子育て中の食事で最も悩んでしまうのが、授乳と離乳食に関すること。子どもの成長につながる大切な問題だけに、考え込んでしまうのも無理もありません。食育に関する資格を持つ小林よしひささん、長く親子の食事の研究に携わっている外山紀子さん、そして助産師の近藤亜美さんの3人の「子どもと食」のエキスパートによる回答とは。(聞き手・村上里和アンカー)

【出演者】
小林さん:小林よしひささん(タレント)
外山さん:外山紀子さん(早稲田大学教授)
近藤さん:近藤亜美さん(助産師)


食べることも学習段階

―――続いてのおたよりです。

山梨県30代女性
<子どもが今月1歳になりました。離乳食を始めた初期のころは何でも平らげていたんですが、中期辺りから何を試してもまったく食べない日が2か月も続いたんですね。つらかったです。レトルトも手作りもダメ、お菓子もダメ。哺乳瓶は早くからイヤで、飲むのは母乳だけ。
夫も夜勤があり、食事の時間が合わないので、私自身も自分の食事の支度はもちろん、食べ物を見るのもイヤになってしまい、食事を抜くこともありました。夜泣きも1時間置きで、子育てをするのが本当に楽しくなかったです。>


―――最初は食べていたのに急に2か月も食べない時期が続くなんて、これは親としてはつらいですよね、小林さん。

小林さん: 2か月となるとドキドキしてつらいかなと思います。うちも離乳食を始めて、行ったり来たりはしていましたね。
食べ始めて「順調かな?」と思ったら、また母乳に戻っていって…と繰り返していて。でも、離乳食って「離乳食だけで栄養をとろう」というものでもなく、「母乳も飲みながら」という食の入り口だと思うので、そんなに悩まなくてもいいんじゃないかな、という気はしますよね。

―――「このままずっと食べなかったら…」なんて、先が見えないと悩んじゃいそうですが、そんなに思い悩まずに子どもの様子を見守っていよう、というスタンスですか。
外山さん、「食べない」という悩みごとは多いんでしょうか?

外山さん: 離乳期や幼児期では「なかなか食べません」、もうちょっと月齢・年齢が高くなっていくと「ちゃんと食べません」という悩みは多いです。
大人も食べ方はいろいろだし、好き嫌いの個人差もとても多い。これと同じように、赤ちゃんも個人差がとても大きい。例えば「1歳前後になると、ことばを話し始めます」「歩き始めます」と育児書に書いてありますけれど、実際には半年ぐらい違いますので、あまり標準的なところを考えなくてもいいかとは思います。
食べ物の咀嚼(そしゃく)、それから飲み込むことを「嚥下(えんげ)」と言いますけれど、そういった機能も発達途上にありますし、もちろん個人差もある。こういった発達が追いついていないこともあるし、「お母さんが作る食べ物と(発達の状態が)合っていない」「舌触りが子どもの好みと合っていない」といったさまざまなことがあります。
あまり無理強いしないで、ゆっくり考えていけばいいのかと思いますね。

―――「食べる」ということにも学ばなくちゃいけないことが、子どもにとってはたくさんある。慣れていかなくちゃいけなかったり学ばなくちゃいけなかったりする、という段階があるんですね。
このお母さんのおたよりで気になったのが、「子どもが全然食べなくてつらくて、支度はもちろん食べ物を見るのも嫌になってしまって、ご自身が食事を抜くこともありました」と。お母さんのほうも心配ですね。

小林さん: 食事って、まず楽しむことがきっと重要だと思うので、こういう状況になってしまうのは心配なところですよね。
外山さん: お母さんに余裕がないと、子育てはつらくなりますよね。
子どもが病気になると、家族の間で病気が広がって1~2か月もつらくなりますよね。ああいうときも、お母さんが風邪をひくと一番負担になりますので、自分が健康に、楽しくすることが大事だと思いますね。

―――料理が得意じゃない方は、今は離乳食もたくさん売っていますし、ベビーフードを食べさせて、その分ちょっと自分に余裕を持たせるのもいいかなと思います。実際に私も、25年前の息子のときはベビーフードをいろいろ取り寄せて使っていました(笑)。

