大河ドラマ『どうする家康』をもっと、楽しむためのコーナーが「ラジオ深夜便」で放送中の「もっと、どうする家康」。キャストやスタッフが、ドラマの現場から制作チームのこだわりをお伝えします。案内役は、ドラマの芸能シーンに携わる、芸能考証・指導の友吉鶴心(ともよし・かくしん)さんです。
【出演者】
友吉:友吉鶴心さん(薩摩琵琶奏者・『どうする家康』芸能考証・指導)
大河ドラマ『どうする家康』をもっと、楽しむためのコーナーが「ラジオ深夜便」で放送中の「もっと、どうする家康」。キャストやスタッフが、ドラマの現場から制作チームのこだわりをお伝えします。案内役は、ドラマの芸能シーンに携わる、芸能考証・指導の友吉鶴心(ともよし・かくしん)さんです。
【出演者】
友吉:友吉鶴心さん(薩摩琵琶奏者・『どうする家康』芸能考証・指導)
友吉:
案内役の友吉鶴心です。
きょうは、私が務めております、ドラマの【芸能考証・指導】について、ご紹介します。
芸能考証・指導というのは、歌とか踊りとかといった芸能をドラマのシーンに合った形で「昔はどうだったか」というのを精査して、復元したり創作したりするお仕事です。
この、『どうする家康』でも、さまざまな芸能が出てまいります。
代表的なものといったら…「えびすくい」でございます。
えびすくいは、徳川家康の家臣、酒井忠次が得意としたといわれています。
織田信長の前で踊った、という逸話も書物に残っているぐらいです。
ドラマの中では、酒宴の席でもわりと出てきたりしますので、宴会芸みたいな形で「えびすくい」が披露されている場面もあったかと思います。
また、武田との決戦の前に、酒井忠次たちが「えびすくい」を踊るシーンがありました。
第22回「設楽原の戦い」より
友吉:
(「えびすくい」は)書物には残っているんですが、どんな踊りや歌だったかっていうのは、分からないんですね。
全く資料がないので、当時の芸能が集大成されたといわれる「ややこ舞」、今、「綾子舞(あやこまい)」と言われているものなんですが、一説には出雲阿国(いずものおくに)が踊っていたのではなかろうかという、かわいい女の子たちが踊りをおどるという芸能があります。
それが、都からいろんなところに伝播(でんぱ)していきました。
その資料が、新潟に残っておりました。
新潟の資料を拝見すると、なんとそこに「えびすくい」がありました。
読んでいきますと、この「エビ」は、川のエビであると。
大名が太郎冠者(たろうかじゃ)に「川でエビを取ってこい」って言う、セリフが書いてあるんです。
「えびすくい」は当時、狂言のような仕立てで表現されていたのですね。
そこで、歌詞を精査して、「♪川また どこら程に おりゃしゃぁす」。「おりゃしゃぁす」というのは、三河の方言。それを取り入れて、川のエビですから、フナやアユを見ながら、エビがいないぞっていうのを表現するために、「♪フナ アユ フナ アユ え~びすくい、えびすくい」となるわけで、あります。
踊りの方は、所作指導の花柳寿楽(はなやぎ・じゅらく)さんがお考えくださって、完成しました。
そして、この時代といえば、信長が好んだもののひとつに「幸若舞(こうわかまい)」があります。
この幸若舞というのは、室町時代から安土桃山時代にかけて大変流行した芸能で、若い男の子たちが鼓の拍子に合わせながら物語を語って、舞を舞ったといわれており、今でも伝わっている芸能の1つです。
信長が舞ったといわれる、『敦盛(あつもり)』の「人間五十年 下天(げてん)の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」。あれは、幸若舞の『敦盛』の一節で、『舞の本』という本に残っております。
今回のドラマの中では、信長が家康を安土城に招待する場面で再現しました。
第27回「安土城の決闘」より
友吉:
「♪まず青陽の朝には 垣根木伝う うぐいすの」と、これも幸若舞の『舞の本』という歌集の中から選んで、ドラマの中で再現したということになっております。
さて、きょうは私のお役目であります、芸能考証・指導について、少しだけご紹介をさせていただきました。
これからも「えびすくい」をはじめ、さまざまな芸能や文化がたくさん出てまいります。
当時の芸能のエッセンスと香りを感じさせるような場面を作ってまいりますので、そのあたりもご注目いただけたら幸いでございます。
【もっと、どうする家康】瀬名役 有村架純さん(2023/07/02放送)
【もっと、どうする家康】織田信長役 岡田准一さん(2023/07/16放送)
【もっと、どうする家康】於愛の方役 広瀬アリスさん(2023/07/30放送)
【放送】
2023/08/06 「ラジオ深夜便」
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