【みんなの子育て☆深夜便】子育てリアルトーク「こども基本法ってなに?」

23/07/01まで

ラジオ深夜便

放送日:2023/05/25・2023/05/26

#子育て#家族#コミュニケーション#お悩み

5月の「子育てリアルトーク」のテーマは「こども基本法ってなに?」。
ことし4月、子どもの権利をどう守っていくのか、その基本理念を定めた「こども基本法」が施行されました。
いったい、どんなことが書かれているのか、何が変わるのか。
親、大人として知っておくべきこと、子どもへの伝え方などについて考えます。(聞き手・村上里和アンカー)

*放送の一部をこちらでお読みいただけます。全体は「聴き逃し」からどうぞ!

【出演者】
加瀬:加瀬健太郎さん(写真家)
甲斐田:甲斐田万智子さん(文京学院大学教授・国際子ども権利センター代表理事)

子どもには学校を休む権利がある

――メールをご紹介します。

神奈川県40代男性

<娘が中学に入りたてのころ、時々「きょう、学校行きたくない」と。そんなときは、決して無理に「学校に行け」とは言わず、「あ、そう、わかった。学校には電話しとくね」と軽く応対してきました。「学校に行きたくない」というのも大事な子どもの意見表明だと尊重する思いから、わが家では、そんな日常の小さな意見をなるべく大事にのんびりやっていこうと思っています。どうでしょう?>

甲斐田:
すばらしいと思います。

――甲斐田さんが、もう満面の笑みでいらっしゃいます。

甲斐田:
そういった子どもは、本当に幸せだと思いますね。お父さん、お母さんが私の気持ちを認めてくれた、否定されなかったということで「これからも頑張っていこう」っていうふうに思えるんじゃないでしょうか。きょうはちょっと疲れたから休むという、子どもにとって「休みの権利」っていうのが、子どもの権利条約にもありますし…

――そうなんですね!

甲斐田:
これはとても大事な、回復する権利にもつながるんですけれども。いろいろなストレスが学校であったり、時にはいじめがあったり、あるいは傷つくことがあったりしたときに、1~2日、休んで元気になるということもあると思うんですね。
なので、そういったお父さん、お母さんが子どもの気持ちを尊重する姿勢っていうのは、子どもにとって、とてもいいですし、おっしゃるとおり、子どもの権利を守っていらっしゃると思います。

――加瀬さん、どうですか?

加瀬:
すごいいいと思います。

――できそうですか?ご自身も?

加瀬:
やっぱりね、学校に行ってもらうほうが楽なんで…。どうしてもそこで「(家に)おっていい」っていうのは、なかなか強い意思を持ってはって強いなーって…(笑)。

――子どもが「学校に行きたくない」って言ったときに「えっ、これ許しちゃったら、どんどん行きたがらなくなって、さぼるんじゃないか」とか…。これ、ごめんなさい、私の経験なんです、長男の時の…。何かすごく不安に思うんですよね。

甲斐田:
不安になりますよね。

――きつく言っちゃったりして…反省しています。このパパさん、すばらしいですよね。

子どもと一緒にどんな人間になりたいか考える

――「怒らず、否定せずに育てていきたいのに難しい」というおたよりをご紹介します。

神奈川県40代女性
<3年生、一人っ子の40代半ばのママです。「一人っ子だから競争相手がいない、甘やかしている」と私の実父にも言われることがあり、とても苦しいです。「早くしなさい」と毎朝言っている私、けさも時間割りの準備を終えていないことを怒ってしまいました。ごめんなさい、わが子。怒ってできるようにするのではなく、ほめながらできるように育ててあげたいというのが理想ですが、現実はまったく違います。>

ママさんのつらい思いがすごく伝わってくるメールですが、加瀬さん、どんなふうに聞きましたか?

