13歳の中学生がつくりだしたみんなの居場所

24/05/13まで

眠れない貴女へ

放送日:2024/05/05

#インタビュー#読書#コロナウイルス

川の図書館館長で高校3年生の熊谷沙羅(くまがいさら)さんに、コロナ禍で大好きな図書館にもいけず、やりたいことが何もできなかった日々のこと、そんな中でアメリカで見た「リトル・フリー・ライブラリー」を自分たちもやってみたいと思って弟と2人で動き出したこと、両親の後押しがあって多摩川の河川敷で「川の図書館」を始めたことなど、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
熊谷:熊谷沙羅さん(ゲスト)
和田:和田明日香さん(ご案内)

熊谷沙羅さん

【熊谷沙羅さんのプロフィール】
2006年、東京生まれ。両親はベネズエラ出身。コロナ禍を機に、13歳のとき発案した「川の図書館」を2020年4月に東京都調布市内の多摩川河川敷でスタート。本の交換を意味するBook Swapから「Book Swap Japan」と名付けて、持ち寄られた本や寄付された本を無償提供する活動はSNSを通じても広がり、調布の他にも全国各地で分館づくりが進んでいる。さらに、商業施設や商店街の活性化のために出張企画も実施するなど、活動の幅を広げている。

コロナ禍で失ってしまったみんなの居場所を取り戻したくて

和田明日香さん

和田:
沙羅さんが立ち上げた川の図書館はコロナ禍の時に発案されたとのことですが、アイデアとしてはずっと頭の中にあったんですか?

熊谷:
そういうわけではなくて、初めてコロナで学校が休校になった時に、いつも利用していた図書室は当然閉まって、近くの図書館も休館になってしまって。ひとつ年下の弟がいるんですけど、お互いすごく本が好きなんですが、なかなか本を買うような家庭ではなくてずっと図書館に通っていたので、図書館が閉まるっていうのが私たちにとってはすごく大きなことで、コロナ禍はそれが一番困りました。

和田:
図書館に行けなくなっちゃってどうしようってなったんですね。そこから川の図書館を発案するまでにはどんな経緯があったんですか?

熊谷:
最初は2人ですごく困ってて、近所の友だちの家とかに遊びに行って友だちの本棚をあさって本を読んでいたんですけど。それだけじゃなくて、例えば、いつも図書館で見かけていた親御さんだったりだとか、新聞を広げていたおじさんとか、私たち以上に困ってる人たちっているんじゃないかなって少しずつ発想が変わっていきました。で、そこから周りの人たちももっと困ってるんじゃないかなと思って、その時に思い出したのが、アメリカで見たリトル・フリー・ライブラリーでした。リトル・フリー・ライブラリーは、公園とか図書館の前とかに小さい木箱みたいなものが設置してあるんですけど、その木箱の中に本が20冊ぐらい入っていて、その本の中から好きな本を何冊でも持って帰ることができて、返してもいいし、返さなくてもいいし、好きな本を入れたかったら入れてもいいし。そういう活動を見て、あ、今コロナだし人となかなか会えない時期に、本を交換するならこれがちょうどぴったりだなって思って。一番最初は調布市内でリトル・フリー・ライブラリーが作りたかったんです。

和田:
自分たちが図書館に行けないっていう不満だけで終わらずに、そこに来ていた人たちのことまでを思えるっていう、そこがまずすごいなと思うんですけど。図書館でその人たちに挨拶をしたりとか、お話をしたりはしてなかったわけですよね。ただ見かけてただけだけど、あの人たち今どうしてるんだろうっていうところまで気持ちがまわったっていうことなんですね。

熊谷:
そうですね。でも当時13歳と12歳の兄弟からしたら図書館が閉まるっていうのが、それだけすごく大きなことだったんだなっていうのが、4年たった今でもすごくよく覚えています。

和田:
なるほど。そのアメリカで見たリトル・フリー・ライブラリーっていうのは、ご家族で旅行した時に見てたんですか?

熊谷:
そうですね。リトル・フリー・ライブラリーって、自由に本が持っていけるのももちろんそうなんですけど、本を屋外に持っていくっていうアイデアがすごくおもしろいなと思っていて。その後の川の図書館の話にもつながるんですけど、なかなか日本って本はやっぱり建物の中にある印象が強いと思うんですが、それを外に持っていくっていうその斬新さにすごくひかれて。こんな時にそのアイデア、自然と本との融合っていうのをすごい魅力的だなって感じました。

やりたいことを形にするために中学生が企画書を作って市役所へ

和田:
では実際に川の図書館を立ち上げるために最初はどんなことから始めたんですか?

