【出演者】
小田:小田真規子さん(料理研究家)
野村:野村正育 キャスター
星川:星川幸 キャスター
冷凍したほうがおいしくなる!
野村:
蒸し暑くなってまいりまして、高温多湿な梅雨どき、簡単に食材を長もちさせる方法をお伝えします。
星川:
令和時代の簡単レシピ、教えていただくのは『きょうの料理』や『あさイチ』でもおなじみの料理研究家の小田真規子さんです。きょうは食品の保存のお話ということなんですが、どんな保存方法についてでしょうか?
小田:
はい。冷凍庫を活用した保存方法なんです。肉も魚も野菜も冷凍保存できるんですけど、何年もこの仕事を続けてきて、低温と塩による調理と食材の酸化というのが、食材の味わいを大きく変えるということが、おいしさの鍵になるってことに気づいて、おいしさの要素の理にかなった調理法が、実は冷凍だったということが分かったんですね。
星川:
おいしさの要素の理にかなったという話は、テレビの『あさイチ』でもまだ公開していないという…
野村:
ラジオ先行なんですね。
星川:
はい、ただ冷凍保存というと日持ちはするものの、栄養素ですとかうまみがなくなってしまうようなイメージもあるんですが…
小田:
実はですね、冷凍したら、しないときよりぐんとおいしくなるんです。私の料理研究25年目の結論なんですけれど。
野村:
おいしくなる冷凍というのは、どうすればいいんですか? 魅力的な響きなんですが…
小田:
塩と油で下味をつける方法なんですね。この方法にすると、保存性も高まるしおいしく仕上がるんです。特に肉や魚などのたんぱく質の素材に、塩が食材に入り込むことで、組織を大きく変化させて熟成させたような香り、うまみとか味わいを生み出してくれるんですね。油は表面にコーティング効果があるので、空気に触れにくくして、保存性を高めます。油は完全に凍らないので、解凍の時間も早くなって、さらに使い始めるときに油なしで調理できて、しかも仕上がりがジューシー、いいことずくめなんです。
塩と油の冷凍保存方法
星川:
塩と油を使うということで、具体的にはどうするんでしょうか?
小田:
① まず塩をしっかりなじませる
買ってきた薄切り肉や切り身魚の余分な水分をペーパータオルで拭き取っていただいて、塩を1%程度、全体にふります。買ってきたトレイの中でそれを行っていただいてもいいです。軽く混ぜて10分ほど置いて、お塩が溶けたら冷凍保存専用袋でもいいですし、ジップ式袋の中に入れます。
② 油をからめる
油を加えて袋の上から全体に行き渡るように、表面を優しくなじませます。
③ 空気を抜いて閉じる
ポイントとしては平らにして空気を引っ張りにいって袋の口を閉じることです。油がからんでいると意外と袋同士がくっついて、中の空気も抜けやすくなって、しっかり口が閉じられるんです。この状態で冷凍していきます。
星川:
塩をなじませて溶けたら、油をからめる。そして保存袋に入れて、空気を抜いて入れるということですね。空気を抜くのがポイントと。簡単な手順ですけども、冷凍というとちょっと面倒くさいなと思って、買ってきたトレイのままで、そのままで(笑)。
小田:
よくないんですね。トレイの中に空気も水分も入り込んでいるので、そのまま冷凍してしまうと、素材の脂肪の酸化も起こしますし、素材とか空気の中の水分が影響して、解凍したときにはドリップが出ちゃって、おいしさを損なう原因の一つでもあるので、おいしくなりづらいです。
野村:
塩と油の冷凍方法ですと、解凍の際にドリップが出ないんですか?
小田:
はい、出ないんですよ。お塩が肉や魚のたんぱく質とかから水分を結び付けて、解凍しても水分が出にくくて、たぶん油で表面がコーティングされて、素材も酸化しにくくなっているので、臭みもないんですね。油も凍ってないので、解凍もとても早くできます。鶏もも肉を処理したら、取り出してすぐに焼くだけでソテーができますし、小麦粉をからめて揚げ焼きにするだけで、から揚げもすぐできます。特にひき肉は空気に触れている部分が多いので、どうしても臭みが出やすかったり劣化しやすい素材なんですけれど、この方法ならよりおいしくなって、鮮度もとっても長く保てるので、やらない手はないんです。
星川:
下味がついているから、そのまま調理にいけるっていうわけなんですね。なるほど。切り身のお魚も同じ方法でいいんですか?
小田:
魚はやっぱり肉よりも値段が高いし、日持ちもしにくいので、魚こそ、この塩と油の下地の効果が生きると思います。ただ焼くだけで本当に、お塩の味がついたお魚がおいしくて、実感できると思いますね。
野村:
刺身用のさくっていうのもできますか?
小田:
できます。下味をつけて冷凍保存しとけば、身が締まってうまみが凝縮していくんです。さくなら、ささっと冷凍できるので、半解凍の状態で包丁を入れると、プロ並みの薄切りにするのもすごく楽です。
野村:
切りやすいですよね。
小田:
例えば、マグロのさくを買ってきたら、今度は塩の代わりに醤油とみりんと油を入れて、冷凍していただくと長く保存ができて、解凍中に漬けになっているので、漬け丼がいつでも食べられます。
星川:
なるほど、忙しいときもごちそうになりますね。 野菜はどうでしょうか?
小田:
使い切れないと思ったら、そのままか、あるいはちょっと大きめにカットして、新鮮なうちに冷凍保存するのがおすすめです。例えば、トマトは冷凍することで調味料に早変わりするんです。冷凍解凍したものをカレーとか、醤油とみりん味の煮物に加えるとすぐに煮崩れて、うまみをグッと出してくれるので、よりおいしくなります。これからたくさん出回るナスは冷凍すると組織が壊れていくので、火の通りも早いですし、味なじみもいいですし、少ない油で調理することができるんです。またオクラは、丸のまま冷凍して、冷凍庫から出したら端から刻んでちょっと溶けていくのを確認していくと、とろとろになっているので、下ゆでをすることもいらないんですよ。
冷凍しておいしいマリネのレシピ
星川:
冷凍保存を使った“令和時代の簡単レシピ”を教えてください。
小田:
冷凍しておいしいマリネです。切った野菜に調味料を入れて冷凍解凍すると、一品料理ができます。
★材料★
・ブロッコリー・・・550gぐらい(小房に分ける)
・パプリカ…1/4(角切り)
・にんにく…1かけ(みじん切り)
・砂糖…大さじ1
・お酢…大さじ1
・オリーブオイル…大さじ1
・塩…小さじ1
これをジップ式の冷凍保存の袋の中に入れて、そして空気を抜いて、冷凍するだけです。
野村:
このレシピのポイントは、なんですか?
小田:
冷凍から解凍するだけです。このまま冷凍して2か月ぐらい保存できるんですけど、まずは解凍するだけで、ブロッコリーはゆでたようになりますし、味もしっかりしたマリネになってくれるんです。
【放送】
2023/06/01 「マイあさ!」
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