【大竹しのぶ サイコロ回顧録】2010年 蜷川幸雄さん演出の『ヘンリー六世』

24/05/01まで

大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”

放送日:2024/04/24

#ライフスタイル#舞台

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しのぶさん、小学生のときの思い出をSNSに書いたら「“スピーカーズコーナー”で話してくださいね」というコメントをもらったそう。
その思い出とは、お友達と2人だけでデパートへ行ったら、帰りの電車賃まで遊具に乗ることやゲームに使ってしまって、しかたがないのでヒッチハイクで帰ってきたらお父さんとお母さんにとても怒られてしまった、とても心配してくれていたんだなあ、という“喜”なものでした。
今回のサイコロ回顧録は「2010年」。「これが見たかったんだよ!」と蜷川幸雄さんが言ってくれるようなお芝居をしたくて頑張っていた『ヘンリー六世』。


大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”
R1・ラジオ第1 毎週水曜日 午後9時05分~9時55分

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8時間、楽しくて楽しくて♪

私、大竹しのぶは去年(2023年)の秋、デビュー作のドラマ『ボクは女学生』の放送開始から50年を迎え、素直には全然喜べないけれども、芸能生活50周年イヤーに入っています。そんな節目を迎えたのを機にこれまでの活動を振り返りつつ、お世話になったみなさんに感謝を伝えていこう、というのがこのコーナー。
今、スタジオには、年代別に私の出演作などをまとめたリストと、サイコロが2つ用意されています。サイコロは、1つが、私がデビューした1970年代の“197”から2020年代の“202”までの数字が書かれた六面体、もう1つが、0から9までの数字が書かれた十面体。この2つのサイコロを振って、出た目の年代の作品について振り返っていきます。

前回は、今から13年前、2011年、紫綬褒章を受章したときの母の言葉のお話をしました。

【大竹しのぶ サイコロ回顧録】2011年 紫綬褒章を受章(2024/04/10放送)

それに続く今回は何年が出るんでしょうか。さっそくサイコロを振って、その年について振り返っていきたいと思います。
ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん~♫ てぃ~ら~ららららん♫(サイコロを振る)
あっ、この間が2011年でしょ?

今度はニーマルイチゼロ! 2010年です。

2010年は何をしていたんでしょうか。平成22年……ええ? こんなにやってたの私。
映画、1、2、3、4、5……5本。劇場アニメの声優さんもやりました。『借りぐらしのアリエッティ』。
そして舞台『ヘンリー六世』蜷川さんですね。で、『ラヴ・レターズ』。
ラジオドラマもやって、賞も何かいただいておりますね。
ええと、映画はですね、『ダーリンは外国人』、あと『シュアリー・サムデイ』っていう、これは小栗旬くんが監督しまして、ちょっとだけ出ました。それから『オカンの嫁入り』、石井隆さん(が監督・脚本)の『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』、『信さん・炭坑町のセレナーデ』という映画にも出ていますね。

えーっと、これは『ヘンリー六世』、(演出は)蜷川幸雄さん。舞台ですね。これはですね、ヘンリー六世は……確かね、8時間のお芝居だったんです。あっはっふっふっふっ(笑)。
全部で8時間半近くあるお芝居でした。もちろん途中に1時間の休憩があって、あと前編と後編の間に15分とか20分ずつぐらいの休憩があるんですけども、1時に劇場に入って客席についた人が、客席を立つことができるのは9時半ですねえ。だから8時間半以上劇場にいなくちゃいけないわけですよ。で、役者ももちろん8時間お芝居をしなくちゃいけないんですけども、もう最高に私は楽しかったですね。
私は、前編が「ジャンヌ・ダルク」の役をやって、後半は「マーガレット王妃」という役をやったんですけども、だから一部と二部とちょっと役が変わったりはしてたんですけども、とにかくずっと出ずっぱりでした。

