本屋大賞を受賞! 「成瀬は天下を取りにいく」の魅力

24/04/26まで

Nらじ

放送日:2024/04/19

#インタビュー#読書

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障害がある人もない人も、若い人も高齢者も、誰もが楽しめるコンテンツをご紹介する「みんなのエンタメ」。
今回は小説です。4月に発表された本屋大賞で大賞を受賞した宮島美奈著「成瀬は天下を取りにいく」をご紹介します。魅力を語っていただくのは書店員歴40年ちかくという代官山蔦屋書店・間室道子さんです。(聞き手:杉田 淳 ニュースデスク・柴田 祐規子アナウンサー)

【出演者】
間室:間室道子さん(代官山蔦屋書店 書店員)

間室道子さんと杉田淳ニュースデスク

突拍子もないことをする主人公“成瀬”の物語

柴田:
書店の制服で駆けつけてくださいました間室さん、さっそく作品の「成瀬は天下を取りにいく」のあらすじを教えてください。

間室:
この小説の舞台は滋賀県大津市で、そこに住む成瀬あかりという少女の、中学生時代から高校生時代までの物語が語り手を変えながら6編収録されています。
成瀬は突拍子もない事をするのですが、それがまあユニーク。1話目の彼女は14歳で「この夏を、閉店が決まっている地元のデパートにささげる」と宣言します。地元テレビ局の夕方のワイドショーが閉店まで毎日このデパートから生中継を入れるんですが、それに欠かさず映り込むのです。何のために? という伏線回収的な展開もあります。2話目ではある頂点を目指すと言いだし、某有名コンテストに出場。4話目ではみんながざわつく姿になって高校の入学式に現れる。そんな彼女が小学校の卒業文集に書いた将来の夢は『200歳まで生きる』です。いかがでしょうか?

柴田:
相当おもしろい主人公ですね。杉田さんはお読みになったんですよね。

杉田:
はい、音声ブックで読みました。
日本人は空気を読むってよく言われますけれど、成瀬は全く空気を読まないですよね。みんな成瀬みたいになりたいなって思いますけれども、でもなれませんよね。そこに成瀬への憧れを感じますし、この成瀬というキャラクターに乗っかって一気に読めちゃう、そういう作品ですね。

書店員にとって ハードな本屋大賞の選出方法

柴田:
ことしの本屋大賞の特徴をうかがいたいのですが、まず選出方法から教えていただけますか?

間室:
本屋大賞もことしで21回目です。
私は第1回の本屋大賞から投票を続けていますが、過去1年に(今回でいうと2022年の12月から2023年の11月末までに)発売された国内の小説を対象に、全国の書店員が「自分が一番売りたい本」を1人3作品選んで投票します。一次投票で得票の多かった上位10冊が、ノミネート作品として2月1日に発表されます。そして二次投票がなかなかハードなんですけれど、この10冊をすべて読んだ上で、全作品に証拠として感想コメントを書き順位をつけて投票するんです。現場の書店員が選ぶので、いまお客様にどんな本が求められているのか、私はどんな本を売りたいのかという時代の傾向が見えたりします。

ノミネート10作品の傾向は 『若いエネルギーの大爆発』

柴田:
ことしも10冊がノミネートされたわけですけれども、どんな傾向がありますか?

間室:
私の考えでは、ことしの最終ノミネート10作品の傾向は『若いエネルギーの大爆発』なんですよ。たとえば、2位になった津村記久子さんの「水車小屋のネネ」は、家庭の事情で18歳の姉が独立を決意、8歳の妹を連れて山あいのおそば屋さんに就職するんです。こんな若いまっすぐなエネルギーを描いた作品もあれば、6位の川上未映子さんの「黄色い家」で描かれる人々は「まっとうになれ」と世間は言うけれどまっとうのスタートラインにすら立てない者たち…。「黄色い家」の、同じ“若さ”でありながらアンダーな方向にいってしまうエネルギーなど、若いほとばしりを描いた作品がことしは目立ったなという思いがしました。

柴田:
杉田さんは、いまのノミネートの傾向のお話を聞いてどう思いましたか?

杉田:
やっぱり、時代ですよね。若い人の活躍って実社会でもたくさんありますもんね!