熊谷:
一番最初は両親に相談しました。相談して、お父さんには連絡手段としてGmailとTwitterを作ってもらって。お母さんには小さいパンフレットと、川の図書館の旗みたいなのを作ってもらって。で、私と弟は小さいキャンピングカートを近所に引いてまわって、25軒ぐらいですかね、ご近所さんをピンポンしに行って、こういうことがしたいんですけどいらない本ありますか? っていうのを聞きに行きました。
でもやっぱり最初は皆さん抵抗ありましたね。なんか押し売りされてるのかなって、結構抵抗されてた方いらっしゃるんですけど、でもそこで諦めなくてよかったなって思いますね。そこから70冊の本を集めることができました。

和田:
すごい! じゃあその集まった本を実際にリトル・フリー・ライブラリーを目指して、調布市に「やっていいですか?」って言いに行ったんですか?

熊谷:
そうです。最初はリトル・フリー・ライブラリーをやるために調布市の市内の公園を管理している緑と公園課っていう課があるんですけど、そちらの方に。中学校1年生の女の子がリトル・フリー・ライブラリー、こういうのだからやりたいんですっていう6ページってすごいちっちゃい文書ではあるんですけど、ドキュメントを作って。当時アポを取るとかそういうのを知らなかったので、市役所に行って、緑と公園課にこういうのがやりたいんですって言いに行ったのが一番最初です。

和田:
どういう反応でした?

熊谷:
コロナのこともあって、調布市内もいろいろあって、最初は戸惑っていて。でもその後すごい丁寧に対応してもらって、じゃあ会議通して1週間後に対応しますねっていうのがありました。で1週間後お電話いただいて、その時に法律上リトル・フリー・ライブラリーって公共の公園では設置できないんですけど。当時そういう話は全然なくて。緑と公園課からお話いただいたのが、できない理由が3つあると。ひとつは無人だっていうこと、人がその場にいないっていうこと。もうひとつは管理する人がいないっていうこと。で最後に責任を取る人がいない。この3つがあって、本の責任も取れないし、リトル・フリー・ライブラリー自体の責任が取れないから調布市内では設置できません。っていう話を一番最初にいただきました。で、13歳の私は反抗期でして(笑)すごい辛くてすごい悔しくて。なんでアメリカではできるんだけど、日本ではできないんだろうっていう、そういうモヤモヤがすごくあって。でそれを両親に相談したら「そんなの簡単じゃない。そんなの逆やればいいんでしょう。」っていう話になって、無人がダメだったら有人でやればいいし、人がいるところでやればいいし、管理する人がいなければ私たちが管理すればいいし、本の責任も私たちで取ればいいじゃないって話になって。

和田:
そうか、残念だったね、で終わらなかったんですね。

熊谷:
そうですね。だからその思考の転換がすごく大きかったかもしれませんね。で、それも踏まえて、リトル・フリー・ライブラリーの自分が魅力と感じたところ、自然だったり、その屋外だったりオープンスペースだったり、その自由さを取り入れたまんまやろうって話になって。それが川の図書館に行き着きました。

本も人もみんなが集まる地元のコミュニティに

和田:
その沙羅さんの川の図書館を動画で拝見したんですけど、河川敷だから本当に空間としてもとっても気持ちがいいですし、いろんな本がおしゃれな木箱の中とかにズラズラと並んでいて、本当に皆さんワイワイと集まってきて、その場で本を読んだりとか、本を読まなくてもお話してたりとか、楽器演奏する方がいたりだとか、沙羅さんもね「あ、〇〇さんおはよう!」みたいな感じで、いろんな方に挨拶したり話しかけたりとかされていて、なんか図書館っていう名前がついてますけど、図書館って今までこう静かにしなきゃいけない場所だったりとか、お互いの過ごしている時間を尊重し合う、ちょっと悪く言うと気を遣わなきゃいけない場所だったりってイメージがあったんですけど、そういうイメージとは全然違う、本当ににぎやかなコミュニティーがそこにあるみたいな感じで。普通の図書館とはちょっと違いますよね。

熊谷:
そうですね。おっしゃる通り、図書館っていう名前はついているものの、普通の図書館とはちょっと違っていて。親御さんとか小さいお子さんがいらっしゃるご家庭にいつも楽しみだよってすごい言われますね。で、やっぱりせっかく本好きが集まってる空間なので、本の話とか、この作家さんすごいおもしろいよとか、この本のエンディング最高だよとか、なんか全然知らない人たちでも本を介してそういう小さい会話が始まるので、すごい本好きにも、本はまだあんまり読んだことないけど読んでみたいなって思ってくださってる人にも、とっておきの場所になってます。結構、私は同世代で本好きの友だちを見つけるのがすごい大変だったので、なんか私も小学校とか中学校の時に、本好きと集まれる場所があったらよかったなぁなんて思ったりしますね。

