残暑を乗り切る食事法 まずは起きて1時間以内に朝食を

NHKジャーナル

放送日:2023/08/30

#医療・健康#カラダのハナシ#ライフスタイル

夏の暑さですっかりバテてしまったり、体へのダメージが心配な方もいると思います。体を回復させるための食事や生活のリズムについて、専門家にうかがいます。 (聞き手・山崎淑行ニュースデスク、打越裕樹キャスター、結野亜希キャスター)

【出演者】
小島:小島美和子さん(管理栄養士/企業や健康組合を通して多くの社会人に食生活アドバイスを行う)

一食目は起床後1時間以内に

――体がしんどいという人がたくさんいると思います。いわゆる「夏バテ」を感じる人へ、アドバイスをいただけますか。

小島:
まずは「朝食の時間」です。これは、体内時計の働きが解明されて時間栄養学という新しい研究分野が進んできておりまして、いつ食べるかという「時間」が大事だとわかってきました。その観点から、まずは「起床時間を一定にして、朝食を起床後1時間以内に食べましょう」というのが一番重要なことだと言われています。ここで言う朝食は「起床後の一食目」です。生活サイクルが後ろ倒しになっていてそこで固定している方、例えば毎日昼頃に起きて朝方に寝る生活をしている人であれば、起きてすぐの昼に食べる食事ということになります。

――起床時間を一定にして、起きてから1時間以内に一食目をとる。これが大切なのはなぜですか。

小島:
夏バテに限らず、体調を整えるうえで全ての人に共通することですけれども、毎朝、体内時計をリセットすることで、自律神経や免疫系、ホルモンなどを正常に働かせることができるんです。体内時計というのは、24時間ピッタリではありません。毎日スタート時間を合わせてリセットしないと、いろいろな不調につながりやすいので、1日の始まりに「はい、今からスタートですよ」という、スイッチを押すことが必要です。そのスイッチを押す力として、まずは毎朝同じ時間に起きて、光を浴びることが大事です。そして光と同じくらい、食事が大事なんです。食事をとることで体内時計をリセットして、スタートするスイッチを強く押すことになります。

――体内時計がリセットされないと、体にどんな影響が出るのですか。

小島:
例えば、胃腸の機能がタイミングよく働かないので、それによって朝食が食べられないとか、食事の時間が来ても食欲がわかないということになりますし、食べてとった栄養素を体の中でしっかり活用することができないので、疲れやすいとか体がだるくなるとか、いろいろな体調不良につながっていきます。

たんぱく質はとりだめできない

――食事の中身、内容について、アドバイスはありますか。

小島:
まず、ごはんやパンなどの炭水化物をしっかりとること。あわせて、たんぱく質もセットでとる。そのことで、体内時計をリセットしてスタートする力がさらに強くなります。たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品や乳製品に含まれています。朝は忙しいので、いろいろな栄養素を考えて準備するのは大変だと思いますので、まずはその2つの要件を押さえておすすめしているのが、「卵かけごはん」や「目玉焼とごはん」、「納豆ごはん」です。さらにたんぱく質を少し足すために、かつお節やチーズを載せると効果的です。

――「紫外線でダメージを受けた肌や髪が心配」という声も多いと思いますが、食事のアドバイスはどんなことでしょうか。

小島:
肌や髪の再生には、いろいろな栄養素をバランスよくとることが大事です。ここで一番大事なのは、髪の毛や肌の材料となる、たんぱく質なんですね。夏場は特に、「お昼は、そうめんや冷やしうどんだけ」とか、たんぱく質がとれていない人が多いんです。

――わかります。私も、「お昼は麺だけでも、夜にお肉や魚をしっかり食べればいいかな」と考えてきたんですが、実は問題なんだそうですね。

小島:
そうなんです。たんぱく質は、いわゆる“とりだめ”ができないんです。脂肪は体の中にたくさん蓄えることができますけれども、たんぱく質の場合はそういう貯蔵庫のようなものが体にないので、毎回の食事できちんととって、髪や肌の再生の材料をとり入れることが必要です。ですから麺だけにしないで、肉や魚、豆腐、納豆といったたんぱく質の食品を足すことが大事になります。例えばコンビニなどではサラダチキンが結構おなじみかなと思いますが、たんぱく質が多くて便利だと思いますね。スーパーで鶏の胸肉は安く手に入りますから、自分でも簡単に作れるので作っておくと便利だと思います。

