NHK土曜ドラマ「%(パーセント)」

Nらじ

放送日:2024/05/10

#インタビュー#映画・ドラマ

本や映画、イベントなど、誰もが楽しめるコンテンツをお伝えする「みんなのエンタメ」のコーナーです。今回ご紹介するのは5月11日から放送が始まったNHK土曜ドラマ「パーセント」。テレビ局の新人プロデューサーと俳優を目指す車椅子の高校生が、新しい時代のドラマの制作に挑戦する中で成長していく姿を描いたドラマです。制作のきっかけは「テレビ局は“多様性”にしっかりと向き合えているのだろうか?」という、制作者の自らへの問いかけ。プロデューサーを務めた南野彩子職員に話を聞きます。(聞き手:杉田 淳 ニュースデスク・柴田 祐規子 アナウンサー)

【出演者】
南野:南野彩子(NHKドラマ「パーセント」プロデューサー)

数値目標で変わること 変わらないこと

柴田:
土曜ドラマ「パーセント」について、杉田さんの注目ポイントはどこですか?

杉田:
はい。いま多様性のある社会を目指そうということで、いろんな“数値目標”があるじゃないですか。女性の管理職を何割」とか「障がい者の雇用を」とか。そういうことを大きな声で力んで言われると、私はものすごく警戒しちゃうんですよね。「これ、どういう意図だろう」とかですね。このドラマのタイトルの「パーセント」には“数値目標”という意味もあるということなので、そこに注目しています。

柴田:
スタジオにこのドラマのプロデューサーを務めた南野彩子さんに来てもらいました。南野さんは(Eテレの「バリバラ」など)福祉番組のディレクターを担当したあと、今回はじめてドラマのプロデューサーを務めたということです。

南野:
はい。よろしくおねがいします。

柴田:
まず、ドラマのあらすじを簡単に紹介しますね。舞台は架空のローカルテレビ局。局をあげての「多様性月間」というキャンペーンで「ドラマの主人公を障がい者にできないか」と頼まれた新人女性プロデューサーが、悩みながらも向き合うという物語です。

杉田:
今回このようなドラマをつくろうと思ったきっかけは、どういうことでしょう?

南野:
きっかけはイギリスの公共放送BBCの取り組みを知ったことです。BBCでは全番組の出演者の割合を男女比50%、障がいのある人の出演率を8%にしようという目標を立てて、2020年にこれを達成しています。
じゃあ一方、日本はどうなんだろうと。日本にはこういった数値目標はないんですけれども、NHKでは障がい者の出演率はわずか1%ということで、ちょっとこれを変えていかなきゃいけないんじゃないかと思って今回企画を出しました。

杉田:
低いですね。この数値目標の話で思い出した問題があるんですね。2018年に起きた中央省庁の障がい者雇用の水増し問題です。決められた割合を達成させる見せかけのために、障がいがない人まで障がい者だと水増ししてつじつまを合わせたという問題だったんです。
南野さん、このドラマでは数値目標って作ったりしたのですか?

南野:
ドラマ自体には数値目標をたててはいなかったのですけれども、私もやっぱりそうした目標を追い求めるだけになってしまってはよくないなという気持ちはあって。一方で、数字の目標を立てることで変わることもあるんじゃないかと…。実際に今回ドラマの中では、主人公が障がいのある俳優さんとドラマを作るようにと、ちょっと強制的に上司とかに言われて始まっていくのですが、こうしたことに直面したときにどういったことが起こるのか私自身考えたくてドラマにしました。

出演者の約3割が障がいのある俳優

南野:
このドラマでは、新人プロデューサーが障がいがある人と出会うということだけが最初に決まっていて、実際にこの主人公が出会う障がいのある俳優は、オーディションで選びたいなと思っておりました。性別、障がいの種類、そして年齢など何も特に指定せずにオーディションを受けていただいて、今回、俳優として活動している障がいのある人が100名以上オーディションに参加してくださいました。本当に魅力的な俳優さんがたくさんいらっしゃいまして、実際このドラマには障がいのある方がおよそ3割ぐらいの割合で出演していただいています。
特に今回重要な役どころの高校生の役を、東京パラリンピックの開会式に出て「片翼の小さな飛行機」のパフォーマンスをされていた和合由依さんにお願いして、彼女はセリフあるお芝居が今回初めてなんですけど、フレッシュに挑戦してくれています。

登場人物たちがぶつかる壁は 制作者らの悩みや気づき

柴田:
その和合さんが演じる宮島ハルに、新人プロデューサーの吉澤未来がドラマの出演の打診に行く場面があるんですが、ドラマでのリアリティのあるやり取りを聞いてもらいましょう。


《未来がハルに出演打診するシーン》

未来:
いきなりなんですけど。私たちのドラマに出てもらえませんか。

ハル:
えっ。なんでうちなんですか。

未来:
え…。

ハル:
いや、だから…。芝居見てくれたんでしょ。当事者を起用するって言うんやったら、同じ高校生でろう者の子も出てたじゃないですか。なんでうちに声かけたんですか?

