「女性支援新法」を知っていますか

24/04/26まで

Nらじ

放送日:2024/04/19

#インタビュー#政治

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世の中に流れている話題の中から杉田デスクがみんなで考えたいテーマをとりあげる「みんなのニュース」。今回は4月に新たに施行された「女性支援新法」についてです。まだなじみのないこの法律について、NHKの福祉番組「ハートネットTV」などで女性の生きづらさや女性の人権に関する番組を制作してきた浅田環チーフディレクターと考えます。(聞き手:杉田 淳 ニュースデスク・柴田 祐規子アナウンサー)

【出演者】
山崎:山崎菊乃さん(北海道シェルターネット 事務局長)
浅田:浅田環(NHK「ハートネットTV」チーフディレクター)

困難を抱えるすべての女性のための法律

杉田:
今月(4月)施行された「女性支援新法」とは、どんな法律なのでしょうか、浅田さん教えてください。

浅田:
女性支援新法とは、正式には「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」といいます。対象になるのは困難を抱える全ての女性。その女性たちひとりひとりに寄り添った支援を強化するための法律です。

杉田:
つらいのは女性だけじゃないという声もありそうですが、そのあたりはどういう考えになっているのでしょうか?

浅田:
今の時代、性別関わらずつらい状況にある方は多いと思います。でも女性の場合、女性であることによって社会生活を送る上で、さまざまな困難な問題に直面しやすい状況にあるといえるのです。たとえば女性は性暴力被害の数が圧倒的に多かったり、男性との賃金格差もあったりします。データでいいますと、パートタイムを除く一般労働者を見ても、女性は男性の75%の賃金に留まっていたり、非正規雇用者は男性の2倍となっていたりと、不安定な雇用環境にある人も多いと言えます。こうした背景のもとで夫やパートナーからのDVにあったり、職場の人間関係によってうつなどの病気になったり、また非正規雇用で急な雇い止めにあったりなど、さまざまな困難を抱える女性が多くいるというのが現状です。

杉田:
男女平等とは言えない現実が、まだまだあると…。

浅田:
そうですね。それが顕著に表れたのがコロナ禍においてです。女性のDV相談件数が増えたり、若年女性の自殺者の数が増えたり、シングルマザーの失業率が上がったり…。社会が不安定になると女性は困難に陥りやすいといえます。こうしたさまざまな困難を抱える女性が増える中で、大きく受け止めるための法律を作ったのです。

これまで67年間 支援の根拠は「売春防止法」だった

杉田:
これまで女性を支援する法律には、どういうものがあったのでしょうか?

浅田:
実は戦後、子どもや障害者などに対しては福祉的な法律が作られたのですが、女性に対する福祉的な法律はなかったのです。「婦人保護事業」という女性支援を行う事業はあったのですが、その法的な根拠となってきたのは「売春防止法」という法律だったのです。

柴田:
ずいぶん古い法律が根拠だったのですね。

浅田:
そうです。戦後の混乱期に売春をする、またはそのおそれのある女性を『要保護女子』といって、そうした女性たちを保護し更生するために、今から67年前にできた法律です。当時は社会の風紀を乱す“困った人”を保護して更生させるというものでした。

杉田:
なぜ67年もその法律が、変わらずに根拠になってきたのでしょうか?

浅田:
法律は変わりませんでしたが、つぎはぎ的に対象とする女性は拡大してきたんですね。2001年にDV防止法が制定されてからはDV被害の女性を施設で保護したり、近年は家族関係の悪化で行き場をなくした若い女性、たとえば新宿・歌舞伎町のトー横キッズといった行き場をなくした若者の中に女性も含まれていて、そういった人たちも受け入れている施設もあるんです。そうした(支援する側の)施設の方から「売春防止法では多様な方々に十分な支援が行き届かない」との声が、長くあがってきていました。

新法で何が変わる? ①更生のための『管理』から前に進むための『伴走』へ

杉田:
そこで今回の新しい法律ができたということなんですね。どういうことが変わるのでしょうか?