夏は意外と太りやすい

――夏というと、「夏太り」という言葉もありますね。

小島:
そうですね。夏は汗をかくので太りにくいように思う人もいますが、実はそうではありません。気温が高いので、体温を維持するために消費するカロリーが少なくなるんです。基礎代謝が減って、実は太りやすくなるというメカニズムがあります。なので、「そんなに食べていないのに太ってしまった」というのは、よくあることかなと思います。

――意外ですね。というわけで、夏太りしてしまった人への食事のアドバイスをお願いします。

小島:
一番気を付けてほしいのは、甘い飲み物です。お水やお茶など、糖分を含まないものに替えていったほうがいいと思います。「お菓子などを我慢しているので飲み物くらいは……」と思われる方もいらっしゃると思いますが、市販の甘い飲み物に入っている糖分は非常に吸収が速いので、その分、脂肪に変わりやすいということがあります。
もう1つ、減量したい人におすすめしている効果的な方法は、ご自宅で食事と家事のタイミングを意識することです。

――炊事や洗濯、掃除のタイミングを意識するということですか。

小島:
そうです。そもそもの話ですが、動くことで、食べた分がエネルギーとして消費されますから、食べる前に動くより食べた後に動いたほうが、太りにくいと言えます。例えば、料理で使ったフライパンや道具を全部洗ってキッチンをピカピカにしてから食事をする人は、実はエネルギーを消費するチャンスを逃しているというところがあります。お皿洗いや片づけなどを食後に回すと、エネルギー、カロリーを消費します。ですからその順番のほうが、おすすめということですね。

――すこし休憩してから動くということで、いいでしょうか。

小島:
そうですね。ゆっくりしてから家事をするとか、ちょっとしたお散歩もおすすめです。

質問にお答えします

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「ずばり聞きます。夏に食べてはいけないものは何でしょうか。」

小島:
食べてはいけないということではないんですけれども、夏といえば焼き肉が人気ですが、できるだけたんぱく質が多くて脂が少ないものがいいので、牛タンなどは、わりとヘルシーだと誤解されている方が多いのですが脂が結構多いんです。ですから牛タンではなくて、脂の少ないロースやももを選んだほうがいいのかなと思います。

――牛タンはヘルシーだと思っていましたが、脂が多いんですね。

投稿フォーム 長野県40代男性
「大型トラックドライバーです。長距離運転と駐車場所が限られる関係で、食事が粗末になりがちです。そんな私でも取り組めるポイントがあれば教えていただけますか。」

小島:
先ほどお話ししたように「時間」が大事ですので、コンビニなどで買えるときに食事を買っておいて、できるだけ食事の時間が(日によって)ズレないように、三食の時間がバラバラにならないように、時間を意識して調整されるのが一番大事かなと思います。

――「粗末になりがち」ということに関しては、たんぱく質を意識してとる、というアドバイスでしたね。

小島:
そうですね。お弁当はたんぱく質がちゃんとついたものを買って、できるだけ(食べる)時間がズレないようにというのがいいと思います。

投稿フォーム 東京都40代男性
「平日は毎日同じ時間に起きて、ほぼ同じ生活をしていますが、休日は同じリズムでの生活ができません。これではダメでしょうか。」

小島:
休日に起床時間や朝食時間がすごくずれてしまうと、そこで体内時計も大幅にずれてしまって、週明けに体が非常に重たいということになってしまいます。例えば土日がお休みであれば、土曜日は少しゆっくり寝ていても、日曜日は平日と同じ時間に起きて同じ時間に朝食をとるというふうに調整されると、週が明けてもいいかなと思います。

――ありがとうございました。


【放送】
2023/08/30 「NHKジャーナル」

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