世界の子育て 聞いてみよう ②

21/04/24まで

ラジオ深夜便

放送日:2021/01/28

#子育て#家族#コミュニケーション

ざっくりいうと

  • 外国人の日本での子育てを容易にするためにも、外国の慣習に理解を
  • 親と子どもは同じ場所で寝ないのが、むしろワールドスタンダード?
  • 2021/01/28 ラジオ深夜便 ママ☆深夜便「子育てリアルトーク 前半 世界の子育て事情」汐見稔幸さん(日本保育学会会長・東京大学名誉教授)

グローバル化の進む現在、海外で育児をする日本人が増えると同時に日本で育児に取り組む外国人が増えています。異国の地で子育てするときに感じる苦労とはどんなものなのか。ナマの声をお伝えします(聞き手・村上里和アンカー)。

日本で子育てすることの難しさ

――ここで、日本で子育てをしている外国人ママにお話を聞いてみましょう。
NHKの国際放送局でお仕事をされているバングラデシュ人のビスワスさんと電話がつながっています。
ビスワスさんは、1994年に日本の大学院で機械工学を学ぶために来日。その後バングラデシュ人の旦那さんと結婚。現在18歳、13歳の2人のお子さんを育てていらっしゃいます。
ビスワスさん、こんばんは。

ビスワスさん: はい、こんばんは。

――日本に来られて27年。日本で出産して子育てをされてきたということですが、やはり習慣の違いは日本とバングラデシュでは大きいでしょうから驚いたでしょうね。

ビスワスさん: 妊娠中はバングラデシュではお医者さんに行く回数が少なくて、それが一番の驚き。
あと、妊娠中は、とにかく食べよう食べようといわれる。私はつわりがあまりなかったので、食べていたら17kgオーバーしちゃって血圧も高くなって、1か月入院することになりました。

――それは大変でしたね。
子育てが始まってからは、日本とはここが違うなと思ったことは、一番どんなことでしょうか。

ビスワスさん: バングラデシュではそのとき、おむつの習慣があまりなかったんです。今は都市のところで使っているんですが。おむつをせずに、赤ちゃんの排せつの際、水に流すトイレに慣れるようにすることが難しかった。でもそのぶん、日本の赤ちゃんより早くトイレで自立するのが早くなるということなんです。

――おむつの習慣がないんですね。

ビスワスさん: そう。あまりなかったんです。

――そのほかにはありますか。

ビスワスさん: 日本では離乳食は、やわらかいものから硬いものへ、どんどん変えていくんですが…バングラデシュでは何でも混ぜてペースト状にして、そのものをスプーンか哺乳瓶で飲ませてしまいます。ごはんとか野菜とか肉とか魚とか全部一緒に。

――それ、おいしいんでしょうか。

ビスワスさん: 私も考えているんですけど、おいしくはないかな。笑。
2~3歳になるまでは時々そういう食事も与えてしまうため、3~4歳でも硬いものは食べられないという子、吐き出してしまう子もいます。

――そうですか。それも違いますね。
ふるさとを離れて子育てというのは、まったく異国の場での子育てですから、相談する相手はいらっしゃいましたか。

ビスワスさん: そのときは、国際電話が今ほど簡単にかけられなかったし、とても高かったんです。お母さんに簡単に聞くのもできなかった。
そのとき頼りにしたのは、近くに住んでいる1人の先輩の方なんです。同じ国の方で、私よりもっと前に日本に。今はもう40年ぐらい日本にいらっしゃる方です。
「赤ちゃんが泣きやまないときは、どうしたらいいか」「下痢っぽいんだけど、どうしましょう」といろいろ相談して助けてもらいました。

――同じ国の女性の子育ての先輩がいるのが心強かったんですね。

ビスワスさん: 助かりました。

――今、ビスワスさんは、翻訳や通訳のお仕事だけではなくて、日本で暮らすバングラデシュ人の相談役としても大変頼りにされていらっしゃるそうです。皆さんの1番の悩みとは、どんなことなんでしょう。

ビスワスさん: 子どもに宗教をどう伝えればいいのか。
バングラデシュ人の多くはイスラム教を信仰するムスリムなんです。
言葉ももちろん、国のこと、文化、食べ物の制限のこと、いろいろなものを、日本において子どもたちにどう伝えるといいのか。それがよくわからなくて、子どもをここで育てるときの一番の大きな課題なんです。

