佐藤二朗さん「比企能員はつかみどころのない男」【『鎌倉殿の13人』インタビュー①】

NHKジャーナル
放送日:2022/01/04
#インタビュー#大河ドラマ#映画・ドラマ
1月9日(日曜日)から始まった大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の出演者インタビューを3回シリーズでお送りします。
『鎌倉殿の13人』は、小栗旬さんが演じる鎌倉幕府の執権・北条義時がいかにして武士の頂点に上り詰めたのかを、三谷幸喜さんの脚本で描きます。
1回目は、「鎌倉殿」=源頼朝の死後、合議制で政治を動かした“13人”の1人「比企能員」を演じる俳優の佐藤二朗さんです。俳優業以外の活動も盛んな佐藤さんは、比企能員という人物をどのように捉えているのでしょうか。(聞き手・岩本裕ニュースデスク)
【出演者】
佐藤:佐藤二朗さん(俳優)
鎌倉殿の13人
日曜日 総合 午後8時/BSP BS4K 午後6時
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一筋縄ではいかない「比企能員」役
――佐藤さんといいますと、非常に楽しい演技を皆さんよくご存じだと思うんですけれど、今回の『鎌倉殿の13人』の比企能員、歴史的には「くせ者」ふうな感じのイメージがあります。その辺いかがですか?
佐藤: |
「くせ者」とか、そういうことはあまり意識せず、とにかく三谷さんが書く本を見てから考える感じですかね。 ただ、「頼朝が亡くなったあとに、野心をあらわにする」ということを聞いているんです。
堀内敬子さん演じる道という奥さん、それから草笛光子さんが演じているお母様(比企尼)との間の板挟みみたいな感じのシーンが序盤にちょっとあったんだけど、三谷さん的には「のちに野心をむき出しにする人」なので、「あまり分かりやすく“マスオさん”みたいなことにはしないでほしい」と言われています。 撮影のときにそう連絡があったので、そういう点も踏まえて今は、とらえようがないというか、つかみどころがない感じでやっている感じですかね。 |
――佐藤さんに「演技派」と言うと怒られそうなんですけれど…。
佐藤: |
民放の某番組で林修先生にも言われて…これははっきり言っときますけどね、あれは酔っ払ってツイートしました(笑)。
何日か前に、テレビで確かに「演技派俳優」というテロップを目にして、晩酌しながら「お母さん、これはさすがにないわなあ」って半笑いで言ったんです。 そしたら妻に「間違ってもツイートに書いちゃダメよ」と言われ、「そんなわけないじゃん。そんな面倒くさいこと、書くわけない」って言った3日後に、酔っ払ってツイートしてしまって、めちゃめちゃ後悔しているんです。 あれははっきり申し上げて…これ、ご存じない方もいらっしゃるでしょうけれど、なぜ私が説明するんですか(笑)? |
――佐藤さんが説明したほうがおもしろいですよ。
佐藤: |
「演技派俳優」というテロップを目にして、私は「それはないんじゃないか?」みたいなツイートをしたんです。僕もあまり思い出したくない…。 |
――「演技をしているんだから、何が“演技派”俳優だ!」と。
佐藤: |
そんなに強い言い方はしていません(笑)。 プロゴルファーに「ゴルフ、うまいですね」って言わないし、プロ野球選手に「野球、お上手ですね」と言うのはどうかと思うじゃないですか。そういうようなことなんですけど。
ただ、今はっきり言いますと、それは全部こちら側、つまり僕ら側の問題であって、どういう肩書で皆さんがお呼びになるのかは自由だし、そこまでいちいち目くじら立てていたら、僕が――というか、酔っ払っていたから…。 なので、皆さんに申し上げたい。ラジオをお聴きの皆さんも、どんどん「演技派俳優」と言ってください。それはうれしいですし、皆さんが褒めている意味で使っているってことも百も承知です。 |
――「演技派俳優」としてよく知られていて、ものすごい狂気を持ったものも、ほんわかした『幼獣マメシバ』みたいな役まで、いろいろなものをこなしてこられましたけれど、キャリアの中でも今回の役というのは、位置づけとしてどうですか?
佐藤: |
正直、今のところはまったく分からないです。大河ドラマって、皆様ご存じのように、たくさん人が出ますので、比企能員がどういう人か、つかみどころのない感じ。 ただ、「頭は悪くない」というつもりです。さっき申し上げたように、三谷さんの本をいただいて見てから…って感じでやってますね。今のところは。 |
俳優業のほかの仕事は「別腹」
――佐藤さんといいますと、映画監督でもありますし、脚本家として、私の初恋の相手である火田七瀬を書いていたり…。
佐藤: |
筒井康隆先生の(『家族八景』の)火田七瀬ね。 |
――ものすごい才能ですよね。そして今はMCもやっているじゃないですか。
佐藤: |
あれはMCではないんです。<99人の壁>に関してはクイズ闘技場の“主宰”、そして<歴史探偵>は“所長”です。MCではございません。 |
佐藤: |
MCというのは、才能豊かな…僕なんか及びもつかないような才能の方々がやるものであって、僕はチャラチャラした頼りない“主宰”、頼りない“所長”を演じているだけでございます。 |
――そういったいろんな経験を含めて、“役”として分析していくということ?
佐藤: |
全部、別ですよね。演じるとき、よく言うんですけど、演じる欲求というのはもちろん俳優ですからすごくあるんですけど、「別腹」。 取材でも常に「別腹」、記者さんにも「別腹」と。ことばを変えないでください。僕的には「別腹」が一番しっくりくるんです。「別腹」で書く欲求があるんですよ。
演じることだけに専念したほうがストイックだし、いいと思うんだけど――僕、「マルチ」ってことばよりも「職人かたぎ」ってことばが好きなんで、そういう意味ではイヤなんですよ――だけど、どうしても自分の要求として「別腹」であって、しょうがないって感じですね。 |
――そういう体験が、逆に役者として――つまり、脚本が何を考えていて、監督が何を考えていて、それに対してどう応えていくか、という演技プランを立てるために、役に立つんじゃないですか?
佐藤: |
いや、どうだろう。それはないと思います。演じることに集中していることのほうがいいと思います。別なんです。 |
――ことし1年の佐藤さんの目標はありますか?
佐藤: |
今、監督3作目の脚本を今書いているんです。別に、誰に頼まれたわけでもなく、自分で書きたいから書いてる。書いたらプロデュースしようかなと思ってるんです。 そういうことを――要するに、そのつど本気で自分がやりたいことを――「素直に」というか、「気の赴くままに」というか、やりたいことをちゃんと一生懸命やって、2022年の師走に「ことしもなんとか必死に生きられた!」というような年にしたいです。 |
【放送】
2022/01/04 NHKジャーナル ジャーナル特集「鎌倉殿の13人 佐藤二朗さん語る」
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