致死率3割 劇症型溶連菌の感染者が急増

NHKジャーナル

放送日:2024/04/17

#医療・健康#カラダのハナシ#感染症

手や足のえ死などを引き起こし、致死率が3割を越えるともいわれている劇症型溶血性レンサ球菌感染症。耳慣れない病気ですが、子どもが多くかかる溶連菌が原因で、50代以上が発症しやすいとされています。国立感染症研究所によりますと、去年の報告数は過去最多の941例だったのですが、ことしの報告数は、4月7日時点で649例と、去年の半数をすでに超えています。このままのペースで増え続けると去年の2倍から3倍に達する勢いです。どのような病気なのか、予防はできるのかなどを専門家に伺います。(聞き手:山本未果ニュースデスク、野村優夫キャスター、結野亜希キャスター)

【出演者】
菊池:菊池賢(きくち・けん)さん(東京女子医科大学 教授・医師)

劇症型溶血性レンサ球菌感染症って、どんな病気?

――まず、劇症型溶血性レンサ球菌感染症=STSSとはどのような病気ですか。

菊池:
「溶血性レンサ球菌」いわゆる「溶連菌」に感染することで、手や足のえ死、ショック、多臓器不全などが起こる重症感染症です。
一般的な溶連菌は子どもがかかりやすく、重症化することはめったにないのですが、劇症型のタイプ、株に感染すると、症状が急激に悪化して48時間以内に死に至ると、非常に致死率が高い、だいたい3割を越える非常に重症の感染症です。

――劇症型の溶連菌に感染して、症状がひどくなる人の傾向はあるのでしょうか?

菊池:
はっきりしているのは高齢者、だいたい60代から70代の人が多いですね。合併症がある、例えば糖尿病やがんの方などに集中するという訳ではなくて、もともと元気だった方、基礎疾患のないような方でもかかります。
もともと溶連菌感染症というのは、産後の産褥(じょく)熱、いわゆる産後のひだちが悪いというものですね。それで発症する、劇症型になるという事もあるのですが、最近はあまり見なくなりましたね。感染者が最近、若い人にも広がってきています。従来は60~70代といった高齢者が圧倒的に多かったのが、去年の報告だと50代とかそれより若い人にも見られている。そこがちょっと非常に気になる点ではあります。

――実際に、西武の投手コーチでしたか、亡くなった方がいらっしゃいましたね?

菊池:
そうですね、あの方も確か入院されて2日くらいで亡くなられたと思います。それがこの劇症型レンサ球菌感染症の特徴です。

――森投手コーチ、まだ42歳だった…。

菊池:
はい、まだお若かったですね。

なぜいま増えているのか?

――なぜ今、劇症型の溶連菌に感染する人が増えているのですか。

菊池:
はっきりしたことはよく分かっていないと思うんですけども、一番可能性として高いのは、やはり新型コロナ感染症が2類相当から5類感染症になって一般のインフルエンザと同じような扱いになったということで、みなさんの感染対策、今まで3年間一生懸命マスクだ手洗いだとやってきた、それがタガが緩んだというところはおそらくあるでしょうね。
もうひとつは、そういう感染対策を非常に厳格に守っていたせいで、いろいろな感染症を起こす微生物にさらされなかった、ということは免疫が落ちてきたということもおそらく関わっているのではないかとは思います。

――人の往来も増えましたけど、そのあたりはどうですか?

菊池:
それは大きいと思いますね。感染対策も緩んできているし、さらにインバウンドも増えているしということで、人の往来が増えれば当然感染症も増えますね。これは劇症型に限ったことではなく、溶連菌全体も増えていますし、例えばインフルエンザもアデノウイルス感染症も、さまざまな感染症が今までよりは急激に増えていますので、その一環と考えることもできます。

――この溶連菌なんですが、どんな風に感染するのですか?

菊池:
人から人にしか感染しない菌なんですね。動物とかに感染症を起こすわけではない。だから、あくまでも人から人にしか伝わりません。お子さんの溶連菌感染症だと、飛まつ感染といってツバなどが飛んだことでそれを吸い込むことで感染しますが、この劇症型はそういうルートとはちょっと違うように思います。おそらくは接触感染、菌を手とかを介して広げていることが考えられます。

――例えば、傷があるとか、こんなケガをしたとかで感染しやすいということはあるのですか?

菊池:
感染しやすいということではないと思いますけれども、例えば水虫があるとか靴ずれができるとか、あるいは床ずれができるといった所には感染しやすい菌なので、そういう場所があると菌はくっつきやすいですね。

――実際の患者さんのケースはどんな場合がありますか?

