7月のテーマは、「子育て世代間ギャップ」。
祖父母世代は、子育ての大きな味方ですが、育児の考え方ややり方、何気ない言葉の中にも、世代間ギャップを感じる例はあるようです。双方のすれ違いや行き違いを防ぐヒントを探りましょう。(聞き手・村上里和アンカー)
*放送の一部をこちらでお読みいただけます。全体は「聴き逃し」からどうぞ!
【出演者】
波岡:波岡一喜さん(俳優)
大日向:大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長)
7月のテーマは、「子育て世代間ギャップ」。
祖父母世代は、子育ての大きな味方ですが、育児の考え方ややり方、何気ない言葉の中にも、世代間ギャップを感じる例はあるようです。双方のすれ違いや行き違いを防ぐヒントを探りましょう。(聞き手・村上里和アンカー)
*放送の一部をこちらでお読みいただけます。全体は「聴き逃し」からどうぞ!
【出演者】
波岡:波岡一喜さん(俳優)
大日向:大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長)
――おたよりをご紹介します。
千葉県40代女性
<夫の両親はふだん2人暮らしをしていることもあって、遊びに行くと孫たちのことをとてもかわいがってくれます。ただひとつ「厳しいな」と思うのは食事のときのマナーで、“ごはんとおやつの時間は絶対にテレビを消す”というルールがあります。あとはお箸の使い方に厳しいです。「お箸を正しく使えないのは、とても恥ずかしいことですよ」と言われ、ごはんのときにうちの5歳の娘をはじめ、孫たちの隣に座って、使い方を指導されたことが何度もありました。夫の弟の家族は、それが嫌になって(弟の妻が言っていました。他にもいろいろ理由はあると思います…)実家に顔を出さないようになりました。「みんなで楽しく食べられればいいのに」と思いますが、両親には言い出せません。>
というお悩みが寄せられています。なかなか、言い出せないでしょうね。こういうご両親には…。
波岡:
難しいですよね、これって・・・。要はしつけやモラルとかそういうことになってくると思うんですけど、僕はこのご両親寄りなんですよ。けっこう厳しめなんです。当然ごはんを食べているときはテレビを観てないですし、例えば、何か(食べ物を)ボロボロこぼすとか、そういうのも注意するし、「ちょっと、マナー的によくないことをやめようね」って言う方なんですが、最近それも「自分でどうなのか」と思いだしていて…。
――え?
波岡:
それはなぜかというと、「こぼさない、こぼさない! こぼさないようにもうちょっと前に行って食べな」とか厳しく言い過ぎたら、あるとき、嫁がですね「そんなにギャーギャー言わなくて良くない? もっと楽しく食べたらいいじゃん、今楽しく食べているんだから。この空間、食べることを楽しんだ方が大事じゃない?」って言ったんです。それプラス「(食べ物を)こぼさないよ! 20歳になったら。今だからこぼすの」って。
――ああ・・・
波岡:
「今こぼしてもいいじゃない! 拭けばいいんだから。ママが後から。でもそれよりも楽しく食べてのほうが大事じゃない?」ということを言って、確かにそうだなとは思いました。
――大日向さんが笑ってらっしゃいます。すてきな奥様ですね。
大日向:
本当ですよね。ゆとりのある方ですよね、確かに大人になってこぼさないわね。最近、私、少しこぼすんですけどね。
全員:
(笑)。
大日向:
加齢で…(笑)、確かにそうですよね。
波岡:
「小さいころだから、こぼすのであって、大きくなったらみんなこぼさなくなるんだから、そんなにギャーギャー言わないで、(親は)拭く方をやって、楽しく食べようよ」みたいな。
――波岡家は、そうやって夫婦で話して、それで波岡さん自身もその言葉でハッとして「ちょっと自分のやり方、どうかな?」と思っているとおっしゃっていました。じゃあ、このおたよりの方のように夫の両親の家で、「楽しく食べる、食べられたらいいな」っていう気持ちを伝えるには、大日向さん、何かいいアドバイスありますでしょうか?
大日向:
鍵はパパだと思うんですよ。これ、パパのご両親でしょ?
