子どもとあたたかい関係をつくる 「1日5分のほっこり声かけ」④

21/07/23まで

ラジオ深夜便

放送日:2021/05/28

#子育て#家族#コミュニケーション#コロナウイルス

家事や育児を「大変だ」ではなく「人間としてすごいことをやってるんだ」と思えたら、気持ちは楽になるのかも。「あきらめる」を前向きにとらえたいという山崎ナオコーラさんのことばに、福丸由佳さんも納得です。(聞き手・村上里和アンカー)

【出演者】
福丸:福丸由佳さん(白梅学園大学子ども学部教授)
山崎:山崎ナオコーラさん(作家)

家事で成長。すごいこと、やってるよ

――コロナ禍のリモートワークで在宅時間が増えたことで、夫が家事を手伝ってくれるようになってよかったとか、子どもの情緒面が安定したとか、妻が大変だったことがわかって感謝したというような声が聞かれる一方で、夫がいると大人用の3食を作らなくちゃいけなくて大変とか、子どもとの生活リズムが崩れたという声もありました。ナオコーラさんが気になった、コロナ禍の子育て世代の声やニュースはありますか。

山崎: 私がちょっと思ったのは、リモートワークというものが世間に広がったのはよかったと思うんですけど、ひとりで育児をしている場合だとリモートワークはできなくて、もうひとり大人がいるからこそ、リモートワークができるっていうところは、なかなか世間にわかってもらえないなという気はしています。

――お子さんが家にいて仕事をするのって、今のナオコーラさんもそうだと思うんですけど、ご主人がいても大変というのはありますよね。

山崎: きょうはみなさんのご理解があって、泣いたら世話してもいいですよとまで言っていただいて、ほんといい職場だなって(笑)、思ったんですけど、やっぱりもうひとり家に大人がいなかったら難しいですよね、リモートの会議にしても。そこがなかなかわかってもらえないから、育児も仕事なんだっていうか、けっこうなタスクなんだっていうのを、もっと世間にわかってもらえたらいいなという気がちょっとあります。

――夫婦間のバランスに不満を持つご家庭も多いと思うんですが、ナオコーラさんのところは家事の分担とか役割分担とか、どんなふうにバランスを取っていますか。

山崎: 正直、バランス取れてないと思っています。私としては、とにかく自分がストレスたまりすぎないようにとか精神衛生を守ろうというのを優先して、バランスがどうとか平等にどうとかより、私がつらくなりすぎないようにこのタスクをふろうとか、やりたくないことをほかの人ふろうっていうことを意識しますね。

――ほかの人にふる、というのは?

山崎: えっと……、夫に雑用を押しつけようっていうか(笑)。家事の負担を平等にしようとまで考えると、すごく難しいですよね。そこまでは考えられなくて、私がつらくなったり病気になるようなことのないようにっていうのを、とりあえず考えています。

――福丸さんも、働きながら子育てをするママのおひとりですが、家事の分担、バランスはどんなふうに考えてやってこられましたか。

福丸: 育児も家事も平等って難しいですよね。目に見えない育児、家事は多いから、私も不公平感からつい、夫に「ずるい!」と言ってしまうことも。子どもが保育園時代は、職場を飛び出し、最寄り駅から保育園までは自転車とばしながら、今夜のみそ汁の具は何にしようって冷蔵庫の中を思い浮かべるという日々でした。大変なときは特に、「きょうはこんなことがあって」って話したくなるし、夫には「大変だったね」とまずは聴いてほしい。それだけでもちょっとは救われるかなと。今も試行錯誤していますが(笑)。

――ナオコーラさんのエッセー『むしろ、考える家事』は、“目からウロコ”なことがいろいろ書いてあるんですけど、洗濯物を干すというタスクを「また私だけが家族みんなの分をやっている」と思うと不平等感がありますが、これを「ひなたぼっこだ」と思うと、なんて気持ちがいいんだろうと得した感が出る、という。そういう考え方の変換がすごいし、なるほどなあと思うところがたくさんあって、読むと気持ちが楽になります。