菊池:
だいたい高齢者の方で、具体的に経験したケースをお話ししますと、足の甲なんかにですね、ちょっと転んでそこを打撲したり、あるいは何か重いものが落ちてきてそこにちょっとした傷ができる、できないこともありますが、で、ちょっと腫れた。でも骨が折れてはいない。内出血もしていない。で、そのまま置いておいた。
そしたら翌日になって急に足が腫れてきて、それが真っ赤にパンパンになって、そのうち高い熱も出て、ちょっと意識がもうろうとしてきて応答がおかしくなってきたみたいな状態になり、救急車で運ばれて来る。その後、その腫れたところがどんどん膝の方にまで上がってきて、そのまま急激に状態が悪化、ショック状態になって、3人にひとりの方はそのまま亡くなってしまう。そういう経過をたどります。

――打撲とか傷が原因かもしれないんだけれども、実際にどうやって接触して入ってくるかはよく分かっていないということですね。

菊池:
はい、正直言うとはっきり分かっていないと思います。

治療方法、そして見分けるポイントは?

――感染したら、どのように治療していくんでしょうか?

菊池:
特に抗生物質に対する耐性があるわけではないんですね。ペニシリンという古典的な抗生物質が非常によく効きます。ただ、非常に進行が速いので、ごく早期・初期の段階で適格に抗生物質の治療をはじめないといけないです。感染創、感染した状態が広がってしまうと抗生物質では手に負えない。そうなると感染している場所を切り落とす。例えば足を切断するといったことを行わなければ、救命できないといったケースがあります。

――今、お話しの中で早期発見が大切という事でしたけれども、感染しているかどうか見分けるポイントはありますか?

菊池:
初期の段階でいかに的確な治療が受けられるかが生死を分けるんですけども、非常に難しいです。
ただ、高い熱が出ること。それから腫れてからそれが広がっていくスピードがすごく早い事。それと、だいたい見ていますと意識障害、ちょっとうわ言を言うような、高い熱が出てもうろうとしているといった感じですかね。熱にうなされている感じ。そういう方が多いですね。

――傷口が腫れると、最初に皮膚科とか整形外科に行ってしまうんじゃないかと思うんですが、意識もうろうとした症状が出た場合には、ちゅうちょせず救急車を呼んでも大丈夫?

菊池:
はい。高い熱があり意識がもうろうとしていたら、ちゅうちょせずに救急車を呼んでいただいた方がいいですね。

リスナーのメッセージ・質問から

――放送中にたくさんのメッセージや質問をありがとうございました。一部エンドコーナーで紹介させていただきました。

岩手県 50代女性
劇症型初めて知りました。恐ろしいです。予防法はありますか? また、よく子どもがかかる溶連菌とは型が違うのでしょうか、それとも、同じ菌でも人により劇症型に変わってしまうのでしょうか?

菊池:
まず、ワクチンのような予防法は、ありません。
型が違うかということなんですけども、もともと劇症型レンサ球菌感染症を起こす菌というのは「M1」というタイプが多くて、これが病原性が高いんですけども、最近ヨーロッパとかアメリカとかオセアニアで流行している「UK株」というのが、このM1の変異株として知られています。これまで日本ではほとんど知られていなかった株なんですけれども、去年あたりからこれを見かけることがあって、私の施設でも実際にこのUK株が見つかっています。これは、今までの株よりもさらに病原性が高いといわれていて注意が必要になります。

SNS
感染症、というくらいですから劇症型溶連菌は、発症していない人でも「保菌者」として生活していると考えた方がよいのでしょうか? やはり対策は、手洗いやマスクといった、コロナ禍が参考になりますか?

――先ほど、予防法の中でワクチンはないということでしたけれども、そしたら、どのようにして予防したらよろしいでしょうか?

菊池:
はい。お子さんの溶連菌の感染症でも、結局それが非常に広がっているというのは一定の割合で無症候性保菌者といいまして、その症状を呈さない、でも菌を持っているという方が感染源になるということが分かっています。おそらく劇症型も同じようなことがあるだろうと予想されますけども、はっきりしたことは分かっていません。
予防としては、足の傷、例えば水虫とか靴ずれとかそうした所に菌が定着しやすいので、足をきれいに清潔を保つということ。それから、小さな傷でも放っておかないでちゃんと治療すること。そうしたことが非常に大事ですし、手洗い、マスクといった基本的な感染対策ももちろん重要になります。

愛知県 50代女性
初期の段階で、何科に行けばよいのでしょうか?

菊池:
はい。さきほどちょっとお話ししたように、高い熱が出て、腫れがひどくて、ちょっとうわ言を言っているような状況であれば、迷うことなく救急車を呼んで、そしたらもう救急科ですよね。救急診療をやっているところに、ご自分で何科というふうに指定されることなく、救急車の方にお任せすればよいかと思います。

――症状は急激に悪化するということですので、迷わず救急車を呼んでいいということですね?

菊池:
はい。


【放送】
2024/04/17 「NHKジャーナル」

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