――はい。
大日向:
ですから、お嫁さんであるママがなかなか言えませんよね。そこをパパが冗談めいて言って下さってもいいし、真剣におっしゃっても、それぞれのキャラクターでそれぞれの親子関係がおありだと思うんですよ。だから、ご自分の両親に「もうちょっと楽しく食べさせたいな」とおっしゃってもいいし、パパが潤滑…、あいだをつないで下さるといいかなと思いますね。
波岡:
全く、同意見です。
――まずは、自分のご主人とそのことについて話してみると…。そこからですかね。
大日向:
「子どもたちがあなたのご両親の家に行かなくなっちゃうと、かえって困るでしょ? うまく言って」って言うと、いいかもしれませんね。
――続いては、祖父母世代からのお悩み。前に一度ご紹介しているんですが、ここで改めて…。
長野県50代男性
<私は良きじいじでいるために、叱らない、優しいじいじを演じているじいじです。娘2人は厳しく育てたつもりですが、孫のしつけは親たちに任せています。今感じているのは、2歳と3歳の孫たちが机に乗るのをやめさせたい。娘たちにはピシャッとやって注意をしてきたけれど、今ではそれは虐待になるとかで何もできません。言葉がまだまだ理解できてない孫をどうしつけたら良いのでしょうか?>
“優しいじいじを演じているじいじ”ということですが…
波岡:
優しいままでいいと思います。これもさっきと同じだと思うんですけれど、“子どもは机の上に乗るもの”です。なので、一緒に楽しく遊んであげてください。
全員:
(笑)。
波岡:
ただ、机の上から落ちたら危ないから、危ないということに関しては、「危ないから気を付けてね」、「危ないからおりようか」とかはいいと思いますけど。「やっぱりその机は乗る所じゃないからダメだ」っていうのは…、まあ20歳(はたち)になって机に乗る人は誰もいないから。そういうベクトルで優しく。もしくは、机に乗る遊びよりももっと楽しい遊びをじいじがすればいいだけで、ということだと思うので…。ここは、優しいじいじのままでいてもらえたらなと思います。
――大日向さんいかがでしょう?
大日向:
あの、わたし、ママになってから机に乗ったことあるんですよ。やっぱり子どもたちがテーブルの上に乗るからね。「どうして乗るのかな?」と思って、一緒に乗ってみたんです。そしたら、面白かったですよ。お部屋の見え方が全く違うの。「こんな景色を楽しんでいるんだな」と思ったことを今、波岡さんがおっしゃったことで思い出したんですけど。
もう1つ、かえって波岡さんに聞きたいんだけれど、「演ずるって、どういうことなんだろうか」って。例えば、波岡さんが厳しいパパを演じたり、優しいパパを演じたり、ご自分の個性と違うパパ役を演じることがあるとしたら、日常生活でどのくらいギャップがあるんですか? 演じるってどんなことなのかしら?
波岡:
演じるときは、僕は全く出ていないので…。
あの、まあ厳しいパパならとてつもなく厳しいし、優しいパパなら何でも許すパパになるので、演ずることに関しては…。ただ、家でその「ちょっと怖いパパを演じてみよう」とか、「優しいパパを演じてみよう」ということは、何かしないようにしています。
大日向:
そうよね、すごいと思うの。「演じているときは、僕は出ていない」っておっしゃいました?
波岡:
そうですね。
大日向:
日常生活のおじいちゃま、おばあちゃまとして、孫に接するとき、ご自分を出さないっていうのは、とてももったいないことじゃないですか。だから、厳しいか優しいかの前に、演ずる不自然さの方が私はちょっと考え直したらいいかなって思うんですね。
「優しいままでいい」と波岡さんがおっしゃった。この方、どっちなんだろう、ご本人は…。𠮟らない、優しいじいじを演じているっていうのは、本当は叱りたいのかな?