母乳を与えるには、十分な栄養を

――ママの食事についてはこんな悩みも来ています。

東京都30代女性
<7月1日に2人目の長女が生まれて、3か月になりました。かわいくてお兄ちゃんもパパもメロメロです。母乳をひたすらあげ続ける日々を過ごしていますが、1人目のときとの違いは母乳の出る量です。
1人目のときはかなり食べ物に気を付け、果物、甘いもの、脂っこいものは避け、野菜とお米中心の食生活でした。2人目も完全母乳でいけると思っていましたが、ここに来て「母乳の出る勢いがないな」と感じています。
「娘の体重も順調に増えているし、大丈夫だろう」と思っているんですが、私の体の疲労が明らかに違うんです。睡眠もとれているはずなのに、授乳をするとものすごく疲れます。
お肉を食べると力が湧いてくる感じがするので、焼き肉をすることが多くなりました。もしかすると焼き肉で母乳の味が悪くなっているかもしれないけど、今のところ疲れたらお肉しかないと思っています。理想は野菜たっぷりの食事で母乳サラサラなのですが、どのぐらい気にしたらいいんでしょうか?>


―――…というお悩みです。確かに、母乳は自分が出しているものだから、ママは自分の食事も気になりますよね。
母乳と食事の関係については、この方に電話で伺いたいと思います。「ママ☆深夜便」の心強い応援団。静岡県で助産院を開いていらっしゃる助産師の近藤亜美さんです。
きょうは、母乳に関してのお母さんの悩みについて答えていただきたいと思います。
「授乳をすると、とても疲れてしまう」「疲労感がある」ということなんですが、これは何が考えられるんでしょうか?

近藤さん: 聞いていながら思いつくことがいろいろあったんですけれど、まず、お2人のお子さんの子育て、本当にお疲れさまです。赤ちゃんが小さいので、タイプの違う2人のお子さんをお世話されることは、本当に大変だと思います。それだけでもたぶん疲れちゃうんだろうな。「お疲れさまです」と言いたいと思いました。
そのうえで、疲労感がすごくあり、「お肉料理を食べると回復する感じがする」と体が実感しているんだから、体がたんぱく質を必要としているんじゃないかな、と思いました。
それから、すごく疲労感があるということなので、「貧血なのかな?」とも少し心配になりました。

私は栄養の専門家ではないんですけれど、ふだん助産師としてママさんたちといろいろな悩みを相談し合ったりしている中で、よく話をすることがあります。たんぱく質という栄養は、血液や筋肉を作ったり体調を整えるのにとても大切な栄養なので、たんぱく質を控えるのはよくないように思うんですね。
大好きなお肉料理を食べるのも、もちろんいいと思います。そのほかに工夫して、お魚でも赤身のカツオだったり、お肉でも赤身のお肉は鉄分が少し多いし、お豆などで植物性たんぱくをとったり。貧血が心配なので、お野菜もしっかり食べてビタミンCをとると、鉄の吸収もよくなります。「肉はダメ」と思わずに、全体のバランスをとって食べて欲しいなと思います。
凝ったお料理をしなくても、これからの季節は、上のお子さんや家族一緒に食べられる鍋物や具だくさんのスープなんかも作ってみて、気楽にできるお料理をしながらバランスを考えたらどうか、なんて思いました。

―――鍋物など、これから季節的によくなりますよね。

近藤さん: 手の込んだお料理はなかなか難しいので、お野菜もしっかりとれてバランスよく食べられるようなものを工夫してみたらどうかと思います。

―――今、亜美さんの話を聞いて思ったんですが、この方は一生懸命に生まれたばかりの長女にあげるための母乳のことばかり気にしていますけれど、自分の体ももっとケアしてあげたほうがいい、見つめてほしいと思います。

近藤さん: そうなんですよ。
もう1つだけ付け加えたいと思うことがあります。母子手帳の後ろにも載っている「食事バランスガイド」という、厚生労働省・農林水産省が出しているコマの絵の栄養の図があるんですね。

―――小林さん、見たことはありますか?

