モデル 冨永愛 『大奥』吉宗役、新会社設立、社会貢献活動を語る。

NHKジャーナル
放送日:2023/09/07・2023/09/08
#インタビュー#映画・ドラマ#歴史
冨永さんは15歳でモデル活動を開始。17歳のときにニューヨークで海外デビューを果たし、今もトップモデルとして活躍しています。俳優としては、今年注目されたドラマ『大奥』で女性将軍・徳川吉宗を演じて評判となりました。また、今年7月にモデルなどのセカンドキャリアを支援する会社を起ち上げたほか、かねてより国際協力NGOジョイセフの親善大使を務めるなど、幅広く活動している冨永さんにうかがいました。
(聞き手:緒方英俊ニュースデスク、打越裕樹キャスター、結野亜希キャスター)
ドラマ『大奥』徳川吉宗を演じる
――吉宗を演じたことについて、いま振り返ってみてどう思われますか。
冨永:
この大奥のお話をいただいたときに、何役っていうのは聞いてなかったんですよ。どの役なんだろうなと思って原作を読んだんですよ。で、原作を読んで「吉宗じゃね⁉」って。(一同笑い)
「いやでもこれ違うよな、将軍だしな」と思って。「NHKのドラマでさすがにこのポジションは冨永にはない」と思って。
――いやいやいやいや。
冨永:
で、予想してたとおり、吉宗の役をいただいたんで、もう“ズーーーン”って感じでしたよ。プレッシャーがもう。できるかなーと思って。
地上波ドラマ初主演
――ドラマの主演っていうのは初めてだったんですか。
冨永:
地上波での主演を初めてやらせていただいたっていうのもあって。自分の体力と頭の使い方のバランスの取りかたと、俳優をやっていく中でのエネルギーの分散のしかた。いわゆるそういうバランスの取りかたが全然慣れてないので。どちらかというと、最初に熱くなりすぎてMAX、ガ~ッて行ってしまうタイプなので。そのバランスの取りかたがすごく大変でしたね。
――まあそれが視聴者からも大絶賛を浴びたわけですよね。見た人の感想を聞いた時ってどうでした?
冨永:
いや、うれしかったですよ、素直に。放送されるまでは不安だったんですよ。吉宗になれているかなとか。放送されて、そうやって皆さんがよかったって言ってくださるのは、聞いて本当にホッとしました。本当にホッとした。冷や汗かいてましたもん、放送される前。
“江戸のランウェイ”撮影秘話
――印象に残っているシーンは“御鈴廊下”のシーンですね。まさに冨永さんらしいというか。バーンと出てこられて。
冨永:
いやあれは何かこう、現場に立った時に、「めっちゃ期待されてるな」って思いました(笑)。
期待の目でみんな見るんですよ。江戸のランウェイというか、どんなふうに歩いてるんだろうな、みたいな。そのプレッシャー甚だしいわけですよ。もう本当に100%以上の力をここで、全部そうですけど、出さなきゃなという意気込みで歩かせていただきましたけど。
女性ももっと世に出る社会へ
――よしながふみさんの原作そのものが、男女を逆転させるっていうストーリーだったわけじゃないですか。見ている側としては今の日本の状況も振り返ってみて、ジェンダーのあり方ですね、女性が上様みたいにもっと積極的にいろんなことに出ていってもいいんじゃないかとか思ったりもしたんですね。そういうことについて、どんなふうにお考えになっていますか。
冨永:
そうですね。冨永的にはもちろんそのとおりだと私は思っています。もっと世の中に出て行くべきですし、出ていけるよう社会の状態にするべきだと思いますね。
――日本も、やっと男女共同参画の社会になりつつあるかなあと。
冨永:
全然まだまだでしょ。まだまだ。
――やっぱりそう思われますか。
冨永:
世界から見ても出遅れてますし。その途中なんでしょうね。まだまだこういう話題がメディアでされているというのは、そういう象徴なんでしょうね。こうやってジェンダーのことを言えば、ああだこうだああだこうだ言っているその先に「変わったね」っていうことがきっとあると思うので、言いたいこと言ったらいいと思うんです、ジェンダーについて。