――今ビスワスさんのお子さんは18歳と13歳になっていらっしゃるということですが、うまく伝えられていますか。

ビスワスさん: 上の子は、宗教のことをよくわかりました。でも、下の子はちょっと考え方が違うかな。宗教のことはあまりよくわからないんです。そういう問題もあって、よく何回も何回も説明しないとよくわからない。

――今思ったのは、どんな状況でどんな国の方が子育てしても、小さいころから大きくなってくるまで、いろいろな悩みがその都度その都度出てくるものなんだろうな、と思いました。
ビスワスさん、本当に夜遅くお電話をつながせていただきまして、どうもありがとうございました。

‌ビスワスさん: どうもありがとうございました。

――ビスワスさんでした。
バングラデシュと日本の違いを聞いて、汐見さん、いかがでしょうか。

汐見さん: よくわかります。私はバングラデシュへよく行っていましたからね。

宗教の問題は、これから日本にはたくさんの外国の方が住んで一緒に仕事してくださる(ために避けられなくなる)とは思うので、日本人が、たとえばイスラム教の方は食事の場合どういうことを大事にするか、というようなことをちゃんと子どもたちと勉強して、あるいは、学校給食の中でもそういうことをわかったうえで食事を出すことをちゃんとやらなきゃいけない。それから礼拝室をどこかに作るかといったことを考えていかないと、日本人の考えだけで外国の方に日本の中で生活してもらうのは無理な時代が始まっていますので、私たち自身がもっといろんな宗教のことを学ばなきゃいけない時代が来ているんじゃないでしょうか。

――そうですね。周りの日本人の親も子どもも知ることが大事だと思いますね。

親と子を分ける時間も必要?

――さて、続いては家族の習慣の違いについて。
日本だと、親子が川の字になって眠る、小さいときは子どもとお母さん・お父さんが一緒に寝るという話はよくあることだと思うんです。また、リビングが子ども部屋みたいになってしまっているという話もよくありますが、これも国が変わると常識が違うようです。

アメリカ・アラスカ州女性
<アメリカ人の夫との夫婦間の育児の常識の違いを一番強く感じたのは、「産まれたての娘を、夫婦の寝室とは別の子ども部屋のベビーベッドに寝かせるべきだ」と夫が譲らなかったことです。
アメリカでは一般的な常識で、夫もそのように育てられたということです。>


この方は、娘さんの泣き声をモニター越しに聞いて、おむつ交換、授乳のたびに娘さんの部屋を訪ねた。「今となっては懐かしい思い出です」というお話です。
赤ちゃんは、産まれたときから別室なんですね。

汐見さん: 「産まれたときから」とは必ずしもかぎらないですね。ヨーロッパ人は、4か月ぐらいまではものすごく泣く時期があって、その時期が過ぎたら別室だという人たちもいるんです。

私どもも、日本にいたんですけれど、数か月たったら子どもは子どもの部屋で…というようにやりました。
2段ベッドできょうだいで寝かして、(自分たちが寝るのは)隣の部屋でしたね。何かあったらすぐ飛んでいく、という形です。川の字になって寝るだけの空間がなかったということもあるんですけどもね。
ただ、ヨーロッパでは(子どもを別室で寝かせるのが)一般的ですよね。
ただ、「それはちょっと」ということで、フランス人の中には「必ずしもそうはしていない」と言う人も聞きました。その辺が、場合によってはショックを受けることかもしれません。

――そうですね。
「子どものころから別室にする」というご意見は、ほかの方からも聞きました。NHK国際放送局でポルトガル語のキャスターをしていらっしゃる、日系3世ブラジル人のソニアさん。
1991年に来日。来月26歳になる娘さんを日本で出産して育ててこられた方です。子ども部屋に関するソニアさんの話をお聞きください。

ソニアさん: ブラジルでは赤ちゃんは、産まれたときから赤ちゃんの部屋、子ども部屋というのがあるんですよね。だから一緒に寝ないというのが普通。「夫婦の寝室には子どもは入ってはいけない」という暗黙のルールがあって、子どもたちは子どもたちの部屋。だから、ママ・パパと一緒に寝るというのは、あまりない。
夫婦の時間、夫婦のスペースをちゃんと守っていかないと、結局子ども中心になるじゃないですか。もちろん子どももとても大事なんですけど、ちゃんと分ける。分けてやっていかないと、長い目で見るとズレが出てくるんじゃないのかな。

