものって、全国にまだありますかね?
そういえば、奈良に「生駒山(いこまやま)」ってあるじゃないですか? これは「駒ヶ岳」じゃないですか?
田口:
ふもとの牧場の“馬牧”から来た名前だと思います。
石丸:
これはファンクラブに入れられない?
田口:
文献的に、駒ヶ岳という証拠が一つもないので。
石丸:
駒ヶ岳の「ヶ」ですね。これがついていないと認められない! いいですね。はっきりしたルールがあって。
地図を見ていると、駒ヶ岳は東に多いですね。
田口:
30座の中で、一番西は、「若狭駒ヶ岳(わかさこまがたけ)」、福井県と滋賀県の境にあるんですよ。若干、福井県(寄り)なので、福井は若狭の国なので「若狭駒ヶ岳」と命名したんです。
石丸:
東に多いのは、何か意味があるんですか?
田口:
「西牛東馬(さいぎゅうとうば)」という言葉があるのですが、平安時代に藤原道長が、日記を書いていまして、藤原道長が“受領(ずりょう)”を指名すると、いわゆる“地方の長官”ですね、「東に任命した人は、お礼に馬を持ってくる、西に任命した人は牛を持ってくる」、そういう文言があるんです。
石丸:
(お礼に持ってくる)動物が、西と東では違ったわけですね。言われてみれば、昔は畑を耕すときに、「西は牛でやっていて、東では馬でやっていた」と聞きますよ。それで「駒」という言葉を東はよく使っていた。
縄文時代から登っていた甲斐駒ヶ岳
石丸:
田口さんおすすめの「駒ヶ岳」を教えていただきたいです。
田口:
1番目は「甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)」です。標高は2,967メートル。駒ヶ岳の中で最高峰です。
登山道は黒戸尾根経由だと、非常に難しい山なんですよ。
石丸:
ものすごく長いですからね。標高差だけで2,000メートルくらいありますからね。
田口:
登山口には、2つ神社がありまして、頂上にも社がある。登山道を開発したのが(修験者の)小尾権三郎(おびごんざぶろう)で、今でも登るのは苦しいですが、文献によると、猟師も木こりも登らないような山を、小尾権三郎が登って頂上にたどり着いたと。
石丸:
江戸時代ですね。
田口:
江戸時代です。
それから甲斐駒ヶ岳の頂上からは、“縄文式の土器”が出てくるんですよ。なので、縄文人が好奇心であの高い山に登ったのだろうと。
石丸:
何をしに行ったのだろう?
田口:
「あの山の向こうに何があるんだろう?」と。山の頂上に登っても獲物はないですよね。
石丸:
装備だって、わらじもあったかどうか分からない時代に。
田口:
紀元前の話ですよね。
山本:
そんな歴史がある山なんですね。縄文のころから登っていただなんて。
石丸:
甲斐駒ヶ岳の見た目はいかがですか?
田口:
いいですね。頂上の配置もいいし、30座のうちのナンバーワンは、「甲斐駒ヶ岳」ですね。
山本:
クラブの中でもファンが多いでしょうね。
雪形が馬の形の「栗駒山」
石丸:
次におすすめの「駒ヶ岳」は?
田口:
2番目は「栗駒山(くりこまやま)」です。標高が1,626メートルです。
石丸:
秋田・岩手・宮城のあの辺。
田口:
3つの県にまたがる山ですね。
石丸:
栗駒山……あれ? ルールでは、「駒ヶ岳」と言わなきゃいけないのでは?
田口:
昔は「駒ヶ岳」でした。
石丸:
(昔は)「駒ヶ岳」だったんですね。それが今は、「栗駒山」。
山本:
それはどうやって分かったのですか?
田口:
基本的には文献ですね。江戸時代の文献に、ずいぶん出てくるんですよ。
石丸:
「駒ヶ岳」として出てくる。
田口:
そうです。
山本:
クラブは江戸時代の文献まで調べるのですね。
田口:
江戸時代から明治ぐらいまでの文献ですね。
山本:
栗駒山がいいなと思うところは、どんなところですか?
田口:
日本で最大だと思いますが、2キロにわたる白い雪形が出るんです。東が頭で、西がしっぽになっていて……。
石丸:
あ、馬の形だ! 走っているように見えますね。これ、長さが2キロあるんですか!