セカンドキャリア支援の会社
――自分はあくまで「モデル」だと語る冨永さんですが、俳優業のほか、ラジオパーソナリティーや社会貢献活動などでも存在感を増しています。そんな冨永さんが今年7月、モデルなどのセカンドキャリアを支援する会社を起ち上げました。そこにどんな思いがあるのでしょうか。
冨永:
感覚的にアスリートとちょっと似ている部分があって、モデルっていうのは。本当に若い頃でしかできない、キャリア形成できない仕事・業界ではあるんですけど。自分が若い頃経験してきたモデルのキャリアの短さ、その“はかなさ”って、なんでなんだろうって。こんなに活躍している人たちでさえ見向きもされなくなる瞬間がある。そのあとはもう何の仕事もできなくなる。それが何かすごいもったいないというか。
その中で自分がここまでできて、これだけ長い間、25年モデルのキャリアを続けてこられたというのも本当に恵まれているなって思いますし。いろんな、ラジオもそうですし、俳優もそうですし社会貢献も、多岐にわたる活動をさせてもらってきたので。この経験を誰かに伝えたいというか、この経験を生かしたいという思いがすごくあるんです。きっと誰かの役に立てるだろうなっていうのはあるんですよね。
やっぱり何かしら、人は才能を持ってるもので、その才能が一度開花するか、したか、そういったのが見えた人っていうのは、絶対ほかにも何かをできる可能性って絶対秘めてると思うんですよね。で、その可能性を捨てるよりも探ってサポートして試してくれる事務所があってもいいじゃないかと思ったんですよ。
――具体的にはどんな支援をしていこうと今思ってらっしゃるんですか。
冨永:
まだ立ち上げたばかりなので、どういうふうにしていくかっていうのも、人それぞれにアジャストしながら進めていくことだと思うんですけど。自分しだい、自分の運命、チャレンジ、努力でも、そこにサポートの力ってやっぱり大きいじゃないですか。それをできたらいいなと。
吉宗と重なる? キャリア支援
――ちょっとこじつけになるかもしれないんですけれども。ドラマで吉宗は若い男の多くをお役御免にしましたよね。あれもその男たちのセカンドキャリア・これからの未来に向かっての決断だったんじゃないかな…なんていうふうにも見たんですが。
冨永:
いいですね、そのこじつけ(笑)。
いやでもそれは本当にそのとおりです。 吉宗としてはやっぱりいろんな事を考えての結果ですし。彼らはきっと未来があるから大丈夫だろうっていう確信があるんですよね
――才能をこれからに生かしてほしいという思いですよね。
冨永:
そうですね。
――まさにこじつけが。
冨永:
すばらしい! すばらしいこじつけです(笑)。
――ですが、新しい会社の取り組みにも共通するようなことってきっとありますよね。
冨永:
そうですね!
――また、こじつけて(笑)。
国際協力NGOジョイセフの活動
――冨永さんは、国際協力NGOジョイセフの親善大使を務めています。ジョイセフは、妊娠や出産・中絶などに関しての人々の権利を守るために世界の団体と協力しながら活動しています。冨永さんは途上国の現状を視察し、そこで起きている問題を日本で広く伝えています。
――ジョイセフの活動を始めたきっかけは何だったんですか。
冨永:
2010年に、ファッションの力でチャリティーができないかというイベントをジョイセフがやったんですね。そのときにランウェイをやりたいっておっしゃって、私が呼ばれたんですよね。自分が何か支援する団体を探していたというのもあるんですけど、ピンと来たっていうところからずっと支援していて…、と言うのがきっかけです。
ザンビア視察で受けた衝撃
――2010年に行かれたのがザンビア。行ったときの印象ってどうでした?
