ワクチン接種前に知って安心 アナフィラキシーと迷走神経反射

NHKジャーナル

放送日:2021/03/24

#医療・健康#カラダのハナシ#コロナウイルス

新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は4月12日から順次、高齢者への接種を始めます。その後、がんや慢性の心臓病といった基礎疾患のある人などに、優先して接種を行うことにしています。このワクチン接種の前に知っておきたいことについて、ワクチン全般に詳しい専門家に伺いました。

【出演者】
森内:森内浩幸さん(長崎大学病院 小児科 教授)

アナフィラキシー

――ワクチン接種で気になるのが、重いアレルギー症状が出る「アナフィラキシー」です。新型コロナウイルスのワクチンを接種した人がアナフィラキシーを起こす割合は、アメリカではおよそ20万人に1人だったというデータがあります。一方、日本でアナフィラキシーが報告された数を見ると、3月11日午後5時までに国内で接種を受けた18万1184人の医療従事者のうち36人。およそ5千人に1人の割合となっています。

アメリカは20万分の1。一方、日本は5千分の1。森内さん、この大きく異なる数値をどう見ればよいのでしょうか。

森内: この数値は単純に比較できないもので、特段に不安視する必要はないと考えています。実はアメリカでも、医療従事者にワクチン接種が始まったころは、およそ4千分の1という数値が出ていましたが、ワクチン接種を受けた人の母集団が増えていった結果、最終的には約20万分の1になったという経緯があります。したがって日本でも、今後同じような経過をたどって、数値は下がっていくと予想しています。

なぜワクチン接種の初期段階で数値が高く出るかというと、一つには、初期段階ではちょっとでも副反応の可能性があれば徹底して報告されますので、あとの段階と比べ、数値が高く出がちだということは、これまでにも新しいワクチンが導入されたときに経験されています。そしてもう一つ。初期の段階での接種の対象は医療従事者なので、アナフィラキシーの頻度が高くなるとも考えられています。

――医療従事者の方は、それ以外の方に比べてアナフィラキシーが起きる可能性が高い、ということでしょうか。

森内: そうです。なぜかというと、今回のワクチンでアレルギー反応の原因物質と考えられているのは「ポリエチレングリコール」で、注射薬や塗り薬などの成分として、また、飲み薬の分量調整などに広く使われています。医療従事者はこれまでに薬剤に接する機会が多かった分、アレルギー反応が出やすくなると考えられています。

そして、ポリエチレングリコールは、化粧品や肌荒れクリームなどにも含まれている物質で、女性のほうが接してきた機会が多い分、アレルギーが出やすくなるとも考えられています。医療従事者には看護師さんの割合が高く女性が多いので、アナフィラキシー発生頻度が高く出ているのかもしれません。

ということで、アナフィラキシー発生頻度がおよそ5千分の1と高めに出たのは一時的なものと考えられますので、不安がらなくてもよいと思います。

――必要以上に怖がらなくてもいい、ということですね。

森内: そうですね。それにもしアナフィラキシーが起きたとしても、心配はいりません。これまでの例では、すべて回復しています。ワクチンを接種する場所では、アナフィラキシーが起きたときにすぐに対応できるように、特効薬を注射器に入れた状態で準備していますので、問題ありません。

あらかじめ知っておくとよいのは、ご自身が飲んでいる薬に「β遮断薬」、または「βブロッカー」と分類される種類の、血圧を下げる薬がないかどうかです。この薬を飲んでいる人にアナフィラキシー症状が出た場合には、今お話しした特効薬が効きにくいことがあります。この薬を飲んでいると分かっていれば、別の治療薬を合わせて使うなど対処がスムーズになるので、問診票に書き込み、ワクチン接種会場でも担当医に伝えられるようにしておくとよいでしょう。

――これまでに何かしらのアナフィラキシーを起こしたことがある人は、ワクチン接種を受けてもよいものか気になるかと思いますが、これはいかがでしょうか。

森内: すべてのアレルギーがダメということではありませんので、かかりつけの医師などに相談して、アナフィラキシーのリスクと新型コロナ感染のリスクを比べて、メリットとデメリットのバランスを検討してワクチンを接種するかどうかを考えていただきましょう。

迷走神経反射

――ワクチン接種にあたって、ほかに注意すべき点はありますか。

森内: 「迷走神経反射」というものがあります。これは簡単にいうと、ワクチン注射への恐怖心や不安感、あるいは痛みが原因で、気分が悪くなったり気を失って倒れたりすることです。

なぜこういうことが起きるかというと、痛みや恐怖といったストレスで自律神経が乱れ、脈が遅くなり、血圧が低下して脳貧血を起こすためで、たまに失神にまで至ります。やせ型の若い女性に起こることが多いようです。ワクチン以外の注射や採血でも倒れる人はいますが、今回のワクチンは未知のもので、接種の際に緊張する人が多いと考えられ、少し注意が必要かもしれません。

でも、横になってしばらくすれば回復するので、そんなに心配ありませんけれど、倒れたときに打ちどころが悪いと大けがをする恐れもあります。今回のワクチン接種の会場では、迷走神経反射やアナフィラキシーの発生に備えて、接種したあとも15分から30分は安静にして様子を見ることにしているので、係員の指示に従ってください。

――私も注射とか採血が大の苦手でして、絶対に目をつぶっているんです、終わるまで。この迷走神経反射には、予防法や対策できることなどはあるのでしょうか。

森内: 「怖い、怖い……」と思ってしまうと迷走神経反射が起こりやすくなりますので、雑談でもしながらリラックスして受けられるとよいと思います。やっぱり、針は見ないほうがよいと思います。リラックスしやすいという点では、集団接種ではなく個別接種も選べる地域であれば、知っている病院・知っている先生のところで受けると不安を感じにくくなりますので、オススメです。

迷走神経反射は接種直後に起こることが多いので、注射をしてもらった直後に、立ち上がろうとするタイミングで起こることが多いので、そこに注意が必要です。迷走神経反射の経験があって心配な方は、できれば立ち上がらなくていいように、別のいすを準備してもらって、そこで接種を受けるといいと思います。さらに、接種会場の都合が許せばですけれども、横になった状態でワクチンを打ってもらうと、仮に気を失ったとしても、そのまま横になって休むだけですので安全です。

それ以外にも事前の対策としては、睡眠不足や空腹の状態では迷走神経反射が起きやすくなりますので、事前にしっかり寝て食べて体調を整えておくということは大切です。

【放送】
2021/03/24 NHKジャーナル 医療健康「ワクチン接種前に知って安心 アナフィラキシーと迷走神経反射」 森内浩幸さん(長崎大学病院 小児科 教授)

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