――本当はピシャッとやりたいけど…。
大日向:
だったら、ピシャッとやってもいいと思うの。そして娘さんとかお孫さんと、そこでいろんな関係性ができるなかで振り返ったりすればよくて、演ずるっていうのは誰かの目をこう意識している、観客の目を意識しているってことですよね。俳優さんはそれ大事だと思うんですけど、家族の中で相手によく思われたいとか、そういうのって、ちょっときつくて長続きしなくないかしらね。
――なるほど。“演じる”を1度外してみて、お孫さんに対してみたらどうかと。
大日向:
本物の方がいいですね。子どもは見抜きますからね。本物だったら、怖かろうが優しかろうが、愛していれば、かわいいって思っていれば、そこをちゃんと見てくれる。「子どもの目って侮れないな」って思いますね。
――次のおたよりです。これも去年いただいていたおたよりですが、同じように悩まれている方も多いと思いますのでご紹介します。
埼玉県70代女性
<孫たちがゲームの時間(30分)が守れなくて困っています>
そして、
大阪府60代女性
<2歳と5歳の孫がいる還暦の祖母です。ちょっと反抗期の孫たち。保育園がお休みのときには娘に子守を頼まれることがあります。孫はゲームや動画サイトが大好きで、他の遊びに誘ってみても興味を示してくれません。我が家のテレビのリモコン操作もいつの間にか覚えたのか、気が付くとゲームをしています。ときどきは私がリモコンを隠してさせないようにしていますが、孫の子守に少々疲れています。何か良い方法はないでしょうか?>
波岡家では、どうでしょうか?
波岡:
これは今の親の永遠のテーマだと思います。年頃の(子どもがいる)親はみんなやっぱり、子どもがスマホを持つということは、どうしても外せなくなってくるわけです。居場所(の確認)とか、連絡を取ったりとか。あとは子どものコミュニティがあるから絶対スマートフォンがないと仲間に入れないコミュニティになってきているから、今。だから、スマホは当然持っているわけです。で、大人ですらスマホのゲームに依存する人がいっぱいいるわけですよね。それを子どもに「やるな」っていうのは無理です。うちでももうかなり問題になっています。永遠にやっぱりそれをやっちゃうから、僕も悩んでいます。
――え~、そうですか。
波岡:
「夏休みの宿題やれ」って言っても、ずっと、スマホのゲームやっているんで。だから今、一生懸命、「勉強を4時間やったら、4時間スマホゲームやっていいよ」っていう、契約を申し出ているんですけど、なかなかのんでくれないっていうのが今です。
――波岡さんも悩んでいるそうなんですが、大日向さん、今、多いですね。ゲームやスマホも悩んでいる方…。
大日向:
本当に大変ですね。私の子育てのころはなかったんで、「楽だったな」って思いますよね。どのご家庭でも本当に悩んでらっしゃるし、波岡さんが言われたように、「全く禁止にしたら、子どもは子どもの世界で生きていけなくなる」っていうことですから、言い続けることだと思うんです。親としては「4時間にして」、「1時間にして」とか「もうだめなんだよ」って言い続ける。それを守る、守らないっていうやり取りをずっと続けていくということと、一方でもし「だめだよ」っていうのであったら、別の遊びを、別の空間と時間を共に過ごすような工夫も必要だと思います。
でも、本当にそれは大変だと思いますね。ただね、スマホとかタブレットって悪いことばかりじゃなくて、孫が来たときにちょっとレストランに入ると騒ぐじゃないですか。そのときに「このときだけ見せるわよ」なんて言って、娘夫婦が見せてましたね。孫は至福の顔をして見ていました。お料理よりもそっちのほうが…。でもいけないんだって、何か分かりながら見ているっていうことが面白いなと思って見ていましたね。野放図にしなければ大丈夫じゃないかしらね。
――やり取りを続けるということですね。ヒントになるかも知れない、こんなおたよりも来ていました。
大分県60代女性
<私は69歳の祖母です。3人の子どもと5人の孫がいます。私が子育てしていた時代は、海や山や川や野原に育ててもらおうと私の田舎の実家に帰省して田舎の自然に育ててもらいました。今その子どもたちも帰省するたびに海や山や川に子どもたちを連れていって一緒に遊んだり、遊びを教えています。私たち祖父母も孫たちと自然遊びで交流することができて、とても楽しく帰省を楽しみにしています。子育てが孫育てにつながって良かったです>
まさしくこの夏に帰省したときに、違う遊びに触れるチャンスっていうことがありますね。
大日向:
ありますね。「スマホはだめよ」というのではなくて、「こういう遊びって面白いよ」と、別の物を示してあげるということですね。なかなかでも大変だと思います。どこでも自然があるわけではないですし。ですから「スマホがだめという替わりに何を与えることができるだろうか」と探し続けるということでしょうかね。
