地熱発電の課題 脱炭素社会実現のために

21/02/15まで

NHKジャーナル

放送日:2021/02/08

#ネイチャー#リサイクル#テクノロジー

ざっくりいうと

  • 天候に左右されない再生可能エネルギー。日本の潜在力は世界3位
  • 課題は開発にかかる時間とコスト。場所の規制や法令の煩雑さも
  • 2021/02/08 NHKジャーナル 特集「地熱発電の課題」

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脱炭素社会の実現を目指す中で、国は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを主力電源として位置づけています。こうした再生可能エネルギーの中でも、日本に大きな潜在力があるといわれているのが地熱発電です。しかし、地熱発電は国内の発電電力量のわずかしか占めておらず、導入が進んでいないのが現状です。地熱発電をめぐる課題について、ラジオセンターの瀬古久美子記者とお伝えします。(聞き手:森田智之ニュースデスク)

地熱発電は地球そのものがボイラー

――そもそも地熱発電とはどういった仕組みでしょうか。

瀬古: 地熱発電は、地中深くから取り出した高温の蒸気によってタービンを回して発電を行います。まさに地球そのものがボイラーの役割を果たしています。太陽光や風力などのほかの再生可能エネルギーと違って、昼夜を問わず、そして天候にも左右されずに発電できることが最大の魅力です。日本には現在、大小合わせておよそ70か所あるといわれています。

――日本にはどれだけのポテンシャルがあるのでしょうか。

瀬古: 世界の地熱資源量を見てみると、日本はアメリカ、インドネシアに次いで世界3位で、およそ2300万キロワットの発電能力があるといわれています。これは日本が環太平洋火山帯に位置しているからで、そのポテンシャルは非常に高いといえます。
地熱エネルギーを研究している日本地熱学会の海江田秀志(かいえだ ひでし)会長は次のように話しています。

海江田秀志さん

「日本には、お湯、地熱っていうのがある。世界に誇る資源国であるということですよね。そしてその敷地の面積から見ても、ほかの(再生可能エネルギーの)発電と比べたら単位面積当たりの出力が大きいというあたりも魅力的だと思います」(海江田秀志さん)

――再生可能エネルギーを今後さらに導入しようとしている国としても期待は大きいですね。

“地熱のまち”の観光・農業・発電所

瀬古: こうした地熱エネルギーの活用を積極的に行っているのが、“地熱のまち”を掲げている秋田県湯沢市です。湯沢市は、市内各地に温泉が湧き出る「いで湯の里」として知られています。

山葵沢地熱発電所

1994年に上の岱(うえのたい)地熱発電所が稼働したのに続き、おととしには山葵沢(わさびざわ)地熱発電所が運転を開始しました。この山葵沢地熱発電所は、出力4万6000キロワットという、国内では23年ぶりの大規模な地熱発電所です。湯沢市企画課の小山貢(こやま みつぎ)主幹は次のように話しています。

「国策として再生可能エネルギーの必要が促進されている状況なんかを聞くと、湯沢市、地熱のまちとして前から言っていたんですけれども、改めて国内でも特に有望なところということで、現在再認識され始めているのかなと思います。地域固有の資源である地熱の活用を通して、地域の活性化をはかりたいと思っています」(小山貢さん)

瀬古: 湯沢市には熱水と蒸気が激しく噴出する大噴湯など、観光名所がいくつもあります。これらの名所に温泉や地熱発電所も加わって、湯沢市全域が日本ジオパークにも認定され、観光ツアーも開催されています。
この地熱エネルギーは、農業にも利用されています。農業用ハウスのパイプに温泉の熱水を引き込んで循環させることで、東北の厳しい冬の時期にミツバや葉物野菜などを育てています。

――地熱エネルギーを観光や農業にも活用しているんですね。

開発を阻むもの① 時間とコスト

瀬古: このように地熱エネルギーには大きな可能性があるわけですが、実際には地熱発電は、国内の発電電力量の0.2%ほどしか占めていないのが現状です。国は2030年度までに地熱発電の設備容量を150万キロワットに拡大する目標を立てていますが、現在はおよそ60万キロワットと目標にはほど遠いのが実情です。

――なぜ地熱発電の開発は進んでいないのでしょうか。

瀬古: ひとつめの問題は、開発に時間とコストがかかることです。地熱資源は目に見えない地下にある資源です。その開発には、実際に地面を掘って地下の構造や蒸気の噴出量などを確認する必要があり、操業を始めるまでには何年もかかるといわれています。

「調査したからといってすぐ蒸気が出てくるわけではなくて、井戸を掘って、出てきたり出てこなかったりというのを繰り返しながらやっていかなきゃいけない。さらに大きな発電所を作るとなると、環境アセスという手続きも必要なので、10年以上かかっちゃうというのが、なかなか進まない原因だと思いますね」(海江田秀志さん)

瀬古: 資源エネルギー庁によりますと、たとえば3万キロワットの地熱発電所を建設しようとすると、調査や開発に73億円、設備の建設に183億円かかるということなんです。さきほどお伝えした、秋田県湯沢市でおととし運転を始めた山葵沢地熱発電所も、調査から稼働までに26年の歳月がかかっています。
ほかの再生可能エネルギーと比較しても、調査や設備の建設に莫大な費用がかかり、大規模な発電所ともなると大手企業でなければ着手すらできない現実があります。

――こうした状況、国はどう認識しているんでしょうか。

瀬古: 国は、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて、地表の調査や掘削調査に助成金を交付するなどして資金援助を行っています。こうした支援によって、これまでに全国6か所で地熱発電所の稼働に結びついたということです。国の事業者への助成金や調査の支援は年々増加傾向にあり、来年度の予算案では、今年度より5億円ほど多い110億円を計上しています。

開発を阻むもの② 場所と法令

瀬古: ただ、こうした経済的な支援があれば地熱発電の開発が進むわけではありません。それが、地熱発電所を建設する「場所」の問題です。日本は世界3位の地熱資源を保有していますが、その8割が国立公園などの自然公園の中にあります。国も、自然公園の中での地熱資源の開発の規制を緩和しています。これによって開発できる地域が拡大し、全国にある地熱資源全体のおよそ70%が開発可能な地域になりました。

しかし、開発の許可は個別に判断され、許認可の手続きにも時間がかかります。さらに、地熱発電の開発には主なものだけでも20以上の法令が関わっていて、その手続きが煩雑であることも事業者にとっては大きな負担になっていると、海江田秀志会長は指摘します。

「地熱に特化した法律がないので、地熱開発をしようとするといろんな法律の適用を受けなければならない。温泉法とか道路交通法とか電気事業法とか、いろいろな法律。何かやるたびに適用法律に対応していかないといけないので、地熱法という法律を作っていただければ、手続きも簡略化がはかれると思います」(海江田秀志さん)

瀬古久美子記者
(ラジオセンター)

瀬古:
日本には、世界に誇る豊富な地熱資源があるというのは大きな強みです。さらに、発電機などの地熱発電の設備機器については、日本の企業が世界で7割のシェアを誇っています。日本が脱炭素社会を実現するためにも、今後地熱発電の普及は不可欠といえます。そのためにも、国には省庁を超えた対応が求められています。
一方で、開発には地域の人たちの不安の声を取り除くことや環境保全との両立を図ることも重要です。引き続き、幅広い議論を行っていく必要があるといえます。

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