世界の子育て 聞いてみよう ①

21/04/23まで

ラジオ深夜便

放送日:2021/01/28

#子育て#家族#コミュニケーション

ざっくりいうと

  • 文化が違えば、子どもや子育てへの態度・価値観も異なる
  • 海外のほうが子育てに寛容? どうして日本は子育てに冷たいのか?
  • 2021/01/28 ラジオ深夜便 ママ☆深夜便「子育てリアルトーク 前半 世界の子育て事情」汐見稔幸さん(日本保育学会会長・東京大学名誉教授)

毎月第4木曜日に<ラジオ深夜便>でお送りしている「ママ☆深夜便」。1月のテーマは「海外の子育て事情」、お国柄が違えば、子育てをする環境や考え方、しつけのしかたも異なります。日本の常識から離れてみると、意外な発見や気づきがあるかもしれません。<すくすく子育て>でもおなじみの汐見稔幸さんと一緒に、世界各地の子育てや、日本で子育て中の外国人の方から伺ったお話を紹介していきます(聞き手・村上里和アンカー)。

汐見さんと一緒に見つめる「世界の子育て」

――ゲストをご紹介します。<すくすく子育て>でもおなじみ、白いおひげがトレードマーク。東京大学名誉教授で日本保育学会会長の汐見稔幸さんです。
電話でつながっているんですが、インターネットの画像でお顔は拝見しています。汐見さんの笑顔を見ると、なんだか私もホッとします。

<汐見先生の優しいコメント、大好きです。ホッと安心感です。>

というママからのメッセージも来ています。

汐見さん: ありがとうございます。

――汐見さんは、「21世紀を生きる子どもたちが温かく見守られ、丁寧に育てられてほしい」と精力的に活動中。プライベートでは、3人のお子さんのお父さん、そしてお孫さんは9人いらっしゃるんですよね。

汐見さん: まごまごしているうちに9人です、笑。

――前回「ママ☆深夜便」にご出演いただいたのが9月。「子育て事件簿~子育てっていろいろあるよね~」と題してお送りした回でした。半年間の振り返りの意味もあって、子どもたちのかわいい一面から困っている行動、驚かされたこと、子育てにまつわるお悩み事、そして「『ママ☆深夜便』が苦手だ」といったご意見もご紹介しました。
汐見さんにはそのとき、「毎日ほんのちょっとでいいから、子どものいいところを見つけて書き留める育児日記をつけてみるといいですよ」ということや、「本当につらい過去は奥歯でかみ切れ」という心に残るお話もしていただきました。私たちにとっても、みんなのための「ママ☆深夜便」だよ、という思いを新たにした回でした。
汐見さんは、ご出演になって、いかがでしたか。

汐見さん: こういう深夜の時間帯でも…人によっては、いろいろな条件で、子どものころに楽しかったという思い出が必ずしもない方も、たくさんいらっしゃいますよね。それでも、子育ては、子どもを産んだらやらなきゃいけない。
自分が楽しかったという思い出があるとモデルにしてやれるんですけども、そうじゃない場合は、どうやったらいいのかということを1から全部悩まなければいけないんですね。
あらゆる営みの中で、原則練習はまったくできないのが子育てなんです。

――本当にそうですね。

汐見さん: それでかつ、失敗もあまり許されないですね。
僕らの言い方だと、「運転を習わず、運転免許なしに、いきなり高速道路を走らされているようなもの」なんですよね。

――それだけ大変なことをしている、ということですね。

汐見さん: 「抱えた悩みを誰にどう相談したらいいのか」ということで悩んでいる方がたくさんいらっしゃるんだな、ということを番組を通じて改めて感じました。大事な番組だと思いました。

――汐見さんとお送りした9月の回ですが、テキスト版でNHKラジオの放送内容をご紹介する「読むらじる。」のページに掲載されています。
「ママ☆深夜便」のホームページを開いていただくと、下のほうに「あの場面をもう一度! 読むらじる。」というコーナーがありますので、そちらからぜひアクセスしてみてください。過去の放送回を振り返って読むことができます。

<2020年9月24日放送 「子育て事件簿~子育てっていろいろあるよね~」>へ

「保育の現場も、コロナ禍の社会を支えている」

――新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言の真っただ中というところが多くなっていますが、今回、保育園・幼稚園・学校は休校要請されていません。汐見さん、子どもたちの現場は今どんな様子なんでしょうか。