山崎: タスクが多過ぎるとストレスがたまるのはあるんですけど、もう1個のストレスとして、成長できない、人間として価値がないと思っちゃうというのがあると思うんです。「家事でも成長してるんだ」と、「ひなたぼっこして気持ちいいことして考えごとしてる」「皿洗いして考えごとしてる」とか思いたいなっていう、負け惜しみみたいなことをすごく思うようになりましたね。
福丸: すてきですよね、同じ時間を過ごすにも。

――ぶつくさ言うんじゃなくて、気持ちよく過ごせてそこになにか新しいことが生まれたら、すてきですよね。

山崎: 「大変だ」って言うだけじゃなくて、「すごいことしてるんだ」って、思いたいですよね。家事とか育児とか、人間としてすごいことをやってるんだって、思いたいですよね。
福丸: 確かに。

「『まだ3歳』と唱えて前向きにあきらめる」

東京都30代
<この番組を友人にすすめられてはじめて聞きました。最近3歳の子どもがすべり台から落ちて腕を骨折し、ギブス生活です。みんなと同じように思いっきり遊ぶことができないのがストレスなのか、登園したがらなかったり、ぐずることが増えました。私も下の子の育休から復職したばかりで余裕がなく、ぐずられると「いいかげんにしてよ」と感情が爆発してしまいます。そんな私が最近編み出したのが、怒りそうになるときに「まだ3歳、まだ3歳」と唱えることです。まだ人間を始めて3年しかたっていないのに、忙しい相手の空気を読んで思いやったり、ストレスを自分で受け流して我慢したり、できるわけないよなあ、3歳だもんなあ、と思うと、優しい気持ちと、いい意味でのあきらめがわいてきます>

――すてきな方法を編み出されてますね。

山崎: 私、「あきらめ」っていうことばが一番好きなので、いい意味でのあきらめっていうのはすごくいいなと思いました。

――「あきらめる」ということば、なぜ好きなんですか。

山崎: 古語では「明らかにする」という意味で、わりと肯定的な前向きな意味らしいんです。事情を明らかにするとかものごとを明らかにすることで前向きにあきらめるっていう、そういう意味で現代でも捉えてもいいのかなと考えるようになって、「あきらめる」をもっとポジティブに使いたいと私は思っているんです。「まだ3歳」とあきらめるのは、すごいポジティブな感じがするなと思いました。
福丸: 本当にそうですね。このママも“3歳”ですよね。ママ3年目でこんなすてきなことを思えるって、すばらしいなって思います。私も、「あきらめる」ほど高尚じゃないんですけど、結構「まあ、いっか」って自分に言い聞かせることもわりとあって、子育てしているときはそれも大事だなって思います。
今はしょうがないかな、みたいな感じで。

ことばを繰り返してキャッチボール

大阪府40代女性
<「ママ深夜便」を聞いて、同じようなママ・パパさんたちがたくさんいるんだという安心感を感じます。コロナ禍で人とつながることができない毎日、2歳の息子と窮屈な日々を過ごしております。息子はことばの成長が遅く、4月から親子教室に通う予定になっていましたがそれも延期。このままではますますことばが出てこないのではないかという焦燥感を持っています。家でコミュニケーション力を上げる工夫を、何か教えていただければうれしいです>

――ナオコーラさん、何か伝えられること、ありますか。

山崎: いやあ、すごく共感します。今、子育てしているこの世代って、子どものコミュニケーション能力を育てることができないんじゃないかって思ってる人、多い気がするんです。ほかの世代と違って、人と距離を作ることを教えたり、それこそ教室とか病院とか習いごととかに行けなくなりがちだったり、いろんな教育の場所が失われたりもしてるじゃないですか。コミュニケーション能力が下がっちゃうのかなってつい思っちゃう人はすごく多いと思うので、私もそのひとりで心配していて、どうしたらいいのかなって悩んでいます。