和田:
本にも出会えるし、人にも出会える素敵な場所ですよね。なんかルールとかってあるんですか? こういう本は持ち込んじゃダメとか、来るんだったらこういうことしなきゃいけないとか。

熊谷:
特にないです(笑)。ルールがあればなんかこう堅苦しい思いがしちゃうと思うので、なるべくのびのびとやってます。
開催も、雨が降ってない限りと、私が忙しくなければ、毎週日曜日の午前10時から12時まで。2時間っていう短い時間ではあるんですけど、毎週暑い日も寒い日もやってます。

和田:
ルールを作らなくても、皆さんのマナーで保たれてるっていうのがすばらしいし、みんなにとって大事にしたい場所なんだなっていうことが伝わりますよね。常連さんみたいな方もいらっしゃるんですか?

熊谷:
います、たくさんいます。あと何人かですね、今まで司書さんのお仕事をしてたりとか、本にまつわる仕事をしていたお母さんたちとかが地元にいるんですけど、そういう人たちが毎週川の図書館で自然と本の整理だったりだとか、あ、この本ちょっとダメかもって本を抜いてくれたりするので、そういう方には私から川の図書館認定司書っていうのを勝手に設定しています(笑)。川の図書館はそういう皆さんのご厚意でサポートしてもらっているような感じがしますね。

和田:
実際に川の図書館をやってみて、記憶に残ってるうれしかった声とか出来事とかありますか?

熊谷:
そうですね。本当に毎週地元の方もそうなんですけど、全国いろんなところから足を運んでくださる方がいらっしゃるので、いろんな人たちに会うんですけど、川の図書館のもうひとつすごい好きなところは、毎週、あ、先週と今日同じだったなっていう回がまったくなくて。来る人も違えば多摩川っていうロケーションもいいのか、季節で桜が見えたり、紅葉があったり、青々とした葉っぱがあったり、そういうので変化があるので、すごい毎週いろんな方がいらっしゃるんですけど、やっぱり東京ってすごく忙しいところでもありますし、調布もちょっと外れているところではありますけれど、なんだろうな、今週すごいお仕事頑張って、日曜日を毎週楽しみにね、来てくれる方がどれだけいるのかって、すごいうれしくなります。私もそうですけど、日曜日に川の図書館をやって月曜日頑張ろうっていう気持ちに本当になれるので、ひとりでも多くね、笑顔で帰っていただけたらうれしいなと思います。

和田:
もちろん本を通じて人とつながれる場所でもあるとは思うんですけど、不思議だなと思うのが、本を持ってこなかったり、そこで本を読まなくてもOKだったり、ルールがないとおっしゃってるぐらいなので。なんかこう人が集まってるって、それだけでホッとするのかなとすごく思いました。川の図書館に行けば沙羅さんがいて、その本を目当てに来る人もいれば、なんとなく楽しそうだからって寄ってきてる人もいて、なんかそこに行きたいなって思う気持ちってなんなんだろうって考えてたんですけど、やっぱり人が集まってるって、ワクワクが生まれたりとか、ほっとするような空気が流れたりとかしてるんですかね。

熊谷:
特に東京だと、今それぞれ個々で生きていられるタワマンとかいっぱいあって、個々で生活ができるような世の中になっているので、ご近所さんの顔は知ってるけど名前は知らないとか、なかなか声をかけたことがないかもって。コロナとかそういう以前の問題だと思うんですけど。だからやっぱりこういう小さい近所でみんなで地元の人たちが集まれる場所、地元の情報を共有したりだとか、あそこに新しいパン屋さんできたよとか、そういう小さいことでも全然大丈夫なので、そうやって地元の人たちの心の距離をギュッと近づけるような場所でも、川の図書館はあるんじゃないかなと思います。

番組からのメッセージ

  •  ♪ 川の図書館には何もルールはないけれど、熊谷家のファミリールールはとてもユニークでハード。それでも、お母さんの言うことはいつも合っているし、難題にぶつかっても逆転の発想で解決方法をアドバイスしてくれるからついていこうと思う、という熊谷さん。将来何をするのか迷っているけれど、今目の前にあることに集中して、ひとつひとつ解決していくことが一番大事だと思うとおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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24/05/13まで

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24/05/13まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    5月のテ-マは「マイルール」です。新年度が始まって作った新しい決め事や、長く続けているルーティンなど、あなたならではの「マイルール」にまつわるエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

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【放送】
2024/05/05 「眠れない貴女へ」

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