世界の子育て 聞いてみよう ④

21/04/26まで

ラジオ深夜便

放送日:2021/01/29

#子育て#家族#コミュニケーション

ざっくりいうと

  • 外国では、出身が同じで子育て経験者同士で集まれることが何よりの楽しみ
  • どんな場所でも「今を楽しむ」ための子育てを
  • 2021/01/29 ラジオ深夜便 ママ☆深夜便「子育てリアルトーク 後半 世界の子育て事情」汐見稔幸さん(日本保育学会会長・東京大学名誉教授)

子育て事情の違いは、大前提となる「人生で一番何を大事にするか?」という価値観に関係している、と汐見稔幸さんは言います。「海外では○○だから…」「日本では△△とされてきたから…」「みんな××をやっているから…」と考えるのではなく、「子育てを通じて自分たちの家族を作ろう」と発想を転換すると、うまくいくのだそうです(聞き手・村上里和アンカー)。

相談相手がいる喜び

――子育てについて悩んだときや困ったとき、相談できる相手がいることは本当に大切なことですよね。海外で子育てしているママたちはどうしているのか、どうやってストレスを解消しているのか、聞いてみました。

アメリカ・アラスカ州女性
<一番の相談相手は、同世代の子どもを持つ当地在住の日本人ママ友たちでした。>

週に1度必ず集まって、子どもを遊ばせながら「作って食べる会」というのをしていたそうです。昼ごはんを食べながらみんなで夕食作りをして、その日の夕食の支度を心配しないで夕方までおしゃべりして、終わったら夕食をそれぞれ持って帰る。それは出すだけでいいという日を設けていたということです。

日本で子育てをしているフランス人ママのミリさんは、どうでしょうか。

ミリさん: 家族がいなかったから、孤独を感じたんです。旦那さんの休みも短いですし、出産してからは子どもとすぐ2人だけになって、不安がありました。
(日本の)いいところは、区役所がやっている相談会でサポートがあるのを感じて、うれしかったんです。家に助産師も来てくださって、体重を量ってくれたり、そういったフォローアップがよかったと思います。
あと、児童館みたいなところが多い。フランスで子育てしたことないから、そういったところもあるかもしれないですけど、東京ほどじゃないと思います。そういった施設とかが結構いいなと思っています。

そして、ほかのフランス人のお母さんたちとのグループがあって、外国人だからこそつながりやすいネットワークがありまして、よかったなと思っています。
一番いい友達はその親子会で作れた気がします。

――同世代で、お子さんの悩みも自分の仕事の悩みも、おしゃべりしながら…。

ミリさん: 同じ問題と向き合っているので、そこで関係が作りやすいと思います。
特に、日本に住んで自分の言語で話せる機会が少なくなるから、ほかのフランス人と話すときは楽で、楽しくなります。ちょっと特別で。

――ミリさんのお話を聞いていて、日本のいいところはたくさんあるよ、ということを教えてもらった気がします。
あと、ママたちには「自分だけじゃない」「1人じゃない」とつながることも大事なんですね、汐見さん。

汐見さん: 最近の研究で、人間は、産まれた子どもとお母さんがずっと2人きりで生活をしていたことはない、とわかってきたんですね。
昔は、地域というので親しかったわけでしょう。子どもを産んで子どもがたくさんいて、そういう人たちのところで必ず集まってペチャクチャしゃべりながら子育てしたとわかってきたんですね。

現代が初めてなんです。こんなに孤立して孤独で子育てしている。子育てで一番よくないのは、たまったストレス発散することができないこと。たまり続けるとうつになるとわかった。
何かあったら集まってペチャクチャしゃべる。食べながらペチャクチャしゃべる。これが決定的に大事だということですね。日本人も、これからそういうことをどんどんやれるような勇気と場を提供していくことが大事だと思いますね。

児童館は、日本独特のものなんです。児童館という場合は、赤ちゃんだけじゃなくて小学生・中学生までなんです。小学生・中学生のたまり場がなかなかないということでも、児童館の果たす役割は日本では大きいですよね。
今(ミリさんの話を)聞いて、これは大事にしていきたいなと本当に思いました。

子育てしながら家事もすべてやるべき?