汐見さん: 4月のときに比べて、1回体験していますから、「こうすればなんとか乗り切れるんじゃないか」という気持ちはみんな持っている感じがしますね。私の妻も保育園の園長をしているのですが、以前に比べて、感染したという親やお子さんが増えていますね。
そういうときに、どう対応するのか。クラス全体を休みにするのか、あるいは学校・園を全体でやるのか。そういう判断が大変悩ましいという感じがいたしますね。
緊張感は相変わらず強いんですが、保育関係者には、「私たちも、医療関係者と同じように一所懸命社会を支えていることを、もっとわかってほしいわね」という人もいます。

――保育の場では、子どもたちにはどんな声がけをしているのでしょうか。

汐見さん: あまり心配させるようなことを言わない。お母さんやお父さんが心配していると、子どもは顔を見てよけいに心配になっちゃうんですね。常にマスクしているし。
今は、子どもたちの成長にとって大事な時期にあるから、生きることにはおもしろいことがどれだけ多いかを伝えることが大事なのに、「生きるのは大変だ」という感じになっちゃうと、あとでネガティブな影響が出てくるかもしれません。
ですから私たちは、こういった時期は、(子どもが)幼稚園や保育園に来たら、できるだけ「遊びはおもしろい」という形で「生きるのはおもしろい」ということを丁寧に伝えていく。(子どもが)失敗しても、とがめるのではなくて「大丈夫?」と言って、自分は優しくされている、愛されている、という気持ちを育てることが逆に大事になる…ということを話し合っていますね。

――いっそう大事になるんですね。メールをご紹介します。

神奈川県40代女性
<先日、2人目を出産しました。逆子が治らず、帝王切開になりました。新型コロナの影響で、入院中は家族と一切面会できず、1人目のときとは何もかも違っていました。
入院中、傷口の痛み、夫に任せきりの娘の心配でなかなか眠れなかったんですが、「ママ☆深夜便」に癒やされて心が落ち着きました。ラジオっていいなあ、としみじみ思いました。>


というおたより。ありがとうございます。
そして、先ほど届いたメールです。

熊本県女性
<毎月楽しみにしています。現在第2子を妊娠中。つわりで入院中です。病院のベッドの中で聞いています。>

1人で心細い気持ちで聞いていらっしゃる方は、ほかにもいるのではないでしょうか。きょうは「ママ☆深夜便」で、皆さん、つながっていきましょうね。

世界各国で異なる子どもへの価値観

――汐見さんと一緒にお送りするきょうの「子育てリアルトーク」は、テーマが「海外の子育て事情」。皆さんからのメール、取材させていただいた方々のお話をどんどん紹介していきます。
まず、メールです。

福岡県40代女性
<私は学生のとき、1か月ですが、アメリカにホームステイしていました。そのとき、小さいお孫さんの哺乳瓶にコーラが入っていたのには衝撃を受けました。
あと、「小学校は、通うのか家で学ぶのかが選べる」と聞いて、当時は「あーそうなんだ」ぐらいにしか思っていなかったけれど、子どもを育てる今になってみると、もっと子育てについて聞いておけばよかったと思っています。>


コーラは衝撃的ですね。

汐見さん: 意外とそういう家庭がありますね。
文化が違うんですね。
幼い子どもに何を食べさせるか。日本は「好き嫌いがないように」ということで、順番に食べさせていきますよね。だけど、国によっては「子どもが好きなものを見つけて、精いっぱい食べさせてやることが大事なんだ」という国もあるんですね。アメリカは典型的にそうです。したがって、甘いものを食べ過ぎることがいっぱいあって、その反省も起こっているんです。
すべての家庭がこうではないですけども、そういう家庭もあるんですね。

それから、家で学ぶホームスクール、ホームエデュケーションのことですね。
アメリカでは80年代から、普通の学校以外に、「チャーター・スクール」というんですが、いろんなタイプの学校を作ろうという運動がありまして、今一番広がっているのが「ホームスクール」ですね。
お母さんが簡単な資格を取って、家で先生の代わりに授業する。いろいろ工夫しながらやって、時々報告すれば大丈夫なんです。
日本でも、少しずつそれを広げようという(考え方が広がっているんです)。
学校というのは「絶対行かなきゃいけない」というわけではない。必要な教育を受ける権利は子どもにあるんだけど、「学校へ行かなきゃいけない」ということは必ずしも義務ではないんじゃないか、という考え方が広がっているんです。

――なるほど。

大阪府60代男性
<ベトナムのハロン湾で観光木船に挑戦したとき、出航して程なく小さい船が近づき、4歳ぐらいの子どもが1人乗り移ってきました。その子は私たちにバナナを「1ダラー」と言って売りに来たんです。みんなは驚がくしていましたが、私は1ドルで買いました。>