浅田:
たとえば、女性を保護するための施設は婦人保護施設というのですが、売春防止法を元にしていたので、元々は規則正しい生活を身に着けるための場でした。起床時間や食事時間も決まっていて、携帯電話も原則禁止でした。とても管理的で、DV被害や虐待などで心身ともに傷ついた人にとってはこうした場での生活は大きな負担になってきました。
新法ではこの管理的な部分を変えていこうということで、ひとりひとりの状況に合った支援を行っていこうとしています。たとえば、精神的ケアの専門職の面談があったり、携帯に関してはDVの加害者からの追跡の危険がある人には施設の携帯を貸し出したりして、なるべく普通の環境と近いところで支援をしていこうと取り組んでいるところです。
また、女性が困った時に、はじめに相談する「女性相談支援員」の体制の強化も目指しています。私は先進的に相談員の強化に取り組んできた大阪・堺市を取材したのですが、そこでは相談員は相談窓口にいるだけでなく、住民課や生活保護申請を担当している課に同行したり、弁護士や医療機関につないだりといったサボートを行っていました。相談員の言葉で印象的だったのが「相談者本人が自分の人生を自己決定して選択していくプロセスが大切で、そのことが本人の自信につながっていく。相談員はあくまで相談者の伴走者である」というものです。支援を受けたDV被害の女性も、「大変な状況を理解してくれた上で、わからない部分のアドバイスを丁寧にしてもらえて、安心して進むことができた」と語っていました。

柴田:
相談員は支援をコーディネートしてくれ、さらに寄り添ってくれる役割を果たすということなんですね。

浅田:
そうです。とても頼もしい存在なのですが、女性相談支援員の数の少なさが課題となっています。全国の約5割の市町村には相談員が一人もいないという状況です。新法で『配置が努力義務』と明文化されたので、誰もが相談できる環境を整えていってもらいたいです。

新法で何が変わる? ②官民の協働

杉田:
法律ができることによって社会の目が変わっていくことはとても大事なことだと思います。他に変わる点はあるでしょうか?

浅田:
もうひとつ大きなボイントが、支援の場で行政と民間団体の「協働」が進められる点です。行政と民間団体が“協”力して“働”く、つまり対等な関係で一緒に女性を支援していくことを目指すのです。取材した北海道では新法の施行前から、民間DVシェルターが行政と一緒に女性支援を行っていました。こうした「協働」の形が各地に増えていくと思っています。

柴田:
その民間団体の方にもお話をうかがいます。北海道シェルターネットの事務局長、山崎菊乃さんです。

杉田:
山崎さん、新しい法律が施行されて2週間ほどですが、変化を感じることはありますか?

山崎:
4月1日に施行されたばかりなので顕著な変化は見られないですけれど、いろんな行政機関や警察が「法律が施行されたんだから、これからはDVの被害者だけじゃなくて、いろんな女性を民間シェルターにつないでよくなったんですね」みたいな感じでつないでくることが、ぽつぽつ出だしています。
私どもは4年前に前倒しのような形で、内閣府がパイロット事業としてさまざまな困難を抱える女性の支援という事業を展開してくれたのですが、それをやり始めた途端に虐待や若年妊娠などありとあらゆる困難を抱えた女性が私たちのところに来たということがありましたので、これからたくさんの方がつながってくると考えています。

杉田:
法律の網の目が細かくなってきたということですから、歓迎すべきだと思いますけれども、何か課題はあるでしょうか?

山崎:
官民協働というのは対等な立場で協働しなければいけないということなのですが、なかなか各自治体でこの新しい法律に基づいた予算がきちんと取られていないのです。先ほど話にも出た女性相談支援員の配置などについても、「ちゃんと配置しますよ」と基本計画に書かれているにもかかわらず、その予算がついていない自治体もありまして、予算をどうつけるのかが大きな課題だと思っています。

まずは地域の相談窓口にSOSの声を!

杉田:
支援の体制が整ってくるのはとてもいいことだと思いますけれど、そもそも支援が必要な人が出てしまう状況も改善しなくちゃいけないなと思いますよね。

柴田:
「これを相談していいのか?」とか「自分がもしかしたら悪いのかもしれない」とか、悩みを抱え込んでしまう方もいらっしゃいますよね。

浅田:
そうですね。自分からSOSを出すのはとても勇気がいることだと思うのですけれど、支援のための法律が新たにできて、国で取り上げて強化していくことになりましたので、勇気を出して声を上げてほしいなと思っています。お住まいの都道府県や市町村、支援団体に相談窓口があります。厚生労働省の特設支援サイト「あなたのミカタ」で、地域の身近な相談窓口が検索できますので、検索してみてください。

エンドコーナー

柴田:
みなさんから頂いたメッセージをご紹介します。

男女の差が縮まらないのは政府、国会があまり重視していないからでしょうか。

男性のための支援法や施設はあるのでしょうか。男女平等と言いながら女性は弱いから守るけれど、男性は自分でなんとかしましょう的な不平等を感じます。

女性の就労方法はまだまだパートなどの非正規が多いと思います。安定した仕事を持つことが平等への第一歩だと思います。

柴田・杉田:
どうもありがとうございました。


【放送】
2024/04/19 「Nらじ」

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