登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回の「山からおはよう」は、中央アルプスの 将棊頭山(しょうぎがしらやま)にある西駒山荘より。大正4年に山小屋ができた経緯や、小屋の魅力について、管理人の宮下拓也さんにうかがいました。
【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
宮下:宮下拓也さん(西駒山荘管理人)
登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回の「山からおはよう」は、中央アルプスの 将棊頭山(しょうぎがしらやま)にある西駒山荘より。大正4年に山小屋ができた経緯や、小屋の魅力について、管理人の宮下拓也さんにうかがいました。
【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
宮下:宮下拓也さん(西駒山荘管理人)
石丸:
日本各地の山と電話をつないで朝の空気をお伝えする「山からおはよう~!」。
山本:
けさは長野県中央アルプス北部の将棊頭山(2730メートル)、山頂直下に建つ山小屋、西駒山荘からの「おはよう」です。将棊頭山の姿が将棋の駒に似ていることから、その名がつきました。登山道も整備されていまして、長野県桂小場(かつらこば)登山口から、標高2685メートルのりょう線にある西駒山荘まで、およそ4時間半。
小屋の歴史は古く、大正4年(1915年)からということで、なんと、ことしで108年。およそ30人ほどが泊まれる大きさの小屋で、ことしの営業は7月8日にスタートしたばかりです。
小屋の周りには、高山植物の女王ともいわれる「コマクサ」の群生があるそうですよ。
石丸:
将棊頭山には行ったことないんですよ。
山本:
けさは管理人の宮下拓也さんに、テレビ電話がつながっております。
石丸:
宮下さん~おはようございます~!
宮下:
おはようございます!
石丸:
いまは小屋の中ですかね? 3枚も重ね着しているってことは、結構寒いのですか?
宮下:
朝は毎日10度ぐらいですね。
石丸:
きょうは天気いいでしょうね?
宮下:
ちょっと残念ながら……。
石丸:
あ、パソコンを外に向けてくださった! ガスがかかっていますが、何となくりょう線が見えますね。
宮下:
たまにガスが切れて、街が見えたりするんですけど……。
石丸:
モヤっているけど、遠くが見えてる見えてる!
宮下:
正面に見えるのが、日本二百名山の経ヶ岳(きょうがたけ)ですね。
石丸:
結構風も吹いているようですね。
宮下:
風は7~8メートル、強いときには10メートルくらい吹いています。
山本:
もし晴れている場合は、どんな山々が見えるんですか?
宮下:
ここは中央アルプスの一番北にあるので、北の展望がすごく開けています。乗鞍(のりくら)~白馬(はくば)まで北アルプスは全部見えます。それから八ケ岳(やつがたけ)、浅間山(あさまやま)、霧ケ峰(きりがみね)、美ヶ原(うつくしがはら)もしっかり見えますね。
山本:
ぜいたくな眺めですね。
石丸:
もちろん眼下の町並みも見える。夜になったら夜景も見えるわけですか?
宮下:
夜景もしっかり見えますし、全国的にも有名な諏訪湖の花火大会も、小さくですが見えます。
石丸:
きょうはお花畑のことを聞きたいのですが、「コマクサ」は小屋の周りにありますか?
宮下:
たくさん咲いています。例年だとこれから咲き出すのですが、ことしは雪どけが早かったので、もう見ごろですね。
石丸:
どれぐらいの範囲にあるんですか?
宮下:
ざっとなんですけど、100~200平方メートルぐらいのところに、1000株~2000株くらい生えています。
石丸:
株というのは、一つの群落が直径10センチぐらいでしょうかね? あれを1株という言い方になるのでしょうか?
宮下:
ええ。花が咲いてるのと咲いていないのを含めて、それくらいの数はあるかと思います。
山本:
山荘のすぐ近くにあるのですか?
宮下:
すぐ裏にありまして、皆さん、サンダルで歩いて見に行かれるぐらいの近さです。
石丸:
そんな近く! 夜に歩くときは踏まないようにしなきゃですね。
宮下:
そうですね。種で増えているので、登山道の仕切りロープより内側にしっかり生えていまして、写真が撮りやすくていいのかなと。
石丸:
人間が歩くところまで進出してきているわけですね。たくましいな~!
山本:
私は近くで見たことないのですが、色や大きさや形はどんな感じなのでしょうか?
宮下:
一般的な「コマクサ」は、うすいピンク色なのですが、うちのところは濃い赤色の「コマクサ」の花が多くて、高さは大きいもので10センチぐらいでしょうかね。珍しいのですが、真っ白な「シロバナコマクサ」も、何株か見られます。これは貴重なので、見られたらラッキーです。
石丸:
突然変異なのかね? たまにありますよね。
真っ赤な「コマクサ」も珍しいですよね。
宮下:
自生のものではなく、かなり昔に、よそから持ってきて植えたものだそうです。その地域の色が反映されているみたいですね。
石丸:
「コマクサ」以外にも高山植物は見られます?