冨永:
すべてが違うんですよね。もちろん人種も違うし、生活のしかたも違う。こんな世界があるんだっていうのが、大きな驚きでしたよね。
その中で、日本が当たり前に享受している「出産の安全性・安心感」っていうものが、全くなかった。その時に命の大事さというか、命っていうことについて考えるんですよね。
自分は一人息子を出産して、そのあとわりとすぐザンビアにいって。その当時は1日1,000人妊産婦さんが妊娠・出産・中絶が原因で亡くなっているという状況だったんですけど。その状況を知りつつ現場を見に行って。
家のドアもないような、土壁でできた手作りのおうちに住んでいる、14歳から出産して10人ぐらい子供を産み続ける24歳のお母さんとかがいらっしゃって。どこで出産したのって聞いたら、その家の土間で産んだって言うんですよ。薄い布を1枚敷いて、さびたハサミ。これだけで出産するって、どれだけ危険なことか。それは死亡率は高いですよね。
出産環境向上のための支援
――今年の夏も冨永さんはザンビアに行かれたそうですけれども。この10数年ぐらいで変化はお感じになりますか。
冨永:
目に見えて変化を感じましたよね。そもそも、マタニティハウスっていうのを作ったんですね、ザンビアで。そこから10年経って6棟できたんですよ、マタニティハウスが。
住んでいる村から出産ができる医療施設が整っている病院に行くまで、歩いて10時間かかります。その道はガタガタの舗装されていない道で。じゃあ、産気づいてガタガタ揺られていたとして生まれちゃうじゃないですか、亡くなってしまうじゃないですか。
だからみんな家で産むっていうのも、もちろんありつつ、家で産むっていう伝統もありつつ。じゃその10時間の途中に母子待機ハウスがあったらいいじゃないかと。ここで出産間近の人は待機して、そして出産に行く。もしくはマタニティハウスが出産できる施設を伴うことができたら、よりいいじゃないですか。で、地元のスタッフを育成するボランティアの人たちを育てるっていうことも同時にやる。それがマタニティハウス。6棟できました。そしたら、地域の人たちの死亡率だったりとか、そういうのが格段に改善されてくるわけですよ。
広く知ってもらいたい
――今回、息子さんも同行されて。男性が大事なんだっていうのを目の当たりにされたと思うんですけど。
冨永:
そうですね。息子もジョイセフのサポーターになるっていうので今回一緒に現地視察に行ったんですけど。この妊産婦にまつわる問題、もちろん男性も一緒に関わっている問題なので、やっぱりそうやって男性が問題意識を持ってくれるっていう事がすごく大事ですし、特に若い男性が知るっていうのもとても大事ですよね。
結局は、性教育っていうものがなされていないから、欲望のままに性交渉をして子どもが生まれる。家族計画っていうものも、男性もそこに参加してもらって一緒に改善していくということなので。
――そういう意識改革の取り組みもなさっているということなんですね。
冨永:
そうですね。この現状をちょっと気になった方も、やっぱり知ること、そして考えること、行動すること。これがやっぱり大事だと思うので、まずは知ることから始めていただきたいなと思います。
ドラマ「大奥」Season2についても冨永さんに一言いただきました。
冨永:
私・徳川吉宗が死んだ後のお話ということで。本当に赤面疱瘡(あかづらほうそう)が撲滅できるのかどうか、私自身も楽しみに拝見したいと思っているんですけど。
――ちょっと怖そうなところも…。
冨永:
いやあ、結構ね、シーズン1より正直怖いかもしれないです。ホラーなのか。いや、もはやサスペンスなのか。いや、えっ! 事件簿⁉ みたいな。本当に楽しみにしてますね。ぜひ見てください。
ドラマ10 大奥
総合 毎週火曜 午後10時~10時45分
詳しくはこちら
ドラマ「大奥」Season2は、10月3日(火)夜10時 放送開始です。
【放送】
2023/09/07・2023/09/08 「NHKジャーナル」