国連事務次長・中満泉さんに聞く 2021年「国際」展望

マイあさ!/三宅民夫のマイあさ!

放送日:2021/01/01

#インタビュー#政治#気象

ざっくりいうと

  • よりよい復興と、気候変動に対応するための大躍進の年
  • 核兵器禁止条約がいよいよ発効。日本に期待されること
  • 22021/01/01 マイあさ! 女性リーダーに聞く② 2021年「国際」展望 中満泉さん(国際連合事務次長・軍縮問題担当上級代表)

新春インタビュー「女性リーダーに聞く」、ここからは「国際」がテーマです。
国際連合事務次長で軍縮問題担当上級代表・中満泉(なかみつ いずみ)さんです。中満さんは、国連職員として30年以上のキャリアを重ね、日本人女性として初めて国連事務次長に就任し、軍縮部門のトップを務めていらっしゃいます。2021年の世界情勢、そして国際社会の中での日本への期待を伺います。
(聞き手 田中孝宜キャスター)

よりよい復興と、気候変動に対応するための大躍進の年

――去年は国連設立75周年の記念すべき年でしたが、新型コロナという、国連もこれまでに経験したことのない世界的な健康危機が発生しました。どう振り返りますか。

中満さん: 本当に100年に一度の危機ですね。おそらく今、私たちは、人類史上の、また世界史上の分岐点にいるんだろうということを申し上げます。

去年はコロナで、またコロナの影響で、職を失った方ですとか困窮なさる方が非常に増えて、本当に大変な年だったわけですけれども、以前からあったさまざまな問題が、コロナをきっかけに表面化してきたのではないかなというふうに思っています。国際的な緊張関係が高まったり、構造的な差別や格差、不平等であったり、女性への暴力があったり、世界が抱えていたさまざまな問題点が表に出てきてしまった。そういう年だったのだろうと思っています。

他方で科学技術が急速に進展しまして、必ずしもオフィスに行かなくても仕事ができたり、オンラインで学校の授業をしたり、社会のあらゆる面で変革が大きく進んだ、また起こってきた年だったなと思います。

――ようやくワクチンも開発されて出口が見えてきましたけれども、ポストコロナの時代に向かう中、特にどんなところに注目していますか。

中満さん: 国際的なワクチンの供給体制の枠組みというのができています。先進国だけがワクチンを供給できるというようなことではなくて、実は感染症対策というのは一番分かりやすくて、すべての人が安全にならないと誰も安全にならないんですね。すべての人を安全にするためにも、すべての国で、そして国内的にもすべての人々がワクチンにアクセスできるような体制を作らなければならないというのが、一つの大きなポイントだと思います。
ですから国連からのメッセージとしては、いわゆる「ワクチン・ナショナリズム」と言われているような動きは決して自分たちのためにもならないことなんですよということを、繰り返し発信しています。

そしてコロナから復興していく時には、以前のような通常の状況、ノーマルな状況に単に戻るということではなくて、私たち、Build back better(よりよい復興)ということをよく申し上げるんですけれども、これまであったさまざまな問題点――国際的な緊張関係もそうですし国内での格差や不平等、それらをうまく解決するようなかたちで復興を成し遂げる、その道筋を考えなければいけないということが一番重要だと思います。
そのうちの一番大きな問題点である気候変動、それにどう対応していくのかは2021年がまさにカギなんですね。私たち国連は、2021年を気候変動に対応するための大躍進の年にしたいと考えています。

核兵器禁止条約がいよいよ発効。日本に期待されること

――分断を埋めるというのは、中満さんが現在ご担当の軍縮についても、非常に重要なことだと思います。特に、核兵器禁止条約を50か国が批准して、いよいよ今月(1月)22日に発効しますね。この意義と、条約参加に消極的な日本に対して期待したいことはなんでしょうか。

中満さん: 今月いよいよ発効するということで、核兵器禁止条約が核軍縮の国際的な枠組みの新たな柱となって、これから条約の体制を作り上げていくことになります。核軍縮の枠組みというのは非常に複雑なものがありまして、その中で、核兵器を全面的に禁止する条約が一つの柱としてこれから機能していくことになります。
私たち国連の軍縮は、これからこの新しい条約の実質的なさまざまな責任を果たしていかなければいけないということで、1年以内に、1回目の核兵器禁止条約の締約国会議というものがありまして、その準備を始めているところです。

日本に期待したいことは、唯一の戦争被爆国という本当に特別な立場にある国ですので、これまで被爆者の方々が本当に長い間ご自分たちの被爆の非常に悲惨な経験談をメッセージとして発信してくださったことが、実は核軍縮の一つの大きなモメンタム、大きな動きを作る、世論を作っていくための非常に大きな力になってきたわけです。しかし被爆者の方々は去年の段階で平均年齢が83歳となられましたので、被爆の実像をどのように次の世代につなげていくのか、若者たちに平和の問題・軍縮の問題をきちんと考えてもらうためには何が必要なのか、そういったことも含めて、被爆国日本にはさまざまなことを発信していただきたいですし、これからも支援していただきたいなと強く願っています。

これは日本にとって、やはりいい意味での自信をきちっと今一度、思い出すということ。戦後75年間、日本は平和大国として着々と歩んできたわけですので、国際社会でのさまざまな信頼というものはありますし、それをうまく活用しながら、これからもぜひマルチ協力を、旗振り役として主導していってほしいなと考えています。

――2020年のトンネルを抜けて、2021年、中満さんは明るい将来をご覧になっていますか。

中満さん: 明るくしなければいけないと思っています。現実的に困窮されている方々もすごく多くなっていますから、もちろんそういった方々のことも思いながら、ただ、希望を持って、希望を忘れずに努力していくことが、私たちには一番重要なことなのかなというふうに考えています。

――2021年の日本人に向けて、メッセージをお願いします。

中満さん: 大変な2020年だったんですけれども、2021年を良い年、より良い復興の年にするために、それぞれ協力していかなければいけないなと、そうしてほしいというふうに思っています。

国際社会のこととか、それほど難しい問題を考えなければいけないということでは全くなくて、国内や世界で困窮している人のことをちょっと考えてみる、人々に心を寄せてみる、それが最初の一歩かなと思っています。身近なところからでいいので、できることをする。人々に心を寄せていく。家族の中で、そしてまたお友達やご近所の皆さんたちといろんなことを議論して、何ができるんだろうと考えることによって、私は本当に身近なところから、少しずつ世界を良いところに、より良いところにしていけるといつも信じて仕事をしてきました。それがもしかすると一番重要なポイントになるのかなと思います。

2021年は、コロナからの復興を着実なかたちで始めなければいけないですし、復興ができるだけ多くの方々にさまざまな恩恵をもたらせるような年にしたいなと思っています。

――中満さん、どうもありがとうございました。

中満さん: どうもありがとうございました。

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