夏の皮膚トラブルにご注意を!

NHKジャーナル

放送日:2023/07/19

#医療・健康#カラダのハナシ

ジャーナル医療健康、今回のテーマは「夏の皮膚トラブル」です。夏は、汗をかくことで“皮膚のトラブル”が多くなる季節です。気をつけたほうがいいことや対処法を、専門家に伺います。(聞き手:緒方英俊ニュースデスク、打越裕樹キャスター、結野亜希キャスター)

【出演者】
森脇:森脇真一(もりわき・しんいち)さん(大阪医科薬科大学 皮膚科学教室 教授)

汗のトラブル

――皮膚科を受診する患者さんは、いま多いんじゃないかと思いますが、現場はどうですか?

森脇:
猛暑が続いているので、「汗のトラブル」いわゆる汗かぶれの患者さんが多いです。
汗をかくことは、体温調節に欠かせない大切な皮膚の機能なんですけれど、大量の発汗が続くと、かいた汗が皮膚にとどまり、これが皮膚への刺激になって、湿疹が生じてきます。
赤い発疹が出てきますね。かなりかゆみが増してきて、なかなか治らない状態が続きます。
たとえば、首とか背中、太った人だとお腹、女性だと胸、乳房の下ですね、汗がたまりやすくてこのような変化が生じてきます。

――このような汗のかぶれ、どう対処したらいいのでしょうか?

森脇:
基本的には、汗を大量にかいた後はすぐに拭きとることが大事です。
あとはエアコンをうまく使って皮膚を乾かすとか、外出先から帰ったらすぐに汗対策として、シャワーで洗い流すのが一番いいと思います。

――かゆみが出たり、発疹があったり、どこまで我慢していいのか、どの程度になったら病院に行くほうがいいのか迷いそうなんですが、受診する目安はありますか?

森脇:
目安は、「特に赤みが強いとき、かゆみが我慢できないとき」ですね。あとは市販の外用剤があると思うんですけど、湿疹のお薬ですね、1回2回塗っていただいて治らない場合は皮膚科へ早めにおいでいただければと思います。

アトピーと感染症

――そのほか、夏の皮膚トラブルで多いものはどんなものがあるでしょうか?

森脇:
たとえばアトピー性皮膚炎という湿疹があるんですけど、アトピーというのは乾燥肌なので、冬場に悪化する人がいるんですが、中には夏場に悪化する人もいます。
夏場は暑いですよね、湿気も高いですから汗をかくと、汗かぶれと同じような症状が生じます。特に健康な肌に比べて、アトピーの方は刺激に弱いですから、汗かぶれの状態が結構悪化しやすいんですね。もう一つは汗をかきますと、細菌が繁殖してきます。それによってアトピーの湿疹が悪化することがあります。
雑菌が増えすぎると皮膚の感染症になったりします。アトピーの人は合併症で細菌感染がありますので、夏場も気をつけたほうがいいです。

――どのように対処したらいいでしょうか?

森脇:
そうですね、帰宅したら、しっかりと入浴していただいて、保湿することが大事です。

――保湿剤はどのようなものを使うといいですか?

森脇:
夏場はべたつくのがいやなので、いまはローションタイプとか、泡のタイプがありますので、さっぱりして使いやすいかなと思います。

――汗かぶれとアトピー、かゆいのは同じで、赤くなるのも同じだと思うんですけど、汗かぶれの場合はどちらかというと乾燥させたほうがいいけど、アトピーの場合は、乾燥は大敵だということですか?

森脇:
おっしゃる通りですね。ひどくなればステロイドを使うので一緒なんですけど、汗かぶれの場合は初期だったら汗を拭くとか、エアコンのある部屋にいるとか、洗うとか清潔にすることで対応が可能になります。ただアトピーの方は湿疹がひどいですから、多くの場合は皮膚科での治療が必要かと思います。

虫刺されのトラブル

――夏の皮膚トラブル、ほかにも注意した方がいい点はありますか?

森脇:
「虫刺され」がかなり増えてきています。

――虫刺されですか?

森脇:
はい、夏はピクニックやスポーツ、キャンプなどの機会が増えて楽しい時期なんですけども、蚊・ブユ・毛虫・ハチによる虫刺されが多いですね。

特に、「毛虫皮膚炎」という皮膚炎には注意してください。
チャドクガという蛾の幼虫なんですけども、年2回繁殖して、4月から6月と、8月、9月くらいに毛虫が発生します。
チャドクガの幼虫というのは「毒針毛」といって、針のようなものを表面に持っているんですね。これが皮膚へつくことによって、すごく痛くてかゆくて、赤いポツポツがいっぱい出てきます。これは、ツバキ科の植物や、さざんかがあるような公園とかで、庭木の下で遊んだりすると、ポツポツと出てきます。
治療が厄介で、かなり強めの治療をしないといけないのが毛虫皮膚炎なんです。風に吹かれて毒針毛が飛んできますので、干していた洗濯物についたままの肌着を着たりすると、それによって刺激が生じるということもありますので注意してください。

――強めの治療をしないといけないというお話がありましたが、どんな治療が行われるんですか?

森脇:
蚊・ブユは飲み薬はいらなくて外用剤だけで治ります。ただ毛虫皮膚炎は結構炎症がきついので、飲み薬、いわゆるかゆみ止めを飲んでいただいて、あとは強めのステロイドの外用剤をお出しして治療していきます。

――毛虫などに刺された場合は対処法がありますか?

森脇:
針が皮膚についていますので、すぐにセロハンテープやガムテープなど粘着テープのようなもので、皮膚についている針をとっていただき、早めにシャワーなどで洗い流すようにしてください。

トラブルには早めの対応を!!

――夏の皮膚トラブル、どれも悪化する前に、ちゃんと治すことが大事だということですね。

森脇:
その通りですよね。汗かぶれにしても、アトピーも虫刺されも、早く対応することが大事ですし、できるだけ早く対策をすることも大事だと思います。

また、夏は特にアトピーも、虫刺されも、汗かぶれも、かきむしると爪からばい菌が入ってきて、細菌感染が生じてきます。細菌は37℃、体温で一番増えやすいんですよね。夏は一番感染症が生じますので、汗対策と、しっかり汗の皮膚トラブルを治療することですね。
あとは爪を切っていただいて、清潔にしておくこともポイントかと思います。


【放送】
2023/07/19 「NHKジャーナル」

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