小林さん: はい。

―――思い浮かびますね。スーパーなどに貼ってあることもありますね。

近藤さん: あれを思い出していただくと、一番上は主食なんです。ごはんをしっかり。ごはんはエネルギー源なので。
糖質をとってはいけない病気を持っているなど、控えなきゃいけない方は確かにいらっしゃると思いますが、最近のママたちはごはんの量が少ないかな。ごはんをしっかり食べると力も湧いてくるので元気も出てくるかな、なんて思ったので、それも言いたいと思いました。

―――助産師の近藤亜美さんでした。どうもありがとうございました。
おたよりをくださった方、アドバイスを聞いていただけましたか。お体に気を付けて、2人の子どものママとして頑張ってください。

好き嫌いが出てきたら「成長のサイン」?

―――続いては、好き嫌いに関するおたよりがたくさん来ているのでまとめてご紹介していきます。

東京都30代女性
<離乳食のときは何でも喜んで口にしていたのですが、2歳ごろから好き嫌いが出てきて、野菜やパン類、牛乳やクリームシチューをまったく受け付けなくなりました。
野菜は少しずつ克服しているのですが、パンはいまだに食べません。保育園では苦手ながらも食べているようですが。>


神奈川県30代男性
<2歳の娘は離乳食からよく食べてくれます。ただ、ここ最近はお米やおかずはそこそこに、ヨーグルトやゼリー、ソーセージなど、自分が好きなものを要求します。主食をまったく食べていないわけでもないので、量を調節しながら食べてもらっています。これは甘やかしなのでしょうか?>

東京都40代男性
<5歳の男の子です。幼稚園はお弁当ですが、毎日母親が作った蒸しパン1つと焼き魚のブリ、そしてミニトマトとぶどうです。それ以外は食べません。夕食も、白米にケチャップをかけたケチャップごはんと納豆です。
お菓子類は食べますが、食のレパートリーが増えず、とても不安です。体形も、5歳児にしては痩せています。もう少し食に興味を持ってもらいたいのですが、何かいいアイデアはないでしょうか?>


―――そのほかにも、「食に興味をもっと持ってもらいたい」というようなおたよりが来ていました。皆さん、ありがとうございます。外山さんは、お子さんの好き嫌いで悩んだことはなかったですか?

外山さん: 長女に好き嫌いがあって、すごくムラ食いだったんです。でも保育園では食べているみたいで、保育園の先生がよく「元気だから大丈夫よ」と言ってくださったので助かりました。
保育園の帰りにお総菜屋さんがあったんです。「自分で食べよう」と思ってひじきを買ったんですけど、娘もよく食べた。そこで初めて気が付きました。「この子は、ひじきが好きなんだ」と。ごはんとひじきと納豆をほぼ毎日食べていたような時期がありました。

―――うちも、娘が毎朝納豆ごはん。梅とひじきが混ざった生ふりかけみたいなものを納豆に混ぜて、ほぼ毎日食べていました。毎日同じものを食べさせている罪悪感はありましたが、「保育園で栄養をとっているから大丈夫」と思って自分を励ましてきました。
この好き嫌いやムラ食いについては、どう考えたらいいんでしょうか?

外山さん: 「嫌なものと好きなものが識別できるようになった」ということで、「成長しているサイン」といった受け止め方もできるかと思います。

ヒトは、食性でいうと「雑食動物」。例えば、ユーカリの葉しか食べないコアラは「狭食動物」に分けられますけれど、雑食動物はいろんなものを食べられる。だから適応力が高いこともありますが、環境の中には毒を含むものもあるわけです。誤って毒性があるものを食べると、おなかを壊したり、ひどい場合には死んじゃうといったこともある。これを「雑食動物のジレンマ」というんですね。
雑食動物は、「初めて食べるものはもしかして毒があるかもしれない。だから用心してかかろう」と、そもそも用心してかかる。あまり新しいものは進んで食べない、という行動特性を持っているんです。
「子どもがあまり食べません」「初めてのものをなかなか食べてくれません」というお悩みは多いんですけれど、「この子は『毒のあるものを食べないでいよう』という賢い行動をしているんだ」と、見方を変えることもいいかと思います。
あとは、食べ物自体ではなくて、例えば「お母さんが食べさせるのがイヤ。私は自分で自由に食べたいのに」「スプーンはイヤ。私は手づかみで食べたいの」といったこともあるかもしれませんね。

―――そういうとき「マナーが…」などと考えてしまうと思うんですが、まずは楽しんで食べることを優先して、子どものやりたいことをやらせてみることもいいんでしょうか?