――先ほど前半でもご登場いただいた日系3世のブラジル人ソニアさんが、こんなお話をしてくださいました。

ソニアさん: ブラジルはベビーシッターの文化でしたからね。私が育った環境は、ベビーシッターを雇ったりお手伝いさんがいたり。
だけど、日本の場合はいくら収入があっても、お手伝いさんを雇うまではなかなかいかないですよね。

――そういう習慣はあまりないですね。

ソニアさん: まあ確かに、それはそれでいいと思うんですけどね。自分のことを自分でやるのは、いいんですけど。
だけど、できることは委託してもいいんじゃないですか。掃除とか、体力を奪う作業。全部子育てのママにやらせるのは大変なんですよ。

――やってもらうことで…。

ソニアさん: 余裕が出るんです。「余裕をお金で買う」という形なんですよね。
余裕ができて、そのぶん優しくなれるし、笑顔が増えるんですよね。すべてがお金ではないんですけど、「お金で笑顔が買えるんだったら、買いましょうよ」という感じですよね。

ブラジル人は「今を楽しく生きること」がモットーであって、今が楽しくないと、楽しい未来が来ないんじゃないのかという気がするんですよ。毎日が楽しくて、前向きになれると思うんですよね。
あまり我慢してしまうと、結局我慢だらけの人生。未来はいつ来るか、未来がどうなるのか、誰にもわからないじゃない。もちろん責任を持ちながら、できるだけ今を楽しく余裕を持って生きるほうがいいんじゃないのかな。

――「我慢だけじゃ苦しくなっちゃう。今を楽しく」というメッセージ、響きました。
汐見さん、いかがでしたか。

汐見さん: 「子育ては、全部子を産んだお母さんがやらなきゃいけない」と思い込んでしまうところから苦しさが始まるんだと思うんですね。
江戸時代は、実はかなり父親が育児をしていたんですね。意外と教えられてないんですけども。
『江戸の親子』という本がありまして、そのサブタイトルは「父親が子どもを育てた時代」なんです。幕末に来た外国人がそれを見てびっくりするわけですよね。
お父さんは、仕事を江戸時代は4時間ぐらいしかしていない。帰ってきて自分の子どもがそこで遊んでいたら、必ず相手してあげるわけです。

――つまり余裕があったわけですね。

汐見さん: みんな、本当は子育てが好きなんですよね。
全部お母さんが担うんじゃなくて、これからはおじいちゃん・おばあちゃんは増えているわけですから、お願いするとか、いろんな形でみんなが役割を果たしていくような上手な分担が大事になるんじゃないでしょうか。今のお話を聞いて、そう思いました。

――以前、静岡の方から「子どもと、そして奥さんとの生活を大事にしたい、もっと子育てに参加したいから転職しました」というメールをいただきました。その方、今どうしてるかな。また「最近こうですよ」というおたよりをいただけたらうれしいなと思います。

「ほかにはない、楽しくユニークな家族を作ろう」

――汐見さん、きょうは「世界の子育て事情」と題して、いろんな子育てがあるね、ということをご紹介してきました。
日本で暮らしている私たちが学べること、取り入れられるものは、どんなことだと思われましたか。

汐見さん: いろいろあったんですけど、せっかく一緒に子育てしているんだったら、子どもと一緒に、ほかにはない、楽しいユニークな家族を作ろうという点で、みんながいつも一致しているというものの中に子育てが続いていくとうまくいくかな、と感じました。
将来のための準備ということを考えすぎると、子育ては苦しくなると改めて教えられましたね。今を楽しむことをやらないと、みんな幸せになれないですね。
どうやったら家族で今は楽しめるか、という知恵を出し合うことが大事かなと思いました。

――海外で子育て中、自分の国ではないところで子育てをするには大変なことがたくさんあると思うんですが、そういう方々へ汐見さんからメッセージをお願いできますか。

汐見さん: いろいろご苦労が多いと思うんですね。
それぞれの国にはそれぞれの歴史・文化があって、そこでできるだけ合理的な制度を作ろうと思ってやっておられる。そのことはぜひ把握していただいて、日本にも紹介してほしいですね。「こういう国だからこういうことをやっている」「こういう文化だからこういうことをしているんだ」と。
「日本にはちゃんと日本の文化があるのだから、それを大事にして、もっとこうしたらどうですか」ということがそこから学べると思うんですね。ぜひお願いしたいと思います。

――日本で子育てをしている外国人のママやパパにも、その方たちの文化や国のことを知ることで手を差し伸べていけたらいいね、という話がありましたね。

汐見さん: 本当にそう思います。(日本で子育てする外国人は)これから増えていきますからね。いろんな文化のことを教えてもらうこともできるんですから、本当に大事にしていきたいですね。

――2時間があっという間に過ぎてしまいましたが、汐見さん、きょうの「子育てリアルトーク」、どんな感想をもたれましたか。

汐見さん: ふだん外国の子育てのことをじっくりお伺いするチャンスはほとんどないと思うんです。「ところ変わればやり方変わる」ということが、これほど見事に浮かび出てくるとはまたとないんじゃないかと思います。
それぞれがそれぞれの固有の歴史や文化を背負って、できるだけ合理的にやろうとしている点では変わらないと思うんです。それぞれの努力を織りなしながら、世界で子どもたちをみんな一生懸命育てていることがきれいに浮かび上がったような感じです。
とてもおもしろかったですね。

――ありがとうございます。世界とつながっているような感じもしました。

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毎月第4木曜日
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