動物に優しい世界、ひいては人間同士も優しい世界であってほしい

24/05/06まで

眠れない貴女へ

放送日:2024/04/28

#インタビュー#どうぶつ

獣医師で動物行動学専門医の入交眞巳(いりまじりまみ)さんに、動物が好きになった子どものころのこと、獣医師になって働き始めてぶつかった壁、アメリカに留学して出会った魅力的な恩師と新しい学問についてなど、興味深いお話をたっぷり伺いました。

【出演者】
入交:入交眞巳さん(ゲスト)
村山:村山由佳さん(ご案内)

入交眞巳さん

【入交眞巳さんのプロフィール】
1967年、東京都出身。日本獣医畜産大学を卒業後、都内の動物病院で勤務。その後、アメリカの大学で獣医行動学を学び、専門医としての資格を取得。帰国後は獣医行動学の専門家として大学や動物病院で勤務。現在、東京農工大学ディープテック産業開発機構特任准教授を務めるほか、猫にまつわる著書「猫が幸せならばそれでいい」を発表したり、インターネットで猫の飼い主向けの悩み相談を担当している。

運命的に出会った猫たち

村山由佳さん

村山:
はじめましてになりますけれども、入交さんは獣医師や動物行動学者として活躍されながら、猫好きということもあって、猫にまつわる著書「猫が幸せならばそれでいい」を発表されたり、インターネットで猫の飼い主の方向けのお悩み相談を担当していらっしゃいます。おうちでも猫を飼ってらっしゃるんですよね。どんな猫ちゃんなんですか?

入交:
今一緒に暮らしているのは「フラの助」という名前で、本名は「フラッフィー」なんです。小さい時はフワフワしてたのでフラッフィーといわれていたんですが、なんかだんだんツルッ、スベッって、日本男子みたいになってきたので「フラの助」でいいかなみたいな感じで、今「フラの助」と呼ばれています。とても小さい男の子なんですけれども元気な子です。

村山:
その前にも飼ってらっしゃったんですよね?

入交:
そうなんです。その前は「海の進(かいのしん)」なんですけれども、この子は実は動物病院で供血猫といって、病気の子たちに血を渡すお仕事をしている猫ちゃんでして。ある程度の年齢がくると引退するんですね、そのお仕事を。で、海ちゃんの場合は、ちょうど甲状腺の病気も発症してしまいまして、おうちを探していたところに、私もその前の先代の「小太郎(こたろう)」くんが亡くなったちょっとあとだったものですから、さみしいなと思ってた時に、海ちゃんが次のおうちを探しているということで、これはきっとコタちゃんがいいよって言ってくれたんだなと思って海の進くんを迎えました。

村山:
運命ですね。

入交:
はい。海ちゃんちょうどおトイレの問題がありまして、大学からうちに入れるのに、学生さんがたまに預かっていくとおしっこだらけになってしまって難しい子だっていうのは聞いていたので、そんな理由もあってうちへご縁をいただきました。で、その海ちゃんの前に小太郎くんがいたんですけれども、小太郎くんも車にひかれてケガしたところを学生さんが連れて治療して、で、治ったはいいけど、これ誰の子? ってことになりまして。じゃあうちにいいよって。私、猫を飼ったことがなかったので、初めて自分で猫を飼うっていうことをやったのはいいんですが、ペット不可のアパートに住んでいたので「ないしょ~」っていってこっそり飼い始めて、慌てて引っ越しました。

村山:
うちも6匹猫いるんですけどね。いつの間にやら、うちでお産しちゃったり、なんでだかうちで面倒見ることになっちゃったりっていうので、ちょっと6匹になってしまって。今夜はその猫のお話や、そして獣医師、動物行動学のお話、伺っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

入交:
よろしくお願いします。もう猫の話なら何時間でも!

獣医師としての挫折からアメリカへ

村山:
入交さんは、もともと子どものころから動物がお好きだったんだそうですね?