外山さん: 「手づかみ食べ」は、最近「食卓が汚れるから」といってやらせないご家庭もあるかもしれませんけれど、その辺は「駆け引き」というか「押したら引く」というか…そういうことってありますよね。その辺のあんばいなのかと思いますね。

食べているときの子どもをよく観察してみよう

―――よしお兄さん、いかがですか。

小林さん: 「まさにそうだな」と。よく観察することが大事なのかな、と今聞いていて思いましたね。
うちのパターンでいくと、最初にひと口目をあげて、出しました。もう1回試す。で、ダメ。でも、3回目で食べることがあるんですよ。

―――えっ? そうですか。

小林さん: 「3回目の法則」みたいなものがあって、「3回目でダメだったら、もうダメかな」みたいな。1回で見ずに、様子を見ながら。
あと、私がスプーンであげるんじゃなくて、「食べ物が乗った状態のスプーンをもらって(自分で)食べたい」「フォークで刺して食べたかった」というのは、見ていると分かってきます。

―――成長しているんですね。自分の思いや意志、やりたいことが出てきているんだと思って、親は気持ちを落ち着けて見てあげる、観察してあげる。

小林さん: それがいいんじゃないかな。聞いていてそう思いましたね。

―――それでも早く食べてほしいし、バランスよく食べてほしいし…と親は頑張ってしまいます。そんな親と子の様子を、おじいちゃんがメールで送ってくれています。

徳島県60代男性
<4歳と6歳の孫がいます。6歳の長男は、好き嫌いはありますが、「食べなければならない」と分かっているので無理やり食べますが、イスにはじっと座っていられず一口ごとにウロウロ。4歳の次男は、嫌いなものは絶対に食べない。そのたびに母親に叱られています。毎日が戦場のようです。>

―――母親は「栄養が偏る」と言って「好きなものだけを食べていたらダメ」というスタンスなんですね。でも、この方自身が偏食で、食べられないものが多いけれど、60年間大きな病気もせずやってきたと。

<そこで質問です。偏食はよくないと思いますが、嫌いなものを無理やり食べさせるのと、好きなものの頻度を増やすのでは、どちらがいいのでしょうか?>

―――これは、よしお兄さん、どう思いますか?

小林さん: 気持ちはよく分かりますし、確かに食べてもらえるものなら食べてもらいたいですよね。でも、嫌いなものを無理やり食べると、その栄養素が入らないんじゃないかな、という感覚もある。だから、無理しなくてもいいのかな…という、ちょっと甘い考えの私がいます。

―――外山さん、いかがですか。

外山さん: そのものがダメでも、同じような栄養を持っているものはあるので、「じゃがいもがダメなら、ほかのもので」と大きく考えていけばいいかと思います。食べるのはそもそも楽しいものだし、一緒に食べるとうれしいものだし、おなかもいっぱいになって幸せになるものなので、そこを大事にすることが基本かと思います。

―――子どもの食を楽しくするためのコツはありますか?

外山さん: 先ほど雑食動物の事例に当てはめてお話しましたけれど、子どもは初めて見るものに対して進んで手を伸ばすことをあまりしないんですが、ヒトの場合には、誰かと一緒に食べる。その「誰か」が、知らない人よりは知っている人、親しい人だと――例えば、お父さんやお母さん、保育園の先生や友達――そういう近しい人が一緒だと、子どもは食べるようになる。
このことは、心理学の中では実験的にも確かめられていることです。ですので、社会的に楽しめる場を作ることが、好き嫌いといったことを乗り越えていくコツかと思います。
小林さん: 私も、楽しいと思ってもらうのは大事だと思います。例えば、料理を作っている途中に「パパが今作ってるんだよ」と見せることはしています。あとは食器なども、お気に入りのものを見つけるのもいいのかな。

―――ちょっと大きくなってきたら、食事の支度をお手伝いしてもらう。
よく保育園などでは、野菜を育てて、収穫体験をさせて、みんなで食べるところまでやることもありますよね。そういうことをすると子どもたちは盛り上がるようで、パクパク食べる様子を見たことがあります。そんなことも大切なのかもしれません。「楽しい」ということにつながっていくといいなと思います。


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