宮下:
いまだとりょう線には、「イワツメクサ」や「ミヤマキンバイ」は見ごろですし、樹林に入ると夏の花である、「ウサギギク」なども咲き出しています。本当にことしは花が早いですね。
山本:
そうですか! 中央アルプスならではのものはあったりするのですか?
宮下:
「コケコゴメグサ」と言うのですが、これは中央アルプスの特産種でして、8月後半になると花が咲きます。本当に小さくてなかなか目につかないので、案内して「ここにあるよ」って教えてあげると皆さん大変喜ばれますね。
石丸:
そちらの小屋は古くからあるんですよね。
宮下:
大正4年からなのですが、大正2年に、中学生が学校で登山をして、台風が来てしまって、47人中11人も亡くなるという大惨事があったんですよ。
石丸:
先週の「山カフェ」でもそのお話を取り上げました。
宮下:
まさしくそれですね。
その反省で「ここに山小屋があったら助かったよね」ということで、地元の方々が寄付を募って、その2年後にできた山小屋が西駒山荘の前身ですね。
石丸:
(事故の前に起きた)火事で焼けた石室ですか? その石室のあとに建てられた?
宮下:
いえ、学生たちが一夜を明かしたのは、今でいう「宝剣山荘」の周辺なんですよ。そこではなく、その途中にある場所に、新たに作られたものです。
石丸:
宮下さんは何代目なのですか?
宮下:
何代目というと難しいのですが、小屋ができた当初は、地元の方々が管理していました。そのあといろいろありまして、ロープウエーができたものですから、その影響で人が減ってしまい、採算的に厳しくなったので、伊那市役所に小屋を移管するということになり、信州大学の学生たちに小屋を管理させようという大英断がありました。
石丸:
めずらしいケースですね。
宮下:
そのとき僕も学生だったので、入ってみたのですが、学生たちの参加が減ったものですから、このままだと学生で回していくのが難しいので、「私が卒業するのでやります」ということで、2000年からやっています。
石丸:
それは英断でしたね。
山本:
専属の管理人に。
石丸:
ということは、もう何年ぐらいになるんだろう?
宮下:
24年目ですね。
石丸:
主ですな。
山本:
小屋の管理もしながら、冬はまた違う仕事をされているとうかがいました。
宮下:
「山小屋の仕事は3か月ですから、冬の間も仕事しないと」ということで、地元の酒蔵で日本酒を作っております。いまは、杜氏を任されております。
石丸:
ひょっとしてなんですけれど、そちらの小屋で、日本酒が飲めるんですか?
宮下:
3種類、ご用意しています。
石丸:
担ぎ上げているのですか?
宮下:
ヘリコプターを利用しています。
石丸:
ビールはよくあるけれど、日本酒を上げるのは、なかなかないかな。いいですね!
山本:
談話スペースで使われているところは、2016年に登録有形文化財になったそうですが、そこでお酒をいただけるのでしょうか?
談話スペースとして使わている石室
宮下:
そうですね。まきストーブも設置しておりまして、まきストーブの炎の揺らぎを見ながら飲む酒は最高ですね。
山本:
うわ~行ってみたい!
石丸:
外は霧で気温は10度でも、りょう線は一瞬見えたり、隠れたり、山の中の荒れたところでも山小屋があるから、僕らは安心して山に行けるのがよくわかります。
山本:
宮下さん、小屋でのお食事はいかがですか? 代々受け継がれてるようなものはありますか?
宮下:
信州大学の学生たちがやっていたときに出していたカレーがありまして、そのカレーをアップデートしながら出しています。
石丸:
どのようなアップデートを?
宮下:
当時は簡単な内容だったのですが、山の中なので山らしい食材を、ということで、タケノコを入れたりしています。
石丸:
タケノコは周りに生えているものですか?
宮下:
さすがに国定公園なので(タケノコを)採ると怒られてしまうので、水煮のものです。
山本:
でもムードはありますね。
すばらしいですね。お酒もあれば、名物のカレーライスもあると。
夏山シーズンが本格的に始まったばかりですが、これから行かれる方にメッセージがありましたらお願いします。
宮下:
先週の放送でもありましたし、この小屋の経緯からしても、遭難防止が山小屋としての一番の使命だと思っています。皆さんも気をつけていただき、最後のとりでとして山小屋をご利用いただきたいと思います。
石丸:
宮下さん、きょうは本当にありがとうございました。
宮下:
ぜひお待ちしております。
山本:
けさは中央アルプス北部の将棊頭山にある山小屋、西駒山荘からの「おはよう」でした。
番組では、写真や番組へのメッセージの投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお聴きいただけます。ぜひ、ご利用ください。
【放送】
2023/07/15 「石丸謙二郎の山カフェ」
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