――続いてのおたよりをご紹介します。
群馬県70代の女性
<17年前、初孫が生まれた当時、娘家族が半年以上我が家に暮らしていました。まず驚いたのはおしめと言われた布おむつを全く使わなかったことです。娘が生まれる前、私の母は浴衣をほどいてたくさんのおしめを縫って用意してくれました。「私もやってあげたいな」と考えていたら、「今どきは、紙おむつを使うから大丈夫。何もいらない」と言われびっくりでした。確かに「手軽で清潔、便利になったなあ」と世代ギャップを感じたものです。その後、娘一家は新居に移りましたが、孫の世話には10年以上関わりました。食べ物、衣服、遊びなどなど、私の子育ての時代とは違っていることも多々ありましたが、関われたのは楽しく幸せでした>
「ギャップは感じたけれども、関われたことが楽しかった」というお気持ち、波岡さん、どうでしょうか。
波岡:
そうですね、まあ変わってきていますからね。ランドセルは特に思いました。赤と黒ではなくなってますもんね。
――確かに、今いろんな色があって、自由ですよね。
波岡:
そうなんです。うちは茶色ですね。女の子なんですけど、今茶色(のランドセル)を背負っています。
――おしゃれですね! そういう意味ではこう…ジェンダー平等っていうのもすごく今大事にされていますよね。
波岡:
そうですね。
――男の子だからこの色、女の子だからこの色ということを押しつけない、言わない。例えば子供が欲しがるおもちゃも色や性別で区別しないなど、ジェンダーバイアスを意識している方も増えてきていると思います。波岡さんもそうですか?
波岡:
いや~ジェンダーの会話は家ではそこまではしないですけども…。まあ、でも容姿のこととかそういうことを口にしたりすることは控えるようにしています。でも何か僕って結構怒るとき怒るんですよ。怒りを家でぶちまけるときがあるんですけれど、そういうときに一番上の高校1年生の長女に「そういうことは、外では言わないほうがいいよ」と言われています。クールに…。
――子どもたちの、そういう冷静な声というのもあると…。大日向さん、こういう世代間ギャップ、社会が変わってきているってことを、どんなふうに祖父母世代は捉えたらいいでしょうか?
大日向:
おしめとか紙おむつとか、そういう違いは目に見えるものとしてわかるじゃないですか。
――そうですね。
大日向:
だけど、ジェンダーの問題っていうのは、なかなか気付きにくいんですよ。今、波岡さんが娘さんに「クールに言われて気が付いた」、さっきは「奥様に言われて考えを変えた」とか、波岡家の女性陣は、ずいぶんパパ改造に貢献してらっしゃると思ったんですけれども。
波岡:
(笑)。パパがいつも注意されるんです。
大日向:
そういうふうに捉えたらいいと思うんですよ。世代間でもそうなんですけれど、やっぱり価値観とか考え方が違ってくるわけです。差別しようと思って使うようなことは絶対にいけない。でも、無意識のうちに使ってしまうことって、どうしてもあると思うんです。生きてきた時代が違うから。だから、ママやパパ世代から(それは違うよと)言われたら、祖父母世代が素直に「ああ、そうだったの、ごめんなさい」って言えたらいいなと思いますし、逆にママ、パパ世代は、その言葉だけを捉えないで、どんな表情でおっしゃっているか、本当にいじわるで言っていることは少ないと思うんですけれど…、何気なく言ってしまっているんだとしたら、聞き流すとか、あるいはさりげなくジョークで交わしていくとか、そういうテクニックも世代間のギャップを埋めていくためには、大切なことかもしれませんね。
――お互いを思いやる心、受け入れる心みたいなものが大事になってくるんでしょうか。
みなさんからのメールはいつでも受け付け中です。
子育てのモヤモヤや悩み、笑っちゃったことやうれしかったこと。
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左:工藤直子さん
右:新沢としひこさん
次回の「みんなの子育て☆深夜便」は8月24日(木)です。
テーマは、「子育て事件簿 第7弾」。
子どもにまつわる思いがけない出来事、かわいいエピソードや懐かしい思い出。
普段は口に出しにくい愚痴、なんだかモヤモヤする気持ちなど、みなさんのつぶやき、ひとりごとを集めてお送りする、お楽しみ回です。
どんな思いもど~んと受け止めて下さるのは、詩人で児童文学作家の工藤直子さんと、シンガーソングライターの新沢としひこさんです。お二人へのメッセージもお待ちしています。
【放送】
2023/07/27・2023/07/28 「ラジオ深夜便」
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