83歳の“太平洋ひとりぼっち”~堀江謙一さん

Nらじ

放送日:2022/01/28

#インタビュー#ワールド

60年前、世界で初めてヨットで単独の太平洋横断に成功した世界的な海洋冒険家・堀江謙一さん。83歳となることし、世界最高齢での太平洋横断の達成に挑みます。
数々の航海を成し遂げてきた堀江さん。いま、なぜ新たな挑戦を掲げ歩もうとするのか。“83歳の太平洋ひとりぼっち”の思いに迫ります。(聞き手・眞下貴アナウンサー、黒崎瞳キャスター)


【出演者】
堀江:堀江謙一さん(海洋冒険家)

60年経て再び挑む「単独無寄港太平洋横断」

――ここからはすごい方に登場していただきますよ。
60年前、世界で初めてヨットで単独で太平洋の横断に成功した海洋冒険家の堀江謙一さん。”太平洋ひとりぼっち”の航海は大きな注目を集めました。
現在83歳の堀江さん、ことし3月、再び太平洋横断に挑戦するんです。

太平洋を単独で横断されたのは1962年、堀江さんが23歳のときでした。兵庫県西宮市の港からアメリカのサンフランシスコへ、94日間の航海でした。
今回は、60年前とは逆のルートで、サンフランシスコから西宮市を目指します。ヨットのサイズは60年前と同じ、およそ5.8mです。

ヨットはすでに荷物がいろいろ積み込まれた状態でコンテナに入れられて、出発地のアメリカに向けて運ばれた、ということなんです。
きょうは堀江さんと電話がつながっています。

堀江: 堀江です。こんにちは。

――直前といいますか、そんな時期に、ありがとうございます。

堀江: いいえ、こちらこそありがとうございます。

――堀江さん、ヨットはもうアメリカに向けてひと足早く出発しましたよね。いよいよという感じですけれど、堀江さんはいまどういうお気持ちでお過ごしですか?

堀江: いま、コンテナ船が混雑してるとか、いろいろ聞いていましたが、予定通り出港してくれたようでホッとしております。

――コロナの状況でいろいろ荷物も影響が出ているといわれていますけれど、そこはひと安心ということですかね。

堀江: はい、そうなんです。ホッとしております。

――堀江さんといいますと、60年前のまさに”太平洋ひとりぼっち”の航海が、困難を突破して太平洋横断ということで、当時の特に若者など多くの方に元気を与えた。元気をもらったという方、たくさんいらっしゃると思うんですね。
今回、83歳というお年で――何回も年齢を言って失礼かも分かりませんが――いま太平洋単独横断にどうしてまた挑戦しようと思われたんですか?

堀江: 僕としては、「チャレンジャーとして100歳で太平洋横断できたらいいな」と思ってるわけなんですけれど、100歳まで待ってましてもそのとき元気かどうか分かりませんので。
いま現在、若く元気なもんですから、「いまがチャンスかな」と思って今回挑戦することにしました。

――リスナーのツイートから、<堀江謙一さんのチャレンジすごいです。見習いたいと思います。私も今続けてますダイビング80代でも続けたいと思います。>と。
チャレンジ・挑戦するパワーって、どこから出てくるんですか?

堀江: パワーというほどのもんでもないんですが、何か目標があると何をするにも楽しいわけですから、やはり目標を持ったほうがいいかなと思っています。

――「目標があると楽しい」。それは、例えば航海中も同じですか? 太平洋を横断していくときにも、「目的地がある」というのは目標になるということですか?

堀江: 目的・目標に向かってヨットは進んでるわけですから。1日150kmぐらい進んでいくんですけれど。
それは波に揺られながら行っているようなわけですけれど、それでも一瞬一瞬楽しいですね。

――でも、航海中に大変なこともありますよね。そのときに心が折れることってないんですか?

堀江: 目的地に向かって進んでるわけですから、直接まっすぐ行けなくても、曲がりなりにも近づいていくというのは、それはそれなりに楽しいもんです。

――いろいろなことがあっても、目的地に向かって進んでいく歩み、ということですかね。

堀江: はい、そうです。何があっても、それはそれで楽しいと思います。

――目指すものがあるということは、それだけパワーを湧かせるものなんですね。

堀江: 自分で立てた目標に向かっていくわけですから。
これは別に与えられた目標ではないので、自分自身が決めた目標に向かって進んでいくわけですから、力が入ります。

広い海にぽつんとたたずむヨットからの光景

――今回の太平洋横断のルートですけれど、前回とは逆のアメリカから日本へ、東から西に太平洋を横断するということですけれど、今回逆を選ばれたのは、何か理由があるんですか?