加瀬:
まさに、ママさんのところに僕の名前を入れていただけたら。同じ気持ちです。

――怒らず、叱らず…

加瀬:
怒ってしまうんですよね。ほんで落ち込む。

――ママさんも落ち込んでいらっしゃいますよね。ほめる子育てをしたいのに、と悩む方は多いと思います。

甲斐田:
子育てするときに、“子どもと一緒にどんな人間になりたいか”ということを考えるといいと思うんです。つまり、この場合は「朝、早くしなさい!」ですけども、よくお母さんが叱ってしまう言葉として「ゲームばっかりしないで、勉強しなさい!」ってあると思うんですよね。

全員:
(笑)。

――もう、世の中でたくさん言われていると思います。

甲斐田:
それを一方的に上から言うんじゃなくて、子どもと一緒に「ゲームばっかりしていると、何がいけないのかな? どうなると思う?」ってことをまず話し合う。ゲームの影響について書かれたものがいろいろ出ていると思うんですけれど、そうした根拠の調査結果とかを子どもと一緒に読んで、「何時間やると、こんなふうに影響があるらしいよ」とか「何時間やって、やめられなくなっちゃった人もたくさんいるらしいよ」とか、あるいは「その期間をこういうことに使ったら勉強に限らず、絵を描いたりとか外で遊んだりとかに使ったら、こんなにメンタルも健康になるらしいよ」とか、一緒に考えてみるんです。

お母さん、お父さんが決めるんじゃなくて、お子さん自身に「じゃあ、何時間ゲームをしたらいいかな? 1日30分とか1時間とか自分で決めてみない?」っていうふうに言って、それで自分で計画を立てて1日のスケジュールを立てると、その子に決定力が身につくだけじゃなくて、責任感が生まれると思うんですよ。学校の校則もそうだと思うんですけれど、自分が決めたことは自分で守らなくちゃいけないってなると思うんですよね。

どうしても親が示さなくちゃいけない、指導しなくちゃいけない、導かなくちゃいけないって思うと、親だけで決めちゃうんですけれども、子どもと一緒に計画して、子どもが自己決定していって、責任を持って自分で決めたことをやるというふうにしていくといいんじゃないかなと思います。

――今の甲斐田さんの話を受けて、加瀬さんいかがですか?

加瀬:
子どもの意見をちゃんと聞いて、(ゲームの)時間を向こうから言わせて、紙に書いたんですけれど、だんだん延びていくんです(笑)。こういう場合は、どうしたらいいんでしょうか?

甲斐田:
「延びていったら、じゃあどうなると思う?」っていうのをもう一度聞くっていうことですかね。(ゲームの時間が)延びたことによって、自分が計画していて、やろうと思っていたことが短くなっていくということですよね。

加瀬:
そうです。

甲斐田:
そうすると、それは自分にとって、長期的に見てどうなんだろうっていうことですよね。

加瀬:
そこ、粘らないといけないわけですよね。あれこれ言うと嫌がるし、だんだん、毎日ちょっとずつ延びていて…。

甲斐田:
そこは厳しくやっていいと思いますよ。自分で決めたことでしょ?って。孫の話ばっかりで恐縮なんですが、うちの娘が言っているのは「今、このお菓子を食べると、3時のおやつはないけど、それでもいいの?」って言って、孫が「それでもいい」と言ったときはそうするんですけれども、絶対に3時のおやつはあげないです。自分で決めさせたので、そのへんは厳しくやっていいじゃないかなと。

加瀬:
もう1回食べさせてまうんですよね(笑)。

全員:
(爆笑)。

加瀬:
そうか、そこで頑張らなきゃあかんわけですね。

甲斐田:
親も鬼にならなきゃいけないときはあります。

――お母さんお父さんもちょっと頑張るわ。あなたの話を聞いて、コミュニケーションしながらやっていきたいと思っているんだけれど、うまくいかないこともあると思う。許してね。みたいなことを言いながらでいいですよね。

甲斐田:
もちろんです。

――最初から完璧にやろうと思うと…すごく、もう(ハードルが高い)。

甲斐田:
そういう親の弱さも出してもいいと思うんですよ。

――弱さを出してもいい?

