柚木沙弥郎さん「100歳になるボクが伝えたいこと」前編

22/06/07まで

ラジオ深夜便

放送日:2022/04/14

#インタビュー#アート#ライフスタイル

2022年10月に100歳を迎えられる、染色家・柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さんは、今年3月、この1年間にデザインの全分野において傑出した成果に贈られる「2021毎日デザイン賞」を受賞されるなど、現役で活躍するクリエーターです。

大正11年生まれの柚木さんは、大学生活を戦争で中断され学徒動員。染色の道を志したのは敗戦後でした。日常の暮らしの中で使われる手仕事の品に美を見出した運動、民藝運動の提唱者・柳宗悦(やなぎむねよし)の思想に啓発され、染色の道へ進みます。

東京女子美術大学学長も長年務められ、染色の大家となった柚木さんですが、70歳を超えてから、版画、イラスト、絵本や人形の制作など、幅広いジャンルでも創作活動を行い、大胆でどこかユーモアをたたえた作品には若い世代のファンも多い方です。染色家・柚木沙弥郎さんにお話を伺いました。(聞き手・村上里和アンカー)


【出演者】
柚木:柚木沙弥郎さん(染色家)

僕は忙しいですね

――柚木沙弥郎さん、どうぞよろしくお願いいたします。

柚木: どうぞよろしく。

――「ラジオ深夜便」では、2018年4月と5月の4時台のインタビューにご出演いただきました。あのとき柚木さんは95歳でいらっしゃいました。

柚木: ああ、そう。

――インタビューには大きな反響がありました。

柚木: そう?

――はい。ちょうどあのとき、柚木さんの原点でもある民藝運動の拠点、日本民藝館で、柚木さんの個展が開催されていたときでした。

柚木: また来年、(日本民藝館で個展を)やりますよ。

――100歳記念の個展でいらっしゃいますね。前回のインタビューから4年たったという月日の流れを、どんなふうに感じられますか。

柚木: ここんとこね、年をとったら悠々自適、っていうのが理想の世の中になっているけど、僕は忙しいですね。だから僕自身も忙しいけど、世の中の変化や動きっていうものも、すごく速い。いろんなことがあるでしょ。だからあれから何年もたってるっていう気がしないくらいですね。

――柚木さんの生活には、お変わりはありませんか。

柚木: 僕自身は、年をとるもんですから、肉体的にいろいろ故障が起こってきますね。そういうことがあるからね、気分も毎日平らではないです。

――きょうはいかがでしょうか。

柚木: はははっ。きょうは皆さんがいらっしゃるから元気ですよ。

――ありがとうございます。

99歳の現役スーパークリエーター

――今年3月、柚木さんは「2021毎日デザイン賞」を受賞されました。本当におめでとうございます。

柚木: ありがとうございます。

――この1年間にデザインの全分野において傑出した成果に贈られる歴史ある賞ということですが、受賞の報をどんなお気持ちで聞かれましたか。

柚木: 私なんかにね、賞をくださることを聞いたときは、びっくりしましたね。いっぺんもそういうこと、考えたことないし。自分の仕事は、デザイン……かな……ちょっと何とも言えませんね。コツコツやってきたことが認められたことはうれしいし、同じようなことをやってる方の励みになる、そんな感じでいます。

――この1年間で最も活躍した人への賞というのを、99歳の柚木さんがとられたというのは、本当にかっこいいなと思いました!

柚木: わははっ、そういう意味ですね。若かったらね、当たり前なんだけどね。ま、当たり前ってことないけど。そういう、賞やなんかを目当てに仕事をしてきたわけではないし、それを今、この流れの中で賞になるっていうことは、珍しいことだと思います。

――99歳にして、お忙しい毎日を送られている、まさしく現役のスーパークリエーターと評されていました。本当は、悠々自適で過ごしたいですか?

柚木: あははっ、そうですね……暮らしたいと思うけども、そういうふうに悠々っていうのは、現実には、今のこの状態が悠々なんだろうなと思いますね。どっかに悠々っていう世界が別にあるんでなくて。毎日お客さんが見えたり、ヘルパーさんが来たり、マッサージが来たり。

自分自身の時間ってのは、そんなにないですよ。夜は疲れちゃうしね。アトリエは3階にあるんですけど、夜になってから、そこへ行って何かやろうっていうエネルギーはもうないな……。やりかけた仕事はあるから、やろうと思えばできるんですけどね。

たくあん切ってまな板をドン!

――創作のためのパワー、力は、どんなところから湧いてくるんでしょうか。

柚木: それはやっぱり、気分ですね。まずお天気がいいことね。いい話をしそうな人に会うことね。それから……おいしいものがあるとかね。

だけどね、僕の姪がうまいこと言っているんですけどね。「達成感」ってのはね、自分個人の、何かやったぞという覚悟みたいなもの。もう、他の人には関係ない。だから、たくあんを切るでしょ。一番最後にまな板をドンとたたいて、「うまく切れた」と思う達成感ね。何かやったっていう達成感、そういうものね、積極的な自分のプチストレスの解消法です。人には言わないのよ。自分だけ。

人に期待せず、自分で考え出す

柚木: だから僕は、もう結論だけどね、その人のね、今いいなと思うことを自分で考え出すんですよ。それ以外にないね。人から期待しても無理だもん。

――自分、ですか。

柚木: うん。自分が落ち込んでるなと思うときに、自分を奮い立たすことはどうやったらいいか。

誰でも何でもストレスはあるんですよ。それをどういうふうに自分の中で解消するかってこと。それをあんまり考え過ぎて、また病気になっても困るけどね(笑)。

――日常の中の小さな達成感で元気づけられるってことがあります。

日々の暮らし――それが人生

柚木: そう。その小ささが、大きくなったりなんかするんだと思うんです。だから毎日毎日の暮らしね、それをどうやって充実さすかっていうこと。それが人生だと思う。

ボーッとしているとね、目標がないんですよ。目標がない人っていうのはやっぱり困るの。何か自分の目標をこしらえて、それに向かって前向きな考えを出していく。

――柚木さんはそれを大事にしてらっしゃるんですね。

柚木: そう。だから悠々自適っていうのもね、なんか目標があるんだろうと思うの、本当は。ただボーッとしてて、なかなかその言葉のような気持ちにはならないんじゃないかな。

――そうですね。悠々自適という言葉には愉快な感じが込められてますね。


【放送】
2022/04/14 ラジオ深夜便 「100歳になるボクが伝えたいこと」柚木沙弥郎さん(染色家)


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