祖国を離れて初めて気づいたパラグアイの伝統工芸ニャンドゥティの魅力

23/10/09まで

眠れない貴女へ

放送日:2023/10/01

#インタビュー#ワールド#カルチャー

パラグアイで生まれ育った日系2世の岩谷(いわたに)みえエレナさんに、ニャンドゥティに興味を持ったきっかけ、ニャンドゥティがどうやって生まれたのか、またその特徴や美しさの秘密など、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
エレナ:岩谷みえエレナさん(ゲスト)
和田:和田明日香さん(ご案内)

岩谷みえエレナさん

【岩谷 みえ エレナさんのプロフィール】
南米パラグアイのラ・コルメナ生まれ、日系二世。日本人の夫の転勤に伴い、アルゼンチンとパラグアイに暮らす。パラグアイでニャンドゥティを習得し、現在は日本でニャンドゥティを広めるべく、さらにニャンドゥティを育んだパラグアイの文化・伝統の普及活動に取り組んでいる。
日本ニャンドゥティ協会 代表理事、パラグアイ国立伝統工芸院(IPA)認定指導員。

「クモの巣」を模したレース編み

和田明日香さん

和田:
今月から番組のハピネスミュージックコーナーが「習いごと」をテーマにお送りしていますが、もしかしたら刺しゅうを習ったりされている方の中には、ニャンドゥティをご存じの方もいらっしゃるかもしれません。でも初めて聞いたという方のほうが圧倒的に多いですよね。ということで、まずはパラグアイの伝統工芸ニャンドゥティとはどういうものなのか、伺いました。

エレナ:
ニャンドゥティというのは、クモの巣という意味のレース編みです。もともとはスペインのカナリア諸島のテネリーフレースから伝わったと言われています。大体16世紀半ばぐらいと言われているんですけどもはっきりしたことはわかっていません。ニャンドゥティというのは、最初は白い色だったんですけども、いつごろからカラーになったのかわかりませんが、パラグアイに入ってからカラフルになっていったんです。独自のやり方と独自の編み方を編み出していきまして。で、パラグアイでは、自然を見て、そのいろんな模様を編み出していったと言われていまして。例えばとても面白いんですけども、「牛の足跡」だったり、「やぎのしっぽ」だったりですね、また面白いのは「ダニ」までモチーフにしてしまいまして。でも「ダニ」って言ってもとてもかわいらしい、モチーフを見るととってもかわいいです。

「ダニをモチーフにした模様(350種類以上ある型のひとつ)」

また、大きなマンゴーの木の下とかで、みんな午後になるとねサーッと集まってきて、2時ごろから大体2時間ぐらいみんなですごい楽しく、大声で笑いながら作ってるんですね。で、そこで私も一緒になって習ってくるんですけども、「どうしてこんなにカラフルなの?」って聞いたら、「クモの巣を見たことある?」って言われて。「あれ? クモの巣って、でも白くない?」って言ったら、「ちゃんとお日様をめがけて見てごらんなさい」って言われて。実家の森の中をガサガサ朝早く起きて、お日様が出てきてお日様を浴びてるクモの巣を探してたら、本当に虹色に輝いてて、うわぁと思ってすごい感動して。あ、本当だと思って、本当にニャンドゥティみたいだと思って。そっか、ここからこの素敵な色が出たんだなぁと思って。それからクモの巣を見るようになったら、本当にクモによって色が違うんです。すっごいきれいなんですね。で、クモの巣を張って集団で住むクモがいるんですけども、その強い糸で、昔はニャンドゥティも作ったし、靴下も編んだっておっしゃってました。今はもう普通の糸で、綿100%でないと浸透しないんですね、のり付けをしてちょっとパリッとさせなきゃいけないので、綿100%でないとこうパリッときれいにならないんです。ナイロンとかそういうのでやる場合は綿と混ぜて使いますね。

お日様の光を浴びて輝くクモの巣(東京・光が丘公園にて)