甲斐田:
親が何もかも決めて、こうしつけなくちゃいけないと思うと苦しいけれども、「お父さん、お母さんもどうしたらいいか、分からないから一緒に考えよう」っていうほうが、子育てが楽になるに決まっているんです。一緒になって考えるから子どもにも力がつきます。自分がどうなったらいいのかってことを、自分で考えるわけだから、お母さんが一人で悩まなくてもいいことになったりすると思います。

――子どもって、根本的にはとても優しいから「お母さんも悩んでいて、よく分からないんだ」っていうと、「自分が頑張らなきゃ」みたいに思う子も多いんじゃないでしょうか?

甲斐田:
そう思います。

否定のしつけをしてきてしまったと反省

――では次のおたよりです。

東京都50代女性
<ちゃんと育てなきゃ、「親の顔が見たい」なんて言われないようにしなきゃ、「迷惑かけないようにしなきゃ」と力んで「あれはいけなかったよ」とか「これはだめじゃない」とか、気が付かないうちに否定のしつけをしてしまいました。中学で勉強に身が入らなくなり、挑戦を嫌がるように。否定はいけないともっと早くに気が付けば良かったと反省の日々です>

否定をしすぎてしまったのではないかというふうに悩んでいらっしゃいますが、加瀬さんもこういうことってありますか?

加瀬:
反省の日々です(笑)。

――本当は子どもの話をゆっくり聞いてあげたいけれど、周りの目を気にして、ついつい怒っちゃったり、無理やり言うことを聞かせようとしてしまうという悩みも、この番組に多く寄せられるんですが、甲斐田さん、どんなふうに考えたらいいでしょうか?

甲斐田:
そうですね。やはりまずは地域・社会の目が、子どもに優しくなることが必要かなと思います。子どもは、騒ぐものだし、暴れるものだし、それが自然だと思うんですよね。それを押さえつけて、ちゃんと黙らせるとか、じっとさせなくちゃいけないっていうふうに考えていると、親はそれに合わせようとして、子どもを叱るほうにいっちゃう。まさにそれは子どもの最善の利益ではなくて、世間体プラス社会の厳しい目にこたえようとするということになると思うので、もっともっと子どもに優しい目を向けてほしいなって思うんですけれども…。

で、周りの目を気にして子育てをしていると、「あ、お母さん、お父さんは、自分のことよりも他の人の目の方が気になるのね」って、やっぱり子どもは、自分を大切にされていないと思ってしまうと思うんですよね。

だから、日本の子どもが、どうしてこんなに自己肯定感が低いかっていうと、さっきの話に戻っちゃうんですけれども、子どもの声を聞いてもらえていない、子どもが「こうしたい」とか「ああしたい」とかいうことを、もっともっと真剣に聞いてこたえていくことで、「私はこれもしていいんだ」っていろいろなことに挑戦するようになると思うんですけど、やっぱり否定されていると、「私はどうせできない」っていう自己肯定が低いような子どもになってしまうんじゃないかなと思います。

――メールの方はずっとこうしてきてしまったから、挑戦を嫌がるようになっちゃったっていうふうに反省されているんですけど、でも、まだ…

甲斐田:
今からでも大丈夫です!

――そうですよね。

甲斐田:
もし、そう思ってらっしゃるなら、その気持ちをそのままお子さんに伝えていいんじゃないかなと思います。今まで、ちょっとごめんなさい、否定ばっかりしちゃって。でも本当は、もっといろいろなことに挑戦してほしいんだけれどもって…。

――親も弱さを見せる。反省している気持ちを伝えるということですね。

甲斐田:
それが対等なパートナーシップだと、私たちは考えています。日本の場合は、親の威厳を保たなきゃいけないみたいなところがあって、なかなか弱みを見せないところがあると思うんですけれども、言っちゃっていいと思います。

相手を尊重するようなコミュニケーションをとる

愛媛県40代男性
<子どもは注意されることが嫌いで、言えば言うだけ反抗します。分かってはいるんですが、どんどん私も口調が注意から怒りに変わってしまい、結果、泥沼になります。私が変わるにはどうしたらよいものかと悩んでいます>