山本:
しっぽがなびいてるように見えますね。季節ではいつごろ出るのですか?
田口:
5月~6月ですね。
石丸:
見に行きたいですね。こんな大きな雪形……やっぱり雪が多いんですね。
山本:
雪形の調査は、どんなところでしているのですか?
田口:
駒ヶ岳だけの雪形だけでなく、雪形がきれいなところには行っています。「雪形研究会」というボランティア組織があって、年に一回、見学会をやっています。
山本:
具体的にはどんなことされているのですか?
田口:
単純に雪形を見る(笑)。そして夜の会合で、「来年はどこの雪形を見ようか」というコンペをやるんですよ。みんなが「ここにしよう」と言ったら、来年の雪形の見学会の場所が決まるのですよ。
石丸:
僕も雪形が大好きです。名前を勝手に自分でつけちゃったりしてね。
田口:
雪形は、雪が消えたら田植えをしたり、大豆を植えるといった、農事暦だったんです。
数年の調査の末、発見! 「下駒ヶ岳」
石丸:
もう一つ、おすすめの山は?
田口:
「下駒ヶ岳」です。ファンクラブが苦労して発見した駒ヶ岳です。
石丸:
どこだろう?
田口:
新潟県と富山県の境ですね。
石丸:
標高が1,241メートル。
山本:
「苦労された」というのは、どういうことですか?
田口:
「下駒ヶ岳」は、国土地理院の地図には「菊石山(きくいしやま)」と載っていたのです。
山本:
別の名前ですね。
田口:
「菊石」という石が発見されたので、「菊石山」と、昭和になってから名前がついたみたいです。ところが、私どもの富山県の2人の会員が、「これはおかしい」と。江戸時代に絵図には「上駒ヶ岳」「下駒ヶ岳」と書いてあると。「上駒ヶ岳」は今の「白馬岳」、「下駒ヶ岳」は、「菊石山」の位置じゃないとおかしいということで、調査を始めました。数年かかりましたが、春~秋にかけていろいろ角度を変えて登ったり、歴史的な文献から、「菊石山」が「下駒ヶ岳」だということを認定して、「国土地理院に『下駒ヶ岳』を地図に載せてください」とお願いしました。
石丸:
すごい執念ですね。
田口:
ずっと前の話ですけどね。
石丸:
2003年には「下駒ヶ岳」の名前が復活していると。“駒ヶ岳愛”ですね。地図上に、はるか昔の名前を復活させる。
駒ヶ岳調査は、日本だけに納まっているのですか?
田口:
“駒ヶ岳”の名称の山を探すため、中国大陸・韓国・台湾・ベトナムに行って調べました。“駒ヶ岳”はありませんでしたが、“馬ヶ岳”はありました。
石丸:
海外に調査に行ったんですね! 執念というか愛というか……。「駒ヶ岳のことなら世界中どこでも行くぞ!」と。
田口:
物好きです(笑)。
山本:
印象深い、海外の馬の山はありましたか?
田口:
中国に「野馬(のま)山脈」というのがあるんです。馬の産地だったんです。私らが現地に行って、雪形がないか、馬の根拠がないかを調べました。それで、私らだけの名前で「野馬駒ヶ岳」とつけて、中国大陸にも駒ヶ岳を作ってしまいました。
山本:
愛があふれてますね(笑)。中国のどの辺にあるのですか?
田口:
敦煌(とんこう)の近くです。敦煌をベースにして、車で登るんです。
山本:
ずいぶんと遠くに!
田口さんたちは、駒ヶ岳を研究して、その成果を、本にもまとめていらっしゃるのですが、その数が8冊とうかがっております。その中の1冊! マスターが今黄色の本を手に取りましたが、その表紙の文字を読んでください!
石丸:
『全国《駒ヶ岳》校歌集』。え、校歌って学校の歌?
めくると……うわ~こんなにいっぱい! この中に駒ヶ岳の名前が出てくるんですか?
田口:
そうです。
山本:
田口さん達は、全国の駒ヶ岳が出てくる校歌を調べました。その研究成果については、9時台後半でご紹介いたします。
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【放送】
2023/09/23 「石丸謙二郎の山カフェ」
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