未来:
それは…。

ハル:
車いすっていう分かりやすい障がいがあるから? うそでも芝居がよかったとか言ってくれた方がやる気出るんですけど。 吉澤さんテレビ作る仕事を向いてないんちゃいます? 障害を利用するみたいな使われ方やったらお断りです。


杉田:
私も障がい当事者ということですけどね。何かね、分かりますよね。きれいなこと言われてもね、何かね、“おなかの中が違う人”ってね、分かるんですよね。敏感になるっていいますかね。

南野:
実際にこういうことを俳優に言わせたくないなという気持ちはすごくありまして、今回、主人公の未来は「なんとかドラマを成立させないと」という気持ちで、浅はかに打診してしまう部分があったりするんですけど、この後もいろいろな壁にぶつかっていきます。この主人公がぶつかる壁というのは、私たちが実際ドラマを作る中でも悩んだりしたことを入れ込んでいまして、撮影のしかたや脚本の作り方含めて今回課題が多かったので、そういった“気づき”を物語に取り入れています。

柴田:
特に、どんな“気づき”がありましたか?

南野:
特に今回“気づき”が多かったのが、オーディションでして。オーディションでは、俳優として活動する障がいのある方にお会いしたいですということで募集をしたんですけれども、みなさん、これまでなかなか出演の機会に恵まれなかったということで、オーディションを受けることも初めてという方がとても多かったです。書類の時点で障がいがあるということを理由に落とされてしまったというお話を聞きました。

杉田:
じゃあ、チャンスが与えられてないというか…。そういう現状もあるし、そういう現状だからこそ、俳優を目指したいけれど目指せないという人も大勢いるのかもしれませんね…。

南野:
そうなのかもしれないなと思いまして、最終的に選ばれる理由っていうのは役に合っているということであったりだと思うんですけど、最初にチャレンジするスタート地点すらないというのはちょっとおかしいんじゃないかなと思ったりしまして。
ただ一方で、私自身もそういった機会を作れなかった経験があって。エキストラの募集で車いすの方が応募してくださった時に、タイトな撮影スケジュールの中で、ちょっとバリアの多いロケの現場で、お迎えできるんだろうかっていうことをすごく悩んでしまって。そうした時に、悩んでしまう、立ち止まってしまう私のような制作者が、そうした方たちに機会を作ってこれなかったのかなと思って、そんな“自戒”も込めた企画になっています。

“数値目標”を 終わりではなく 始まりに

柴田:
今回のドラマで、実際に出てくださった出演者の方々はどんな反応ですか?

南野:
そうですね、今回ドラマに出演していただいた中川圭永子さん。ご自身も視覚に障がいがあって白杖を使っている俳優さんなんですけれど、彼女から出演の感想をいただいております。

中川圭永子さん:
障がいがある俳優としてオーディションがあるということ自体がびっくりしちゃって。障がいがある俳優さんを求めてる現場がほんまにあるんや、そういうふうに社会が変わってきた、映像の世界が変わってきたんやなというのがうれしかったですね

杉田:
いやー、うれしそうですね。ほんとにね。

南野:
やっぱり、こういった俳優さんたちのリアルな思いっていうのも、随時聞きながら脚本を作っていったので、本当に人と人が、障がい者と健常者というくくりではなく向き合えるような、人と人との関係を築く大切さっていうのが伝わるようなドラマになっていたらいいなと思っています。

杉田:
そうですよね。

柴田:
さっそく、皆さんから投稿も届いてますよ。

ドラマ「パーセント」の舞台が放送局で、メタ的な仕立てにしているのがおもしろいと思ったんですけれども、南野さんの実体験は台本に反映されていると考えていいのでしょうか?

南野:
オリジナルドラマではあるんですけれども、実際に脚本家の先生には、私も含めいろんなスタッフの経験っていうのを伝えてるので、リアリティのある部分があると思います。

柴田:
それから…。

私は、数値は結果であり目標ではないと思います。錯覚して数値が目標に達すればOKと思われていることが多いと思います

杉田:
数値目標を、終わりにしちゃだめなんですよね。始まりにしなくちゃだめですよね。

柴田:
そうですね。 最後に南野さんから、これからご覧になる方へのメッセージありますか。

南野:
本当に今の時代だからこそ見てほしいドラマだなと思っております。人と人が出会うことってすごく尊くて、でも難しいこともあるけれども、一緒に生きていけるような関係ってどう築けるのかっていうのを、主演の2人をはじめ皆さんが、本当に思いを込めて演じてくださっております。

柴田:
土曜ドラマ「%(パーセント)」の南野彩子プロデューサーに話を聞きました。

南野:
ありがとうございました。

土曜ドラマ「%(パーセント)」

総合 毎週土曜 よる10時
BSP4K 毎週土曜 午前9時25分

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【放送】
2024/05/10 「Nらじ」

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