フリーランス支援の新たな法律が成立 期待と課題

Nらじ

放送日:2023/05/17

#インタビュー

雇用をめぐり、いま問題となっていることに迫る、シリーズ「職場のからくり」。きょうのテーマは、特定の企業や組織などに所属せず、個人で企業などと個別の業務の委託契約を結んで働く「フリーランス」についてです。
内閣官房の調査では2020年の時点で、フリーランスで働く人の数は、およそ462万人に上るとされています。一方、「フリーランス」をめぐっては、事業者から一方的に契約内容を変更されたり、報酬の支払いが遅れたりといったトラブルも相次いでいます。
こうした中、ことし4月、新たにフリーランスを支援するための法律が成立しました。来年秋までに施行される予定です。この新たな法律によって、どんなことが期待できるのか、残された課題は何なのか、考えていきます。(聞き手:眞下貴アナウンサー、菊野理沙キャスター)

【出演者】
山田:山田康成さん(弁護士、第二東京弁護士会 労働問題検討委員会 副委員長)
竹田:竹田 忠 解説委員

フリーランスが直面するトラブル~報酬の未払い

――山田さんは、厚生労働省などが「第二東京弁護士会」に委託して開設したフリーランスの相談窓口、「フリーランス・トラブル110番」の立ち上げに携わり、現在も相談に応じています。いま、フリーランスの方々は、どんなトラブルに直面しているのでしょうか?

山田:
いろいろな相談が寄せられているのですが、やっぱり一番多いのは、約束した報酬を支払ってもらえないとか、期待していた報酬よりもずいぶん減らされて支払われているなど、いわゆる未払い報酬についてどうしたらいいのかという相談です。

業務委託となると、発注者がオーダーをして、それに応えて仕事をして、それに対して報酬が支払われるということですので、どうしても仕事の発注者と受託者のミスマッチが起こると、発注者側が「行われた仕事は、自分の期待していたものではなかった」というようなかたちで、報酬を支払わないということになってしまうことがあるんです。

――発注側が、なにか業務を発注する。受けた側が、一定の時間も労力もかけて、成果を提出する。ところが相手にとっては、それは思っていたものとは違っていたと。その時に、何も支払われない。そういうケースがあるということなんですか。

山田:
そうなんです。業務を行ったにもかかわらず、何も支払われなかったり、このぐらいの出来だったら、このぐらいでいいだろうという、当初の約束とは違う金額を、発注者の方が勝手に引き下げて支払うということがあるんです。

フリーランスが直面するトラブル~約束とは違う仕事内容

――報酬に関するトラブル以外には、どういったトラブルがあるでしょうか?

山田:
報酬はちゃんと支払われたとしても、約束とは違う仕事をいろいろさせられるというトラブルもあるんです。
例えば、塾の先生の場合、1つの授業で報酬がいくらというように決められているケースがあって、これなど一見シンプルで、トラブルなど起きそうもない感じがすると思います。しかし「とことん生徒の質問に答えてほしい」などというオーダーがある場合があります。するとみなさん、確かに生徒はかわいいから、良かれと思って丁寧に質問に答えるそうなんです。しかし、「いつまでも答え続けなくてはいけないのか」という問題が生じたりするんです。さらにもっと極端になると、次の夏期講習や冬期講習などの勧誘の電話かけもやれなどと言われるケースもあって、「授業もやって勧誘までやるのは、おかしいのではないか」と。

竹田:
それは、営業活動ですよね。

山田:
ええ。「あなたの授業のコマが増えるのだから、いいではないか」などと言われてやらされることもあるそうなんです。すると、授業1コマ教えるのにどれだけ働かなくてはならないのかという、そうしたトラブルもあったりするんです。

フリーランスを支える新たな法律への期待

――こうした状況に対して、新しく法律が成立したということなんです。
この法律では、事業者に対して、委託する業務内容や報酬を書面などであらかじめ示すことや、業務を終えてから60日以内に報酬を支払うことを義務づけています。また、不当な報酬の減額などを禁止していて、公正取引委員会などから出される是正をもとめる命令に違反した場合は、50万円以下の罰金を科すとしています。
山田さんは、この法律ができたことによる効果を、どうみていますか?