こういう経験。子どもが働かなくてはいけないという国もあるんですね。

汐見さん: まだまだたくさんあります。逆に、そういう子どもがコロナ禍でもっと増えるんじゃないか、と懸念されています。
私はよくバングラデシュに行っていたんです。首都のダッカだけで、ストリートチルドレンが数十万人もいることがありました。リキシャという乗り物に乗っていると、とにかく子ども連れの母親がいろんなものを売りにくる。新聞だとかね。そんなのは当たり前の姿でした。
一時よりは減っていると思いますけども、世界を見渡すと、貧困がまだまだ残っていることは心しておかなきゃいけないことですよね。

――汐見さんは、国内のみならず海外の幼児教育を視察に行かれることも多いと聞いています。今はコロナ禍でなかなか難しい状況にあると思うんですが、印象に残った視察先などを教えていただけますか。

汐見さん: 私は何年間か、フランスのフレネスクールというところに視察に行っていました。1年前にはドイツのフレーベルスクールに行っていたんですが、その前、3年間ほど続けてフレネ学校に行っていたんですね。

世界中、日本の中でも、従来の学校ではなくて、もっと子どもを主体にするような(学校もあるんです)。
子どもが調査に行って発表する。授業の中身を、子どもたちの意見を聞いて決めていく。「月曜日の1時間目に何を学ぶか、あなたが自分でカリキュラムを作りなさい」というようなことをやる。
授業は、同じ学年・同じ年齢の子どもたちとだけでやるんじゃなくて、小1・小2・小3の子どもたちが一緒に受ける。「いろいろ教え合ったり聞き合ったりする中で育っていくほうが自然だ」という学校もあるんですね。
フレネ(学校で)は、それをすべてやっています。
子どもたちに自分でカリキュラム(を作らせる)ということで、「勝手なことをやるんじゃないか?」と思っていたら、(子どもたちは)自分で選んでいるわけですから、真剣にやるんですね。世界で新しいタイプの学校を作るときの大事なモデルになるような気がしました。
時々行って、いろいろ考えさせられて戻ってくる…ということを私はやっています。

――子どもを管理するのではなく、子ども主体で学校を作っていくのは、逆転の発想というか、新しい考え方ですね。

子育てを応援する雰囲気

――さて、海外で子育てをしている日本人のママ・パパからもおたよりをいただいています。
まずは、子育てを取り巻く環境について、いくつかまとめてご紹介していきます。

イタリア・トリノ40代女性
<フランス人の夫がいる、2人の男の子、1人の女の子の母です。現在、イタリアのトリノに住んでいます。
イタリアの社会は、子どもや子ども連れのママにとても優しいです。自分の子どもに対しては、時に王子様のごとく扱い、驚かされます。この点は、フランスとは少し違うなと思うところです。
レストランなどで子どもが歩き回っていたり騒いでいても寛容で、路面電車などベビーカーを持ち上げて乗車しなければならないときは、必ず誰かが手伝ってくれます。赤ちゃんを連れていると、気軽に話しかけてくれます。新型コロナ前は顔や頭をなでてくる人もいました。>


アメリカ・アラスカ州女性
<アラスカ州の1番の都市であるアンカレッジ市内にて、アメリカ人の夫と小学校6年生の娘との3人暮らしです。アラスカ暮らし14年目。
アラスカにかぎらず、アメリカは日本に比べて子連れママに寛容だと実感します。いかなるところでも最優先されて、必ずヘルプの手が差し伸べられるんですよ。>


アメリカ・オレゴン州30代女性
<アメリカ・オレゴン州で出産・子育てをしているママです。
哺乳瓶は、日本みたいにわざわざ消毒とかまったくしません。すごく楽になりました(笑)。初めは日本でやってきたとおりにやろうとして消毒グッズを探しましたが、どこにも置いていなくてびっくりしました。
あと、どこでも授乳ケープ1つで授乳OKです。みんな普通に授乳しています。>


3人の方からのメールをご紹介しました。
子どもや子育て世代に、日本より優しい感じがしますね。

汐見さん: 大体そうですね。
日本だって、かつてはそうだったと思うんですが、最近は…。満員電車でぎゅうぎゅう詰めというのは、ああいうのはあまり世界にもないんですよね。だから、バブルまで(子どもを連れて)なかなか乗れない(などといった問題があった)。
私の息子にこの間まで数年間ドイツにいたのが1人いるんですが、そこへ行くとトラムがありますよね。トラムの中に、必ず乳母車のスペースがちゃんととってあるんです。優先なんです。「子育てしている人をみんなで応援しなきゃいけないんだ」という雰囲気は、日本より強い感じはありますね。

――「かつては日本もそうだった」と今ちらりとおっしゃいましたね。「かつて」というのは、江戸時代とかですか?