子どものしつけに関してもそうなんですけど、私が一番びっくりしたのは、ほかのママ友の家に遊びに行くじゃないですか。部屋中におもちゃを散らかすんですね。部屋中に子どものおもちゃが置いてあるんです。
すごく驚いた。「それは、あかんな」と。それは違うんじゃないですか。

この家は、子どもの家でもあるんだけど、それぞれのスペース、守らなきゃいけないスペースがあるじゃないですか。「おもちゃを広げて遊んでいい場所はここだけですよ」というのをうちはちっちゃいときから決めていましたね。
自分の部屋では何してもいいんです。おもちゃを箱から出そうが、自由にやってください。きちんともとに戻せば。「それをほかのリビングだったりキッチンだったり、またはママ・パパの寝室に持ってくるな」と。そういうのはちっちゃいときから、しつけとしてはやっていましたね。

――続いて、同じくNHKの国際放送でお仕事をされているフランス人のミリさん。7年前に来日し、現在2歳3か月の娘さんを韓国人の旦那さんと育てていらっしゃいます。
ミリさんのお話をお聴きください。

ミリさん: テレビで見ると、子どもがいる方の家は、すごくおもちゃがいっぱいあって全部「子どもの部屋」になっているんですけど、私はそれがすごい…反対というか、そうはなってほしくないと思う。子どものものももちろんあるんですけど、大人の空間を作りたい、そこまで犠牲はしたくないなと思っているんです。

うちも、やわらかいカーペットとかを買ってしまいました。もちろん子どもの安全は第1だから調整しなければならないんですけど、子どもが産まれたから全部きれいなものをとるんじゃなくて、「これを触らないのがいいよ」と育てながら、きれいな、居心地のいいスペースを作りたいなと思っているんです。

――お2人の話を聞いていて思ったんですけれど、お2人とも「子どもはとても大事。だけど、大人の生活や夫婦の時間を同じように大事にしている」と強調していらっしゃいましたね。

汐見さん: それは、「日本が茶の間文化である」ということと関係があるんです。
たとえば、マンションを新しく買おうとして見に行くとき、日本人はまずリビングルームを見るじゃないですか。
ヨーロッパ人はどこを見るかというと、寝室をまず先に見るんだそうです。「自分たちのプライベートが守られる大事な部屋は、どういう部屋なのか」というところがまずあって、それからリビングなんですね。

家庭の中で一番大事にすることの順位が違うのかもしれないですね。「子どもによって自分たちの生活がかき乱されるのは、家族じゃないだろう」という感覚ですよね。
だから子どもの部屋を与える。だけども、「こっち(親)の部屋では勝手なことをしちゃいけないんだよ」というようなことを厳しく最初から教育していくんです。
僕は「なるほどな」とわかるところがあります。私たちもそういう感じで、寝る前まで必ず絵本を読んでやる。しっかり寝るまではいてあげるんです。寝たら引き上げる、泣いたら行ってあげる、という形です。(子どもたちは)必ずしも寂しいと感じていなかったですね。
ヨーロッパの方々は「自立の練習だ」とおっしゃるんですけども、(親と子で)同時に家庭の中を住み分ける、という1つの文化なんだと思います。

――ひとりひとりがちゃんと「個」や「自分」を持っている、自分を持って子どもも育ってほしいという気持ちも込められているのかもしれませんね。

子どもの食事は簡単でいい?

――続いては、子どもの食事・食生活についても、こんな情報が寄せられています。
シンガポール在住歴のある方から。

<友人のシンガポール人いわく、国民の趣味は買い物または食べ歩き。とにかくフードコートや、ホーカーセンター(これは、屋根はあるけど、半分屋外という屋台村だそうです)で家族みんなで外食という姿がよく見られます。巨大団地群には必ずホーカーセンターが常備されています。>

いろんな食べ物が外食で気軽にできるところなんですね。

<夜は子どもがパジャマ姿でホーカーセンターで外食、というのも「シンガポールあるある」かなと思います。>

とこの方はおっしゃっています。

イタリア・トリノ40代女性
<イタリアの幼児食は、野菜のピュレやスープに、パルメザンチーズとオリーブホイルをかけて味付けするのが基本です。>

大人の食事のような感じですが、イタリアではこれが幼児食ということです。

フィンランド30代女性
<習慣の違いのおかげで、楽なことは多々あります。
たとえば食事。晩ごはんはサーモンスープにライ麦パンだけ。さらにはパンケーキとクリームとジャムだけとかでも、家族から苦情が出ないことは本当に助かっています。
友人や親せきの話を聞いても、平日の食事はみんな割と質素。「もっと何品も作らなきゃ」とか「野菜を食べさせないと」とか、息子が小さかったころは思っていましたが、そう思わなくてもよくなった。>