入交:
はい。もう本当になぜか動物にすごく興味があって、大好きで。ただ、家では動物を飼っていなかった、飼わせてもらえなかったっていうのがありまして。で、ピアノを習ってたんですが、ピアノの先生のところにやっぱり猫がたくさんいて、子猫ちゃんもいて、もうピアノというよりは猫に会いに行っていた。で、私は実は猫のアレルギーがありまして、ピアノ行って帰ってくると、なぜか結膜炎とカイカイでひどい状態になって、なんでだろうって親は思ってたらしいんですけれども、おそらく猫とさんざん遊んできっと手を洗わずに…、だったんでしょうね。猫にアレルギーがどうもあるらしいっていうので、ますます猫を家では飼わないほうがいいっていうことで、非常に動物を飼いたいけれども飼えないっていう状態だったんですが。なにしろ動物を見ることも好きだし、動物を観察して何をやってるんだろうって考えるのが好きで。で、そういう子どもだっていうのをたぶんいろいろな人が見てくださっていて、弟のお友だちのお父様が大学の研究所にお勤めで、動物好きそうだからってネズミを持って帰ってきて私にくれて、ネズミ飼っちゃってたりとか、アリを持ってきてアリを家の中で飼ってたり、ペット飼えないならっていう感じで。

村山:
瓶か何かに入れて?

入交:
はい、そうなんです、瓶に入れて。巣ができる。そんなのをやってたりして。なんか常に動物といたいし、見てるのが好きっていう、そんな子どもでした。

村山:
好きなのに飼えないってつらいですよね。
でもそこから動物に関わるお仕事がしたいということで獣医師になられたわけですが、獣医師になられた最初のお気持ちってどんな感じだったんですか?

入交:
最初はなにしろ動物の仕事というか、勉強がしたい。で、ペットがそんなに身近にいなかったものですから、獣医さんの仕事ってあんまりよくわかってなかったんですね。ただ動物の勉強がしたいからっていうことで本を読んでると動物行動学っていうのがあって、ローレンツっていう博士が野生の動物を追っかけて観察しているので、それの勉強がしたいって思ったんですが、それをするためには大学院に行かないとダメだよって、大学見学というか、いろんな方に伺うと、学部生というよりは院生まで行かなきゃいけないから、学部は生物でもいいし、獣医学でもいいし、何でもいいよってアドバイスいただいて。で、それを信じて生物学とか獣医学とかと動物行動の何か心理学の分野とか、手当たりしだい受験をしてしまって。で、結局通ったのが獣医学部だったので、獣医になりたいっていうよりは、動物に関わる何かを将来したいから、きっかけが獣医学だったっていう、そんなレベルだったんです。本当に獣医さんになりたいって方にはとても失礼な入り口かもしれない。

村山:
いやいやいやいや。入り口はね、どこから入っても、でも今の道につながってたと思うと感慨深いですね。

入交:
そうですね。お天道さまが見ててくださったのかもしれないんですが、でも獣医学を始めたらおもしろいなって思うようになりまして。その大好きな動物の苦しみを取ってあげる獣医さんになりたい、いい獣医さんになりたいなんて思うようになってきまして。それで卒業してから、獣医さんて本当に獣医学を勉強するといろんな仕事が実は開かれているので、何になりたいかなっていうのはすごく悩んだんですけれども、結果的に臨床という、いわゆる動物を治すお医者さんのお仕事を選んで、それも牛とか馬とかではなく、犬や猫っていうほうにかじを切ってお仕事を始めたっていう。

村山:
なるほど。でもそこから今度は勤務を離れてアメリカへ渡られるわけですよね? その動物行動学を学ぶためにということだったんですか?