間室:
そうなんです。私は成瀬のような子はレアじゃなくて、今、案外増えているんじゃないかと思ってるんですね。例えばスポーツもすごいニュースがありましたよね。卓球の張本美和選手15歳が世界3位の選手を撃破。彼女はまさに成瀬と同世代ですね、15歳。音楽だとYOASOBIのお2人、お笑いですと令和ロマン、将棋の藤井聡太さんもそうですよね。若い日本人たちの活躍を、私はかっこいいと思っていて、皆さんの活躍に成瀬の心意気がかぶるかなと。

「この子好きだわ~!!」 読者が“成瀬”に夢中になるワケ

杉田:
その一方で、実はやっぱり同調圧力っていうのが強まっているのも確かですよね。やはりネットも影響があるんでしょうけれども目立つことが嫌だ、目立ったらたたかれるみたいな。そんな空気もある中で、成瀬みたいな存在が輝くためにはそれを応援する存在ってすごく大事だと思うんですね。

間室:
この小説では、周囲の人々もすごくいいんです! 杉田さんは何か印象的なところってありましたか?

杉田:
私が一番印象に残ったのは、ある登場人物が成瀬の魅力について聞かれたときに「誰にも似てないところ」と言ったところ、それがすごく印象に残っていますね。そして、成瀬の応援者の代表格といえるのが親友の島崎だと思いました。

間室:
そうですね。島崎さんも女の子なので女性2人のバディものとしても読めるし、青春小説としても、大津のご当地小説としても、ユーモア小説としても読める、本当にいろんな顔を持った小説だと思っています。私が感じたのは成瀬って、人からどう思われるかは眼中にないんです。考えるのは「自分が人としてどうありたいか」だけ。迷いはない。あるのは決断だけなんです。もう最高なんですよ。
優れた文学の基準って、文体とか文学的な深まりとか作者のメッセージ性とかいろいろあるんですけど、でもね、「この子好きだわ~!!」って読者に思わせたら物語は勝ちなんですよね。そんなお話の魅力を改めて感じさせてくれたのが「成瀬は天下をとりにいく」でしたね。

柴田:
さっそくメッセージが来ていまして…。

間室:
あ、聞きたい!

柴田:
今回大賞を取った作品は、地域に根づいた作品なんですね。空気を読まない人生、空気を読み続けてきた私としては気楽になれそうで憧れます。
というメッセージや、
成瀬すてきな子だよねー。
この方はもしかしたらもうお読みになっているのかもしれないですね!

世代を問わず 読む人の心を若々しくするのが青春小説

柴田:
私は「ラジオ深夜便」という番組も担当しているのですが、そこで「勇気が欲しい時に読む本」というテーマでリスナーにおすすめの本を募集をしたときに、75歳の方から、“200歳まで生きる”という成瀬に、自分は200歳までは無理でも150歳ぐらいまで生きてみようって思って勇気が湧いた。すべての高齢者におすすめします。
というメッセージをいただきました。

杉田:
まだ折り返しですね! 75歳。

間室:
青春小説って、私は「主人公が若者だ」とか「読者が中学生・高校生中心だ」じゃなくて、どんな年齢であろうが、どんな社会的立場であろうが「その読み手の心を若々しくする」、それが青春小説だと思っているんです。成瀬にまた会いたいという人は、いま続編の「成瀬は信じた道をいく」が出ています。ユーチューバーだの、クレーマーだの、市議会議員のええとこのお嬢さんだの、“クセ強めな人たち”が成瀬との出会いでどう変わっていくのかというのが読みどころです。成瀬を気に入った人は、ぜひ第2弾も読んでいただきたいと思っています。

柴田:
書店員として現場にお立ちになっていて、実際に「成瀬~」を手に取られる方もいらっしゃいますか?

間室:
はい。非常に多いです。やっぱり世代を問わず大人気!

柴田:
それから、間室さんに、このような投稿もいただいています。
最終選考は、10作品を全部読んで感想をつけて投票、ハードルが高いですね。
本当に大変な作業ですよね。

間室:
そうですね。ただ好きな作品だけでその他をないがしろにしてしまうと、せっかく書店員がたくさん投票して選ばれたその上位10作品なので、今は忙しくてなかなか本を読む時間がないという書店員も多いんですけど、でも本屋大賞って年に1度のお祭り的な役割もあるので、みんなで参加していきたい。上位10冊すべてが自分の気に入った作品とは限らないので「こういうところは、私はどうかなって思うよ」っていう事もコメントとして書いて大丈夫なので、一次投票も二次投票もこれからもたくさんの書店に参加して欲しいなと思っています。

杉田・柴田:
どうもありがとうございました。
きょうは代官山蔦屋書店の書店員、間室道子さんにお話を伺いました。

間室:
どうもありがとうございました。


【放送】
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