さまざまな色と柄を組み合わせたニャンドゥティ

和田:
ニャンドゥティ、皆さん想像できましたか? クモの巣からできたとおっしゃってましたけど、本当に細いクモの糸みたいな糸をこう丸い中に何度も何度も縫って模様にしていって…説明が難しいのでぜひ本物を見ていただきたいんですけど、すっごくかわいいです。色も本当に南米の、鮮やかでもあり、華やかでもあり、色の組み合わせがとってもかわいいです。エレナさんもいくつかモチーフのことを教えてくださってましたけど、「牛の足跡」とか「やぎのしっぽ」、「ダニ」までモチーフにしちゃうっていうね。私が見てて好きだったのは「でべそ」とかね、「田舎のほうき」なんていうのもあって、なんでそれを刺しゅうにしようと思ったのかなっていう。いや、そもそもクモの巣を見て、きれいだなって思う心の清らかさを私は持ち合わせてないなって思っちゃいましたけど。そのクモの巣の写真もエレナさんが撮ったものを見せていただいたんですけど、実際にこうお日様の光を浴びているクモの巣が本当にね、虹色なんですよ。もうびっくりしました。シャボン玉って言ったらいいのかな、あの太陽の七色の光をきれいにこうグラデーションにして反射していて。クモの巣も見方によってはこんなにきれいに見えるんだっていう、パラグアイのニャンドゥティを作られている方たちの心の清らかさを知った気がします。

日本に来て芽生えたニャンドゥティへのあこがれ

和田:
ニャンドゥティは、パラグアイでは女性の手仕事として受け継がれてきました。パラグアイで生まれたエレナさんですが、ニャンドゥティを習い始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

エレナ:
最初に見たのが確かおじの家だったと思うんですね、子供のころ。でもそんなに一般的じゃなくて、もしも私が習いたいと思ったら、イタグアっていう街がありまして、首都から大体35kmぐらい離れてるんですけど、そこに行かないと習えなかったんですね。まぁ習うチャンスは全然なくて。で、夫がたまたま日本人で、日本に来て、転勤族だったんです。それでたまたま2006年から2010年にパラグアイに転勤になったんですね。よーし、やっとニャンドゥティが習えると思って。そして首都アスンシオンに住むことになって。そしたらそこで教えてらっしゃる方がいて、すぐに習い始めました。で週1回4年間習ってきて、で日本に帰ってきていざ教え始めたらわからないことだらけで。2012年からかな、もう直接現地の方のところにホームステイして習い始めたんですね。

実を言うと、まあ誰もがそうかもしれませんけども、自分の国を遠く離れて初めて、自分の国の良さをわかるというか、パラグアイにいた時はそんなに、習いたいとか、そういうのはあんまりなかったんですけど、まあ子供の時にちらっと見て、あれなんだろう? みたいな感じだったんですけど。やはりこの日本に来て、改めてお土産とかに買ってきて自分で見て、「うわ、本当こんなに美しかったんだ」とか、こんなにいいものがパラグアイにあったんだって、習いたいなみたいな感じで。そうですね、お土産に自分で買ってきてみてやはりそう強く思いました。

番組からのメッセージ

  •  ♪ 最近になってパラグアイの伝統工芸品として国から認められたニャンドゥティですが、職人は高齢化が進んでいて継承していけるかどうかが不安、というエレナさん。日本人は手先が器用でアクセサリーなど新しいものを作っている人も増えているので、それに刺激を受け、パラグアイでももっと多くの人たちが学んで発展していくことを願っていて、そのためにパラグアイの人たちのための教本も作りたいとおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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23/10/09まで

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23/10/09まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    10月のテ-マは「習いごと」です。収穫の秋になりました。自分や家族の「習いごと」の経験談や、こんな習いごとをしてみたい!というエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

おたよりはこちらから


【放送】
2023/10/01 「眠れない貴女へ」

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