山田:
やっぱり法律できちんと、仕事の発注者はこのようにしなくてはいけないということをはっきりと書かれたということは、フリーランスの方々にとって、とてもよかったと思います。
特に、発注の条件の明示というのがあるのです。フリーランスですから本来、お金の交渉は堂々と行ってもいいのですけれど、やっぱりどうしても、お金のことはなかなか言いにくくて、仕事だけ先に行って、あとでお金の話が決まることもしばしばあって、後々もめることになるということが多いんです。しかし、今回法律で、発注する条件として報酬の金額を明示しなくてはならないということになりましたので、フリーランスの人は、「私の報酬はいくらですか」と相手に言いやすくなると思います。

急がれるフリーランスの相談窓口などの整備

――一方、残る課題としては、どのようなことがあるでしょう?

山田:
たとえば順守事項が、実際に守られるかという問題です。一定の継続的な契約に関しては、守らなければいけないというのが、5条という条文で定められてはいるんです。例えば、一方的に報酬を下げてはならないといったことなどです。しかし、法律で定められていても、実際の現場でそれがきちんと運用されなければ、法律はできたけれども、実態が伴っていないということになるので、ここは、発注者の人も、フリーランスの人も、正しくこの法律を知ってもらうということが必要になると思います。

――まずは、周知をする、そして運用がきちっと行われるか、そこが課題であるということですね。

竹田:
仮に、この法律がきちんと守られていないということになった場合、どこに苦情を持っていったり、相談すればいいのでしょうか?

山田:
一応、法律では、取り引きの部分に関しては、公正取引委員会とそれから中小企業庁に、それから職場の環境については厚生労働省に、それぞれ申告窓口があります。あとは、我々が対応している「フリーランス・トラブル110番」に相談して紛争解決をはかるということには、一応なっているんです。

これまで労働者に関しては、労働基準監督署が全国津々浦々にあって、管内の事業所が労働関係法令を守って運用しているか監督していて、労働者の相談も受け付けていたわけですけれども、フリーランスの方々に対応する窓口が、そこまで全国各地にできるかというと、そうは思えません。したがいまして、フリーランスの人が、どこに相談へ行けばいいのかという周知も課題ですし、また、少ない行政の相談窓口で、どれだけ違反行為に対して、指導とか勧告ができるのかということは課題になると思います。

竹田:
山田さんたちが「フリーランス・トラブル110番」を立ち上げられて重要な仕事をされているわけで、やっぱりフリーランスで頑張っている人たちからすると、窓口は統一してもらって、例えば「フリーランス・トラブル110番」が窓口になってくれて、とにかくここに駆け込めば、そこからそれぞれの担当組織につないでくれるというような…。もちろん今の「フリーランス・トラブル110番」という組織をしっかりと拡充することは必要でしょうけれども、そうしたしっかりとした仕組みや体制は整備されないものでしょうか?

山田:
まだ正式に私どものところへ話はきていないのですが、国会の答弁を聞いていると、やはり「フリーランス・トラブル110番」がまず窓口になって、行政のどの窓口に申告すればいいのかということなども案内するような形になるのかなという気がいたしております。そうなった場合、私どもの責任はとても重大だなというふうに、改めて感じています。

竹田:
少なくともこの法律は来年の秋までには施行になるわけですから、仕組みの整備は急ぐ必要がありますね。

山田:
迫っています。がんばります。

“実際には労働者”として働くフリーランスの解消も

竹田:
法律ができたことで前進した面はあるのですが、残った大きな問題として、「自分たちは、実態としては、フリーランスではなくて労働者である」と、「雇われて働いている人たちと同じような働き方をしているのに、『あなたはフリーランス契約なのだから』と、一方的にフリーランスとして処遇されて、不利な立場で働かされている」というような人たちの存在もあるわけです。