日本ではあまり聞かない習慣でおもしろいなと思ったのは、「お菓子の日」というのがあるそうです。

<フィンランドでは、決められた日にだけ甘いキャンディーやチョコレートを食べることができるという「お菓子の日」のルールを設けている家庭が多いです。>

「食事は手作りすべき」「子どもに栄養のあるものをバランスよく食べさせるべき」ということにとらわれないでいい、というお話でした。

汐見さん: 食事に対する考え方や食事文化が、各国でだいぶ違うんですね。ものすごく丁寧なのは日本ですね。
外国の保育園なんかに行ったときに、昼間に(食事として)出るときの中身を見ると、びっくりするようなことが多いですね。パンとハムとトマト1つだとか、調理なんかほとんどしなくてもいいようなものがポンと出てくることがあった。
家庭でも、それに近いものが食べられていることがある。食に対してものすごく凝るというのは、パーティーといったときだけになっているような文化が多いんです。

それからアジアは、中国なんかもそうですし、ホーカーセンターがあります。これは屋台です。
台北では「夜市」がありますよね。そこへ行って食べる。朝は、台湾でも、外へ行って食堂でみんな食べるのが当たり前なんです。
日本人は、少し「きっちりと家庭で作らなきゃいけない」というプレッシャーが強すぎるのかもしれません。

――強すぎますか。

汐見さん: 近所に行ったらいつでもそこで食べられるようなのがあって、「きょうは家でみんなで作ろう」というほうが家庭は楽かもしれません。いつも考えさせられます。

――本当ですね。
「お菓子の日」はいいアイデアだな、なんて思いました。

汐見さん: これはノルウェーなんかでもありますね。年に何回も、いっぱいお菓子をもらえる日があるんです。子どもはそれを楽しみにしています。

――ふだんねだられても、「きょうはお菓子の日じゃないからダメ」とふだんは食べさせない。だけど、お菓子の日には思いっきり食べられる。それは、また子どもにとっても楽しみな日でもあって、いいですね。

汐見さん: キリスト教関係のいろんなお祭りや何かがあったときには、決まったお菓子を食べる習慣もありますね。

海外での考え方、日本の慣習

――ひきつづきメールをご紹介します。

カナダ・カルガリー男性
<カルガリーは、冬になると湖や公園がスケート場代わりになって、無料でスケートがそこら中でできるため、子どもの冬の遊びがスケートになりがちなのは、すてきだと思います。>

カルガリーオリンピックがかつてありましたけれど、冬になると無料でスケートで遊べる。すてきですね。

東京都50代女性
<30年前にフランスで子育てを経験しました。
向こうでは、騒ぐ子どもは白い目で見られます。でも、逆におとなしくしていると、お店でもバスの中でも、「なんてお利口さんなのかしら」と、ものすごく褒められました。
はっきりしすぎて気持ちいいくらいでした。>


という、ご自身の思い出を教えてくださいました。
フランスというのはそんな感じなんですか。

汐見さん: 公共の場での振る舞いについて、「たとえ子どもであったとしても、勝手なことはしてはいけない」というのは、かなりはっきりしているんですね。そういう形でしつけていきます。おうちでも「みんなが食べるまでは、ずっと待ってなきゃいけない」というのは、かなり厳しいんです。そうやってしつけていきます。
その辺は、学ばなきゃいけないことかもしれませんね。

――そうですか。「何がよくて、何が悪い」ということじゃなく、いろんな子育てがあるというのを皆さんのメールやお話を聞きながら今思っています。
汐見さんもいろんなところに視察に行って学んで帰ってきて、「どれを日本に伝えようか?」と迷われるんじゃないですか。

汐見さん: 私たちは特に戦後、欧米の文化がいい文化だと思っていっぱい取り入れたんですけども、昔から日本人が大事にしていたことがどれだけ引き継がれているかとなると、必ずしもはっきりしなかった。
和食を作っている人たちが「和食」は大事だと世界遺産にずっと申請していて、今はそうなったでしょう。和食だけじゃなくて、食生活の日本の歴史からもう1回学び直しながら…特に発酵食品だといったものは体にもいいんです。外国から学ぶのも大事ですけども、日本はそのあたりをもう少し自分の足元を見つめ直すのもまた大事だという気がします。

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