NHK「政治の現場」 ハラスメント行為で町長相次ぎ辞職

24/05/16まで

政治の現場

放送日:2024/05/09

#政治#ローカル

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NHK「政治の現場」――政治の最前線で取材する記者などが最新情報をお伝えするコーナーです。
今回は、地方の問題を取り上げます。岐阜県と愛知県では、3つの町の町長が職員へのハラスメント行為を指摘され、令和6年の3月から4月にかけて相次いで辞職しました。
岐阜放送局・森本賢史(たかし)記者の報告です。

  • 掲載内容は、NHK「マイあさ!」で放送した令和6年5月9日(木)時点の情報です。

【出演者】
森本記者:森本賢史 記者

――町長3人が続けて辞職、いずれもハラスメント行為が原因だったのには驚きました。

森本記者:
そうですよね。町長が辞職したのは、岐阜県の岐南町(ぎなんちょう)と池田町(いけだちょう)、それに愛知県の東郷町(とうごうちょう)という3つの町です。町の規模ですが、人口でいいますと、岐南町が2万6,000人、池田町が2万3,000人、東郷町は4万4,000人ほどで、いずれも、都市部に隣接したベッドタウンという性格を持つ町なんです。この3つの町で、長期間ハラスメント行為をしていたことが明らかになっての辞職だったんです。
そして、きのう(令和6年5月8日)も、岐阜県の美濃加茂市議会の副議長が、先月(令和6年4月)、外国人の女性に不適切な行為をしていたことが明らかになったんです。

――そもそもなんですが、なぜ今回の問題が出てきたのでしょうか?

森本記者:
はい。問題が発覚したのは3つとも去年(令和5年)なんです。きっかけは、職員の話をもとにした週刊誌報道だったり、被害を受けた職員が会見をしたり、また、一部の職員が非公式に全職員にアンケートを行って、その結果を町議会に提供したりと、さまざまだったんです。

――でも辞職は、ついこの前。町長はどう対応していたのでしょうか?

森本記者:
問題の発覚直後、3人はそれぞれ記者会見を行いました。しかし、当時は、ハラスメント行為の一部を認めるだけだったんです。その後、町が第三者委員会を設置して調査したところ、ことし(令和6年)に入って、多くのハラスメント行為が明らかになったというわけなんです。

――具体的にはどのような行為があったのでしょうか?

森本記者:
第三者委員会の調査報告書によると、いずれも聞くに堪えないような言動が認定されているんです。
▼岐阜県の岐南町では、町長就任直後の令和2年から、女性職員の頭や手を触ったり、抱きついたりするなど、少なくとも99件のセクハラ行為が確認されています。
▼同じ岐阜県の池田町ですが、こちらは10年以上にわたって、女性職員15人に対し、体を触るなどのセクハラがあったと認定されました。
そして、▼愛知県の東郷町ですが、町長が就任した2018年から、さまざまな行為が続いていたということでして、具体的には、さまざまなセクハラに加え、「お前らの脳みそは鳩の脳みそより小さい」といったパワハラ発言、また「育休を1年取ったら殺す」などという、マタニティーハラスメントにあたる言動もあったということです。

――こんなことが、なぜ、長期間続いたのでしょうか。

森本記者:
調査報告書からは、ハラスメントが繰り返されるうちに、役場全体に声を上げられない雰囲気がまん延していった様子がうかがえます。たとえば、岐南町の報告書なんですが、町長について「ハラスメント行為に無自覚で理解を欠いていた」とか、「トップとしての自己顕示欲が強く、クビなどのことばでどう喝したり、ハラスメントを訴えた人を捜したりする面すらあった」と指摘しているんです。
職員は、人事での不利益な扱いなどをおそれて声をあげられない。ハラスメントを認識している管理職も動けない。その結果、組織全体が萎縮していったということだと思います。

――となると、組織を変えるための対策が必要ですよね?

森本記者:
その通りです。報告書では▼町長も含めた研修の実施や、▼第三者の通報窓口の設置などが提言されています。
しかしですね、わたしも岐阜県に3年半、その前は能登半島地震のあった石川県に4年いたんですが、自治体の規模が小さければ小さいほど、通報者も特定されやすいんじゃないか、都市部と同じように考えるわけにはいかないんじゃないかというのが実感です。
じゃあ、どうすればいいんだということですが、地方自治が専門の大正大学の江藤俊昭(えとう・としあき)教授によると、福岡県の例が参考になるかもしれないということなんです。

――福岡県の例ですか?

森本記者:
はい。福岡県には、県内の市町村議会の議員がハラスメントの被害を訴えたい場合、それぞれの自治体の窓口だけではなくて、県の議会事務局にも相談できる仕組みがあるということなんです。これによって、周りに知られたくない人が訴えやすくなる効果が期待できるということでして、江藤教授は「同じような仕組みを自治体の職員にも広げていく議論が必要ではないか」と話していました。

――なるほど。確かにそういう仕組みも大事だとは思いますが、町長ですよね。選挙のタイミングで防ぐことはできなかったんでしょうか?

森本記者:
辞職した3人は、直近の選挙で対立候補を破って当選しているんですね。つまり、選挙戦を経て就任していますので、選挙で防ぐというのはなかなか容易ではないと思いました。
ただ、取材してみますと、ある町の関係者は「現職の対抗勢力がいたことで、外部への情報提供が後押しされたのは間違いない」と話していたんです。
選挙制度に詳しい、愛知学院大学の森正(もり・ただし)教授も「無投票が続くなど、現職に対抗する勢力が存在しない自治体は、ハラスメントなどの問題が埋もれたままになってしまうおそれがある。一方で、選挙戦になれば対抗する勢力が形成され、問題に声を上げやすい環境ができる」と話しています。

――しかし、最近は地方の自治体の長や議員の選挙は無投票が多いですよね。

森本記者:
そうなんです。去年(令和5年)の統一地方選挙で行われた町村長選挙をみますと、半数以上の56%が無投票でした。無投票だと権限を持つ町村長の側の緊張感が薄れるという面も否定できないと思います。
また、選挙の投票率を指摘する専門家もいるんです。地方自治に詳しい早稲田大学の小原隆治(こはら・たかはる)教授に話を聞いたんですが、3つの町は、都市部に隣接したベッドタウンだからこそ、地元への関心が高くなくて、選挙戦になっても投票率が上がらずに、住民のチェックが働きにくかったのではないかと話していました。

――今回の問題をきっかけに、職員が働きやすい環境に改善していってほしいですね。

森本記者:
そう思います。岐南町では、先月(令和6年4月)初めての女性町長が誕生しました。池田町と東郷町では、来月(令和6年6月)町長選挙が行われます。有権者のチェックのもとで選ばれた新しいトップが対策を進めることで、役場の組織が変わっていくことが求められますし、それが住民サービスにもいい影響をもたらすことを期待したいです。それぞれの町の取り組み、継続して取材していきたいと思います。


【放送】
2024/05/09 「マイあさ!」

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