――私も知り合いから、引っ越しをしてお子さんが新しい小学校に通い始めたけれど、お友達ができないと悩んでる話を聞いたんです。福丸さん、子どもたちのコミュニケーションに、やっぱりコロナ禍は影響しているでしょうか。

福丸: 私たちみんなが初めての経験で、現場でもいろいろ起きているのかなと思いますね。人と接する機会が減っているし、マスクしたままの時間も長いし心配ですよね。
ただ、特に小さいお子さんとは“目”も大事かなと。視線を合わせる、やさしいまなざしを向ける。目は口ほどに物を言うといいますが、目を中心に表情を意識することで伝わるものもあるかと思います。コロナ禍がことばの発達にどう影響するか、まだはっきりわかりませんが、たとえば絵本の読み聞かせや、一緒にページをめくって絵を楽しんだり、歌に合わせて体を動かしたり踊ったり。お子さんの興味関心を中心に、好きなこと、好きな時間・空間を大切に、いろいろなコミュニケーションのとりかたもあるかなと思います。

――ほかの子と比べたりしてことばが遅いとなると、心配だし、何かしてあげたい気持ちでいっぱいになると思うけど、もしかしたらゆっくり成長してて、ことばをたくさん、今、体の中にためてて、それがあるきっかけで出てくることもあるような気がするから、ママもあまり自分を追い詰めないで、福丸さんがおっしゃったような楽しい時間を過ごせたらいいなと思います。ナオコーラさんも、年上のお子さんは踊ったり歌ったり、絵本で一緒に世界旅行したり、そういう時間を過ごしてらっしゃるんですよね。

山崎: そうですね。もしかしたら人間のコミュニケーションって、ことばだけじゃなくていろんなものがあるのかもしれないですよね。動きとか、ものを介してとか。だから、ことばだけとか、距離を取ったらコミュニケーションが取れないとか思い込むんじゃなくて、いろんなコミュニケーションの可能性を大人も考えられたらいいのかもしれないですね。
福丸: 先ほどお伝えした「CARE」の「繰り返す」ということも、意味のあることばとかちゃんとしたお話じゃなくてもいいんです。「ンマンマ」と言ったら、「ンマンマなんだねー、そうだねー」みたいな感じで聞いてるよ、というキャッチボールをする。そういうのも、子どもにとってはうれしかったり安心につながったりしますよね。
その世界を一緒に共有してるよ、って。そんな雰囲気も大事かな、なんて思いました。

――共有してるよって伝えるのは、相手にとってどんないいところがあるのですか。

福丸: ついてきてくれる、見ててくれている、大事にされているという感覚、安心感があるのかなって思います。

――「あなたを大事にしているよ」というのを、伝えていることになるのですね。

「まぁいいか」。それも大事

――コロナ禍でどの世代もそれぞれ我慢して過ごしていると思いますが、育児をしているママやパパたちは、さらにストレスを感じる方が多いと思います。ナオコーラさんは、心を穏やかに保つために気をつけていること、どんなことですか。

山崎: 先が読めなくなったっていうのが一番不安なんですけど、私の友達のお母さんが、「先っていうのは3年ぐらいまで見るだけでいい」という話をしていたことがあって、子どもがいると、子どもが大人になるまで責任持って計画を立てなきゃいけないんじゃないかと圧力を感じるんですけど、完璧な計画は誰も立てられてないよなって思ったら、3年ぐらい先をぼんやり見てるだけでもいいのかなっていう、あきらめじゃないですけど、それぐらいの気持ちで緩やかにやっていこうかなって思っています。本当は計画立てたほうがいいんでしょうけど、完璧な人なんていないんだから、まあ、この程度でもいいんだっていうふうに思うようにしました。
福丸: 本当に日々いろんなことが起きて大変なので、私も、きょう1日1回笑顔になれたり笑えることがあったらよかったって、先ほどの「まぁいいか」というようなところも大事かなって思っています。そして適度にぐちったり、頑張ったなと思ったらこっそりスイーツ食べるとか! お子さんが小さいとなかなか難しいかなと思いますけど。