堀江: 日本からアメリカに行く場合は、北寄りのコースを通っていきますが、今度はサンフランシスコから日本なので、ハワイの横を通って日本に帰ってくるという南回りのコースなので、かなり暖かいんですよね。その辺がだいぶ違いますね。

――ただ、南回りということは、距離は長くなりますよね。

堀江: よく分かりませんが、10%ぐらい長くなるんじゃないかなとは思いますが。
ただ、暖かいだけではなくて、貿易風帯ですから、ヨットにとっては理想の風が吹いてくれると思うので、その辺も楽しみにしています。

――これまでにもさまざまなヨットでの航海をされてきたわけですが、疑問というか、伺いたいと思うのは…航海の最中というのは、いわば360°、ずっと海なわけでしょう。

堀江: はい。

――見えるものは、きのうときょうで変わらなかったりするわけですよね。そういう中で、どんなふうに日々ヨットでの生活をなさっているんですか?

堀江: 360°景色は変わらないんですが、先ほど申しましたように、実際には1日150kmぐらいずつ移動してるわけですから、見たところ変わらないようですけれど、GPS、あるいは昔であれば六分儀等で現在位置を計ると、それなりに移動してるわけなんで、それはそれとして楽しいわけですね。

――「進んだ」という実感を持てるのが、また楽しみなんですか?

堀江: 一瞬一瞬自然の風を受けて進んでいるわけですから、それはそれで快適なもんなんです。

――海の上ってなかなか想像できないんですけれど、堀江さんはどんな景色が心に残っていらっしゃいますか?

堀江: 大きく分けますと、朝、日の出があって、太陽が真上に来て、そして今度は西へ沈んでいく…という繰り返しなんですけれど。そして海の上は、鳥が飛んでいたり、トビウオが飛んでいるのが見えることもあります。
また、海の上はほこりも何もないですから、非常に快適なんですね。

――ただ、お日様が昇って、まっすぐ上へ行って…という日ばかりではないですよね。風が吹いて、雨が降って、嵐になって…ということもあるんじゃないですか。

堀江: バリエーションとしてはいろいろあると思いますが、それでもリズムは一定してる場合が多くて。
時々イレギュラーなスコールがやって来るとかいうのがありますけれど、それはしかし時間にすると大した時間じゃないですね。また、それはある意味刺激になりますね。

――「刺激」と捉えられるんですね!

1人では達成できない「単独横断」

――前回はまさに”太平洋ひとりぼっち”ということだったわけですけれど、「1人でいる」というのは孤独を感じたりしないんですか?

堀江: もちろん僕は1人で航海するのを自分自身で決めてるわけですから、「寂しい」とか、そんなことじゃなくて。
そしてまた、隣に誰かがいなくても、航海するにあたってはたくさんの皆さんの応援をいただいて行ってるわけですから、そういう意味では、「群衆の中の孤独」とは全く違うわけですよね。

――周りに直接話す人はいないけれど、皆さんの応援を感じながら日々ヨットの上にいらっしゃるわけですね。

堀江: そうなんです。
それから、最初の航海と違って、いまはアマチュア無線もありますし、衛星電話もありますので、そういう意味でも断然60年前と今回では大きな差があると思います。

――衛星電話があったりするということは、今度は、例えばご家族だったり奥様だったりと連絡を洋上で取り合うことになるんですか?

堀江: はい、そうです。毎日、短時間でも衛星電話で交信して、現在位置を知らしたりします。

――そのことが「つながっている」という感覚にもなるでしょうし、ご家族にとっては安心につながるかもしれませんね。

堀江: そのとおりだと思いますね。
話す内容がごくわずかであっても、「きょうも交信できて元気なのが確認できた」ということは安心してもらえるんじゃないかと思います。

――最後に、今回の太平洋横断を多くの人たちにどんなふうに見ていてほしいと思われますか?

堀江: なんといっても、僕自身は僕自身が楽しむのが一番なわけなんですが、しかし、ヨットの航海をしていることで、皆さんがいま持ってる夢か何かがある場合、それに対して何らかのヒントになればうれしいなと思ってます。

――堀江さんが海の上で感じたこと、ご覧になった風景、また<Nらじ>にもぜひ教えてください。

堀江: はい、こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございました。

【放送】
2022/01/28 Nらじ ニュースアップ 「83歳の太平洋ひとりぼっち」 堀江謙一さん(海洋冒険家)

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