Dr.奥仲の熱血健康情報「人間ドックの上手な受け方」

Nらじ

放送日:2023/05/19

#インタビュー#医療・健康#カラダのハナシ

今回のテーマは、「人間ドック」についてです。実は、新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年に「がん検診」を受けた人の数は、前の年(2019年)と比べておよそ2割も減少しました。これに伴って、がんの発見数が2割から3割ほど減ってしまったという報告もあります。歳を重ねれば、体に不具合が出てくるのは当たり前の事です。自覚症状がなくても定期的に検査をして、健康状態を確認することは、元気に長生きするための大事なポイントです。そこで今回は「人間ドックの上手な受け方」について、その秘けつをお伝えします。(聞き手:眞下貴アナウンサー、菊野理沙キャスター、竹田忠解説委員)

【出演者】
奥仲:奥仲哲弥さん(国際医療福祉大学医学部教授)

人間ドックで病気の早期発見を

――まず「人間ドック」と、自治体や企業などで行っている一般的な「健康診断」との違いを教えてください。

奥仲:
企業などにお勤めの方は、法律に基づき、年に1度の定期健診の受診が義務づけられています。検査内容は身体計測、血液検査、胸部X線、尿検査など基本的なものが中心です。検査項目が少ないため1時間程度で終了します。生活習慣病の予防や早期発見を目的に40歳から74歳の人を対象に実施する「特定健診」、いわゆる「メタボ健診」も同様の内容で行われます。

一方、「人間ドック」も健康診断の一種と言えますが、法的な義務はなく、個人の意思によって受診するものになります。したがって原則、全額自己負担になります。「健康診断」と「人間ドック」の大きな違いは、検査項目の数です。健康診断の検査項目は10~15項目ほどですが、人間ドックは50~100項目となります。血液検査だけでも、検査項目は3倍近くになります。

――「人間ドック」では、具体的にどんな検査を行うのでしょうか?

奥仲:
一般的な健康診断で行われる検査項目のほかに、肺機能検査、胸部・腹部CT検査、腹部超音波検査、腫瘍マーカー検査、胃カメラ、マンモグラフィ、眼圧測定などの検査があります。このうち眼圧測定は、緑内障を早期に発見する簡便な検査ですが、人間ドック以外ではなかなか受けるチャンスがありません。「人間ドックは、健康診断だけでは分からない、病気の早期発見が目的」と覚えておくと、良いかもしれません。さらに人間ドックでは、基本検査項目に加えて、気になる部位や病気に関する細分化された検査を、オプションで追加することも可能です。

――たとえば、どのような検査を追加するのといいのでしょう?

奥仲:
年齢や性別、生活習慣の違いなどで、必要なオプション検査に大きな違いが出ます。例えば、コレステロールの値が高い方は、首に超音波をあてる「けい動脈エコー」を受けるといいと思います。動脈硬化の進行具合が、はっきり目で見て分かります。 また、肺がんを早期に発見するには、年1回の「胸部CT」はマストで受けたほうがいい検査だと思います。

一方、大腸がんの検査である「大腸内視鏡検査」は、50歳を過ぎたら1度は受けておきたい検査ですが、1度検査して異常がなければ、その後3~4年は、便に血が混ざっていないか調べる「便潜血検査」で十分です。どんな検査を受けるかは、メリハリをつけるということが、とても大切です。

過去・現在・未来の“カラダ”を診る

――実際に人間ドックを受ける際に、注意したほうがいいことはなんでしょう?

奥仲:
まず大切なことは、普段の生活のまま、検査を受けることです。検査は試験ではありません。なかには、数日前から「にわか健康づくり」をする方がいらっしゃいます。ありのままの自分の姿を診てもらうようにしましょう。

また、問診がとても重要です。過去にかかった病気の履歴や現在服用している薬も、必ず申告してください。検査によっては、数日前から薬の服用を一時的に中止しなければならない場合もありますので、注意が必要です。できれば人間ドックは、毎回同じ施設で受けた方が良いと思います。例えば、エックス線検査で異常が疑われる場合、前回の画像と比較することで、不要な再検査や精密検査を受けなくて済むことが少なくありません。

――人間ドックを受けた場合、結果はどんな形で教えてもらえるのでしょうか?

奥仲:
一般的な健康診断は、検査結果が後日送付されるだけの場合が多いのに対して、認定施設での人間ドックでは、医師から結果についての説明があります。さらに、保健師や管理栄養士などの専門スタッフから、診断結果やライフスタイルに合わせた保健指導、生活改善や治療のアドバイスを受けることもできますので、生活習慣改善の第一歩につなげてほしいと思います。
また、人間ドックの結果で「精密検査が必要」となったにもかかわらず再検査を受けていない人に、検査を受けるよう連絡をしてくれるなど「受診後のフォロー」もあるため、継続した健康管理が行えます。

補助などを活用して 費用が抑えられることも

――人間ドックには高額なイメージがありますが、時間や費用は、どれぐらいかかるのでしょう?

奥仲:
標準的なコースの場合、胃カメラなどを含めても半日で終わりますので、朝から始めると、昼食は普通に食べられます。一般的な日帰りドックの相場は、5万円前後です。ここにオプションを加えていくと10万円を超えることもありますので、的を絞ったメニューを選ぶことが重要です。
ただし、お住まいの市町村、所属されている健康保険協会、または健康保険組合、契約している保険会社によっては、補助金もしくは助成金を受けられる場合があります。ぜひ確認してみてください。

――奥仲さんは、ご自身では人間ドックを受けておられますか?

奥仲:
はい。「医者の不養生」と言われないように、45歳から毎年受けています。忘れないように自分の誕生日に受けるようにしています。人間ドックの結果は「体の通信簿」だと考え、結果が良いと自分自身の励みにもなります。
人間ドックは、確かに費用が高額ですが、車の車検を考えてみて下さい。費用は掛かりますが、安全な運転のためには必要な検査です。人間ドックも、長い目で見れば、自分自身への価値のある投資だと思います。

――きょうは、ありがとうございました。


【放送】
2023/05/19 「Nらじ」

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