今の「3年先まで」というナオコーラさんの話を伺って、本当にそうだなと。それと同時に、私は日々学生と接していますが、その中には、いろんな背景や大変な中で育ってきたお子さんもいるんですよね。そのぐらいの年代になると、いろんな家族があるなとか、自分だけじゃないんだなとか、子ども目線だけじゃなくて、親も大変なんだなとか、彼らなりにいろんな話をしてくれますが、そういう話を聞いていると、子どもってこんなふうに経験を経て育っていくんだなって、学生からも教えられたりしています。
山崎: 学生の方から教わることもあると聞いて、私も「子どもの将来の計画を立てなきゃ」とかおごった考えをするんじゃなくて、子どもから学ぼうとか、謙虚な姿勢を持ったほうがいいのかなと思いました。

――「子どもから学ぼう」というフレーズで、思い出したことがあります。
「ぐりとぐら」の作家の中川李枝子さんは17年の保育士の経験があるのですが、「私が見てきた親子はね、どーんな子どもも、親よりちょっとだけ、できがいい」っておっしゃったんですよ。
ここからは中川さんがおっしゃってたんじゃなくて私が受け止めたんですが、だから親は、子どもを導かなくちゃとか気負わずに、この子は私よりちょっとできがいいから大丈夫、ぐらいの気持ちで接してみると、子どもから学ぼうとか、一緒に成長しようとか、そんな気持ちになれるのかなって、今、思いました。

山崎: ほんと、そうですね。

――子育てをしているママやパパに、最後におふたりからメッセージをいただきたいと思います。まずはナオコーラさん、お願いします。

山崎: 私もこの時代になって先が見えなくて不安なので、皆さんと一緒に迷いながらやっていきたいと思います。

――ナオコーラさんのエッセー『むしろ、考える家事』はぜひ皆さんにも読んでほしいです。読むと目の前が開ける方、たくさんいらっしゃると思います。福丸さん、メッセージをお願いします。

福丸: この時間までラジオを聞いていらっしゃる方がいること、親であることとか子育てとかいろんなことを真剣に考えてらっしゃって、それだけでも頭がさがりますし、すごいなと思います。そして子どもが3歳だったら親歴3年、一緒に育っていくんだというそういう感覚も、大事だなって思いました。

自分の子育てで思い出すのが、子どもが2歳前で泣いて泣いてどうしようもなく、パジャマ姿で保育園に連れていったことがあるんです。恥ずかしいんですけど。そのときに先生が、「大変だったね。わかった、園で着替えさせるから」と言ってくださって、本当にほっとしたんです。でもそのときは「ありがとうございます」とも言えず、そこまでの余裕もなくて、時間がたってから、あのときは本当にありがたかったなあって、すごく思ったんです。

子育てしてるときって、余裕がないのはしかたがないと思います。だから周りの、私みたいにちょっと時間がたった人間が、子育て世代の方たちにもっともっと優しいまなざしを持ったり、あたたかいことばをかけられたらなっていうか、そういうことも大事だなって、きょうは感じさせられました。

――「ママ深夜便」にも、シニア世代や、子育てが終わった先輩ママたちパパたちから、あったかいメッセージが寄せられたりするんです。そういうことばが、今頑張っているママ・パパたちの心を助けるというところもありますよね。

福丸: 本当にそうですね。いろんなSOSがあっていいし、いろんな人とつながって、子育てができたらいいですね。

――ありがとうございました。

真夜中の子育て応援団
ママ☆深夜便

毎月第4木曜日
[R1] 午後11時05分~翌午前5時00分
[FM] 午前1時05分~午前5時

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【放送】
2021/05/28 ラジオ深夜便「ママ深夜便」子育てリアルトーク


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