山田:
はい。実際にですね、私どもの行っている相談窓口にも、そういったケースの方々からかなりの件数の相談が寄せられています。
特に配送関係です。どなたでもご存じのような宅配の大手の会社などは雇用なんですけれども、そこからの下請け、孫請けといった事業所で働いていらっしゃる方々は、確かにタイムカードのようなものは無いですよ、朝の何時から何時まで働く時間が決まっているということは無いですけれど、とにかく「朝から夜まで、あなたは何百個運んでください、時間の指定があるものは遅れないようにしてください」というような指示があって働けばですね、そこの発注者に1日カッチリ拘束されるわけですね。それで契約上は、業務委託になっているわけです。
別にその人たちは、自分たちがフリーランスで業務委託を望んでそうなっているわけではなくて、発注者から「うちは業務委託契約でやることになっているから」と言われて、ハンコを押して、それで契約を結んで仕事をしていると。こういう人が、自律的にフリーランスを選んだのかといったら、そんなことは、決してないような気がするんですよね。

竹田:
じゃあその人たちは、今回のフリーランス支援法では、もう少し立場をはっきりさせるというようなことには?

山田:
なってないんです。昭和60年にできた労働者と判断する基準についての研究報告があるんですけれども、いまだにその昭和60年の基準で運用されているというところに、少し問題があるのではないかと思っています。

竹田:
今回、フリーランスの人のための新しい法律ができた。今後はさらに、実際には労働者として働いている人は、ちゃんと労働法で守るという、そのための労働法の側の改正、見直しが、これから必要となってくるのではないでしょうか?

山田:
そうですね。改正なのか、あるいは、これまでの基準でも労働者としての働き方をしているのに業務委託になっているケースなどを、きっちりと見極めていく必要があると思います。

竹田:
それは厚生労働省にもっと頑張ってもらわなくてはならないし、本来は労働基準監督署が、「みなさんは、実態は労働者です」と、言ってくれなくちゃいけないわけですよね。

山田:
まったくその通りだと思いますね。

竹田:
こうした議論というのを、もっと起こしていかなくてはいけないですね。

山田:
はい。ちょうどこのようなフリーランスの法律ができたというのは、一番いいタイミングだと思っています。

フリーランスとして働く人が安心して働ける環境を

リスナーからのツイート
「『ちゃんと法律で決まっていますから』とバーンと言ったら、発注者側に別の人に頼みますといわれて泣く泣く条件をのむということにならないでしょうか」

――結局、弱い立場だから押し切られてしまわないかという点については、どうお考えになりますか?

山田:
本来は、そういうことがあるような発注者には、もうフリーランスの方から仕事を受けない、というぐらいの流れになればいいと思っています。やっぱり、適切な窓口にしっかり申告すること、申告を受けた行政は、そのようなことを言う業者に対してきちっと指導すること、またわれわれの相談の対応でも、そこをしっかり調整できれば、流れが変わっていくのではないかと思っています。

リスナーからのツイート
「フリーランスをしていて一番嫌だったのは、『楽でいいねえ』と言われてしまうこと。ひとつも楽じゃなかった」
リスナーからのツイート
「フリーランスで働いている後輩は、将来が心配で彼女にプロポーズができないと嘆いています」

――フリーランスの人が安心して働ける、安心して仕事をして生活できる状況というのが大切であり、求められると思いますが、そのために、いま何が必要だと考えていますか。

山田:
本来、フリーランスという働き方は、自分の専門性を生かして、自分のやりたい場所で、生き生きと働くことができる、そういう働き方のはずなんです。またフリーランスの人たちが力を発揮してくれることは、発注者もありがたいはずです。だから、社会がこうした専門的に仕事をして頑張りたいという人たちを尊重して、その力を活用するという流れに、意識を変えていってもらいたいと思っています。

――きょうは、ありがとうございました。

  • 「フリーランス・トラブル110番」
    電話番号:0120-532-110
    受付時間:平日の午前11時30分~午後7時30分、メールで相談することもできます。

【放送】
2023/05/17 「Nらじ」

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