入交:
実はですね、その勤務を始めたいわゆる町の獣医さんだったんですけれども、当時は大学もだったんですが、本当に女性が少ない世界でして、大学のクラスメイトもほとんどが男の子っていう状態だったんですね。で、女性がそれで就職をすると、やっぱりほとんど男の方の社会なわけですから、獣医さんっていうのは男性、女性は看護師っていう、当時です、そういうやっぱり認識があるようでして。働き始めても、例えば私が「きょうどうされました?」なんて言って体温計を入れようとすると「お姉ちゃんは触らないで」。「あたし獣医です」ってちょっとけんかするのはおかしいので、「院長呼んできて」って言われたら「わかりました」って言って院長呼んでくる。あるいは男性の先生をお呼びする。で私は押さえている。あるいは床を拭く、掃除をするっていうのが結局もう日課になってしまって。で、やっぱりそれは世間の見る目で私がどうしようもないですし、私は男になれないですし、これはつらいなと思って、じゃあ女性が輝けるには…。

で、当時、結局表に立つと嫌だって言われてしまうかもしれないので、裏で私しかできない裏方のお仕事をしようと思いまして、いろいろまず考えたのが、例えば、獣医師が海外からいろんな情報を持ってこられるように、通訳とか翻訳っていうのもすごく必要なものだったので、獣医学の中の通訳や翻訳をやってもいいなと思って通訳学校も通ったりとか。あとは、その臨床の現場では裏方っていったら、やっぱりレントゲンを読むこと。で、レントゲンを私が日本一ちゃんと読めれば、きっとそれはつながるし。あるいは臨床病理っていって細胞を見る仕事、例えば、血液をひいて顕微鏡で見て読んで伝えるほうの仕事だって私ができるかもしれないとかいろいろ考えていて。で、専門をしっかり確立すれば、私は裏方でちゃんと認められる。患者様はしょうがないけれども、分野の中で女性として、後輩のためにも、女性としてちゃんと獣医師として働くと思ったら何か強みをと思って。じゃあ特別な勉強がしたい。その専門にやりたい。特にレントゲンという画像診断っていうのがすごく興味があって。当時、行動学は最初からですけれど、その時すごく持っていたので、じゃ、レントゲンを読む専門の勉強をしたいっていったら、それはアメリカに行かなきゃなかなかできない。海外にはそういう専門医のシステムがある。日本はないけどっていわれて、じゃあ行く! っていう感じでアメリカに憧れを持って行ってしまいました、無謀にも。

村山:
なるほど。とことんやっぱり観察っていうことにものすごく気持ちが動かれるのがあったのかな。

入交:
なんかこう、手術して切り刻むよりは、観察してベストを見つけるみたいな。そっちに興味がどうもあったようですね。

村山:
はい。引き続きお話を伺いたいんですが、ここで1曲、入交さんのお気に入りの曲をお送りしたいと思います。落ち込んだりした時に勇気づけてくれる曲をお選びいただきました。どんな曲でしょうか?

入交:
はい。SMAPの「世界に一つだけの花」を今回リクエストさせていただきました。で、なぜかと言いますと、私、どうしてもやっぱりすぐ弱気になってしまって、人と比べちゃうんですよね。あの人あんなにやってるのに私だめだとか、結構ネガティブな発想にグルグルグルグルっと落ちていってしまって、もう無理だみたいになってしまった時に、やっぱり人と比べるんじゃなくて、私しか持ってない、あるいは私だからできる、別にトップじゃなくてもいい、私ができることをちゃんとやらなきゃだめだよねって自分に言い聞かせる。実はこれアメリカで出会った曲なんです。日本のお友だちが送ってくださって、初めて聞いて「オォ!」って思いまして、ずいぶん勇気づけられました。なので、きょうリクエストさせていただきました。ではお聞きください。SMAPで「世界に一つだけの花」。

♪ SMAP「世界に一つだけの花」

番組からのメッセージ

  •  ♪ ご自身も猫と一緒に生活していて、猫のさまざまなお悩み相談に「私のうちもおんなじですよ~。」と答えることが多いという入交さん。動物に優しい世界であってほしいし、そのことはひいては人間同士も優しくなれて平和な世界につながると思うので、そんな世の中であってほしいとおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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24/05/06まで

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24/05/06まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    5月のテ-マも「マイルール」です。新年度が始まって作った新しい決め事や、長く続けているルーティンなど、あなたならではの「マイルール」にまつわるエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

おたよりはこちらから


【放送】
2024/04/28 「眠れない貴女へ」

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