“薔薇(ばら)戦争”の時代の話なんですよ、シェークスピアの。上川隆也さんとか長谷川博己さんとか池内博之くんとか一緒に出てたんですけども、とにかくお稽古が倍以上かかるわけですね、8時間の芝居だから。でもお稽古からもうほんとにほんとにほんとにほんとうに楽しくて。シェークスピアが書いたせりふを言ってるときも幸せなんですよ。シェークスピアの言葉っていうのは天と地を結ぶ使命があるぐらい、ほんとに言うだけで心が洗われていくような喜びを私は感じるんですね。だからシェークスピアの芝居っていうのは今もたくさんの人に愛されていると思うんですけれども。

戦争の話だから、戦いのシーンとかあるわけですよね。で、バーッて走ったあと10分ぐらい出ない兵士の人たちが、その騎士の格好をしたままロビーでもうくったくたにくたびれて寝っ転がっちゃってるわけですよ。そこを私はひとりでルンルンルンルンルン♪って走り回って、“化けもの”とか言われてましたね(笑)。お芝居をやればやるほど、時間がたてばたつほどアドレナリンが放出しちゃって、私はもう元気いっぱいになっちゃって、楽しくて楽しくてたまらなくなっちゃって。みんなはどんどん、時間がたてばたつほど疲れてきてもう死にそうな顔になってるんだけど、私が走り回るのを見て「もうこいつと一緒にやれない」ってよく言われていました(笑)。

演劇をやっている俳優として

で、見ているお客様はどうなのか、ってすごく思うでしょ? お客様も、ま、わからないですよ、もう疲れてしんどくて、あんなのはもう二度とごめんだ、って思う方もいらっしゃったかもしれませんけども、なんかやり遂げた感があるんですよ。達成感、これを見届けた感。8時間も私はあなたたちの芝居を一緒に見たよ、一緒に戦ったよね、って。だからエンディングのカーテンコール、盛り上がる盛り上がる! っていう感じでほんとに楽しかったですね。

もちろん美しいシーンもたくさんありました。蜷川幸雄さんの演出だったから。上から肉の塊が落ちてきたと思うと真っ白いバラの花がバーッて落ちてきたり、今度は真っ赤なバラの花がバーッて落ちてきたりとか、ほんとに美しい舞台だったですね。
で、同じ8時間で今ふっと思い出したのが、『ハリー・ポッター』というお芝居が、やっぱり8時間ぐらいあるんですね。それを私ロンドンで見たんです。日本バージョンは少し短くしているのでそんなにはかからないんですよ。
お昼の部と夜の部と分かれてて、夜の部では隣の人と「また会いましたね」っていう感じで、やっぱり同じような達成感、芝居を見届けたという達成感を感じることができて、すごく楽しかったですね。

やっぱり私にとっては、演劇をやっている俳優として蜷川さんに出会えたのはほんとに大きな財産になりました。ニュースで、どこかの町長さんがハラスメントで訴えられたりしてましたけども、たぶん蜷川さんが今いらっしゃったらすぐ捕まっちゃうような言葉をいっぱい役者に投げたりとか、スタッフさんとかにもいきなり「あれ持ってこーい」「これしろー」「そのぐらいできなくてお前たちどうするんだー」とか、役者にもめちゃくちゃな言葉を浴びせかけていましたけれども、だからこそ私たちは蜷川さんの目指すものに到達したいと思って必死になって頑張っていたし、なにより蜷川さんが好きだったから、蜷川さんが「これが見たかったんだよ!」って言ってくれるようなお芝居をしたいと、稽古場から本気でぶつかっていました。それを8時間分作れる喜び、こんなうれしいことはなかったですね。
ん~、なんだろう。やっぱり、会いたいな、って今でも時々思います。

シアターコクーンっていう劇場で私は蜷川さんとよく芝居を作っていたんですけども、シアターコクーンに行くといつも蜷川さんの席があって、そこに彼が今座っていないのがとっても寂しくて。
熱い思いで芝居を見てくれる人がまたいなくなってしまったんだなあ、っていうのを今でもまだ思い出して、寂しいなあ、と同時に、頑張らなくちゃなあ、ってすごく励まされてるような気になります。

そんな、『ヘンリー六世』のお芝居の話をしました。2010年のことでした。

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【放送】
2024/04/24 「大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”」

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