汐見さん: いやいや、そうじゃなくて…もう少しギスギスしていない社会・時代があったのではないですかね。
今は、みんな満員電車の中でお互いに顔を見合わないように緊張している。僕は、あの「満員ぶり」が日本で子育てしているお母さんに対して少し冷淡になってしまう最大の理由だと思っているんです。

――さて、次にアジア圏の話もご紹介しましょう。ミャンマーに20年近く暮らしていた方。この方は、独身時代にミャンマーの子どもたちの子どもらしさを目の当たりにして、子育てはぜひミャンマーでしたいと思ったそうです。

<ミャンマーは周りの人が“超”協力的で、レストランに子連れで行っても嫌な顔されません。店員さんが「お母さんが食べられるように」と、だっこしてくれます。>

そして、シンガポール在住歴のある方のお話です。子どもが4歳のときから3年間シンガポールにいたということです。

<日本との違いを感じたのは、外出時。子どもが静かになるのであれば、デジタル機器を積極的に使うという合理的な考えの人が多く見られたことです。「教育的要素があればよい」という割り切った考え方のようです。>

汐見さん: ミャンマーの店員さんが子どもを見てくれる。
たとえば、私は20年ぐらい前に大学院生を連れて韓国の大学へ交流に行ったことがあるんです。そのとき、1人の院生が自分の子どもを連れていった。まだ2~3歳の子どもなんですね。
食堂なんかに入ったら、そこのおじさんやおばさんが「あら、かわいいわね」と子どもの面倒を(親が)食べている間見てくれるんです。どこへ行ってもそうだったんです。それが大変助かった。韓国にはまだ、そういう習慣も残っているかもしれませんね。
たぶん日本も、かつてはそうだった。牧歌的なものがまだまだ残っていることがアジアには多いですね。

――日本のママたちを助けてあげたくなりますね。

汐見さん: 本当にそうですね。

海外の出産・育児支援制度

――そして妊娠・出産の時期の制度も世界にはいろいろあるようです。

カナダ・カルガリー男性
<おととし10月に子どもが産まれて、子どもが1歳3か月。妻と2人で一緒に子育てをしています。
出産に関して大変なのは、日本のように入院期間がない。産後1日で退院とは驚きました。
うれしいことは、僕の住む州では妊娠の定期検診から出産に至るまで、1円もかからないんです。>


フィンランド30代女性
<フィンランドに住んで14年目。2007年に移住しました。13歳の長男、10歳の次男もフィンランドで出産。子育てもこちらがベースです。
子育て支援の中でも一番うれしかったのは、アイティウスパッカウス。これは、フィンランド政府が、出産を控えたお母さん全員に無償で支給してくれる出産準備ボックスで、赤ちゃんのお世話をするための必需品一式が――かわいらしい洋服から、おむつ・哺乳瓶・ブランケット・ブラシ・爪切りバサミまで、しかも北欧デザインでとてもかわいいものが――入っていて、国からお祝いしてもらえるということも実感できて、とてもうれしかったです。>


さすが北欧ですね。

汐見さん: フィンランドには「ネウボラ」という制度があって、アイティウスパッカウスにしてもパックのやつを取るか、それとも5万円ぐらい(の支援金)を受け取るか、という選択があるんですよ。
僕らはフィンランド大使館の人たちと一緒に実際に見せてもらって、「日本でもこれを広めよう」ということをやったこともあるんです。

――そうですか。

汐見さん: フィンランドでは妊娠がわかるとまず地域のネウボラを訪ねます。そこへ行くと、お医者さんと看護師さんがいて「私たちがこの子(&母親&家族)の担当です」となる。そのあと小学校へ行くまで、ずっと担当でみてくれるんです。何かがあったらそこへ行けば、その子のことをよく知っている看護師さんやお医者さんがいて面倒を見てくれる。
それに憧れて、日本でもネウボラを作ろうという運動があちこちであります。

真夜中の子育て応援団
ママ☆深夜便

毎月第4木曜日
[R1] 午後11時05分~翌午前5時00分
[FM] 午前1時05分~午前5時

詳しくはこちら


<世界の子育て 聞いてみよう ②>へ

この記事をシェアする