加瀬さん、こういう声が届いています。

加瀬:
これですよ。これです。変わりたい、変わりたいと思って、また一緒の失敗してしまうんです。あー、いいお父さんになりたいよ~って思って、あああ~、これの連続です。

――甲斐田さん、こういう声がスタジオの中にもありますが…

甲斐田:
繰り返しになりますけれども、子どもは注意されることが嫌いって、お父さん分かっていらっしゃるわけですよね。どういうところが嫌いかっていうのを、聞いてもらえるといいんじゃないかと思うんですよね。例えば、「今のおとうさんの言い方が悪かった」って子どもが言ったら…たぶん悪かったときが多いと思うんですよ(笑)。「じゃあ、どういうふうに言ってほしいの?」って。「感情的にならずに、もっと静かな言い方をしてほしいの? それだったら分かってもらえる?」っていうふうに、いわゆる腹を割って話をしてみるっていうことが必要かなと思います。
「じゃあ、お父さんも、ちゃんと感情的にならずに静かに話すから、ちゃんと聞いてね」っていうふうに、お互いにこう相手を尊重するようなコミュニケーションをとるっていうふうなことがいいと思うんです。

私たちがすすめている「ポジティブ・ディシプリン」っていう肯定的な子育て、前向きな子育てっていう考え方があるんです。「ポジティブ子育て」っていう言い方もしますけれども。
これは、さっきの繰り返しですけど、何をしていけば自分が望むような人間になるのか、将来どんな人間になりたいのかということを、子どもと話し合っていくということなんですよね。

暴力的なきつい言い方をすることによって、子どもを変えよう、よくしようと思ったら、その子どもはそういう方法しか大人や親から学べないですけれども、対話によってこういうふうにしたいって自分のことを言えるようになったらいいんだと学べば、社会に出てからも、何か理不尽なことをされたら「そういう言い方をしないで、もっとこういう言い方をしてください」っていうふうなコミュニケーション、サジェスチョンができていくと思うので。暴言が今問題になっていると思うんですけれども、そうじゃなくって、平和的な対話のできる人になってほしいし、自分もなりたい、だったらそういうコミュニケーション取ろうよって、親子で話し合っていったらいいんじゃないかなと思います。

――そうした子どもの声を聞く、意見を聞く、対等な立場でコミュニケーションをとるということが大事だというのはすごくこう分かってきたんですが、どこまでその子どもの声を聞いたらいいのか…。加瀬さんは、4人のお子さんがいらっしゃって、全員の声をちゃんと聞かなくちゃいけないとなると、どこまでやったらいいの? なんか難しそうっていう思いになりませんか?

加瀬:
なりますね。各々違うので、最後は泣いたやつ勝ちになっちゃう…。泣いたからラーメンにしようかって。

甲斐田:
うーん、まあそれはちょっと、あの泣かなかった子は不公平だと思うので、きょうは泣いた子。次は、2番目の子みたいな形で。

加瀬:
またそいつが泣くんですよ。

甲斐田:
こないだは泣いた子ちゃんの希望にこたえたから、今度はお兄ちゃんのほうにしようね、みたいな順番に。

加瀬:
はい、やってみます。

――いや、本当に「子どもの声を聞く」っていうのと「その要求を無条件で受け入れる」っていうのは、まったく別のことなんだなっていうことが、加瀬さん感じられてきました?

加瀬:
はい、感じられてきました。

――ちょっとあの歯の食いしばりが弱くなってきて、素直にそう感じていらっしゃる表情になってきましたね。


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小林よしひさん

次回の「みんなの子育て☆深夜便」は、6月22日(木)です。
「子育てリアルトーク」のテーマは、「子どもの睡眠」
生活リズムが夜型になっている。子どもの寝かしつけに苦労、自分も眠れていない!
寝起きが最悪…ナド、子どもの睡眠に関する悩みについて、タレントの小林よしひさんと一緒に考えていきます。
リアルタイムの悩み事はもちろん、わが家はこうだった、こんなふうに克服したなど、皆さんからのお便りをお待ちしています。

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